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順法意識

アメリカの禁酒法がざる法であったということは疑いないのであろう。理念と現実の衝突にあって、結果的には一部の技術の散逸と、順法意識の低下をまねいたという。
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禁酒法は様々な立場から広い支持を受けた。革新派と、一般に女性、南部人、農村地帯の人々の暮らしとアフリカ系アメリカ人はそれが社会を改善すると信じた。ただし例外もあったし、当時は多く使われた薬用酒にも適用された結果医療の問題もあった。禁酒法が施行されると、アルコールの製造、販売と輸送は違法となったが、自家用に近い限定された量はOKだったし、禁酒法は実はアルコールの摂取そのものは禁止していなかった。

このような見方は本邦における売春防止法ににている。本法にいう「売春」(対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交すること)やその相手となることは禁止されているが、それだけでは処罰されない。売買春は「被害者なき犯罪」の一形態とされておりパターナリズムの問題になることや、立件証拠収集に微妙な問題をはらむこと等が理由とされる。また、当時の社会通念として売春しているものは救済を必要とする者で、処罰は其のあとであるという認識である。むしろ管理売春に関しては罰則の対象となる。
但し、売春しているものは救済を必要とする者であるということがなくなってしまい、むしろ買収行為が(相対的に)高価な対価を得る材料になるという認識をもつ場合は「売春しているものは救済を必要とする者」とならないわけで、近年、管理売春をも合法化する動きが出たのは、なくすことが出来ない以上法的に一定の制御をかけるには合法化し、其の上で衛生管理などの徹底を図るしかないということになる。このあたりの概念のふれは昨今の慰安婦問題の国際的認識の振れにも多少影響があるようである。
さて禁酒法の場合も、多くのアメリカ人がアルコール飲料を飲むために国境を越えカナダ、メキシコ、それにカリブ海の蒸留所と醸造所は大いに栄えた。さらに密輸がおこなわれ、違法なアルコールの売り上げを通して何百万ドルもの大金を稼いだギャングが闊歩し、窃盗や殺人を含む犯罪の多くは、禁酒法に関係する犯罪と関わっていた。つまりこの段階で、アルコールの凶悪な影響を排除することを期待したものも幻滅した。
飲酒は増加し、不法酒場がたくさん出来、犯罪者はかつてない増加をみた。それよりも、市民の多くが禁酒法を公然と無視し、ひいては法律遵守は軽んじられた。
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7月頭から牛のレバ刺しが禁止となったが、なかなか悩ましい現実があるようだ。
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「楽しみ減る」「記念に撮影」 レバ刺し「最後の日」注文殺到  2012.6.30 22:54 (産経新聞)
 レバ刺しが食卓から消える-。7月1日から牛の生レバー(肝臓)の提供が禁止されるのを前に、各地の焼き肉店では連日、定番メニューのレバ刺しの注文が殺到しており、「最後の日」を迎えた30日も駆け込み客でにぎわった。消費者からは惜しむ声や復活を求める意見が聞かれたが、一方で禁止後も生で食べる「闇レバ」の横行も危惧されており、波紋はまだまだ広がりそうだ。(中略) 
 レバーの加熱処理を原則とする今回の「禁止令」では、客席に加熱器具があれば一部の生食提供を認めているが、客が加熱しないまま生で食べる「闇レバ」の横行や、提供する店側が黙認するなどの“抜け道”も危惧されている。
 大阪・鶴橋駅前のある焼き肉店主は「うちは焼きレバーでも、生レバー用の新鮮なものを出しているが、客からは『ごま油もつけてくれ』とよく言われる。店側の責任もあるので、客が生で食べないよう注意はしているのですが…」と困惑した表情をみせた。
 一方、焼肉店の看板メニューの消滅は、食肉業界にとっても大きい。全国食肉事業協同組合連合会(全肉連)によると、販売禁止による業界の経済的損失は約300億円になると試算。業界団体は「リスクを承知して生で食べることまで禁じるのは、国民から食文化を奪う」と禁止令の撤回を求めているが、厚生労働省は今後、生で安全に食べる方法が見つかれば禁止の解除を検討するとしている。
 全肉連の依頼で加熱以外の方法による殺菌実験を行った大阪府立大獣医学科のY教授によると、食品添加物として認められている次亜塩素酸ソーダを生レバーに注入し急速冷凍した後、ゆっくり解凍すれば、重い食中毒を引き起こすO157の殺菌に一定の効果があることを確認した。 実際に試食した人の感想でも「塩素の臭いが全くしない」という意見が大半で、殺菌処理したレバ刺しの方が生臭さも消え、「より甘味が増した」との感想もあったという。
 Y教授は「凍結融解だけでは殺菌効果は十分ではなかったが、2つを組み合わせることで菌がほぼゼロになったケースもある」と指摘。「まだ検証を重ねる必要があるが、近い将来業界団体を通じて厚労省に提案したい」と話している。
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まあ、この表記でわかるように客席に七輪とかの加熱器具があれば一部の生食提供を認めているというのは、あぶって食べることを認めているらしい。しかし、私もそうだが加熱するとレバーは味が変わってしまい、(もちろんそれはそれでおいしいのだが)まったく違う食品になる。客が加熱しないまま生で食べる「闇レバ」の横行や、提供する店側が黙認するなどの“抜け道”も危惧されているというのは、逆に法の適用技術やパターナリズムの問題からあいまいなものははずしておこうと言う意味を認めるが、逆に「客席に七輪とかの加熱器具があれば一部の生食提供を認めている」ことで適応内容のふらつきが、運が悪いやつが・・・と言う法律遵守が軽んじられた法制度の必要性の疑問を出してしまうことになる。
 事実、6月半ばに某焼肉屋(それなりに有名)にいったのだが、レバーは焼き用も含め売り切れになっていた。いずれにせよ生レバー用の新鮮なものを出す上に、きわめて商品の回転の早い店である。但し以前から行っている店なので会計で「いやあ、まあ今後は食べられないんですなあ」なんていったところ、一応今までの顔なじみには焼き物(焼肉・・・つまり七輪が出ている・・・が注文されている)を頼んでいる人には、レバーを出すのであぶって食べてほしいと言う話である。ただし、焼くのにも『ごま油もつける』ことにしたらしい。大体焼くのにごま油をつけたら火が出てしかたがないと思う。
なお、殺菌に関してはジャガイモとおなじく『放射線照射』と言う事例が海外で殺菌用途に出ているが、これは日本ではこと現在では社会情勢が許さないというのもあるという(ジャガイモは保管中芽が出て青酸中毒になるのを抑止するために使われるが、一部の購買層ではじゃがいもでさえ「放射線照射」しないものを高値に取引するような状況も出ているとか。)海外では香辛料、果物にも照射されており、殺虫・殺菌目的でマンゴーなど新鮮な果物への照射も国際的に広がっている。しかし、海外で照射された食品は食品照射が原則禁止の日本へは輸出できない。また、1980年にWHO(世界保健機関)などの合同委員会が「いかなる食品を10キログレイ以下で照射しても毒性学的・栄養学的・微生物学的に全く問題ない」との見解を示している。むしろ、食品照射で衛生を維持するような製品自体、もとより鮮度低下をしているものを輸入可能にすること自体に信頼性が社会から得られないと言うので着手できないのかもしれぬ。
また、鶏肉やその内臓を生食する地域でも混乱を起こしている。これは法規的なものというより風評に近いもののようであるが、それでも「生食自体が問題」という専門家がおり、かつ危険な肉を危険と認識する能力や自助努力が現在の消費者には乏しくなってしまった現実から、自助努力を購買者に求めるのは無理で、また訴訟合戦になると言う判断もあったという。
さらにこれはあまりでてこないが、中間流通業者においてもこれらの衛生的扱いをになわせることが出来るようにすればいいのだが、どうも現在の業界内の業者の資質を評価すること自体が、官製不況になるという問題があって、さらにそのための要員配置も予算獲得の可能性が、現状の財政状況では困難なためあきらめたと聞く。(馬は自主的な衛生評価が確立されていたのと、馬が体温がやや高いということが雑菌繁殖が難しいと言う特性があるんだとか。ユッケなどは、牛の代替として食べられているそうである。合法的に牛のユッケを出す店でも、牛のユッケが3倍以上売価があがったことから、馬のユッケが人気になっているそうだが、焼肉・すきやき用の馬肉の供給が減ってしまったとかも聞く)
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ただ、これらはまだ問題ではない。最近あちこちに「生で食べられるレバー」と言う店が反対に増加している。其のレバーは法規にない・・・というのは法規で規定する以前に生食がほとんど知られなかった、である。(そのような店があちこちのでてきて憮然としている)・・・というのは新鮮な豚のレバー以前に生肉も安全上出していないのである。豚自体が保有している豚ヘルペスウィルスやトキソプラズマ、E型肝炎などの感染症と、と畜流通段階に存在する、カンピロバクター、リステリアほかの食中毒原因菌汚染というのがあるのだそうな。
豚のレバーの生食はドイツで個々検査(河豚の卵巣の糠漬けのようにテトロドトキシンの残量を出荷物ごとに個別検査)して出している事例が唯一あるそうだ。また、ユッケ用の肉も現在は検査機関で個別検査をする(ある程度のロット毎のようである)ようだが、これを内臓に対してさえも現在はおこなっていないようである。もっとも、今のところ豚による食中毒が報道されていないというのもあるが。

まさかなまの豚肉食べられていないも豚レバー生食という店がここまで出るとは思わなかったし、私はまず生では注文しないだろうが、この段階で既に順法意識の低下と言うより、順法意識の忌避と言う側面が出てきている。其のうち脱法レバーとかいって、伊勢佐木町の路地の裏あたりで自販機で売られるようにならなければいいのだが・・・・

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