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問題意識の違いであろう(1/3)

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BBC側、日本大使館にも謝罪 二重被爆者の不適切放送で 2011/01/21 20:42 【共同通信】
 【ロンドン共同】英BBCテレビのお笑いクイズ番組「QI」が広島と長崎で二重に被爆し、昨年死去した山口彊さん(長崎市出身)を「世界一運が悪い男」などとジョーク交じりに紹介した問題で、「不適切だ」と抗議していたロンドンの日本大使館に21日、番組プロデューサーからの謝罪文が届いた。
 プロデューサーは、一足早く、謝罪メールを送っていたが、大使館には書簡で回答したため遅れたとみられる。
 謝罪文は17日付。「われわれが(日本人視聴者を)不快にさせてしまい、大変残念だ」とした上で、原爆に関して「日本人の潜在的な敏感さを軽視したのは明らか。お気楽な番組で扱うには不適切と日本人が見なすのは想像に難くない」などとしている。
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私も、本来なら激怒してもよい立場である。
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近親に複数人広島の原発投下で影響を受けた人が結構いるし、祖母はたまたま商売の関係で(食材の仕入れるために農村に出かけていた)被爆しなかったものの家財を灰にしたし、恩師が勤労奉仕にいかせた学生を全員死なせたということで生き方を一変させたという経験もある。大体叔父と親が被爆手帳をもってる(ただし勤労奉仕で市内にいず軽かったこともあって、齢80越えて元気なんだなこれが。それでもクラスの2/3の方は原爆でなくなったとか。)だから、まあしゃれにならんなとも。

もちろん日本大使館が抗議するのはある意味正式・全うな活動だ。(皮肉っぽく「対外公館もまともな仕事をするんだ」という人もいた。)また、NHKとBBC(一応言っておくが滋賀県の民放のびわこ放送ではないorz)は、その公共放送の仕組みとしては非常に似た形をとっており、国営放送でなく国家から独立した形の公共放送で受信料を取っており、かつCMを入れないというのを貫く形ですから、NHKに置き換えてみると日本人もわかりやすいかも。

人気クイズ番組で12月17日、「世界一運が悪い男」として、広島と長崎で二重に被爆し、昨年1月に93歳で亡くなった長崎市出身の山口さんを取り上げたというのはまあ百歩譲ってもよいだろうなあ。
「出張先の広島で被爆し、列車に乗って戻った長崎でまた被爆した」と説明するのも事実だから仕方がない。

山口さんは製図工としてタンカーの設計業務にかかわっており、長崎の三菱重工の造船所に勤務していたが、この3ヶ月前から長期出張で広島市江波にある三菱重工江波工場にきていたという。そして、被爆したのは広島電鉄江波電停(現在の位置よりすこし市中央に近い。爆心地からは直線で3キロ)だそうな。ちなみに江波電停は広島電鉄江波線の終点であるが、上記の三菱重工江波工場の工員輸送のために延長し、しかし資材不足と敗戦で途中で挫折した経緯がある。今も路線はここで止まっている。代わりにバス便が路面電車と並行して三菱重工江波工場まである。バスのほうが朝夕はともかく日中は電車のほうが多く、運賃が高いようですみわけがされているようである)
職員の多くが被爆し、インフラがむちゃくちゃな状態で江波の造船所が業務を行えるわけはなく、長崎に戻るというのはある意味当然である。しかし戻ったこちらも造船業の町であるわけで、このときの米軍の目的が軍用設備を壊滅させることを目的にしていた節があり、彼は再度被爆し、親族を失うなどの上、こちらも敗戦で船がつくれなくなり退職、他の業務の後再開した造船所に再就職というわけである。その後定年まで勤務されたということである。

この伝えられた事実だけを見たら「不幸ではあるが、それ以上に不幸な人はすぐなかった人」だし・・・という視聴者がいるかもしれない。アウシュビッツにという人にこの言い方で話したら、これは戦争の悲劇の意識がないとかの地では言われるだろう。「でも、93歳まで長生きしたなら、それほど不運じゃない」というのはその比較で言われるからしゃれになると考えたのは、正直言うと英国のセンスではあるかもしれない。だいたい、平均寿命が日本より短いということもあるから更に際立ってしまう(日本は82.6歳 イギリス79.9歳@2008年統計)
しかし彼の反戦活動や自分の過去の吐露による具体的活動まで知らないから言えることである。特に被爆者が「当時の日本では厄介者として扱われた」というのは、映画の「黒い雨」などを見ていたらわかることではあるのだが、このように被害者が冷たく扱われるというのも人権上の前提が確固としてある英国で想像するのはむずかしかろう。そもそもこういう事実が原爆を落とした「当事者側ではあるが当事者でない」英国において、認識をもたれないことだったということは、歴史認識の限界として冷酷に見つめておく必要がある。多分フランスなども近い認識の人がいても不思議はない。(ドイツではそうはならないだろう)
また、山口さん自体は病気で造船所勤務時にも苦労したとか(まあある意味公傷であるから三菱重工も再雇用に配慮する社会的責任もあるし、英語も堪能だということもあって仕事はしっかりされたというのもあったのだろう)、のちに原爆廃絶活動を身を挺しておこなうことに半生をささげたことが伝わっていると、このクイズ番組が取り上げる手法が代わっていたかもしれない。
長女が存命で報道に応じ、核廃絶に向けて父の体験を軽視することは遺憾とは言われているし、後半生の活動を考えれば至極当然だが、「家族内で『運が悪かった』と笑いながら話したことはある」とも語ってるようだ。
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そのようなバックグラウンドが英国の番組プロデューサーや、あまり知識のない聴取者相手の放送では
「でも、93歳まで長生きしたなら、それほど不運じゃない」
というのは、英国人の死生観からは、まあありえなくもないと思う。不運ではないとは言わず「それほど」というのはその意味ではまだ理解あるほうかもと思う。更に
「原爆が落ちた次の日に列車が走っているなんて、英国じゃ考えられないな」
というのは、前提条件を考えるとこれ見事に英国人らしい自虐コメントで、じつは山口氏の非難でも人格攻撃でもなんでもない。いう場面が適切ではないだけではある。
もっとも、彼が乗ったのは緊急に動かした避難列車であるし、軍用列車に近い存在だったとはいう。しかしこのような混乱した状況で汽車が動く体制が維持されていたこと自体が英国人には驚きであるという。おおむね自己保身で職員が集まらないとかはあると思うな。
特に1994年〜1997年の間にイギリス国鉄は日本の分割民営化にならって上下分離方式での分割民営化の実施で一時乗客数は上昇したが、割の合わない保守整備を豪快に削った結果、有責事故が頻発して定時運行も難しくなり、あわてて整備予算を立てたものの対策費用が急上昇した結果、分割民営化企業は倒産し、国有企業化(設備管理会社として)されているなど、公営でなければ社会インフラが成り立ちにくいという階層的断絶の強い社会構成の欠点を露呈している。つまりこのような事態で鉄道が動いていること自体が、現在の国内事情を見ると、自虐的笑いになるともいえる。
(続く)

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