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公益通報保護(1/3)

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誰のための公益通報保護か   * 鷺森 弘(日経ビジネス) 2010年1月29日(金)日経ビジネス 2010年1月25日号
 「原告の請求はいずれも棄却する。訴訟費用は原告の負担とする」ーー。
 1月15日、東京地方裁判所。T裁判官は主文だけを読み上げると、判決理由などの朗読を省略し、足早に姿を消した。
O社員が完敗
 原告でOの現役社員、H氏は茫然としたが、すぐに気を取り直して、控訴する方針を固めた。「私は間違ったことはしていない」。
 H氏によると経緯はこうだ。2007年4月、上司が取引先から、機密情報を知る社員を引き抜こうとしているのを知った。不正競争防止法に触れると懸念し、上司に直言したが聞き入れられなかった。そこで同年6月にコンプライアンスヘルプラインに通報。その回答メールがH氏の名前が分かる形で上司に同時送信され、同年10月、H氏は閑職に追いやられた。
 配置転換は内部通報への報復で不当だとして、会社と上司に対し、配転先で勤務する義務がないことの確認と、1000万円の賠償を求めて東京地裁に提訴した。会社側は「上司へのメール送信はH氏も了解済み。異動は本人の適性に応じたもの」と主張していた。
 判決理由は冷徹だった。
 「配転命令による原告の不利益は、賞与減額を前提にしても、わずかなもので、会社の命令が報復目的とは認定しがたい」と判断。さらに、「原告は不正競争防止法について言及していない」「通報内容で、会社側は不正競争防止法については認識していなかった」として、H氏は公益通報者に当たらないとしたのである。
 会社側は今回の判決を受け、「当社の主張が全面的に認められた妥当な判決」(広報・IR室)とコメントした。
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 なぜ、会社側の言い分が通ったのか。

 背景には保護要件の厳しさがある。判決では、内部通報の内容について「具体的に誰のどのような利益を損なうのか明らかでない」とした。公益通報の対象は同法が示す法律上の犯罪行為となっており、通報者がその関係性を説明しなければならない。消費者行政や内部通報問題に詳しいN弁護士は「弁護士でも難しい法律的判断を通報者にできるわけがない」と強調する。
 外部通報もハードルが高い。通報先は(1)事業者内部の窓口(2)処分権限がある行政機関(3)マスコミや消費者団体など外部機関ーーと規定されている。(1)では通報すべき事実が生じたり、生じようとしていると「思料する場合」でも保護される。「怪しい」と思っただけで通報してもいいのだ。
だが、行政機関への通報には裏づけ証拠があり「信ずるに足る相当な理由」が不可欠。外部機関へは、「内部通報すると証拠隠滅や偽造の恐れがある」などの要件をクリアする必要がある。
 H氏のケースはどうか。まさに「怪しい」と思い、社内の手続きに沿って内部通報したのだ。だが、裁判では公益通報者と認定されなかった。H氏が不正競争防止法との関連を認識していなかったと見られたからである。
 法律に沿えば、不正を疑った社員はまず、内部に通報するしかない。H氏はその通りにしたわけだが、事態は訴訟にまで発展してしまった。
高まる法改正への機運
 運輸業界のヤミカルテルを告発し、勤務先と裁判で争ったK氏は「内部通報を密告として扱おうとする企業は多い。外部に通報しやすくする必要がある」と主張する。N弁護士は「法律ができたことで、逆に企業が巧妙になった側面もある」と語る。
 H氏は15日、K氏、さらに愛媛県警の巡査部長として同県警の裏金問題を告発したS氏とともに「公益通報者が守られる社会を!ネットワーク」を結成。法改正を訴えていく。
 2006年施行の公益通報者保護法は5年後をメドに見直す附則がある。そもそもの立法精神は、不正を告発する勇気を奮う個人の保護だったはず。公益通報を自浄作用を促す手段として、議論を深める必要がある。
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実は定義自体にかなり幅がある。ただし、この場合こういう整理をするのはいかがであろうか。
誰のための公益通報保護か・・・・・・・・・・これは、企業のための公益通報保護である。公益というのは何かというところから考えよう。
NPO法によると、

第2条 この法律において「特定非営利活動」とは、別表(省略)に掲げる活動に該当する活動であって、不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与することを目的とするものをいう。

「不特定かつ多数のものの利益」が公益の意味で、特定のものの利益や少数のための利益は公益とはみなされないのである。となると、誰のためのとなると、従業員少数のためというより、多数の従業員のためにあるというところが先立つ。(もっとも企業は従業員の集合体というのとは別に独自の存在価値・・・法人格を持つという解釈もある)
取引先から、機密情報を知る社員を引き抜こうとしていることは、不正競争防止法に触れると懸念するかというとこれは成功した場合(つまりこの場合はまだ成功していない)にはその「懸念がある」という解釈になる。というのは引き抜き自体は労働法規上、問題がないのであって、むしろ企業倫理上で法規外で判断される議論になるのである。
もっとも、コンプライアンスヘルプラインへの通報は従業員が行う行為としては、不当なものではない。個々で問題になるのは、コンプライアンスヘルプラインの独立性であって、まず先に、当人だけにその回答メールが返されるべきである。H氏の名前が分かる形で上司に同時送信されること自体が、コンプライアンスヘルプラインの意味をなくしている。つまり、これは担当者の事務的処置の問題のまずさは否定できないのではある。しかし、これはあまりにも基本的な問題をないがしろにしてはいるのだが、指揮系統が企業存立の前提という企業規範がある場合、そもそも「コンプライアンスヘルプライン」を設置することを、期待している企業体制を前提とすることができない企業があることを示す。
なお、コンプライアンスヘルプラインは、企業によっては社外弁護士があて先になっている場合もある。この場合、弁護士が秘密保持・保護行為を行うことが前提である。(もっとも企業が雇用しているのだから、社員に対して秘密を保護するとする意味がないという解釈は成り立たないわけではないのが苦しいところ)しかしその上に本項の指示系統の先端があるという可能性は否定できない。(つまり機密情報を知る社員を引き抜こうというのは、企業コンプライアンスを逸脱しても行わなければならない経営幹部方針による決定行為であるという場合)企業倫理として、会社幹部が社会に対して抗弁する立場にあるわけで、一社員がこれをいうこと自体、社員の守る倫理判断を逸脱しているということになる。
(続く)

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