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こんなに「自己啓発」「心身改造」に躍起になる(3/3)

(承前)
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なぜ日本人はこんなに「自己啓発」「心身改造」に躍起になるのか  (SAPIO) 2009年12月21日(月)配信 斎藤環(精神科医)
(承前)「あれが欲しい」より「損をしたくない」
日本人の未熟化は現代日本の大きな問題だ。「社会の成熟度と個人の成熟度は反比例する」と私は考えている。社会の近代化=成熟化が目指すのは、ハンデを持った個人がハンデのない個人と同等に生きていける平等な社会である。したがって成熟社会では、それまでハンデだった「未熟さ」がハンデにならなくなる。
たとえば独身でいることは、かつて大きなハンデだった。生活の質をはじめとした幸福度が下がり、既婚者との比較で大きな差がついていた。ところが最近は一人でも充分生きやすい社会となり、少なくとも独身でいることで決定的な不利益を被ることはない。事実、データによれば20代後半の女性と30代前半の男性の約半数が結婚していない。(中略)
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「草食系」という言葉は欲望の水位が下がってきている若者の姿をうまく言い表わしている。彼らに話を聞くと、「車はいらない」「女性と付き合うのは面倒くさい」と、物欲や性欲が著しく低下している。この問題は必ずしも若者に限らない。

人間は欲望が少なくなると、「あれが欲しいから行動する」のではなく「他人より損をしたくないから行動する」という方向に行動原理が変わる。(中略)学校や病院に出現するモンスターペアレントやモンスターペイシェントが社会問題化しているが、彼らの行動原理は「自分や自分の子供だけ損をするのは許せない」という怒りである。
自分だけが損をすることを強く嫌悪する社会では、「何かを強く欲すること」が困難になる。代わりに何を求めるのかそれは勝間氏が訴えるような「情報」である。日本人が「情報弱者」になりたくないという不安だけで行動する限り、コミュニケーション偏重の社会はいつまでも続くことになるだろう。
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「自分だけが損をすることを強く嫌悪する社会」の損・・・てどういう損なのだろうか。
実はこの言葉を「至近の直接的金銭的損失」と置き換えれば、まったく話が通じるということではないか。
「入るを図って出るを制す」という言葉がある。農村復興事業を推し進めた二宮尊徳の言葉で、商売の如何は収入と支出のバランスという。この言葉自体は『礼記』王制篇にもあるという事も聞くが、その発言は「入るを量りて出るを制す」となっており、入る財源を把握して、それに基づいた形で出費をコントロールするといえる。二宮尊徳はこれをさらに進めて、入る資源を最大にすることを意図したので、「図って」となったようである。
ところが実際は、既存の倫理を無視しても起こす強大な調整能力か、既存の知識を凌駕する強大な知見の創出という、先が見えないものがあって、ますますそれが遠くにいっている。(近いと思っていても海外が相手になったとなると競争相手が一桁増えたともいえるわけで)出るを制すはともかく、入るを図ることができない以上、高々入るを量るしかない。
そうなると一番「簡単」であるのは入るを量るという結果、欲望の水位を下げることである。ほかに人に影響が直接かかわらない(全員が同じことをすると影響が出るのだが)
次に「簡単」なのは、入るを図ってということだが、「既存の倫理を無視しても起こす強大な調整能力」「既存の知識を凌駕する強大な知見の創出」の可能性が乏しい以上、一番手に入りやすいものに傾斜することになると思う。しかも経済活動を至高の存在とすることが「金銭的損失の回避」となると、相場や株のように即時の経済活動情報が「価値」創造になるわけで、結果一番入手が楽になったのがITの進展が後押しした微細な情報によって、価値の乱高下が起きることから、「情報」しか価値が見出されるものがないという、消極的な理由になると考える。
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つまり、みんなが「自己啓発」「心身改造」に躍起になるのは、資本蓄積至上主義に社会が行き、さらに徒労な活動を価値がないものとみなす、当然起こるべき帰結であり、「自己啓発」「心身改造」に過剰に傾斜して淘汰するのを前提にしなければ、経済活動の現状維持がなりたたないという、無間地獄に入っていると考える。
このループは経済破綻か、宗教的に近い倫理概念強制しか抜け出ないと、私は考えてしまうのである。つまりナチスドイツが倫理概念を独自に歪曲して構築し、一時的にも幻の繁栄のインプレッションを出したように。

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