« 別荘ですか | トップページ | フードスタンプがすべて救世主とおもわわれても(2/2) »

フードスタンプがすべて救世主とおもわわれても(1/2)

フードスタンプ(Food Stamp)という公的扶助の一つがある。アメリカ合衆国で低所得者向けに行われている食料費補助対策。この場合のスタンプと言う意味は金券みたいなものであるが、今は名称もすこしかわって、デビットカードみたいな磁気カードを用いているらしい。
支給される対象は食料品であり、一般のスーパーマーケットでも使用できる。タバコやビールなどの嗜好品は対象外となる。(このためアメリカでは農務省管轄業務を州ごとに独自運用である)
ブログランキング・にほんブログ村へ
概ね、4人家族で月収入2,500ドル(ざっくり日本だと20万円)を下回ると対象者となるらしい。1人あたり月100ドル(8500円)相当のスタンプが最大で支給される。交通費などの生活必需品の価格とて品質によって非常に幅広く、最低限の(日本における公共交通としては劣悪なサービスとしても)単純比較は難しいが受給対象となる収入でも十分に生活が維持できるとされている場合もあるようである。ただしフードスタンプの存在を知らない、制度を知っていても受給しない者も存在しているとされる。このように職業があっても支給を受けられるのが特徴である。
これも、世界の情勢にかなり影響を受けている。2010年3月のアメリカ合衆国農務省の統計によると、受給者が4,000万人を超え米国民の12%近くという話もある。一説によると1日あたり約2万人のペースで増加し、地域偏在が酷いようである。

ただし、セフティーネットの考え方が今の日本とは異なる(よしあしの議論ではない)ものを等価比較することは難しい。最近の研究によるとおよそ半数の米国民が、20歳になるまでに少なくとも1度はフードスタンプを受け、黒人の子供に限ると、その比率は90%に跳ね上がるということになると、之でいいのかという議論が出てくるのであろう。
--------------------------- 
このようなことから昨今の生活保護費用の増加にかかわり、支給先の吟味であるとか(不正受給防止)議論をすると必ず支給先の吟味と言う言葉が返ってくる。しかし、実際にはこれらの支給に関する人件費がおおよそ2/3を占めている上に、人員の不足が問題になっている(なにぶんにも支給判断の最前線であるため、人体の危害も有る職場。そして急に社会情勢が悪くなったとしても年度内予算のなかで納めることを要求されるという、窓口業務だけで行かないということで、体力がある若手+経験の有る専門職をまわすと言う現実)という。この上生活保護にはその後のサポートをおこなうべき民生委員が活動するべきで、究極には彼らの活動によって・・・ということもあるのだが、地域の有力者や学識経験者OBは経費以外無償でというのが、ぼちぼち無理がきているのである。
つまり抜本的なところで人件費を現状最低限にしていてコスト不足となっている。少なくとも生活保護を有効にするにも、生活保護者を減らすのにしても現状のコストが少なすぎるということになる。人件費減少が委託業務化によってなりたちにくいとも思えることから、支給費用の一律低下ぐらいしか想定できないのが現実的なところである。
--------------------------
ただし、そもそもフードスタンプと生活保護は其の目的が異なる。アメリカの場合は企業や社会のセフティーネットがもともと経済活動の自由ということを先行させた以上、頑強にならないということから本当の生活の全面管理を政府がおこなうTANF(貧しい家庭のための一時給付)が支給されているが、期間限定であるほか、家族同居だと減額と言うシステムはむしろ公平性を欠くと考えられているなど、機構的には日本のシステムと異なる。こちらには州ごとにことなるが、親族を調査し支援の可能性があるかを吟味するらしい。しかしこちらも全部はやりきれないのと、大概負の連鎖で、支援を求めるべき人がフードスタンプをもらっているなどでは無理と判断することになるほか、実際には人員面で逼迫しており見せしめ的に一部を抽出すると言う事例もままあるようだ。
このようにフードスタンプ=生活保護という結論は、短絡的であろう。むしろ臨時的なサポートであり低所得の労働者に社会の体制で陥った人の一時的な復帰支援としての視点と、もう自助努力を(当人なりに)やってもまり切れないというあきらめの段階の人に、支援するのとではもともと制度設計がちがう。制度設計が異なるものでフードスタンプと生活保護どっちがいいの・・・というのは、本当はまったく意味のないことのはずだが、このところを考慮せず、フードスタンプのほうが制度設計の中では効果的だとか、平準化できるとか言うせりふのみが一人歩きしている。
政策の是非の考慮として、制度設計が複雑になると市民は説明を聞かないため、聞かれるように簡単にする。すると今度は其の制度の負の意味合いなどを検討する行動になる。説明責任を果たそうとする行動が、かえって真意の伝達を困難にすることである。これなんかもそうですな。
--------------------------------------
天皇機関説事件
天皇機関説は、立憲君主主義政治における統治権は法人たる国家にあり、天皇はその最高機関として、内閣他の機関からの手助け(輔弼)を得ながら統治権を行使する制度設計の一種。君主の統治権の過度な作用による絶対王制の阻止であるが、国民を統治権の所有者とする政治にもならない問題もある。しかしドイツ法の国家法人説に影響を受けた学説。対して天皇主権説は、専制的な支配構造として統治権の主権を天皇=君主を設定する。天皇の祖先である「皇祖皇宗」に主権があることを意味することとすれば説明できる。(これは、主権と言う言葉が定義が複雑ということもある)ため、反対に天皇機関説は国体に反するとして攻撃を受けた。
天皇機関説は国体に反するとして天皇による親政を国家の方向性として揺るがないと考える人材には攻撃を受けた。昭和10年2月の貴族院本会議で、陸軍中将・在郷軍人代表として議員職にある菊池武夫議員が、東京帝大名誉教授・帝国学士院会員代表として議員職にある美濃部達吉議員の天皇機関説を国体に背く学説であるとして非難、機関説排撃した。之自体は議員の思想的視点もある。(菊池議員は南朝方に従った菊池氏の出身で、かつ天皇を神聖視する陸軍の幹部という立場的なものある)また、統治に関する手法としての天皇親政とその法規的解釈は政治家(ここでは軍人となってしまうのだが)と、法学者では異なることは、だが、軍部と右翼が機関説へ攻撃した。美濃部はこれに対し「一身上の弁明」として天皇機関説を平易明瞭に解説する釈明演説を行いた。一度は議場からは拍手が起こり、菊池も問題なしと語った。(なお、当事者とも言える昭和天皇自身は機関説に賛成で、天皇機関説を否定した国体明徴声明には批判的だったという。但し、解釈学説であり運用上はどっちでも大差ないと割り切っていた節もあり、むしろ学問の自由が侵害されることを気にしていた。)
問題は議会の外では右翼団体や在郷軍人会が上げた抗議の怒号が収まらなかったことである。これらの中には機関説とは何かということすらいくら美濃部氏が言っても頭から理解しない(理解できないとは言えない、そこそこの社会的な知識層の所属する)者も多く、菊池の従前の批判を誤解した結果「畏れ多くも天皇陛下を機関車・機関銃にたとええるとは何事か」と激昂する者までいる始末だったという。
他方さらに美濃部は不敬罪で告発されたが、そもそも大正時代に天皇機関説は高等試験司法科試験(司法試験の前身)での通説になっていたので、取調べに当たった検事とて天皇機関説ベースで学習していたため、結局美濃部は起訴猶予処分となった。
結果美濃部は9月に貴族院議員を辞職したが、著名な学者でもありその後も学者として活躍する美濃部は暴漢に銃撃され重傷を負っている。また菊池武夫も学問に暗くないわけでもなく、(但し皇道派としての思想にのり)亜細亜大の前身を創立したり、郷里の町長(---後の熊本県菊池市---)をしているなどわからない人物でもなかったようである。
---------------------------------------
あれ、「たかが電気」とか、「中学2年の男子生徒が自殺した問題の調査の不十分さから批判されていた大津市教育委員会の教育長がハンマーを持った男に襲われた。」と言う記事が既視感が。(続く)

|

« 別荘ですか | トップページ | フードスタンプがすべて救世主とおもわわれても(2/2) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/100146/55447698

この記事へのトラックバック一覧です: フードスタンプがすべて救世主とおもわわれても(1/2):

« 別荘ですか | トップページ | フードスタンプがすべて救世主とおもわわれても(2/2) »