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人間関係の「配剤」錯誤

休みに、妻と外出したらぼやくことぼやくこと。同情はするものの私にはどうすることもできない。
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最近、妻は近所の調剤薬局の管理薬剤師の職を務めることになった。中規模の調剤薬局の会社に中途入社で勤めているわけで経営者ではないのだが、現場での責任は持たないわけにはいかないようである。
ところが、街中にあっても決して来訪者の多い調剤薬局でないこともあり、勤務しているのは妻当人のほか、薬剤師さん2名(1名は妻が休んだときの管理代理業務者に指定しているらしい)、あと誰かが休んだときに人員的にとりまわしが効かなくなるため、近所に住む70歳前の薬剤師OBをシフトでアルバイトとして時々お願いしているという。其のほか事務職の人がいるようである。一般的な調剤業務がほとんどだが近所のドラッグストアの常勤薬剤師が不在の時間帯に、第一種医薬品(市販薬の1割程度ある第一類医薬品は 薬剤師が不在の場合は販売出来ない)を買いに来た客に対し、勤務先の調剤薬局に誘導してもらいそこで(近所のドラッグストアの代わりとしててなく、薬局としての業務として)説明と販売をしているということもしてるそうな。

所が、当節経営的には厳しいらしく、薬剤師の減員を求められているんだそうで、常勤薬剤師を一人他の店舗に転勤させて補充なしという指示をうけたらしく、それでは業務が回らないということでいい加減経営者とのけんかごしの折衝に困っているというのである。以前にも薬剤師さんを転出したことがあった際、補充が利かず結果的には事務職の人を入れてもらって、無理な人員の取り回しをしていたのに、仕事がやっと安定したらこれ・・・というのである。
もともと管理業務という内容には私以上に向いていない人だしなあ・・・とはおもうが、いかんせん専門分野が異なり意見を出してもこっちの意見が通るとも思えない。
----------------------------引用
誤って「毒薬」調剤、女性死亡=薬剤師ら書類送検―埼玉県警   時事通信 8月19日(金)12時57分配信
 毒薬に指定されているコリンエステラーゼ阻害薬を誤って調剤し、女性を死亡させたとして、埼玉県警捜査1課は19日、業務上過失致死などの疑いで、K薬局本店S支店(同県K市)の女性管理薬剤師(65)と経営者のK(埼玉)県薬剤師会会長(76)を書類送検した。同課によると、2人とも容疑を認めているという。
 同課によると、K会長は昨年3月25日、埼玉県K市のYさん(75)に対し、処方箋で胃酸中和剤を調剤すべきだったのに、コリンエステラーゼ阻害薬を調剤した疑い。女性薬剤師は、4月1日に誤りに気付いたのに放置し、Yさんを死亡させた疑い。 
---------------------------終了

医療・薬理に関する記載についてはあくまでご参考としてお読みください。

別記載によると、薬剤師会会長で薬局経営者K氏(今年はじめまで日本薬剤師会理事でもあった・・・てことはまあそこそこの社会的立場もあったわけで、劣った技量ということではないのだろう)は業務上過失傷害容疑としての送検で、女性(当時75歳)に対し、K氏が胃酸中和剤の調剤とコリンエステラーゼ阻害薬の調剤を調剤用機器の設定ミスで錯誤し、監査(チェック)できずに渡した業務上過失障害容疑が問われている。また記載によっては「薬局開設者として」注意義務を怠り、同中毒の傷害を負わせたという書き方をしている記載もある。
自動錠剤包装機は、数百個に分けられた「引き出し」に、薬を種類ごとに収納して、1回に服用する薬を、処方せんに基づいて数百種類の中から必要な種類と分量だけ選び出し、1包みごと袋に小分けしていく。この「引き出し」には番号を割り当て、管理用のパソコンで薬剤名を登録するのだが、「胃酸中和剤」と「コリンエステラーゼ阻害薬」の「引き出し」に、同じ番号をつけてしまったために起きたものという。
他方女性管理薬剤師は、6日後別の薬剤師(ここには複数の薬剤師が在籍している)から調剤ミスの報告を受けたが、患者に対して服用中止の指示や薬剤回収をしなかったので、コリンエステラーゼ阻害薬のひとつである臭化ジスチグミンによる中毒の致死傷害を負わせたとしている。結果4月7日に脳梗塞の後遺症で通院していたYさん(75)をこの臭化ジスチグミン中毒にて死亡させた業務上過失致死容疑とのしての送検であったらしい。県警は、調剤ミスに気づいた時点で連絡をしていれば、死ななかったとみている。
ちなみに臭化ジスチグミン投与に関しては、コリン作動性クリーゼを防ぐため、医師の厳重な監督下のもとに規定の量から投与開始し、状態を観察しながら症状により適宜増減することという指示が出ている。その際コリン作動性クリーゼ(臭化ジスチグミン中毒による副作用。意識障害を伴うこともある)は投与開始2 週間以内での発現が多く報告されているとし、効果が認められない場合には、他の治療法を検討することとまで説明書に書いてある。(この薬に関しては、旧来あった問題だとしても、この5年ぐらいの間に急に急性中毒の問題が顕在化したように見える)で、投薬後2週間(投薬:3月25日、逝去4月7日)でというところまで合致している。これについては、脳梗塞の後遺症ということで「なんか変だ」という信号がYさんにあっても、ほかに伝わりにくい潜在的問題も副次的にはあるかもしれない(主因にはならない)。
自動錠剤包装機で調剤された薬の誤調剤による死亡事故は全国初だそうで、調剤過誤発覚後半月ぐらい後に、県は県内の薬局に対し再発防止に向けた注意喚起を図ると共に、保健所による立ち入り検査を行う際には「自動錠剤分包機」の適性管理と「毒薬等の適正管理」を県独自の重点項目として盛り込んだということであるから、分包機に間違ってセット(この場合は制御システムにも微小なバグがあったようで、そこを見抜けなかった)したということであろう。その後改善提案書面や繰り返し立ち入り検査を行ったということは監督官庁としてはこの1年間やってきたということかもしれない。
送検に1年以上かかっているが、地検での患者死亡と調剤過誤との因果関係の調査にこれだけ時間がかかったようである。

コリンエステラーゼ阻害薬というのが毒薬というのであるが、そんなに危ないものをと記事を見る限りでは確かにおもいますよね。けどとはいってもこの処方が必要な病気が結構あるのである。
門外漢がざっくりいうと、コリン作動性神経(副交感神経、運動神経、交感神経の中枢~神経節)というのがあり、この神経伝達にはアセチルコリンという物質が関与するんだそうな。そういえば生物でならったような。
神経伝達量をアセチルコリンを酢酸とコリンに分解する酵素として、コリンエステラーゼというものがありこの制御によって神経伝達の量が随意に調整されるのが人間の体における「情報伝達」の仕組みということになる。
つまり
●コリンエステラーゼががんばって出ていると、アセチルコリンの濃度が低下する。
●アセチルコリンの濃度が低下すると副交感神経は沈静化する。
●副交感神経は沈静化したら、作業や挙動が緩慢になる。
ということらしい。

つまり、コリンエステラーゼ阻害剤はコリンエステラーゼの活性を阻害する薬であって、投与によって神経末端のアセチルコリンの濃度を上昇させ、副交感神経を興奮させるということである。神経が反応しにくいので悩んでいる事例に使うらしい。このため、医学的では、重症筋無力症(厚生労働省が特定疾患として難病に指定)やアルツハイマー病などの治療に使用される。臭化ジスチグミンは重症筋無力症に対しての薬剤のようである。このほか排尿障害とか、麻酔のときに麻酔の効きすぎを制御するのだとか用途はいくらかあるのだが、神経に作用する薬であるから専門家の管理下で毒薬として管理するべきである。ただし処方によっては医師の指示にて処方をすることがないわけでもなく、今回のようにお年寄りに処方することがないともいえない病気(今回の薬は重症筋無力症に用いる)がいくつも該当しているのがなやましい。
では、問題ない人に投薬するならどうなるかであるが、過剰に神経が興奮し痙攣するということがこの段階でも想像できそうである。通常病気治療に用いるのは「可逆性コリンエステラーゼ阻害薬」というものであるが、「非可逆性コリンエステラーゼ阻害薬」というものもある。治療用より殺虫剤や農薬としての使用が多い。そしてそもそも、化学兵器のサリンやVXガスなどもコリンエステラーゼ阻害薬の一種だというのである。そうなると、過剰に神経が興奮し痙攣するということがどういう挙動かは想像つくであろう。(なお可逆性コリンエステラーゼ阻害剤のほとんどはサリンやVXガスのようなリン酸系のものでないし、臭化ジスチグミンもそうではないことは留意されたし)
となると、処方を間違えたということは、重篤な日々の障害行動が誘発しうることになるのであろう。 Yさんは服用後、下痢などの症状を訴え入院して、調剤ミスが判明し対症療法をしたが死亡し、病院側が警察に通報したという。いずれにせよ投与に細心の注意が必要な薬剤であるのだが、毒を盛ったというクラスものではなく、「誤って「毒薬」調剤」という表現は、ある意味誤解されやすいかもしれない。
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薬局には必ず一人、薬事法で定められたその薬局や店舗などにおける責任者として管理薬剤師を置かないといけない。特に薬剤師以外の資格は要らないものの、そのための研修を頻繁に受けるとか、最新の医療技術を知っておかなければならないとか、在庫管理や員数調査(棚卸しをやった時の最終チェックなども要するに同じで、たとえば劇薬などだと盗まれたら犯罪にということもあるので)、発注管理など結構調剤を直接扱うというより、現場管理職という雰囲気になるようである。確かに薬の写真と説明の載った紙の説明文が正しいかをチェックするというとかについては、我が家でも家でみんなが夕食後くつろいでいる脇でしこしこやっているのを見たことがある。ただし、営業時間が長い病院では一人だけといっても労働基準法遵守もあるし、それこそ勤務時間だけですむものでない。うっかり休暇をとらねばとなると、店舗もあけられないことになる。そのため申請の際、代行職を薬剤師のなかから選任することにし、申請書に記載することが多いようだ。
もっとも、管理薬剤師=経営者とは限らない。病院と違うのは経営者は一般の人がやってもいいわけで、薬剤師の資格を持った人を管理薬剤師として任命というのもある。
さて、自動化すれば間違いを防げるとは言えず、日々のちょんぼは減るのだろうが、逆にすこしのミスで今回のようにちがう薬を補充してしまったりした場合は、事故を招きかねない。そこで普通「監査」と呼ばれる確認作業をするものだそうだ。確認作業を2人で確認するか、試しに動かしてみて正しいものが出てくるのを確かめるという。ダブルチェックは安全関係ではある意味当然である。(私は当初、異なった薬を棚に入れ間違ったという可能性を考えていたが、分包機のシステムにも問題が潜在的問題があったともいえる)もちろん調剤するときも、処方せんと実際に小分けした薬が一致するかを毎回チェックするが、ここでは今回のような包装では問題が「自動化によって」埋没するというのは上述した。
そこで、この事例を見てみると、おやあということに気がつくであろう。
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経営者のK会長は、県の薬剤師会会長で国内業界団体の役員であるなら当然薬剤師資格を持っている。年齢もいっているが経験もあるこの人が直に処方しても、処方箋を見間違って胃酸中和剤の代わりにコリンエステラーゼ阻害剤を処方し、確認が不十分ということ(考えれば薬を渡す前に過去の投薬内容との比較や読みあわせをしますな。ただ服用ごとにパックつめしていた場合は、判別は難しい)をしてしまった。つまり問題なのは経営者としての監督責任ではなくK会長が処方(薬剤の分包機械の設定)を誤ったという実務上の責任である。これが、薬局開設者として注意義務を怠り、同中毒の傷害を負わせたとなるなら解釈がひっくり返るのでこのところの解釈は判決に影響する。
反対に女性管理薬剤師は、調剤ミスのフォローを放置してしまい、結果として4月7日に死亡させたという管理監督責任に近い。そこで誤投薬したのは「業務上過失傷害」で、それを放置・継続したのが「業務上過失致死」になるとおもう。
このため経営者としての権限と、実務責任者の関係が入れ子でひっくり返っており、しかも処方したのはそれなりの権威者ということなのでは、これは意図せずとも業務管理上のシステムとして厄介なことになる要因が潜在的にあったとおもわれる。こういうかたちで運営していた(いつも調剤をK会長がしていたのかは不明であるが、薬局開設者としての注意義務というならともかく、調剤の責任者として薬の袋の上に、K会長の判を押してたりすると、調剤実務の実務者とも言える解釈になる)という企業体のねじれは、問題が発覚して善後策を採ることがうまくいかなかったという問題のこじれにあるともいえる。
案の定、毎日新聞によると K会長は「患者を待たせるのが嫌で薬の中身を確認しなかった」ということらしく、女性管理薬剤師は「社長(K会長)に叱責されるのが嫌で報告も回収もしなかった」と供述しているという。どうも「胃酸中和剤」をオペレートした薬剤師が選択しても、実際には先に機械に登録されていたコリンエステラーゼ阻害薬である「臭化ジスチグミン製剤」が調剤されていたようだ。2月から発覚の4月1日まで20人に間違った処方をしてしまったようである。但し死亡した女性以外に不調を訴えた人はいない。
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どうも、この管理薬剤師は職務の責任より「人間関係の潤滑」を採ってしまったようで、医療行為を行っているものとすれば倫理的根幹(医療倫理行為の誠意がないといえる)問題行為である。経営者も日本薬剤師会元理事となればそれなりの立場でもあろう。こういう問題の潜在的なポテンシャルを見出せなかったのは、実務上の容疑の上に業務上過失という指導者責任はどちらもあるとおもう。
そう考えると、以前はやっていた薬局の粉薬調合・包装の取りまとめに対し「割増料金がかかる」とか、「安全上の見地からできれば錠剤の服用にしていただきたい」とか「打錠を薬局でするのは難しいので服用指導には時間をかける」という薬局が増えてきたとおもう。たしかに投薬を受けている私も其のあたりの変化は感じる。間違いが生じにくいのはシートに入って名前がわかる錠剤なんだそうで、嚥下が難しいとかシートごと服用して大騒ぎというような幼児やお年より向けに、錠剤を崩して調合したり纏めたりするのは、薬剤師業務においては間違いを起こすモードが増えるから技術料を別途いただくというのは、免れないかなあとはおもう。
むかし私もかかりつけの医者からの投薬をもらって帰ってきたら、すぐ薬局から「調剤を間違えました」という電話があり、では再度薬局にいくかなと用意を始めたら直後に薬剤師さんが(お詫びの品・・・といっても薬剤メーカーのノベルティーである飲料水や文具を山盛り・・・ももって)家に住所記載をあてに10キロの間をタクシーで駆けつけてきたというのがあった。(錠剤のグラム数を半分のにしていた)問題抽出が早かったのは錠剤のみの投薬だったからだろうが、まあ、ありえないことでないとはおもう。錯誤に関しては、ゼロにすること自体がやりきれなくても、これぐらいの誠意はあるべきということであろう。また、はからずしも問題解決という際には「叱責されるのが嫌」とかいうのは問題をさらにこじらすだけである。
もうひとつは、機械だから正しいという、オペレータが行いがちな先入観を持たないようにすることであろう。(一般の機械安全でもたびたび議論される。)自動化による大規模事故発生というのは自動化技術では初期不良に限らずよくあることで、事故は少なくなったが一発起きると規模がでかいというのもよくある。医療関係の電子化については、電子カルテ化によって事故激増も過去あったらしく、結果安全確保のためのステップについて、自動化による確認作業を追加することを考えてるようである。薬剤師さんが制御に対してよくわかるかというと、これは(得意な人の割合は多かろうが)全部が全部完璧とはいえない上に、人員がなかなか割けず苦労している小規模調剤薬局も、上記の例のように多いわけであるし。
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その意味で私の身近な管理薬剤師さんは、いちいち確認するという神経質な上に自分の夫だけでなく雇用先に対しても非常に強気で文句をいう無鉄砲さがあるので、事故処理に対して消極的な態度はとらないだろうなと、ある意味安心しながらも、他方職務上あの強い説教・強情さを家人に対してするのも仕方がないのかという失意体前屈のような落胆もあるorz。

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