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問題意識をどの場面で提案するか

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教科書謝礼問題 子供に顔向けできるのか    2016.1.26 05:02  産経新聞
 採択を歪める不正がまかり通っていたことにあきれる。小中学校教科書を発行する会社の半数が、検定中の教科書を見せる禁止行為を犯し、謝礼が渡った教員は4千人に及んでいた。 教科書業界はもちろん、教員の倫理観も疑われる。教育界全体の信頼を損ないかねないとの認識があるのだろうか。
 三省堂でこの問題が発覚したのを契機に、文部科学省が義務教育である小中学校の教科書を発行する22社の調査をまとめた。
 平成21年度以降で10社が3千~5万円の現金や図書カードなどを渡し、総額は数千万円にのぼる。最大手の東京書籍は2千人を超える教員らに謝礼を渡した。採択権限を持つ教育長や教育委員に歳暮や中元を贈った会社もあった。
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 検定中の教科書を見せること自体が、文科省の教科書検定の実施細則で禁じられている。外部の介入などを排して公正な検定を行うためだ。採択関係者に金品を贈ることは教科書協会の自主ルールに反する。教科書会社はもちろん、教員も知らないはずはない。営業担当者が個別に教員に教科書を見せるほか、「編集会議」名目で集めた教員らの選定に営業担当が関わった例が明らかになっている。各社は営業目的を否定しているが、採択を控えた時期の不正であり、「意見を聞いただけ」という言い訳は通らない。よりよい教科書づくりに向けて教科書会社と教員が情報交換することを否定はしない。だが、少し意見を聞いただけで謝礼を払う必要はない。安易に謝礼を受け取る教員がこれほど多いのもどうかしている。

 公立小中学校の教科書を採択する権限は市町村教育委員会にあるが、教員の中には、採択にあたり教科書の内容などを分析して教委に報告する調査員に任命されるものもいる。そうした立場での金品の受け取りは収賄罪にも問われかねない重大な問題であることもわからず、教師の務めを果たせるのか。文科省は金品を受け取った教員らの情報を教委に伝え、採択に影響がなかったか調査するという。厳正に行ってほしい。
 教科書の信頼は、内容重視で公正に選ぶ制度に支えられることを教育関係者は銘記すべきだ。
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もちろん、外部の介入を排して公正な検定を行うため検定中の教科書(文部科学省検定済教科書)を他に見せることは、文科省の教科書検定の実施細則で禁じられているのだそうな。たしかにこの規定自体は分からないわけでない。(また検定自体が社会通念の影響にあり、忖度の対象にあるというのも昨今の世論である)
但し、特に公立学校では個々の教員に教材を選ぶ権利が必ずしもないようである。専門学科を持つ職業高校などでは、実質的に選択権がある場合もないわけではないが、あまり需要がない教科では実質的に文科省が作成した教科書(文部科学省著作教科書 販売自体は出版社に委託)しか選択肢がないということもあり、結果、教科書の選択は極めて難しいということもあるようだ。(更に、文部科学省検定済教科書・文部科学省著作教科書が存在しないとき、これらの教科書以外の教育用図書を使用することができる)その意味で、より誠実な教育者で、しかし単に物理的な理由でよりよい教科書づくりの意欲があっても、参画できないという教員もいると聞く。(逆に意欲があって、研究活動から教科書を執筆する側にいる先生については頭が下がると思うことも多い)
基本的に地方の教員が教科書会社と情報交換すること自体はそのものは否定できないと私は考える。しかし市場調査を否定していると教科書の活用という側面が意味をなさなくなるという懸念があるし、実際「教科書はありますが、この教科書の記載に私は納得していません」と宣言し、プリントを活用する「意欲ある」先生にも教わったことはある。少し意見を聞いただけで謝礼を払う必要はないというのも事実だが、先生を集めて・・・となると交通費自体も必要だと思うわけで、なんだか、意欲のある地方在勤の先生の力をそいでいるのかなあというところもかいまみえる。 教科書の信頼は、内容重視で公正に選ぶ制度に支えられるというのは統制側の意見のみが優先される可能性もあり、使用側の状況に対応するというのも一つの論法で、一種の「倫理観」という側面があると思うのだ。建て前ではこの新聞社の発言はまあもっともだが、さていかがかと割り切れない側面はある。
教科書も出版社採用に対し地域偏在があるのだそうだ。また採用に関し値域偏在がある出版社もあるやに聞く。以前はある地域のみで流通する教科書を市販していた例が多かった。最近はこういう出版社も少なくなっているが、歴史あるところでは一般社団法人信州教育出版社(公益社団法人信濃教育会の出版部が独立したもの)などは、地域の実情に合った教科書を出版している。昨今は少子化やカラー印刷などの教材作成負担増・コスト上昇など採算性の問題で苦労しているようだ。

ところで、こういう人がいるんですねえ。
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https://www.osaka-cu.ac.jp/ja/news/2012/a4yqqo
工学部4年生の山下明さんが高等学校の教科書(電気基礎)をつくりました 2013年01月09日掲載
大阪市立大学工学部電子・物理工学科4年生の山下明(やましたあきら)さんが、工業高校の生徒向けに使われる教科書(電気基礎)を発行しました。教科書検定制度が制定されて以来、大学生が個人で文部科学省検定済教科書を発行するのは初めてのことです。平成25年4月より実際に北海道旭川工業高校で使用されることが確定しています。
概要:山下さんは工業高校出身で、推薦入試で本学工学部電子・物理工学科に進学し、現在4年生。自身が高校生だった時に『こういう教科書があったらいいな』、という思いをもとに教科書の作成に取り組んだ。もともとTeX(テフ)※1という組版処理ソフトウェアを扱うノウハウがあり、出版に興味があった。2年生(2010年)の春に教科書の執筆を開始し、その年の秋に完成させ、文部科学省の教科書検定に申請。1年後、文科省より検定意見が通知され、内容の修正を求められたが、それらをすべて修正し、無事に2012年1月30日に検定に合格し、晴れて文部科学省検定済教科書として認められることとなった。全国の都道府県教育委員会および電気基礎が教育課程にある工業高校に見本を送付し、その後、北海道の旭川工業高校より採択があり、2013年4月から電気基礎の授業で使用される予定である。
教科書の工夫した点
(1)口語体を使用したこと:多くの高等学校用教科書は「だ、である調」で書かれているものが多いが、「ですます調」で執筆し、わかりやすい説明を心がけた。
(2)内容を絞り、ページ数を減らしたこと:一般的な電気基礎の教科書は600ページに及ぶ分厚いものが多いが、最低限必要な内容だけに絞り、エッセンスのみをまとめたため150ページと非常に薄い。
(3)電磁気学の部分において、大学で習う記述に修正したこと:従来の電気基礎の教科書では、電磁気学はE-H対応※2によって記述されていたが、大学ではE-B対応※3による記述で講義が行われており、そちらを採用した。
【注釈】
※1 TeX(テフ)…オープンソースの組版処理ソフトウェア。数学や物理などの数式表現などが綺麗に作成でき、目次や索引の管理などもできる。
※2,3 E-H対応とE-B対応  …  E-H対応による記述は電場と磁場による記述であり、解釈に混乱を招きやすく、不十分なもの。E-B対応による記述は電場と磁束密度による記述であり、より適切である。
-----------------------------後略
この人は今、地元大阪府立の工業高校の先生として教壇に立っているそうで、社会人向けの著作もある。
まあ、特種な能力のかたなのかもしれないし、記述には、奨学金返済後(!)は大学院に行きたいようであるから、もともと意欲は極めて高いのだろうが、このような形でも世に出せる(但しかなりの赤字のようだが・・・・)というのは後に続くものがいそうである。なお、工業高校の教科書はたしかに分厚いものが多く、聞くと「電気基礎」の教科書は、他の物が極めて分厚いのだが、この教科書は半分以下の厚さなんだとか。しかし、教科書の価格はこの教科書の方が高いのだそうで・・・・。
ではその分厚い教科書は学校で教え切っているかというと・・・内容が豊富なのに、ほとんど教えられていない学校がほとんどなんだそうだ(もっとも卒業し、技術者となってから会社なんかで自分専用の参考書として使っている人もまた多いが)。

つまり私が言いたいのは、需要者に近い意見を聞くことが、意見の偏在や影響など避けたいという意思が政治に見えるのが、どうしても問題になるのであれば、もう少し検定教科書を作成できるハードルを下げるということも一つの手法であるということを、改めて提案することも考えるべきかもしれない。(実際、歴史教科書はそんな状態と化している)と、電磁気学が不得意の極みだった私がぼやいてみる。

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