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原因志向・目的志向

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http://www.engineer.or.jp/c_topics/001/attached/attach_1919_1.pdf
Ⅱ-2 以下に示した文章は,技術とは何か,科学と技術の違い,また今後の技術を考える上で重要な点を指摘している。これを読んで以下のすべての問いに答えよ。
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(1)現代社会に貢献している機械やシステムの中から代表例を1つ取り上げ,いくつもある「正解」の中で,なぜ今のような形や仕組みになったのか,その理由を述べよ。

(2)あなたが係っている技術に関連して,現状の問題点を列記し,その中でとくに解決すべきと考える課題を1つ取り上げ,その理由について述べよ。
(3)あなたがその課題を解決しようとする場合に必要となる,全体を1つの機能体にまとめ上げる「総合」の作業について,考えを述べよ。

 技術には必ず目的があり,目的の実現にはそれに適った手法がある。 しかし,技術では目的が同じでもいろいろなやり方があって,「唯一の正解」というものがない。結果はむしろ個性的ですらある。これが技術の本質的な特徴であって,この点で技術は芸術と異なるところは何もない。両者の違いは,技術は有用を追求し,芸術は美を追求するに過ぎない。
 これに対して,科学はものごとの本質を究めようとする知的な営みである。対象を合理的に説明して矛盾なく統一的に理解する営みといってもよい。だから科学の働きは原因を追究して,つねに唯一の正解を求める。一方,技術は定めた目的の実現をめざす実践的な 「手のわざ」であって,正解はいくつでもあるのだ。原因志向の科学と目的志向の技術。この一つをとってみても技術は科学とは少しも似ていない。(中略)
 技術製品には,価格,工期,安全性,法規などからの要求もある。だから,技術者には科学と工学の知識はもちろん必要だが,それに加えて経験によって鍛えられる洞察力,判断力,決断力,さらには専門職としての広範な倫理的・社会的知識が大切である。

出典:技術というもの,「新・機械技術史」,日本機械学会(丸善)2010.12,p539-p541 
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昨年、H23年度「機械部門」の第二次試験必須科目の試験問題に「イノベーションのジレンマ」(クレイトン・クリステンセン)がでてきた。選択問題2問のうち一つであり、受験者全員が解くことを意識していない。著名な本であるが、必ずしも読んでいるというわけにはいかないだろう。まったく歯が立たない人と、これは面白いと書く人が大きく分かれる可能性があると思った。
そして今年の出題もある意味にている。(なお著作権上の問題もあるようで引用内容は中略とした)
「機械」や「技術」の「専門分野」に閉じこもることがさすがに今の技術者の存立意義を否定することになっている。すくなくとも、今後の「技術士のあるべき姿」を描けるものを出題者は選抜して行こうと考えているのだろうと思う。其の方針が今年も続いたといえるのだろう。
この手の出題の場合、何が問題の本質かが分かっていればそれは回答になるのだろうが、もともと回答に至らないとか、回答に対するアプローチがどこにあるかを見出すということを分からなくても、ほしがっているもの・設問者の意図は、問題の解決に対する筋道の通った論理的思考を「常日頃から」やれるかというところにある。「イノベーションのジレンマ」にくらべて、既読者は少ないと思える文献だからこそ、其の読者の日ごろからの業務に対する「姿勢」が明晰化することを、見極めるという意図があるのでは。
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「機械部門」の第二次試験必須科目の試験問題となると、機械技術者全体の技術範囲の中での概念的思考能力を評価しなければならない。そういう意味で近頃のように機械という範囲で収まらない技術範囲で議論する場面も増加しているだろう。また、昔ながらの基礎的技術知識の開陳という手法では、真に有用な技術者となりえなくなった現在では、この問題形式は免れないことだろうと思う。いずれにせよ、出題者は「機械」や「技術」の「専門分野」に閉じこもることを、今後の「技術士のあるべき姿」としていない立場である。
いや、専門分野を持つことは若年技術者の姿勢としては正当だが、少なくとも高度な技術者となった場合には、その姿勢を保持しながら、其の技術の成り立ちの根源に戻って、考え方・技術内容・組み合わせの再構築を図るという力を必要とすることになってしまったわけで、これでは権威者という存在が継続研鑽の是非で急速に価値がおちる現実がつらく感じられる。まあ人間というものも生ものだが、知的財産が置いておくだけで小豆並みに簡単に痛むのが、技術者の資質評価にまで及んでいるんだと、すこし残念なところもあるんだが。

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