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既存技術を再構築(2/2)

(承前)
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下水汚泥でガス発電 世界初、清瀬で稼働  2010年7月24日(土)8時0分配信 産経新聞
 世界初となる下水汚泥をガス発電に利用する発電炉が23日、清瀬市の「清瀬水再生センター」に完成し、稼働を始めた。
 「下水汚泥ガス化炉」は建設費38億円。従来は焼却処分していた下水汚泥をガス化して発電用として再利用することができる世界初の施設で、年間に生産できるガスは、都市ガスに換算すると約8500世帯分に当たる。従来の施設に比べ、温室効果ガスを約90%削減できるという。
 23日の完成式典で、石原慎太郎知事が「爆発するんじゃねえだろうな」と出席者の笑いを誘いながら初稼働のスイッチを押した。
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世界初という書き方で「おおっ」と思うが、基本的には相当古典的な技術である。ちなみに「下水汚泥をガス発電に利用」自体は日本では先行事例はいくつかあるのだが、設備管理上の問題もあり工場内のプラント用での自家用に限られていた。最近の制御技術で逆潮流と言う形で「下水汚泥をガス化して発電し、市中の電力に戻す」というのが、海外に前例がないのである。(新聞社も良くわかっていないな)
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戦時中には天然ガスと同じく検討され、自動車燃料への転用を考慮したプラントがあった。しかし耐久性や安全性での考慮でなかなか商業化に至らないとか、安全コストが発電コストへの転嫁に問題が残っていた。
汚泥処理は、一般に濃縮、脱水前処理、脱水の順で行われ、焼却や溶融による埋立処理とか、肥料化が多いのだが、都市部での排水中の界面活性剤や農薬などの混入や重金属等を含む可能性は、このよぷな再利用の場合有害物資を「濃縮」するという懸念があるらしい。そこで燃料やセメントやレンガ・舗装材等への利用が一時期熱心に行われた。それでも、汚泥は人口集中や水の使用量の増加から排水・下水処理場の負荷増大、最終処分場の不足ともなっている。
ところで、このような脱水前処理、脱水工程と後処理(保管)過程ででた、嫌気発酵によるメタンガスの発生をエネルギー利用したりすることは他工程にも流用できるという視点があるが、もともとは汚泥処理以前に燃料の再活用と言う視点で、日本国内で商用プラントができたのは、どっちかと言うとガス回収のほうが先である。(この汚泥はもっぱらし尿であったのだが)
だから、石原慎太郎知事が「爆発するんじゃねえだろうな」と出席者の笑いを誘いながらというのは、ジョークとしてはわからなくもないのだが、防爆設計をする側(特にこの手のプラントは機器の劣化が水とガスによって生じて複合的なので、機器の爆発防止を個々に実験して認証するということになるため、安全に関しては膨大な検討材料を設計のときに必要とするという過程を知っていると、「しゃれにならない」と憤る人もいて当然であろう(けど爆発するようなSW作動ということを頭から”おえらいさん”にさせないとも言え、信頼しているという言い方でもあるがね)。また、設備保全過程も複雑である。
これとて、成熟したり枯れた技術といえばそのものであるのが、再度というか繰り返し検討されているものであろう。
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このほかにも過去に検討されたシステムのうち、加工技術や生産性の問題、さらには技術的な難しさや調整(相反関係)が成り立たないため捨て置かれた技術や、世界的な志向や果ては政治的動向により消され、捨て置かれ草葉の陰に隠れていた技術が、その後の他の技術開発によって「つかえるじゃん」となることはよくある。ただし一度埋もれた技術は詳細が知られていないことも多く、その発掘作業、評価、再提案(ないしは落胆・・・)は暗くて日の当たらない研究者の仕事で、その技術者を「保持」する社会環境を維持する費用の手当てというみかたの必要がある。定量的効果というと見えないこともあり、真っ先に「仕分け」られる存在でもある。
よく成熟技術だからもうやることはないという意見は多いが、それは技術が成熟しているのではなく市場が飽和したりニーズが成熟しているのであると私は考える。もっとも市場が先行きがないものだから研究行動や技術開発への投資・人材育成ができず結果的に成熟したと見られる場合もある。そこでQCDの値付け配分が変わるとか、既存の価値基準とは違う意見を出すプレゼンタブルな人材が変わると、成熟技術というものの存在価値なんて簡単に新技術と変わると考えるのである。
その意味では、「成熟技術」・「枯れた技術」というのはわかりやすいし、行き着くところまでいた技術の塊という見方でわかりやすい側面があるが、他方バズワード(buzzword:明確な合意や定義のない専門的用語)という側面も大きいのではと思っている。
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ちなみにこの試験問題はそこのみの議論ではとどまらない論議ができる技術者を求めている出題である。

(前略)このような状況を踏まえ,あなた自身が携わる設備・技術の中で,例えば,既存技術(成熟・枯れた技術)を再構築して活性化した,あるいは新分野へ移植するなどのような具体的事例をあげ、現在の経済環境下での雇用を確保する方策を考え,記述せよ。
つまり、求められている要点・要求事項はその先の「現在の経済環境下での雇用を確保する」ことに資する技術開発の「計画・市場把握」という思考過程の構築と説明能力なのである。

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