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才能が高い人が逆に陥ってしまう思いこみ(2/2)

(承前)
http://engineer.typemag.jp/article/horie-mcea
「世界が変わらないのはエンジニアのせいでもある」堀江貴文氏がフリーエンジニアに向けて放つ5つの提言
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【1】客の言うことを鵜呑みにするな。エンジニアは自ら提案を
【2】カスタマイズするな。汎用的なソリューションを世界へ
【3】「富豪プログラミング」に慣れるな。昔の技術が役に立つ
【4】これからはスマートフォンがカギになる
【5】情報を手に入れろ。そして手に入れた情報を基に動け

これなんぞはなかなか納得できるのだが、さてフリーの高度技術者が、求めるものとは違うということを言える立場になるということは、依頼側としては期待されない可能性が高い。

【1】客の言うことを鵜呑みにするな。エンジニアは自ら提案を

先日、ブログに「病院の予約受付システムが最悪だ」という話を書いたら、システムを作っている人から売り込みがありました。会って話を聞いたら、やっぱりイマイチだった。どこがイマイチなのか。一番嫌なのは、プラスチックの会員カードです。あれって何のためにあるんですかね?
極端な話、健常者であれば若い人が病院に行くのなんて年に1、2回程度。使わないんだから、カードなんてなくして当たり前ですよね? そのたびに再発行を求められて、手数料もかかる。磁気リーダーが飛んだとかいう理由で、また再発行……。保険証で本人確認しているのだから、それで検索できるはずじゃないですか。
技術的にできるのにやらないのは、システム会社が客の言うことを聞き過ぎだからです。そんなものはいらないと言ってください。立場が弱いとか、要件定義がどうこうと言いますけど、それを突っぱねないと世の中は全然変わりません。これと同じようなことが、いろんな業界で起きているんです。

病院に関しては、二重確認による個人固定と、診断内容が個人情報であり秘密保持を求めるという相反する要件がある等、そもそも保険証だけの人物確認をすることができない状況になっていると聞く。これについては別途議論しよう。
確かに、エンジニアが提案するということは、業務の質を上げるという意味では必要だ。問題解決のためにという意味では客先に提案出来る技術能力を持っている事は、技術者自身の技術的価値を高める側面になる。そして技術を社会に展開するトリガーにはなると思うのだが、あくまでトリガーでしかないと考える。というのは、それは今の業務を前提にして問題点を抽出し「よりよくする」という考え方が前提の場合は、ちゃぶだい返しとなる行為以外の何物でもないのである。
突っぱねないと世の中は全然変わらないというのは、頭から「今の業務を前提にして」という業務が依頼された場合には、そこまで役に立たない。今の業務を前提にしない業務は依頼する価値がもともとないということを依頼者(技術者でないことが多い)は意識化にあるし、もしこの新規な提案が必要ならそれは依頼された業務としてではなく、新規な業務の創出ということになってしまうわけで、これは全く別の議論である。もちろん提案することを前提として、プログラムに仕込むというのは一つの技術力として充分あるのだが、次元が異なる。固有の金銭的資産がない技術者においては、提案をするためのリスクをとる余力がないのが資本的にも時間的にもないため、「立場が弱い」ということではすまされない問題になろう。

世の中を変えるという場合、それに対して強く助力することが技術者として必要な資質であり、助力のための準備・事前検討は必要であるが、世の中を変えることは「経営者」「政治家」の求める職分であって、すでに職分の離脱・越権行為であるという指摘もある。少なくとも「世の中を変える」事は技術者という立場にはないといえるのであるという意見である。私としてはこの意見には賛成はしないものの、受注業務では「世の中を変える」事に参画をし、企画し、提案による共感を得る行為はあってもあくまで技術者としての職分ではないところにあるわけで、堀江氏がこの聴衆に語ることとしてはあまり適してるとは思えない。
「世の中を変える事が出来る」という意識は、技術者のみならず仕事をするうえでは共感するところである。しかしただそれは意識としてのみ持っておくことではないかと考える。
そして、このほかの記載にも「世の中を変える事が出来る」という意識の前提が、すでに合わないというものが出てくる。

【4】これからはスマートフォンがカギになる

スマートフォンは電話ではなくてPCです。インターネットに常時接続したPCが手のひらにある世界が来ているんです。
ただ、ユーザーはPCだと思っていない。「電話のすごいやつ」と思い込んでいる。ここがポイントです。
PCだと思ったら、レイトマジョリティーは敬遠してしまう。それをだましてPCを持たせたことが、スマホの意義であり、スティーブ・ジョブズのすごいところです。
iOSとか言っていますけど、つまりはUNIXですよね。UNIXをレイトマジョリティーを含めてみんなに持たせたというのは革新的にすごいことです。開発者から見たら理想的。良い開発環境もあり、できたものをユーザーの手にダイレクトに届けられる。スマホアプリの時代が来ているんです。
世界の半数以上の人がスマホを持っている。そこをベースに考えないと、間違ったことになると思います。確かに、PCを使っている人はまだ多い。でも、スマホにシフトしていくような動きを推進しないと、世の中はなかなか劇的には変わっていきません。

PCだと思ったら、レイトマジョリティーは敬遠してしまう。それをだましてPCを持たせた
これについてはいくらかの技術者には「スティーブ・ジョブズの欺瞞である」という認識を持っている人が居た。「世の中を変える事が出来る」のは知らぬ間に利便性と引き換えの問題を考えると、逆に「一切かかわらない」という技術者がいて当然である。この「世の中を変える」行為をした段階で、スティーブ・ジョブズは経営者であって、技術者という視点は無意味である。ただかつて技術者時代にいい仕事をしたということしか言えないというのである。
果ては、unixをiOSと「化粧」させて使う事さえ文句を言う人さえいた。それは極論とは思う。但し、このスマホに対して劇的に変わる世界を嫌がって、システム開発業務を退いた技術者を知っている。レイトマジョリティーの中には追従していかない人と、追従することが種々の社会的問題点を増幅していくという認識の人が居るのだ。開発者からすれば理想的であっても、社会の中に「技術」がどのように関与していくかという視点は、おおよそ共通認識を得ることは少ないものである。

【5】情報を手に入れろ。そして手に入れた情報を基に動け

「堀江さんは何でそんなに未来を読めるのか」とよく聞かれます。でも、それは情報収集しているからというだけです。人よりたくさんの情報を知っているということは、その情報を知らない人から見たら、未来が読める人。ただそれだけの話です。
僕が持っている情報は、基本的にスマホのニュースアプリやTwitterでフォローしている人から得たものばかりです。そして、これはすごい、社会にとっていいネタだと思ったら、すべてブログに書いてノウハウを公開している。だから、皆さんも同じ情報にアクセスできるんです。
情報を入手したら、そこから先は、知り得た情報を基に自ら動くことです。


これ自体は、確かに事実であろう。けどそこには大きな視点が抜けている。人よりたくさんの情報を知っているといっても情報の「質」を判断し、選別していく力、また、その情報を組み合わせて新たなもの(に見える情報)を構築する力というところを彼は何も言っていない。つまり意識下にあるほとんど彼の持っている潜在的資質をすっ飛ばしているのだ。本当はそこがないために多くの技術者は動かないし動けない。また彼の模倣者は結構失敗するのである。
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【3】「富豪プログラミング」に慣れるな。昔の技術が役に立つ
のように、その趣旨を考えると面白く、非常に納得できる指摘もある。ただ、純技術的視点からはともかく、社会と技術の係わりという意味では、彼の社会に対する指摘は、皮肉なことに「富豪プログラミング」そのものだという見方をしてしまったのである。

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