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振動抑制機構への過信

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ジェットコースター設計会社に8.6億円賠償命令 ドンキ六本木店屋上への設置計画  2013.3.29 19:55 産経新聞
 大型量販店の「ドン・キホーテ」六本木店の屋上に設置予定だったジェットコースターをめぐり、十分な振動対策がとられていなかったため稼働できなくなったとして、ドン・キホーテが設計会社に約8億5900万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が29日、東京地裁であった。I裁判長は「設置されていた防振ゴムなどは有効な振動軽減策とはいえず、振動改善はおよそ期待できなかった」として、設計会社に全額の支払いを命じた。
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 ドン・キホーテは同店の屋上に、ハーフパイプ型ジェットコースターの設置を計画。設計会社に工事代金として約6億1400万円を支払った。コースターは平成17年10月20日に据え付けが完了したが、試運転で「異常な振動が発生した」としてドン・キホーテ側が試運転を中止させ、現在も稼働していない。
 振動の有無や程度が争点となったが、I裁判長は振動の解析結果などから「屋上階では震度3に相当する振動が発生していた」と判断。すでにとられていた振動対策などを検討しても「振動を改善できる可能性はなく、適切な振動軽減策の提案も期待できない」と結論づけた。
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六本木に神谷町から歩いていったり都営バスにのると、「ドン・キホーテ」の屋上に黄色い北欧の海賊の兜のような鉄骨が今も見える。これがジェットコースターのレールである。スイス・インタミン社の日本法人インタミン・ジャパン社製のハーフパイプ型ジェットコースターである。このインタミン社は世界でも有数の遊戯機械の会社で30年ほどの間にも国内の有名遊園地(西武系が多い)にも木製も含むジェットコースターを多く納入している。主にローラーコースターなどの絶叫マシンが得意である。その意味でこの会社は決して経験がない会社でなく、またこれ以前に大阪のドン・キホーテの屋上に変形観覧車を納入し、今でも運用している。そして、8階建てでの屋上に施設自体の高さ21メートルを足すと地上55メートルになるとかいう。(施設より設備のほうが高さが高い)そして、設計・施工・運営はインタミン・ジャパン社によるため基本、「ドン・キホーテ」には、場所を貸しただけの形になっているとか。

元々遊戯施設を店舗に持ってくるのは古くからデパートで実績があったことだし、実際に直前にドン・キホーテでも前述のとおり事例があることだが、絶叫マシンを入れることは始めてである。本当かわからないが、これをプレゼンしたのはかの秋元康氏という話もある。店舗が午前7時までの夜間営業のため、建築許可済ではあったが、地元六本木の住民や商店、区は騒音や人の声の問題で反対し、その上学校などもあるというのは考慮されよう。だが、このあたりは当時の「ドン・キホーテ」の説明会でも一応設計上の「事前検討」はクリアしたといっていた。このような騒音問題は都市部の遊園地にはよくあることではあるらしい。一方、このような有数の繁華街で騒音問題をどうこうというのはということでだった。
ところが、営業開始予定日の直前に延期の発表があった。そこでは住民諸氏の反対により運用が出来ないという形で、このような形で運用しても量販店本業に影響するのもという。
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ところでがよく聞くと、振動があまりにも大きく、竣工検査において受け取りを拒否したということが事の真相・・・というか中止に更に輪をかけたのであるのではと思う。外部からは騒音問題を含めた反発、中からは振動、これでは中止ですよね。
機械設置業として一般にこの遊戯器具会社の主となる企業が実績がない企業とはとてもいえないのだが、基礎工事をするところからということになると、すでに建てた建築物の基礎までは触れないとなれば確かに機械設置工事によるあとつけの対策としてはできることが限られるともいえよう。
それでも写真(例:http://blog.goo.ne.jp/macaronlatte/e/ea69cdfadf26678a6610511b4dd87f1e)とか見てみると、屋上設置に関しては剛性のあるアンダーフレームを組むなど出来ることはしているのではないかと思うのだ。
更にこのコースターを見てみると、アンバランスな荷重を容認すること自体が難しいといえる。つまり「設置されていた防振ゴムなどは有効な振動軽減策とはいえず、振動改善はおよそ期待できなかった」ということから見て、コースターが動くことで発生する振動をカバーするに必要なしたの鉄骨の枠などの重量では支えきれなかったの考える。このためには下の固定枠の重量を増すことで対処できるともいえるが、今度は建物の許容荷重をオーバーしかねない。
となると、ゴムやダンパーによる振動の遮蔽(ある意味免震構造ともいえる)、更には動吸振器での振動制御というのを考えるしかないだろう。そしてパッシブ対応を実際試みて抑えられない場合は、振動の発生状況が同期して信号で想定できるならば制震装置(地震動をエネルギーとして捉え、建物自体に組み込んだエネルギー吸収機構により振動を抑制する技術。建物の揺れを抑え、構造体の損傷が軽減されるため繰り返しの地震に有効)を使うことも出来よう。けどどっちにせよ、制震装置は動力以上にコストの問題があり、一般的には初めから対応するのでなければならず、まず後付けでは対応できないと思うものでもある。
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そうなると、なぜ設計・施工業者はこれを受注し設計するしかなかったのかというと、まあ、大口ユーザーのたっての希望という側面、施工実績から踏み込んだトライアルの側面もあったのだろうが、すでに他のビルの観覧車を載せた実績を評価されている(ただし観覧車は均衡された荷重で振動源にはほとんどなりにくい静的荷重として外部からは扱える)のに加え、優先的地位のある客先というものもあったのではと思う。
もっとも、このような新興の会社にはよくあることだが、「技術的視点」をもった幹部社員、ものを言える人がまったくいないということはあり、営業コンサルのプレゼンを重要視したり、反対に技術的要求や時に追加的技術方策に対しては冷たい対応を優先的権利行使のもとにすることはよくあることと聞く。よくあるのが(この場合はわからないが)振動の大きいなど、条件に合わない内容を、仕様として決めてしまうため、設計が成り立たないということがあることを認めないし、其の理由を聞こうとしない業者も多いのである。その意味で設計会社に全額の支払いを命じたという判決は、設計・施工業者に対し一般的に発注者の優先的権利行使が免れない場合、設計・施工業者は「ケツをまくる」という行動が出来るということを差し引いてもなお、設計・施工業者には厳しい判決なのではと思うのである。
しかし既存の建物に「あのような『時計の振り子の化け物』をつけるのは、興行的には『怖さの演出』もあって、いいのかもしれないが、工業的にはきわめて種々の危険な現象の発生がイメージされ『怖い』行為というのが、わかる人物がいなかった」という現実にただ落涙するのみである。

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