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富士山鉄道

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富士山鉄道構想 麓から5合目まで 2009.1.3 18:54  環境・エコ 産経新聞
 山梨県側の富士山の麓(ふもと)から5合目まで、登山者や観光客を電気鉄道で輸送する一大構想が持ち上がっている。自然界への影響を懸念する声も聞かれるが、構想を打ち出した富士五湖観光連盟(山梨県)は「電気鉄道による悪影響は少ない」と自信をみせ、「首都圏から乗り換えなしの5合目直行便」の実現にも夢を膨らませている。(牧井正昭)
 「なぜ富士山に鉄道がなかったのか。その方が不思議です」。同連盟の堀内光一郎会長は首をひねる。
 富士山5合目には、麓から有料道路「富士スバルライン」か林道を利用してマイカーやバスで行くか、麓から歩いて登る方法しかない。さらに、冬季は降雪で通行止めとなり、富士山の実質観光シーズンは4月から11月ごろまでだ。
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 鉄道構想は昨年11月、観光連盟の正副会長会議で打ち出された。麓の有料道路ゲート付近に始発駅を設け、有料道路上に単線の線路を敷く。5合目ロータリーまでとすると全線約30キロ、平均勾配5%。観光客が散策できるように途中に4駅を設置する。
 車両は電気動力で200人乗り車両を4両連結し、1便で800人程度を運ぶ。建設費は概算で600億円から800億円程度を見込んでいる。
堀内会長は「スイスでは100年も前から登山電車が走っている。マイカーと違い電気鉄道なら公害はなく、通年営業も可能。既存の有料道路を軌道に利用すれば新たな森林伐採が少なく、自然環境への負荷は減る」と有益性を強調する。
 富士山では山梨、静岡両県とも夏季の最盛期、渋滞した車の排ガスが動植物に悪影響を与えるため、マイカー乗り入れを2週間前後規制している。平成20年夏には富士登山の人気が高まり、両県合わせて夏山2カ月間だけで30万人以上が入山。ごみや屎尿問題が再浮上し、登山者の入山規制の議論も起きた。鉄道が実現すれば、乗車定員があることから入山者を制限する効果も期待できるという。
 昨年11月には県議8人が「富士山の新交通システム等議員検討会」を結成。武川勉代表は「雪に影響されない交通手段で、年間を通して観光客に富士山へ来てもらえれば地元経済の下支えになる」と歓迎する。さらに、一部からは「東京方面から5合目までの直行便を設けたら利便性が高まる」との意見もある。
 これに対し、懸念する声もある。地元富士吉田市の堀内茂市長は「富士山では雪崩が発生し、安全面での問題がある。冬季に観光客が入ることで自然界のバランスが崩れるのではないか」と話す。富士山では過去、5合目と山頂をトンネルケーブルカーで結ぶ計画や麓と5合目にケーブルカーを開設する案が検討されたが、いずれも自然環境保護から見送られた。
 しかし、堀内会長は「電気鉄道は自然環境への影響は少ない」と言い切り、「富士登山鉄道建設協議会」を設置して具体的計画を打ち出す考えだ。
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富士山の利用については、静岡県側は自然・文化の保護を重視している。きれいな水を用いることで、富士市・富士宮市では機械工業・繊維工業・製紙工業の発達があったし、三島市も沼津市もこの水を用いた産業が必ずかかわっている。もちろん観光の面も無視できないのは事実あろうが、どちらかというと観光依存の割合が少ないからこそ保護政策にシフトできる側面もあろう。
反対に、山梨県側は産業という面では山岳のため物産の移動にハイコストがかかるということが問題なため、人を連れてくることになりがちで、そのための産業に伝統的に観光開発を重視しており、山頂所有権問題、山小屋トイレ問題、マイカー規制問題、世界遺産登録問題等、思惑の相違が多いのである。
富士五湖観光連盟会長の堀内光一郎さんは堀内 光雄(自由民主党衆議院議員。富士急行株式会社会長)氏の息子さんで現在の富士急行株式会社社長である。御存じのとおり、富士急行は鉄道・バスの運輸事業を創始とする企業だが、現在、売り上げに占める鉄道事業の割合は5%程度で、自動車事業を合わせても2割程度。沿線の豊富な観光資源を背景にした遊園地、ゴルフ場等の観光事業の割合が約7割を占めている。だからか、富士急行は系列会社で静岡県の富士市・富士宮市・沼津市・三島市・御殿場市にバスでの事業を展開してるし、沼津市には富士急百貨店もあるのだが、あくまで山梨側の態度に終始しているようだ。
富士急行は「富士スバルライン」に運用する「富士登山バス」にかなり高いインフラ整備費用と技術開発コストまで負担した上で、CNG低公害バスを導入している。今回の鉄道に係る河口湖から富士山五合目までの「富士スバルライン」は、大型バスの排気ガスで環境破壊が問題となっていた。マイカー規制で通過台数を少なくしたことで環境対策をおこなったのだが、とはいえ、乗り換えさせたバスが黒煙をもくもく上げているのでは、全く説得力がない(乗用車よりはいいのだが、視覚的問題もある)
このため、低公害バスの導入は急務だった。しかし、低公害バスは、その特徴と引き換えに性能がある程度ダウンしているのが一般的である、平坦な都市部の走行ならいざ知らず、富士登山バスの場合は山梨県側で最大8%、静岡県側では9.6%という急な上り坂が延々続き、軽油燃料による低公害バス(つまりハイブリッド系の起動補助型)ではエネルギーの意味でも環境には寄与しない上に、登坂性能に問題があると考えたようだ。(類似の用途である、上高地での松電バスでは燃料供給を前提にしたため逆の選定をしている)富士山周りのバス営業所・地域会社(更に都内・・・子会社の運営)ではCNGバスが継続的に低公害バスが導入され、充填所まで自主設置をしている。
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たしかに電気運転にすれば、今より更に環境に対し有効なものになろう。コスト面がカバーされればであるが。しかし冬季に運転することで、管理コストの問題以前に、そもそも交通の安全が維持できるのかとおもう。そして、当該道路を事実上廃止し、その跡地に登山鉄道を設置ということにするならば、途中の一部にはかなり急なカーブがあって、鉄道にするには(勾配をアプト式にするとかして回避したとしても)付け替え工事が必要なのではと地図を見ただけでわかってしまう。なお、5%というのは確かに通常の鉄道では上限に入るが、問題なのは平均勾配5%というのはまた違っていて、最大がどれぐらいなのかのほうが問題なのである。
となると、私は以下のような考えを明示しておく。

1:もともとオールシーズンの富士山観光自体はニーズがないとはいえないが、極寒時期の登山者をどさどさ入れ込むには環境と安全の意味でコンセンサスを得られないであろう。
2:鉄道敷設には技術的な問題が結構あり、そのまま道路あとに線路を引くことはむずかしく、線形改良を伴うが、この工事自体が環境を荒らす可能性がある。また緊急輸送などを考えると道路をすべてはがすのも現実的には問題がある。
3:本質的な環境改良に鉄道(電車)を使うのは他からエネルギーを持ってくるのだから、有効な手法である。(内燃機関依存ではCNG自体も究極の選択であるが、くだり(エンジンブレーキで廃熱を生成してブレーキをかける)まで考えると本質的な解決にはなりにくい)但し、片勾配であるから、山からの下りはエネルギーをなんらか発生する行為になる。大型トロリーバスで登坂し、下りを回生ブレーキにすることで省エネを狙うというのが答えの一つになる。

と私は考えている。30キロ単線の線路に車両は電気動力で200人乗り車両(じつはこれ相当大きい電車になる。20m車で150人程度であるから、すでにこの仮説はおかしい)を4両連結し、1便で800人程度を運ぶ。
南海高野線橋本-極楽橋間(20キロ 最大5%勾配で35~40分ぐらいかかる、輸送量は最大で1便600人ぐらいで時間4本最大である)から、この鉄道では最大60分掛かると考える。ちなみに現在のバスは大体50~55分の所要、本数は40~60分毎である。
こうなると一足飛びに鉄道というのは本当に採算を考慮した手法かというと疑わしい気もする。
1便で800人ということは大型連接トロリーバスなら8台分になると考えるが、現在の輸送量から考えてもちょっと入れ込みを多めに見すぎな気もする。(その意味でトロリーバスという選択は傾聴には値するが・・・)
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たしかに経済の発展と環境の維持の中には、技術というバインダーが無い限りはまったく相反する条件である。そのなかで確かにCNGバスを入れるなど一定の評価される行動を富士吉田側もしているのは評価しないものではないと考える。しかし、この計画を見る限り、力任せという視点がぼろぼろ出てくるのはいかがであろうか。

なお、まだ、もめていることであるようだが。
http://www.sannichi.co.jp/local/news/2009/05/16/12.html

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コメント

富士山に鉄道を敷く構想は、富士山辺りを地下鉄みたいにすれば積雪に悩まされることもないし、複線電化・大型車輌も可能だと思います。
何より駅のホームを地下に入れることにより景観を守れるし、有料道路を潰さなくても良いと思います。

投稿: 名無氏之助 | 2010年5月20日 (木曜日) 22時25分

>富士山辺りを地下鉄みたいにすれば
まあ恒常的に環境を悪くしないのは確かなのですが、地下鉄は浅くても深くても土質のきわめて悪い富士山ではかなり厄介な作業を伴うと思いますね。少なくとも大量のミルクセメントで流動化防止を図る必要があります(火山だとこういう例は多い)が、これは土を固めて地下水を遮断することで、この水資源としての意味合いもある富士山では周辺環境を変化する可能性がかなり大きいし、予測が極めて難しい。つまり建設作業によって環境悪化と地下水枯渇がかなり派手に起こりうるのですね。
もちろんコストの問題はありますが、そこは考えないとしてもです。(実はこれが地下鉄の場合一番問題)例外としてスイス等にある山岳ケーブルカーという手法がありますが、これこそ日本での人件費計算では輸送力が取れないため、維持経費自体が観光振興という目的からはあわず悩ましい選択肢にはなるのではと考えます。

投稿: デハボ1000 | 2010年5月22日 (土曜日) 01時22分

弾性枕木直結軌道やスラブ軌道という工法もありますから、富士山鉄道は高架駅とかも視野に入れた構想もありだと思います。

投稿: 名無氏之助 | 2010年5月22日 (土曜日) 07時41分

まあそこはあるかもしれません。もちろん可能性を全否定することはないんですがね。
どっちにせよ、「弾性枕木直結軌道やスラブ軌道という工法」は軌道設置の技術としては有用ですが。さてこの場合収支が得られるのだろうがを議論する必要があります。
今回は、「麓の有料道路ゲート付近に始発駅を設け、有料道路上に単線の線路を敷く。」という前提で多分試算をはじいてる前提で考えています。多分高級な軌道設置を考えるとかなり変わるのでは。

投稿: デハボ1000 | 2010年5月22日 (土曜日) 18時35分

TC型省力化軌道という方式もあった(http://ja.wikipedia.org/wiki/TC%E5%9E%8B%E7%9C%81%E5%8A%9B%E5%8C%96%E8%BB%8C%E9%81%93)ので、付け加えときます。
積雪で東海道新幹線が悩まされるのは周知の通りで、鉄道にこだわり過ぎるといろいろ困ると思います。ただ、今の道路をトロリーバス専用にしても良いと思います。
それでも鉄道にこだわるなら、御殿場線と身延線を繋いで営業したほうが首都圏からの直通電車も可能性があります。

投稿: 名無氏之助 | 2010年5月22日 (土曜日) 21時43分

>今の道路をトロリーバス専用にしても良い
むしろその方がいいと思います。この路線計画に関しては、トロリーバスは傾聴に値するいい手法ではないかと。
>鉄道にこだわるなら、御殿場線と身延線を繋いで営業したほうが首都圏からの直通電車も可能性があります。
たしかにJR東海だし。そうならないのが、「富士五湖観光連盟会長の堀内光一郎さんはの富士急行株式会社社長」だからですね。

投稿: デハボ1000 | 2010年5月22日 (土曜日) 23時40分

富士急行が主体となるなら、富士吉田駅を地下駅化して、富士山五合目方面JR御殿場駅に抜けるルートと河口湖駅からJR身延線に抜けるルートを新設すれば面白いと思います。

投稿: 名無氏之助 | 2010年5月23日 (日曜日) 09時39分

後者はともかく前者は御殿場馬車鉄道+都留馬車鉄道というのがありましたが・・・
1世紀前の話はともかく、妙味はあるとは思いますね。問題は費用と、現行事業の廃止にかかわる費用ですが。富士急行にとって鉄道事業がどこまで経営上重いかというところですね。

投稿: デハボ1000 | 2010年5月23日 (日曜日) 10時39分

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