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利用ゼロ…

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<産総研>8754万円の電子申請システム 4年間使われず  9月2日12時38分配信 毎日新聞
 会計検査院は2日、独立行政法人「産業技術総合研究所」が、微生物の特許出願に関連する電子申請システムを導入したものの、4年間全く使われていなかったと発表した。同研究所はシステムの開発や保守に8754万円をかけていた。
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 検査院によると、微生物関連の特許出願者は、製品開発にカビや酵母などを利用している製薬会社や食品メーカーが多い。希少な微生物の場合、特許庁への出願とは別に、指定機関にサンプルを提出する「寄託」が必要で、同研究所が受け付けている。

 行政手続きのオンライン化を進める政府の「e-Japan重点計画2002」に基づき、同研究所は経済産業省の要請を受け、寄託業務の電子申請システムを開発。05年3月から運用を始めた。
 しかし電子申請には電子証明書の取得とカードリーダーの購入が必要で、サンプルそのものを提出する手間は同じだった。4年間に申請は約4万件あったが、電子システムによる申請は1件もなかった。【苅田伸宏】
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8千万円のシステム、利用ゼロ…検査院が指摘  (2009年9月2日15時53分 読売新聞)
 会計検査院は2日、独立行政法人「産業技術総合研究所」(産総研、本部・東京)が、水道メーターに使われる計量器などに関する電子申請システムについて、利用者が全くいないにもかかわらず、開発や保守費用に2008年度までの5年間で約8754万円を使っていたとして、産総研に対し改善を求めたと発表した。
 産総研では近く、このシステムを廃止する方針だ。
 発表によると、産総研はメーカーなどから申請を受けて、計量器が一定の基準を満たしているかどうかの試験などを行っており、2005年3月以降、インターネットでも申請を受けられるシステムを導入した。ところが、電子申請の場合でも、通常の書面提出による申請と同様に計量器を提出しなければいけないことなどから、電子申請の利用者は1人もおらず、今年3月までに行われた約4万件の申請はすべて書面によるものだった。
 システムの一部は経済産業省の交付金でまかなわれており、検査院は「手続きが電子申請になじむかどうかについての検討が不十分で、システムが未利用となっているのに、見直しが行われなかったのは不適切だ」と指摘している。
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おーい、どっちなんだいと頭を抱えました。けどこれは費用細目を検討するためにはどっちも間違いなんですね。

産総研では、先端的な研究開発だけを行なっているように思われがちですが、元々工業技術院ほか15箇所の研究施設による統合によるものという経緯から、公的業務にかかわる標準化事業などを行なっているのです。
つくばにあった旧の施設のうち
* 計量研究所
* 生命工学工業技術研究所
にかかわる、内容がどうもかかわっているのでしょうね。そしてこの関連の業務として、窓口として、 インターネットでも申請を受けられるシステムを構築したというのだろう。 そこで、

特定計量器等の型式承認等の申請手続
特許微生物の寄託等の手続及び情報公開の請求手続

という公的なもので国家が管理を行なうものを扱うために、電子申請システムを平成17年から運用を立ち上げたのだが、
各種申請手続きの合計申請件数10297件中オンラインによる申請件数は0件(平成20年度)
年間運用経費504万円(平成20年度)

電子申請には電子証明書の取得とカードリーダーの購入が必要ということが前提で、其のあとに通常の書面提出による申請と同様に計量器とか、サンプル(細菌酵母など)を提出しなければいけないということになる。
何で人気がないのかとなると、産総研はこういっている。
(1)ID・パスワード方式等の簡易な方法にしたら厳格な本人確認等が必要となる。
(2)申請に「物」の移動が伴うこと等の理由から、簡素化しても利用の促進は困難。
なお計量標準総合センター(旧、計量研究所)は、研究開発及び標準供給の実務を担当する「計測標準研究部門」と、外部へのサービス提供や管理業務等を行う「計量標準管理センター」により構成されている。
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現行のシステムや工程を変更せず、IT化を必要であるという場合、それは帳票管理にかかわる直接工数が自分の所だけ変わるだけで、その事務工数減少分が別のところにかかわってくるのである。従ってIT化すれば仕事が効率よくいくというのは、確かに「業務間のつなぎ」のところで「意思疎通が図られやすくなる」という内部的な問題は解決できるが、IT化の効果には遠く及ばないのである。
たとえば、特定計量器等の型式承認等の申請手続についてみるとすでに台帳主義の認証事務が構築されており、しかも従来同様の窓口業務が残存する前提から、その軸線を変えられないことがわかる。
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◇【新規承認】
・型式承認試験申請書(製造事業者 (MS-Word) ・外国製造事業者 (MS-Word) ・輸入事業者 (MS-Word))1部  
・構造図
・作動原理図 (特定計量器に作動部分がある場合に限る。)
・製造工程図
・構造、使用方法、使用条件及び製造方法を説明した書類
・次に掲げる機能があるものは、その構造図、作動原理図その他の説明図
 (その機器の定格、使用方法、使用上の注意点、性能を簡潔に記述したもの)
  (イ) 料金を表示する機能があるものについては、その計算方法、計算機構及び表示機構
  (ロ) 販売時点情報管理装置その他の電子計算機と接続して使用することができる特定計量器については、パルス数、定格電圧その他の接続条件、接続方法
・検定検査規則の構造検定の方法に定められた試験方法による試験結果(研究所が特に指定した場合に限る。)
・指定検定機関の型式の試験に合格した型式試験合格証があるときは、その合格証
(◇【軽微変更承認】  ◇【軽微変更届出】は省略)
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所が、実際にはこの申請内容を、別途送付した現物のメーターとつきあわせ、申請書類をその場所で書き換えることをすることがある。計量器はそもそも、その機構が完璧に同じものは存在しにくく(損失抵抗も材料一つで変わるし・・・・)従ってメールで書類を送っても、その修正(1)、(2)・・・・・ということになってしまうと、メーターを手持ちで(ないしはトラックに載せて)申請にいったほうが、問題点の抽出などを考えると時間の短縮が図れるということになってしまうのだ。
かといって、検定制度は国ごとに構築されていて、日本はそれを一番遵守している(良くも悪くも)ために2重3重の検定システムをとっていることになっている。(ちなみに海外で認められている計量機構をそのまま輸入した場合、単位系や計量標準との差異があったら、維持可能精度がゆるくさせられることはあっても、ものの輸入を差し止めることはあまりない(他の安全の要因とかも付帯条件をつけられたため、結果的に輸入を業者が自主的に辞めることはよくあるが)。しかし逆にこのような独自の構造で、日本国内で製造したものに海外の製品と同じ機構を入れた場合、製品ポリシーの考え方(たとえば過去に改造して不正を働いたとかいうトラブルの可能性まで確認する)まで査定することが多い。計算機構及び表示機構なんかはこのような細工をされやすい上に、金銭取引の直接的パラメータになる。また、「電子証明書の取得とカードリーダーの購入」というのは本人証明にかかわり(そー言えばe-TAXもこの手の行為が必要ですよね)また不正防止という前提がある。
となると、このような書面要求のラインを崩すと、日本人らしき計量基準からの遵守を前提にすること、すでにこれだけでも崩すことが、「認証機関が意図する、正しい、計量器の検定」を壊すという論旨になる。つまりIT化によって前提条件や段取りが崩れることで、業者も認証業務が煩雑になるし、研究所でも業務の目的である計量のトレーサビリティーの確保に疑いが出てくる。つまりどのみち得にならないという結論になったまったのだろう。

同じように「特許微生物の寄託等の手続及び情報公開の請求手続」となっても、物品(この場合微生物)を宅配便で送るとなると温度管理などを神経を使った送達を意識しなければならないし、書面の書き換えなどの面談行為が必要であるとなったら、これは成り立たない。そうなると専門の人間がハンドキャリーして申請に応じるほうが、業務全体では早くできるというのである。
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そうなると、IT化を行なう際には、その業務自体を本質的に組み替えられることをするトリガーを、システム設計の段階で求めるなら、これらは有効な投資に見合った機能を発揮したと思う。しかもあえて2つの業務システムを同じソフトで運用すると考えたこと自体は、一応効率を考えてはいるようだ。けど根源的な業務を、従来のスキームを維持することを前提にする段階で、すでにこの採用は破綻することになったと思う。
さらに従来の過去トラブルの関係で、融通を少しでも利かせた段階で錯誤を呼び込む経緯があって、それを管理するのは他の機構ではできない現実が有る上に、専門的過ぎて他に任すこともできないという判断があるなら、IT化を手数削減だけのものとしか考えていなかったわけで、「誰か止める人がいなかったのか」という嘆きが聞こえそうである。
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ただし、報道の問題も少しある。
年間運用経費504万円 4年間運用、2003年と2004年にシステム構築、全額8754万円という言い方だとする。

2003年度 開発経費3869万円
2004年度 開発経費3869万円
2005年度 運転経費504万円
2006年度 運転経費504万円
2007年度 運転経費504万円
2008年度 運転経費504万円

とざっくり振ってみる。
運転経費は人件費がはいっているとする。(たまに内部人件費をはずしていることも有る・・・・)一人の直接給与を350万円/年とすると各種保険料、福利厚生費を考えたら大体一人700万円/年ぐらいといえるらしいので(事務員の場合)大体この業務に0.5人工が充当され、コンピュータをつかうならば管理費がかかるとして、150万/年ぐらいというのはあるだろう。(ただしこのソフトを使わないなら、他の使用者に分担が増えるということになると考える)
では、ソフト開発であるが、大型電算機使用代を150万円/年とプログラム製作にかかわる雑費200万円/年と考えてプログラマ一人 700万円/年とすると5人が2年かかっている。でこれがどうかと考えるとプログラマーの管理者や営業担当の人件費(これは外部の業者に頼んだのなら、購入費用になる)、そして研究所側の管理業務者の給料として1人が充当したならこれ、そんなに無茶な費用ではない。
つまり、既存システムを変えない前提で、独自ITシステム(といいながら2部門兼用)だけを組み立てたとしたら、これそこまで暴利ではないのである。
この話に限ってであるが、行政手続きのオンライン化を進める政府の「e-Japan重点計画2002」に即しなければならないために、モデルケースとして業務の電子申請システムを開発させたという、ニーズで運用を始めたというならば、逆にここまで制約があるものしか、電子化を進めるべきものがなかったということであろう。職務とはいえ検査院は「手続きが電子申請になじむかどうかについての検討が不十分で、システムが未利用となっているのに、見直しが行われなかったのは不適切だ」と後出しジャンケンを決め込むのもいささかかわいそうである。とにかく、「既存ノウハウで帳票が確立しており、二ーズ創出自体が既存ノウハウの否定につながり、それを変革する思考を働かせる誘引さえ働かないのがこの認証業務である」ことを実証したということが、じつはこの開発と運用ででた結果ではなかったのかとも言える。
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このあたりの予算の考え方については、バカ査定といういいかたで言われる。たとえば1987年には、国会で
昭和の三大バカ査定、と言われるものがある。それは戦艦大和、伊勢湾干拓、青函トンネルだ。もし(民営化したJRで)整備新幹線計画を認めれば、これらの一つに数えられるだろう。

という主計官発言があった。もちろん整備新幹線が赤字体質から抜けられず政府の財政を悪化させるという考えで、計画を潰す目的でこの発言をしたというらしく、後々まで「無駄な政府支出」「国家の愚策」の比喩表現になった。是非はともかく思考的バックボーンがこの主計官になかったとは思わず、火の粉を浴びること覚悟で言ったともいえよう。
ところが、ではこの20年前の馬鹿とされたものは本当に絶対的な意味で無駄なものになったのか。もちろん整備新幹線自体の採算性は在来線の廃止・移管という形になりながら、自動車・高速自動車道の普及のための対抗として、スクラップアンドビルドとしてなりたつことになり、青函トンネルも整備損幹線よりも在来線貨物まで含めたものになり全部が全部有効になってはいないものの、想定の中で目一パイの活用はされていると思う。伊勢湾の干拓は農業振興ではなく倉庫などの工業用地の創出ということになったわけ。つまりこのバカ査定というものは目的外で成果を出してしまうわけで、無駄といえば官僚としては目的遂行の絶対的使命高で見る限り無駄だが、社会的には全然無駄とはいえない。戦艦大和も戦争という行為の是非はともかく、その後の造船技術にそれなりの影響を与えるなど、目的外には効果があったといえる。なにを効果と考えるかで、バカもバカでなくなるし、バカでなかったはずのものも運用で無駄に化ける。
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この程度のロスを考えることは、現在の財政を考えると無駄といえば無駄といえる。少なくとも至近に先が見えない状況で動く思考の人ならそうであろう。
だが、予測できにくい行為をした場合に「無駄です」と「お金を槍玉に挙げる」という行為は近視眼的に過ぎないか。じつは事項の解析に関してちゃんと事後解析がされたならば、これらの揶揄は非常にあさましい行為と思う。少なくともこれが6年半使われたことを評価せずに放り出すなら、そのほうがよっぽど無駄使いと思う。 失敗をする事は新たな知己を与える側面と、現実に合わせる姿勢を学ぶ場所でもあった、それをすることもできないのなら、失敗学というもののなかろうし、姑息に動かないしゃんとした人材も育たない。唯一の私の懸念、それは「 ソフトを入れることは同時に業務を底からひっくり返す革新業務と等価ということが高級官僚に通じるか」という憂いである。

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