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車両を補充する

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10月運行開始、湘南モノレールの新型車搬入 2009年8月22日(土)4時17分配信 読売新聞
 神奈川県鎌倉市常盤の湘南モノレール深沢車庫で21日、新型車両3両が運び込まれ、高架に取り付けられた。
 新車両が導入されるのは2年ぶり。飛行機のフライトレコーダーにあたる「自動運転記録装置」を初めて搭載した。
 1両約17トン。広島県三原市にある三菱重工の工場から、大型トレーラーで4日かけて運び込まれた。この日は午前8時半から約8時間かけて、1両ずつ大型クレーン2台でつり上げ、高架のモーター部と接続。車両屋上に人が乗っての珍しい作業に、熱心な鉄道ファンや近所の人たちが見守る中、無事作業が完了した。
 緑色のラインが目印で、10月から運行予定。
------------------------------終了
となっているのですがあ・・・・・よーく会社のHPをみてみると、

このたび湘南モノレールでは、車両を補充するため新たに製作した5000系車両(グリーンライン)を搬入し、最終の組み立て、試運転に取り掛ります。8月20日・21日両日の搬入に際しては、近隣の皆様のご理解とご協力に感謝申し上げますと共に、今後の試運転にあたっては沿線の皆様のご理解をお願い申し上げます。

となっています。
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ここは、以前から車両搬入などの事項に関して、騒音などの考慮など丁寧に情報をだすという良心的な行動が徹底されているのが有名で、その意味でも評価する向きも有る。(もちろん試運転を夜間に行なうためうるさいという苦情も考えられ、そこを了承くださいということもあろう)ただし報道の問題をいうと厳密には、湘南モノレール5000系電車は2004年に登場したもので、新車ではじつはないんですね。後述の事情でマイナーチェンジをしてることがあるから新車という側面はあるのでしょうが。

5000系車両はこの導入前に2編成あるのですが、2008年2月24日に西鎌倉駅付近で第2編成(帯色が青色でブルーラインという愛称)が故障し事故が発生しました。この事故はけが人などはなかったのだが関東運輸局から警告を受け、国土交通省運輸安全委員会の調査で原因究明を行ないました。本形式2編成はは運用を一時的に離脱したのだが、このため当面車両不足が生じ、混雑する路線だが一時的な間引き運転を余儀なくされた。第1編成(赤い帯が入っている)は同年7月10日に営業運転を再開したが、当該第2編成はそののちも運用から離脱した。となると、グリーンラインと言う名前で呼称をかえるのは有る意味理解できる事情ですね。
なお、これ以外の500系と言う従来から有る車両が落成してから(設計寿命の)20年を経過しているため、順次5000系に置き換えられて廃車される予定もあるとはいえます。5000系ちゃんと立ち上げないと、いつまでも500系に頼れないという考慮もあるのでしょう。
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さて、この事故の「鉄道事故調査報告書」(http://jtsb.assistmicro.co.jp/jtsb/railway/report/RA09-6-1.pdf)が公表されています。
これによると、(要約)


本事故は、VVVFインバータがノイズの影響で運転士のマスコン操作を認識しなくなったことにより異常な力行動作が発生し、ブレーキによる減速が不十分になったために発生したものと推定される。
原因として、編成中に2台あるVVVFインバータのうちの1台が、誤動作で力行継続状態となり、ブレーキを使用しても必要な減速度が得られず、また、運転士が本件列車の異常に気付きながら運転を継続したため、減速不十分で西鎌倉駅に進入し、出発信号機を行き過ぎ、進路の開通していない分岐器に衝突し、対向列車の進路を支障し、施設に物損が生じた。
1台のVVVFインバータの誤動作は、本件編成中の特定の車両のVVVFインバータが、低圧車体接地線等のノイズ対策が不十分であったことから低圧回路の-極側に重畳したノイズの影響を受けやすい状態となっていたこと、未使用のモニタ伝送回路に適切なノイズ対策がなされていなかったこと、及び加減速を制御するプログラムに不備があったため、ウォッチドッグタイマによる保護動作が働かなかったことが重なったことによるものと考えられる。

とあることから運転手の操作の異常認識はあっても処置判断に、後から見れば問題があったとは言えるところが記載されています。(問題がないようにいうと、事故原因の想定が現場では容易にはできない挙動であったから、判断のぶれ自体は、今後の管理指導の中で生かされると言う内容である。また担当者が回復を試みたときの挙動は、危険回避策としては問題視されない、高次のレベルである)
もう一つは、VVVFインバータの誤動作でして、たまたま、この問題を想起させる現象と再現が車庫での検証途中であったことからわかったことでもあるようです。何らかの理由により不正割り込みが発生し、加減速シーケンス処理が実行されなくなることは、微小でもないことではないです。今回はごみなどで接点がショートしたなどによる異常な力行指令ではなく、VVVFインバータがノイズの影響により運転士のマスコン操作を認識しなくなったことによるものと言う判断がされたのです。ソフトウェアの処理異常というのが有る場合、普通の車両故障とはことなり「目で見える故障認識」が極めて難しい。 ブレーキを作動させても、モーターに動力がかかったままだと、簡単にとまらないと言うことです。
そこで意見書がでてます。少し整理すると・・・・
<人的問題への考察>
(A)VVVFインバータ搭載車等、加減速制御にソフトウェアを使用する鉄道車両がほとんどである現在、運転士が異常に気付くのが遅れる可能性がある。列車の異常な力行やブレーキ力低下の場合直ちに列車を停止させることを再徹底。
(B)ソフトウェアの処理異常で不正な力行が発生した場合においてもブレーキ力を確保するために、ソフトウェアの処理異常が発生した場合に確実に主回路を遮断できる方法を周知すべき。
<設計技術的問題>
(C)鉄道事業者、車両メーカー、電気機器メーカーは、鉄道車両のノイズによる誤動作で、VVVFインバータ等パワーエレクトロニクス機器や電子機器等に関する誤動作等情報を共有し、故障防止のノウハウの蓄積をすべき。(いわゆる電磁両立性(EMC)問題)
(D)列車の加減速を制御する装置、ブレーキ制御装置、保安装置等の運転保安上重要な装置の制御をソフトウェアでおこなう場合、処理異常の際の設計配慮をさらに求める。
<運用技術的問題>
(E)ソフトウェアが制御にかかわる機構では処理異常や電子部品の一時的な不具合による故障が発生した場合、リセット扱い等により不具合の痕跡を残さずに容易に復帰することが多い。現象が再現しないと故障原因の究明が困難になる。加減速シーケンスがソフトウェアで処理される車両は、運転士の操作と対応する車両の挙動を別個の機器で記録する機能を持たせるべき。

とある。
元々、この製造メーカーと運営業者には極めて高い資本関係があり、またモノレールに限っては技術の伸長が業者独自で発達した経緯もあり、その採用したシステムで製造メーカーが決まるため、製造メーカーと運営業者の資本関係は公営交通ないしは近いもの以外には避けられないところも有る。(ただし、このタイプはメーカーによるライセンスが開放されていない。)問題挙動の情報を共有する情報収集は行ないやすい側面もあることを示す。そのために(C)の提言がある。
「EMC」問題は、これまでも鉄道から外へのノイズ放射や、車両が信号設備に与える妨害等について検討が進められてきた。ところが最近の鉄道車両では、インバータ等の電磁ノイズが発生しやすいパワーエレクトロニクス機器と、伝送回路等の電磁ノイズの影響を受けやすい電子機器の採用がともに増加する上に、配置設計上すでに混在するしかない現状もある。詳しい人に聞くと電車の電装やシールド検討では「ノイズの巣」とまでいうぐらいで、機器のENC検討は個々の機器で行なっていても、関係する要因、パラメータが多すぎて分析が人力では困難であるらしく、旧来のもぐらたたき式の検討になってしまうらしい。つまり、パワーエレクトロニクス機器や電子機器が使用されている最近の車両の配線等は、必然的にこのような機器が多用される前の設計思想の延長になってしまうことも考慮する必要がある。
また事故解析のことまで考えると(E)もそれにあたり、これが、5000系第3編成に対しては、
飛行機のフライトレコーダーにあたる「自動運転記録装置」を初めて搭載した

につながっていると言うことだろう。(確かに製造メーカーは航空機の製造も行なっている)自動車のタコメータークラスなのかは不明だが、この書き方はそれよりは高度なものと言う認識である。なお、「列車の運転状況を記録する装置」は、平成18年に改正された「鉄道に関する技術上の基準を定める省令」により設置が義務づけられたが、すでにある全国の電車にはすぐ対応ができない運用上の事情(経過措置)により、平成20年6月30日までに完成した車両には、最初に行う改造の工事が完成するまでの間は、いままでの例によることができるとされた。今回の検証には、駅の監視カメラ映像や連動装置の記録があるというのは補助的にせよ、対策検討の大きな材料になったようだ。
(D)に関しては事故発生後、5000系第1編成に制御プログラムに、非常ブレーキが投入された場合に主回路遮断処理を追加し、加減速制御プログラムの処理も変更し確実にしたという(逆に事故を起こした5000系第2編成は抜本対策をしないと復帰できないということになる)
(A)(B)に対しては、運転取扱いに係る再発防止対策 として、指導とともに電車運転士作業基準を改訂した。
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これを聞いてそうかと思っているところがあります。
近年製造される電車はほとんどが、ソフトウェアが制御にかかわる機構になります。というか、省エネで性能も優れている最新型の車両は大方どこかでソフトウェアが制御にかかわるのですが、VVVFインバータ搭載車は加減速制御にソフトウェアを使用するのと其のソフトの運用適合性が、性能の是非を左右することになるので、そちらの最適化は行なわれているのです。
ただし、五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)をフルに活用して運転を行なうスタッフ(・・・味覚は運転士自体の体調管理以外は関係ないかもね・・・)にとっても、判断がつかない内容が増えてくるわけだな。(嗅覚は、ブレーキの焼けるにおいなどがかかわる)また、触覚も、表在感覚(触覚、痛覚、温度覚)、深部覚(圧覚、位置覚、振動覚など)、皮質性感覚(二点識別覚、立体識別能力など)などあるし、内臓感覚、平衡感覚などが存在する(太字が運転にかかわると考えるもの)のですが、この場合何らかの挙動(異常動作とまではいわない)のうち、簡単には理解できないものを、五感に置き換えて提示するということになるのですかね。すなわち視覚(ディスプレイ表示)、聴覚(ブザー音)、触覚・痛覚(スイッチやレバーが押せないなどのロック機構)などであります。
JR東に例をとると、209系・E217系には当初から「MON8ソフト」と呼ばれる故障などを編成全体で管理するモニター装置が搭載されているのが目新しかったです。だが、その後のE231などはさらに思想を深めて、ほぼすべての機器の制御(冗長化を安全確保のうえで行なうものははずしている)を、高速データ通信技術を用いて列車の動力制御、室内設備、保守点検などを1つのシステムとして統合・管理する情報管理システム(TIMS)を用いています。(ちなみに、JR東と三菱電機が共同で開発したもののため、技術のルーツからすれば湘南モノレールでも利用しやすい側面がある)機器の自己診断機能や動作履歴の記録機能など点検作業の自動化・迅速化など点検・保守作業の簡略化であるが、当然非常にビジュアルでわかり易いディスプレーを用い情報支援を乗務員に行なっていることを忘れてはなりません。すなわち管理の細密化と制御の深度化により旧来の運転ノウハウで必要だった五感が有効に使われにくくなった「ソフト化」が必須である以上、そこをつなぐ支援機能が求められたという側面が、このような通信バスを用いた機能と言うことを求めたと言う視点は必要でしょう。
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ついぞ、湘南モノレールは江ノ島への観光と言う人が関東では多く見られるものの、それ以外の地域の人には江ノ島は江ノ電・小田急となるのは仕方がないでしょう。JR東日本が「鎌倉・江ノ島フリーきっぷ」を江の島線をフリー区間に内包しているものの、観光ガイドなどの書籍で取り上げられることは意外とないんですね。人を江ノ島に連れて行くときこれをいずれかの経路に使うと、趣味人でない人には喜ばれることがあります。その挙句には、最急勾配を74‰、最小曲率半径を本線100m、駅構内50mとかなり急峻な線路にし、加速度元減速度も高い(起動加速度:4.0km/h/s、最高速度:75km/h 減速度:4.0km/h/s(常用最大)/4.5km/h/s(非常))から、そっちで面白いというひともいましたな。                 
事実、利用者の動向も当初は観光需要が3割、通勤・通学需要が7割であったものが、現在では利用者の9割が通勤・通学需要だそうで、高級住宅地と工場・研究施設の通勤という側面が無視できないようです。観光都市ながら堅実な都市型生活路線として定着し、都市開発のキーになるなどいいことも多いようですね(これは江ノ電も似ていますが)。となると、上述の『8月20日・21日両日の搬入に際しては、近隣の皆様のご理解とご協力に感謝申し上げますと共に、今後の試運転にあたっては沿線の皆様のご理解をお願い申し上げます。』というのは地域密着型の鉄道の一つの健全な立ち居地なのでしょう。

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コメント

こんばんは。湘南モノレールは時々利用します。観光シーズンは江ノ電は大変な混雑になって乗れないことも多いのですが、湘南モノレールはそんなこともなくスピードも速くて便利なのに、観光で使う利用者は確かにあまりいませんね。
なお、湘南深沢-西鎌倉間は本当は山の上を通る予定だったのが、山の上の高級住宅地の住民が反対した結果、現在のトンネルが出来たと聞いています。

投稿: kunihiko_ouchi | 2009年9月 3日 (木曜日) 00時55分

>本当は山の上を通る予定だった
懸垂式はトンネルはあんまり得意ではないが、といって越せない勾配ではないです。
線路脇の道路は、元京浜急行自動車専用道路(そのむかしは日本自動車道㈱)は山林を高級別荘地として分譲することで資本回収をはかり、専用道路のバスで交通確保を図ったビジネスモデルを実行した経緯があります。
また、湘南モノレール社自体も団地開発事業を沿線以外でおこなってることもありますので、この考慮はするでしょうねえ。

投稿: デハボ1000 | 2009年9月 3日 (木曜日) 01時39分

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