「キャリアの一貫性形成」の意義を考える
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http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20150420
2015-04-20 キャリアの一貫性なんてマジ無用
今回ジャカルタで会った人と話してて、「一貫したキャリア形成が大事」なんて、まったくもって嘘っぱちだよねーと、改めて確信しました。
(中略)
これから就職する人はよく覚えておきましょう。一貫したキャリア形成なんて幻想です。そんなモノ、ほとんどの人には無縁だし、実際のところ、要りもしません。
世の中は「なんでもあり」なんです。日本語情報誌の編集から、もはや転職は難しいと言われる年齢で、海外での金型メーカーの立ち上げというミッションを獲得できるレベルにはね。
しかも彼女のキャリアは、まだこれから 30年も続くのです。(中略)
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ブログを読んでくれている人に伝えたいです。
・キャリアなんて、一貫している必要はありません。
・一度や二度、仕事から離れる時期があっても問題ありません。
・就いた仕事が思いがけず条件が悪くても、自分がおもしろいと思うなら、やってみればいいんです。条件がすべてではありません。
・転職してみたら、配属された部署が約束の部署と違ってた? まあそういうこともあるでしょう。そして、
・30代でも 40代でも、価値が出せる人は常に求められています。転職限界年齢なんて存在しないんです。
反対に、
・専門性を身につけて、一貫した分野で着実にキャリアを重ねましょう。
・もちろん無用なインターバルはけっして作らず、
・転職回数は 3回までに抑え、
・35 歳を超えたら転職はできないと思いましょう。
みたいにいう専門家様のご意見を信じるのか、ちきりんブログに書いてあることを信じるのか、どっちでもいいです。それ自体が、あなたの人生の選択だから。(後略)
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まあ、私とて40代の時に独立し、その内で関連する専門分野を広げ、ある分野は捨て去ったという経験がある。というわけで私見はもっていた内容である。
但し、この事例のようにジャカルタの例を持ち出すことは誤解を招くという、経理部門で各国を回った人間がいっていた。日本国内の経理業務が極めて専門的(細目等の分類がかなり複雑)になってしまっている今では、状況を考えるとよっぽどの当人の苦労が必要であろう(業務内容はますます煩雑になり、海外業務からの類推性は国内の経理業務では薄いため、難しい)ということであった。
この事例の場合は、話題になっているジャカルタ在住の日本の人は、かなりのパワーや体力があり(かつ失うものがない分、ある場面では「無敵の人(*1)」に近いともいえるが)、だからこそ頑張っていることが評価できると言える。但し大きな問題は、彼女が今後続く30年のキャリアにおいて、高度な体力・判断力・資質がずーっと維持できる可能性もまたないということである。
(*1:無敵の人:『失うものが何も無い人間』のこと。失うものがないので社会的信用の失墜も恐れず財産も失わない、犯罪を起こし一般人を巻き込むことに何の躊躇もない人々を指す。彼らには逮捕は社会からの追放ではなく環境の変化に過ぎず、死刑を課したところで「苦痛しかない生からの解放」であり、褒美に過ぎない。)
たしかに「キャリアの一貫性」は幻想かというと、そこまで否定するべきではないとは思う。特に今までの仕事と全く異なった業界に入ろうとするとしても、雇用が比較的長いパートナーシップ型雇用の場合、最初からパートナーに入れてもらえないという場合が多く、(そのくせ法律上はジョブ型雇用の場合が更に増えてきた)その意味では「キャリアの一貫性」をセールスポイントとしなければ「参加」できないという場合は多かろう。そして、経験者採用という前提も企業も、更には労働法制も制度もとっているということはある。
それでも「キャリアの一貫性」という考え方は、実際のところかなりアバウトなものである。たとえば「生産機械設計をしてきました」という人が次のキャリアを考える場合「機械の販売サポート」は延長線上にあるキャリアだし、「生産機械の保守」「土木設計」・・・というどっかひっかかりのある業態をするなら、「キャリアの一貫性」はあるともいえる。その意味では30代でも 40代でも、価値が出せる人は常に求められているのだが、その価値を出せる環境を確保するためには「キャリアの一貫性」をどこかでうたい文句にするのが、一番便利ということしか意味はないだろう。そこで、「専門性を身につけて、一貫した分野で着実にキャリアを重ね」というのは有利に働くか、無意味かというのは相手先企業や分野によって異なる。「一貫した分野で着実にキャリア」を技術・技能という側面で評価する企業があれば、その人物の資質・特性という形で評価する企業もあるからだが、少なくとも「履歴書」というものを見る場合は、有利か無意味かということはあっても、少なくともマイナスにはならないとは思うのである。従って「キャリアの一貫性」にこだわる必要はないが、あって問題になることはないと考えている。
但し、キャリアの一貫性がある企業の中で担保されるかというと、これまたそうではない。上記する場合を援用するが、「生産機械設計をしてきました」という人が急に工業高校の先生になりました・・・というのはキャリアの一貫性としてはぎりぎり担保しているが、これが繰り返された結果「高校の野球監督として生徒を育成」となると、キャリアの一貫性どうこうとは言えなくなるかもしれぬ。
そう考えると、どっちにせよ面白いと思える仕事を選ぶというのは、まあ生きている上では一番ストレスが少ないだろう。但し、面白いと思える仕事だったが、生計や健康維持にも困るような最悪の環境という場合が昨今は多くある。筆者はそのような環境になることは想定していないと考える。
また、「35 歳を超えたら転職はできない」ということ自体は本筋以外の問題になると考える。それなりに資質をもっていればできないことはまずないのだが、段々この年齢から家族のある人は生計を保つという意味から、家族の賛同を得られない場合もあったりという社会的拘束が極めて大きくなるということが現実には増加し、その説得のための体力消耗が極端に負担化してしまう事例が多くなるとか、ローンの返済を求められるとか(これ意外と多い)で、転職を考える体力自体が消耗してしまうということだろうと思う。
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筆者は2分して方向性を比較しているのだが、正直言うと条件によりどっちが正しいとは言えないと思っている。(その意味で2分的な記載をしているこの文章は、意図せず詐欺的になっていると考える)「専門家様のご意見を信じるのか、ちきりんブログに書いてあることを信じるのか」というのは要因分析的な見方をすると、その事項・要求・志向性によって全く変わってしまうということはあるのではないか。
いつまでも体力が維持できるか・・・ということを考えると、35 歳を超えたら転職はできないという記載は一定の意味はあるが、転職に対する体力が落ちてくることや、周囲のバックアップが頼れないことに関わるのではというように、仕事に取り組むことに体力がどれだけ(絶対値として)割けるかということのなるのだと思う。
「転職限界年齢は意識しないでいいが、転職限界体力は意識する必要がある」とわたしは考える。
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先日TVを見ていたら、こんなのがあった。
http://geinolabo.ldblog.jp/archives/4976502.html
お題1 動物ドキュメンタリー番組 ナレーションに「はぁ?」 何と言った?
(長野県 地獄谷野猿公苑の露天ぶろにつかるニホンザルのVTR)
大分県 ジョン寅ボルタさんの作品:「いくら群れていても結局は個の力なんですよ」
これってアイドルグループ所属のゲスト2名(橋本奈々未・高山一実・・・乃木坂46)に対しえらくきつい作品であるが、このようにパートナーシップ型が求められる「群れている」アイドルグループの構成員たちが、無事に独立する(ジョブ型・・・プロダクション所属がおおいため)という場合に「結局は個の力」がないと、ずっこけやすいというのはわかる。ちなみにパートナーシップ型で構築されるということがない英米のエンタメ界にとっては、この宝塚が萌芽のビジネスモデルであるアイドルのシステムの意義、そしてこのシステム自体がアジアの各国で成り立つというのがきわめて理解困難だそうだ。
そしてジョブ型でも生き残れる 「専門性を身につけて、一貫した分野で着実にキャリアを重ね」というのが日本での社会構成である。首記ジャカルタ在住日本人の方は、ジョブ型だからこそ生き残れたということになるわけで、その前提とする雇用環境(そして共産主義なき今、世界でも珍しく、かつ江戸時代の商家にも萌芽がある自由主義下でのパートナーシップ型雇用)という中では、同列に議論するのはあくまで提案レベルだよね・・・とおもってしまうのである。
そして、たしかに独立技術コンサルタントさんにはこのタイプの人も少なからずいる。(また企業生活がうまくいかないだろうなあという人も多い)ビジネスモデルにもよるが、このちきりんさんのアドバイスはコンサル業務にはふさわしい側面がある。しかしこの姿勢は企業内に入り込んでというパートナーシップ型メンバーに対する指導業務では、上層部が如何様に指示したところで、指導する相手には拒否反応しか与えないということもまた事実であろう。
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