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北京で何をみてきたんだ(2/2)

(承前)
連節バスの話になると、日本は弱い。牽引車と被牽引車の間の行き来は出来ない形としてあった。トレーラーバスも、火事などの不幸な事故もあり、結果的には普及せず、世界でもごくわずか残る(例外的に現在日野-東京特殊車体のバスが東京都にある)程度。日本では創生期はいすゞBXツイン・バス(1950年)のようにボンネットバスをベースに試作したものもあるが普及はしなかった。その後1985年のつくば科学万博会場への交通アクセス手段として、ボルボ製(ボディは富士重工業製、日本的にいえばボルボ-富士重)の連節バスが100両導入された。しかしこれも日本の国情に合わないと判断されたらしく、ほとんどは海外に売却、一部が東京空港交通がエアポートリムジンに使ったもののこれまた道路交通法の特例運用の制限下では渋滞迂回ができないことが災いし運用離脱。成田空港内ランプバスとして使用された3台は旭川電気軌道に移籍し、2004年まで冬期に学生輸送の路線バス(極寒期の学生輸送は自転車からの転移がおおいからという)として使われた。19年というのは長い。(ほかに保存車あり)
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なお、この後継の車は1998年に京成電鉄の新都心幕張線に導入された10両以降は売れなかった。(当該路線は展示会や野球などの波動輸送が顕著であり、計画都市で道幅があることは認証に有利だったといえよう)そのうちに富士重工はバスボディーから撤退してしまう。さらにこのバスは当時の国内の技術的見解から、前のほうにエンジンを持つ構造なのだが、エンジンルームを車体中央床下(センターアンダー・ミッドシップ)においたため、最近の傾向であるノンステップ構造にすることができないという都合もあったようだ。

2005年3月に神奈川中央交通がネオプラン製セントロライナー(エンジンはMAN製 MAN-NEOPLANというか)神奈川県の湘南台駅 - 慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスで急行運行開始。同社はメルセデス・ベンツ・シターロ(エンジン:ベンツ-車体:EvoBusグループ)を2008年、厚木バスセンター - 厚木アクスト(産業団地で日産自動車の事務所なぞもある)間で営業運行をしている。これについては車体幅2.55mの路線バスの特認(日本は標準では2.5m以下)と、非常口の廃止(窓ガラスを割るハンマーを装備するので最近に認可)、で特認となりなんと認証に2年を要したという。またこの2つは走行用エンジンを後部車両へ搭載し、第三軸を駆動しているため、低床車であるものの軸重が日本の保安基準で定められている10tを超過するということから認証を要する。この2つは海外からの完全輸入である。製品的に品質がどうこうということはないはずだが、日本での路線バスに用いる海外製バスは、(冷房の能力不足はよくあるのだがそれ以上に)過日のJR高速バスの炎上とか、大阪市営バスでの故障続出など問題が多いようで、なかなか日本事情に対しては触らぬ神に・・・という論調もあるようだが。
なお、最近イギリスの中古車(メルセデス・ベンツ・トゥーロ)を導入した観光バス会社があり、これも幅は2.55m
で特認を得ている。
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つまり、このような長大型のバスは基本的に都市部の集中的輸送とか、鉄道代行などの輸送でニーズはあるのだが国土交通省運輸局の特例措置を受け使用路線を回送経路まで指定されて運行される。(たとえば、上の空港バスの迂回経路の問題や、慶應義塾大学線の車庫入庫経路が車庫への導入路の関係でかなり遠い営業所の配置になっているなど)道路の狭さなどがあって導入の障壁が高すぎるのである。しかも車体価格が非常に高いことも障壁になっている。その意味では恒久的な1段ステップ、ノンステップ車を恒久的に入れることができればそれなりの環境も得られるし、場所によってはいつもバスだけで渋滞を起こしている地域などや、祭事輸送がある地域ではそれなりにニーズがあるのだろうと考える。現実に後述する日本の2社のバスは、試験的に新潟・金沢で運用実験を試みており、一時期使ったうえ老朽廃車した旭川を含めコストが合えば使いたい地域は、独自設計ということができないが潜在的にニーズはある程度と考える。またがいしてこれらの町は公共輸送の復権で町の再開発を意識しているようである。
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現在の世界の都市内バスは、コストアップの問題もあるのだが本当に体の不自由な人たちにも開放された環境として低床化が推進されている。もちろんだから車内に段差を設置しなければとなると乗客の安全という意味ではどうかという意見を持つ会社もあり、これは相反条件でもある。日本ではそれ以前にバス会社の収支のほうが悪くそんなことは言ってられないため新車が買えないバス会社も多い。
連節バスのエンジンの配置は、先頭車両の床下にミッドシップエンジンとして置き(いわゆるセンターアンダー)後部車両を牽引するものと、最後部車両にリアエンジンとして置き中間・先頭車両を推進するものがある。従来は、安定性などの面から先頭車両にエンジンを配置するものが多かったが、車両のノンステップ化の推進により、現在は最後部車両に置くもの(プッシャー方式)が、多勢である。このプッシャー方式は床を低くするには最適であるが、座屈を考えると、制御をしっかりしないとクキっと接続部で折れてしまう(壊れるということではないが操作ができなくなる)という側面がある。
所が私が北京で驚いたのは、先頭車両のフロントにエンジンを配置したキャブオーバーというタイプのバス(前にフロントグリルが着いているからわかる)で低床化(ワンステップ)を達成している車が結構あることだった。実態は運転手の脇にエンジン、トランスミッションをおいている。ただし世界的にはトラック用フレームをベースとしたキャブオーバー車が結構多数生産され、日本製エンジンも多く搭載されているとはいうのだが、その技術でワンステップ化が行われているとは思わなかった。現在は日本国内では、ラダーフレームを用いるマイクロバスでキャブオーバー型が主流となるが、そのほかは、採血車、レントゲン車、放送中継車、馬匹運送車など特殊用途以外はなさそうである。
キャブオーバータイプはエンジンの位置やドライブトレーンはボンネット型そのままに、車体形状のみを見直し、室内空間を拡大したもので、車体全長あたりの有効床面積はやや拡大する。しかし、カバーに覆われ客室に入ってくるエンジンは、騒音や油臭、温度の上昇などの問題、大型車でのエンジンは床上に大きく張り出すため、居住性、快適性では不利であった。また、重量配分の関係から、車体に対し前車軸がのることからフロントオーバーハングが短く、構造上、前扉(トップドア)とすることが難しい。これは現代の日本のバスでは運転上かなり必要な条件である。イタリアではエンジンを運転席の下にオフセットして配置し、前扉とした例がある。また、イギリスのAECルートマスターは左側には客室が無く、ボンネットが露出している。日本でもマイクロバスベースで作った路線バス仕様にはこの設計を達成したものがある。(いすゞ・ジャーニーQ 1986-1995)しかしこれは小型のバスの場合であって、エンジンの大きさが大きいものでは、設計拘束になる。
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北京市内といえども周辺部の田舎(市内から高速自動車道で2時間)というところで、街中にパイナップルの屋台が並んでる周辺地域でも、バスは頻繁に走っている。市内からの直通バスは、均一区間外であるからか新品に近い低床のバスでもなぜか、運転手の真横にはドアがなく(車掌さんが乗っている)むしろ、何がなくきた地域運用のバスを横から見ると「うわーキャブオーバーだ」というトップドアのバスがいたりする。けどこのタイプは、2段ステップの車が多いようである。(たとえばこれ
そういうことで楽しんでいたのだが、そのうち同じような設計の車に連接バスがあって、車内はエンジンの寸法取り合いでトップドアにできないのが結構あることに気がついた。その代わり最新の連接バスはキャブオーバーワンステップである。(たとえばこれ
最もこのクラスでは導入メリットは少ない。本当に輸送量を確保するためにはメリットのある車両が必要である。となると、街中に走っているこのクラスがいいとも思う。
もちろんこのままでの運用は、ドアの配置を含め日本には無理な側面が多い。ワンマン機器はどーするのか(旧市内のバスにはセルフサービスと書いた日本風のワンマンバスも結構あるから、ぜんぜんなじめないとはいえない)とかのソフト面の課題は多いのだが、実はこの回避策はワンマン機器の配置を最近の鉄道にけるワンマンの扱いに用いる機器を使うことによって、もし日本に持ってきてもいくらかの回避策ができると考えている。
その上、このような大型連節バスの中にはCNGバス、LNGバスも結構ある。(これは、中国にはさいきんまでガソリンエンジンのバスがあり、こちらからオットーサイクルの形でそのまま天然ガスバスに作り変えられた側面もある。日本の場合、先に大型ガソリンエンジンを燃料引火・事故による安全面から駆逐した経緯もあり、ディーゼルエンジン・・つまりディーゼルサイクルかサバテサイクルのエンジンからの改造になるほうが実用性がある)
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なお、日本で今まで入れた、後部車両にエンジンを搭載するプッシャー方式は北京でも最新型の車に多く入っており、ノンステップであるのだが、これらは基本的にはネオプラン製セントロライナーの中国での現地生産品に近いため、神奈川中央交通のいれた二種類と認可の条件などはほとんど変わらないのではと考えている。
海外のバスの輸入は国内にそれなりの技術をもつ企業がないとなりたたないというのは事実で、認証の手法になれた会社を選定するのがいいようである。
エンジンと車体を一緒にセッティングする日本的な手法としては、
大宇バス(商社として、ウィラー・アライアンス(旅行・観光業の企業を傘下に持つ。ツアーバスの子会社があるが販路はそこだけではない)、サンデン交通・・・下関のバス会社地域的に韓国に縁があったらしい)
日産ディーゼル・フィリピン・・解散済(当然日産ディーゼルの資本が入っているが、富士重工業も関係)
というものがある。そのほかのパターンとしては
ネオプラン:(エンジンはMAN・メルセデス・ベンツ製・日本向けには日産ディーゼル製をつかったこともある)商社として大阪の日本ネオプラン(観光バス会社「中央観光」の子会社)があり個々で整備を行っている。
バンホール:(ここはエンジンはメルセデス・ベンツ・マン)商社としては三井物産・華陽自動車興業(岐阜バスの子会社)生地という形で内装なしで輸入し、華陽自動車興業や名鉄整備が内装を担当。今もこの業務をしているのかは不明。
ドレグメーラー(伊藤忠商事・東京いすゞ自動車が輸入元 ベンツの傘下にあったが今はボルボ系列)というのもある。
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とかく、日本人が中国に行くと文化的な問題でこいつら民度が低いな、知的所有権の認識がとか憂う人がいる。もちろんその側面が非常に多いのは事実である。だからこそ、ジャッキー・チェンさんのように、文化活動の自由に関する外国人記者の質問に「あまりに自由があり過ぎると今の香港や台湾のようにとても混乱してしまう。やはり中国人は管理されるべきだ」と発言して香港や台湾で猛反発が起きるような視点もあるのだろう。(もっともこの考えは孫文もいっている。民主制を絶対視せず、中国民衆の民度は当時低いと評価し民主制は時期尚早で、軍政、訓政、憲政の三段階論を唱えていたことから考えても、彼らにはずーっとある問題と考えていたほうがいいとも思う) ただし、国の文化の成り立ちが異なるように、その思考形態にある齟齬を逃すと、各国の技術をある意味柔軟すぎるほど柔軟に、かつすばやくわがままに取り入れるという中には、日本では達成することのできないものが転がっているという側面も否定してはならない。
このバスの場合ソフトの面では現段階では会わないものも多いが、それなりにICカードシステムなど日本の技術などを利用技術で追従しようとしているものもある。実は日本が学ぶことは多く、むしろ一歩引いて、日本では成り立たなかった技術を独自に、活用しているところを見出すということも必要と考えている。しかもトロリーバスなどの運用手法には、架線のないところでの積極的運用など経済性にとんだ手法をとって、その技術を燃料電池バスの技術に彼らなりのレベルと彼らの市場認識でカスタマイズしているのは理解すべきである。そのなかで日本の技術の固有内容(保守体制・電子化)などの合致点を見出していくのが、本当は環境ビジネスなどに関する視点としてお互いに考えなければならないものではなかろうか。
また、他国に比べると海外の企業はエンジンを買ってきて、完成車の製造会社がそのブランドでうることが普通である。所が日本はあくまでコーチビルダーはノックダウン先であって、製品ブランドや販路はエンジン製造メーカーが持つ形になる。(最近は崩れているが)これは政府の製造物責任の考え方としてはある意味成り立っているがいまはそれが足かせになってはいるかもしれぬ。
とはいえ、日本のエンジンを中国で入手できないというわけではない。広東省広州市にはエンジンなどを生産する(バスはないようだが)広汽日野自動車有限会社という会社がエンジンを作っているし、東風日產柴汽車(東風日産ディーゼル)もある。要は可能性に事欠かないということか。

さていったい私は北京で何をみてきたんだという突っ込みはなしの方向で。
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注1:千葉市では連節バス車両の更新事業として、
概  要:現行の連節バスを廃止し、ヨーロッパで最も厳しい排出ガス基準を満たしたノンステップ連節バスを現在よりも多くの台数導入し、環境負荷の軽減及び輸送力の強化を図ります。
実施主体:京成バス(株)(平成21年度~平成23年度)
という表記がある。この写真を見る限り輸入車を考えている。市の予算という以上世界最先端の環境対策という側面はまぬがれなかろうが。ここ以外の対策を考えたい。
注2:トランスジャカルタのバスに日野製の連節バスがあるという情報あり。日野さんは試作した実績もあるからありえなくはないが、写真を見ると床が思い切り高くドアも高い位置にある。うーむ・

(PS)4/30に北京国家体育場(鸟巢・Bird's Nest)に連れて行ったもらった。私にとっては「中国の建設技術に旨く合致させた建築物」といういみで評価できると考えている。そして、競技場の中では音響セットを一生懸命組んでいた(5/1にジャッキー・チェンのコンサートがあったのだという)。5/1には当地は祝日(メーデー)であるので、地方からの上京の人も多く、私たちも何回も道を中国語で聞かれこまった。しかもこの日は某麻生氏も北京にきており、おかげで交通は麻痺に近かった。そうなんですよね。五輪があるから、Bird's Nestができ、市内が整備され、バスもCNGバスなど環境にいいものがガソリンバスを駆逐し都市環境の改善を促したんだからね。

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