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3次元CADによる委託設計、モデリング(1/2)

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インクスが倒産,自動車業界の受注減小で 2009/02/26 12:27 高野 敦=日経ものづくり
 インクス(本社東京)は,2009年2月25日に東京地方裁判所に民事再生法の適用を申請したことを明らかにした。主要な顧客先である自動車業界からの受注が急速に減小したためだという。今後は,コンサルティング事業を中心とした組織体制に刷新するとともに,経費削減などに取り組むことで再建を目指すという。
 同社はこれまで,モデリングや試作,金型製作といった業務を手掛けてきた。2007年12月期のグループ連結売上高は166億円,2007年12月末時点の従業員数は単体で400人,グループ全体で1300人である。
 帝国データバンクの大型倒産速報によれば,負債は2007年12月期末で約169億300万円だという。
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http://www.tdb.co.jp/tosan/syosai/2935.html
TDB企業コード:260511288:(株)インクス(資本金8715万円、千代田区丸の内1-5-1、登記面=神奈川県川崎市高津区坂戸3-2-1、代表山田眞次郎氏、従業員400名)は、2月25日に東京地裁へ民事再生法の適用を申請した。
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 当社は、1990年(平成2年)7月に設立された。3次元CADによる委託設計、モデリングなどを手がけていた。設立当初から光造形システム、3次元CAD・CAMの研究を始め、高い技術力は業界内外で評価されていた。96年からは、高速金型製作の研究を開始。98年には自社高速金型センターを設置し、金型製造受託を開始したことで業容を急速に拡大。近年では、センターを相次いで拡充して、携帯電話業界向けの3D金型製造部門の受注が伸長したほか、自動車業界向けの金型製作に関する「プロセス・テクノロジー」を用いたコンサルティングも伸長し、国内大手企業をはじめ、欧米を中心とした海外企業にも営業基盤を有し、2006年12月期には年収入高約111億3900万円を計上していた。
 その後も、一部事業を子会社へ譲渡したことで減収になったものの、2007年12月期の年収入高は約104億9300万円を維持していた。
 しかし、2008年12月期に入り、景況感の悪化が進んだことで受注環境が急速に悪化。大幅減収が予想されるなか、とりわけ、主力先であった大手自動車メーカーからの受注が著しく減少したことで、急速に資金繰りがひっ迫。機械設備の売却、従業員の転籍など事業の再構築を図っていたが、受注環境は改善せず、自力での再建を断念した。
 負債は、2007年12月期末で約169億300万円。
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1990年に設立し、試作金型製作市場に参入した。後発ならではの特徴がなければ勝算もなかろう。
もともと、成型型やプレス型はその機械や材料の整合性がなかれば型の整合性が取れないし、それは古参の技能者の暗黙知が支配するほどの課題である。職人としての力量が求められる金型製作の世界では、型の製造や、方案立案などを考えるということは熟練者と、型を作る側のノウハウである。けどこのように熟練者ばかりで業務を遂行するのはコストも掛かるし製造工程の短縮が出来ないと思い込むというのもあっただろう。
 「3次元CADで設計された製品データをそのまま取り込んで金型の設計・製作に利用すれば、熟練工の職人芸だった金型製作で大きな差異化ができると考えた」
つまりこの段階で、設備(ITソフトを含む)で人材をカバーするというビジネスモデルのかたちになる。固定費をかけて人材不足を充当する形である。そして、工程管理による事態を収拾したのも、ITだった。
金型作成の作業プロセスを細かく管理し指示をかけたという。このことで、開発スピードを飛躍的に向上させた。
図面管理のIT化で、圧倒的に短い製作期間だ。試作金型の一般的な製作期間は45日を45時間と、24分の1にまで短縮した。06年2月には、長野県に24時間無人で金型を生産する「零工場」を設立した。人間の手作業を極力少なくした工場である。
それを実現したのは、「ITの力」にほかならない。しかし問題は「ITの力」だけでは日本の製造業・購買する製造工場を動かせなかったと言うことである。これは企業が決して反社会的行為を働いているということではない。既存市場を改革することで発展したことが、採用する側の志向に対し相反するものがあり全面的に変革することができなかったということである。
確かにITを革新的に使用することで、与えられた仕事(受託する図面に従った加工)はきわめて早く行なうことができ、そのことに対してきわめて特化したビジネスモデルが構築されている。
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今回の民事再生法申請は、無人工場のための過剰投資と、本社・設計センターの高家賃が原因だとも言われている。無人工場については、時間制限がかかわらず(極端なことをいうと加工場所の人員削減と、加工のための時間短縮ノウハウを、ITの技術に全部背負わすことで現場確認をすることに時間をかけていた手法への決別)固定的に生産が保たれるならこれは一つの割り切ではある。この業界は景気が良くても儲からない、一方悪いからと言って全然儲からないわけではない、分かり辛い業界である。設備投資を続けても、それに見合った単価を設定出来るわけでもなく、設備費用と人材固定費が重くのしかかる。そこで人材固定費のうち、ルーチン的な問題が少ないことで熟練技術者をIT系のものに特化したといえる。
そういった意味で試作・設計・コンサルのエキスパートが「独立して」いたようだが、製造の技術者、そして型の浅瀬込みというかチュ-ニング・試運転(トライアウトとかいう)の専門家が多くなかったといえる。指示された形を忠実に実施するまでであって、それ以上の品質サービスは納入責任範囲を持たないということである。
但し、このことは金型を図面どおりのものを納入するということでよしとする業者(品質的な練り上げをそこまで必要としない場合と、出来上がった金型における製品を最適化する技術を社内に持っている場合がある)と、出来上がった金型における製品を最適化するチューニング技術までをまとめて受注する場合とがある。
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問題は、受注する営業側も、型設計工程の技術ではなく商慣習の個別仕様へのチューニングの必要性がわかっていたかというと、IT技術の転用という姿勢ならこのあたりの姿勢が見えるには、相当のノウハウが必要である。また発注側にも齟齬や「価格のたたきあい」があり、そのあたりの商慣習を考えないで取引した場合のトラブルは、日本の現状ではあるかもしれないし、取引の問題が出てくる。これが日本の金型企業の全体的な上流から下流まで通じた、技術を持つ強みでもあるが、企業経営の上では労働集約的なところを解消しようとしても、商慣習がそれを否定するという相反が見える。この商慣習を変えることは、政治の力でできるかというと、相当長い時間がかかるだろう。
安価という意味で海外の金型会社に発注していた業者も、商慣習の問題でそもそも金型に対する品質保証の概念がまったく違うことに最近は気がついたのであろう。本当にノウハウの配慮がない簡単な金型は海外発注を行なっているが、調整が必要なものが戻ってきているということであろう(但し価格が相変わらず海外メーカー価格でした押さえされているらしい)
危機に直面し倒産してしまう企業とそうでない企業の差はざっくりいうと「経営者が裸の王様になっているか否か」であるという意見を見つける。経営者が危機を脱する方法を模索する中で、他人の助言にどう耳を傾けられるかという。但し概して創業者にはコンセプトが強くあるからこそ起業し大きい企業になるという側面があるからこれは相反条件になっているといえる。
耳を傾けないトップのいる企業の従業員は「イエスマン」が多いという。耳を傾けないからイエスマンが優遇されそうでないものは排除されるからか,イエスマンばかりだからトップが耳を傾けなくなるのかはまたあるが、その状況の限り経営者はどんどん裸の王様になる。ます。従業員が危機意識を持って経営者に物を申し続ければ,何とか経営を変えることもできるとみえるが、創業者のコンセプトを否定することになるためここは賭けである。
ビジネスモデルがあってもつぶしにかかるパートナーが多い場合、金融機関との関係がドライだったり、また金融機関が引いていたという場合はこのような問題がある気もする。メーンバンクとの関係が緊密であったなら、事業自体は順調だったのだから、(これほどの受注減が襲わなければ)倒産にはならなかったのだともいえるが、故簿会社のビジネスモデルは金型の購買慣習を、海外並みにするとはいえども、金型を買う側も融資先だったりするわけでにとっては、問題が大きくなることを恐れたのかも。
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但し、違うことをいうと、コンセプトが立派で革新的、第三者に理解するのが難しいほど意外だからこそ、存在価値が企業として上がるが、それがまったく新しい分野ならともかく、他の企業の市場を崩すことを行なうことになると、みんなしてつぶしにかかるということで、これは人口が稠密な地域で産業を行なう以上食うか食われるかになるわけである。(アジアではこのパターンで企業が長く続かないことが多い。日本はその中で生き残った企業はすごく長生きするからそうは見えないが。欧州は、コンセプト不足での自滅のほうが多いのだがこれを継続的にすることに疲れてしまうなど。)
ところで、最近はこのように(部分としてはともかく)ある意味全体としては健全な志向をもつ企業が、パートナーの多さからつぶれてしまい、銀行が企業を支援する姿勢が極めて弱くなっていることから、意外とちゃんとしているところでも倒産ということが見られるようだ。そのため、DIP型会社更生という、破綻企業の経営陣が退陣せず、更生計画などに関与する会社更生手続きもできている。主要債権者の同意、現経営陣に不法行為等の違法な経営責任がない、スポンサーとなるべき者がいる場合はその了解がある、現経営陣の経営関与によって会社更生手続の適正な遂行が損なわれるような事情が認められない、といった要件が前提である。つまい業務に違法性がなく、風評などの圧力により社会的意義が有る企業(ここが極めて日本的な会社の存在意義なのだが)がある。
これは、会社更生法に基づく更生手続き(裁判所が財産保全命令を出し、管財人を任命し、旧経営者は経営の権限を失う)では事業の継続性が乏しいことで社会的な自滅がおきやすくなっていることから、経営陣の退陣が前提となる会社更生法より緊急避難的で法的拘束力(担保権の権利制限が弱い)が低いはずの民事再生法の適用が増加した現実を、見直したようだ。
もっとも、民事再生は事業停止ではなく、企業再生のための1つの手法だということは考えていい。
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元々創業者は、日米の時差を利用して、米側の質問に対して翌日に丁寧に回答、試作依頼には航空機を活用して3日で納品、というスピード対応で見事、受注に成功したという。当時の日本企業には時差を利用して製品を即時納入したり、技術開発を提案したりということで成功した企業は意外とある。
 3次元自動造形機を見つけ、3次元データをベースにして人手をかけずに立体模型を自動的に作ることを知り、革新の元になると考えた。そこで、3次元CAD(当時はまだ珍しい)による設計代行と、3次元光造形機の販売事業を起こしたが、3次元光造形機はは「職人の技術をバカにするのか」と憤然とされたという。仕方なく3年間NCデータの作成請負や、3次元CADの講習会の講師などをしていた。そのうちに3次元CADが生産設計に生かされる風習がおきた。
 そのうちこのシステムを利用して金型製作工程を単純化すると、金型製作時間を極端に短縮できると気がついた。機械的に決まる設計項目を3次元CADを使うことで専門家でなくても判断ができる。また、金型図面を描く作業もスピードアップできるうえに、熟練者が少ないならオペレータがたくさんいると早く済むという考えである。
このシステムを中小企業に普及させ、時間を短縮して生産性を向上するコンサルもはじめた。
但し、最初の納入した金型の完成度と、国内での需要家の完成度はかなり違う。日本国内の場合比較にならないほど金型単体だけでも要求精度や仕上がりの高度さが高いことが求められてしまうのである。
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この過程で非常に気になるのは、全員が創業者と同じスキル、つまり型の設計・市場を知っている人ではないことである。また知っていないからこそ労務費は安くできるという側面もある。金型製作工程を単純化するということは、そのトータルのシステムは知らなくてもいいという人が社員に多いのである。横断的コンサルもいるのだろうが、コンサルと実務の能力はきわめて異なる。さらに、このようなノウハウが見えてくると、これらは著作権があるとはいえない側面もあるため、既存のシステムに合わせた調整をしたことから始まって、自動車用の金型などの分野にもこの方式を応用し出す活動は他者の中でもあった。(この会社もしている)
つまり現場の調整をベースにされた場合どうしても、ITプログラムの構成から見ていると、出来上がった型の出来上がりまではしっかりできるのだが、実際のその型による製品まで保証する体制はよほどの洞察力がないとできないといえよう。最初が3次元自動造形機となると、機械の信頼性前提だとプログラムの品質ということに収斂されるからである。
なお、開発の過程では、熟練の金型職人に来てもらって、彼らの動作のすべてを精密に計測し、いわゆる「暗黙知」をコンピューターに置き換えていったという。じつはこれも問題があって、発注企業の挙動を考えると(意図を隠したところで)、暗黙知をわからなくするような挙動を熟練の金型職人はわざとするともいえるので、ここにも抵抗は高くある。(もしそのことでなくても、暗黙知の抽出は、雇用保障とプライドの保持がないと隠蔽されるということが前提である。技能伝承でもテキストが作れないのは普通で、そのために長い間現場で会得していたとも言えるのだから。)
この加工工程の関与を軽くする発想自体は、積層成型である3次元自動造形機が機械依存であることからの発想であろうし、まんざらずれてない側面もないわけではない。しかし、刃具の選定加工条件などは3次元自動造形機なら時間でカバーするものだが、切削加工の場合はそれだけでは制御できないともいえる。ここが逆に言うと創業者が多少軽く考えていた側面かもしれないし、この会社自体の「技術分野を類推で進める」ことに徹したからこそ、目立ってしまった弱さなのかもしれない。

またこのようにITにシフトして金型の製作工程の根本的変革をした企業は他にもいくつかあるのだが、商習慣と品質的な問題でなかなか成り立たないという事例を聞いている。ある会社ではアメリカではこの商売は廉価な金型ではそこそこ支持されたのだが、日系企業に対しては品質問題で廉価な金型でも問題がおき、またIT化の設計工程を現場のチューニングの技術者に理解できないところもあって、結果的には破綻したという事例もあるようだ。
(続く)

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コメント

こんにちは。
>暗黙知の抽出は、雇用保障とプライドの保持がないと隠蔽される
技能者心理を的確(?)に表現している一文だと思いました。「今日の名文」としてメモさせていただきました。

投稿: niwatadumi | 2009年11月 6日 (金曜日) 12時32分

>技能者心理を的確に表現している
ありがとうございます。というか、設計手法を抽出しパッケージ化し自動設計につなげるというしごとをしていたときに、「オレの仕事は企業に収益になるのだろう。しかし、将来の技術者や技能者のスキルを先に食い散らかしていないか」と、非常になやんだことがあります。結構血の叫びでもあります。

投稿: デハボ1000 | 2009年11月 6日 (金曜日) 21時13分

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