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職業倫理上の認識(2/2)

(承前)
今はそれほどでもないが、私は水あたりがはげしく、日常的に下痢止めを使う時期があった。
そのため、常備薬として正露丸を買い込んでいたが、身近な人に「正露丸にも成分のばらつきがあるから、安価なもののよりそこそこのものを選んだほうがいい」というものがおり、よく見るとメーカー別に成分比率が違うんですねえ。
というわけで、http://dehabo1000.cocolog-nifty.com/holder/2009/01/post-7e58.html#moreなんかを見ると大衆薬としてはそれなりと定着を東アジアでは得ている。ところがこれは欧州の薬理概念では怖いと思われるらしく、海外で正露丸はひどいところでは副作用の強い危険な薬で、疑似科学とまで言う意見もある。(もっともこのスタンスは中医学自体を否定するからでもあることも多い)

ところで以下私は正露丸の話をしますが、ここでは薬理的な結論をもとめることはしません。視点によって現象の判断や事実認証まで変わってしまうこと。つまり事実認定いう客観的と思われる行為自体がを主観的な視点からしか議論できない以上限界があるという職業倫理上の認識を考えたいのです。ご自身の健康問題に関しては、専門の医療機関に相談してください。

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<意見A:>
お店で働く薬剤師さんのBLOGです。
---------------引用
http://news.otc-japan.net/?eid=864794
● 正露丸の新事実
「正露丸って、おなかの善玉菌も殺しちゃうから、飲まない方が良いの?」
お目めぱっちりの同僚さんに聞かれました。彼女は、登録販売者(旧法なら薬種商が近い。調薬等は出来ないが第二種・第三種医薬品の販売取り扱いができる。ある意味専門家ではある)です。(中略)
一時期、石炭のクレオソートと、木のクレオソートは、混同されて、一部の学者に「正露丸は発ガン性がある」「正露丸があるから日本人に胃癌が多い」とまで言われたそうよ。
そして、2000年には、アメリカの国家毒性プログラムに「日局クレオソート」が、発がん物質として載ってしまったの。
つまり、石炭クレオソートのほうだと勘違いされたのね。
それをアメリカの環境保護庁が引用した。つまり、正露丸の主成分「日局クレオソート」は、アメリカの公的な機関から「発がん性」があるとしてお墨つきをもらってしまったの。
それを日本の週刊誌がとりあげて、センセーショナルに報じたの。
汚名につぐ汚名で、正露丸はボロボロよね。
私は、すごくフシギに思うわけ。
記事にする前に、正露丸のメーカーに確認してみればすむ話じゃないの?
そしたら、誤解はとけたんじゃないかと思うのよね。
そんなこともあって、日局クレオソートという名前は、誤解されないように「日局木クレオソート(にっきょく・もくくれおそーと)」に変わったの。
---------------中断
日局木クレオソート自体も登録販売者の研修内容では、消毒という認識のようです。この話は外でも出ていますが、実は、日局クレオソートを防腐剤として石炭クレオソートに使う人もいたのでますます誤解されることになったのでしょう。また中国で売られた正露丸に石炭クレオソートを使うものがあって販売禁止になったことも影響してるかも知れません。
ただし、企業倫理においては「記事にする前に、正露丸のメーカーに確認してみればすむ話」ということは成り立たない議論なのですね。話を聞いたとて、その査定監督義務を果たす以上アメリカの公的な機関は自主性をもってだめと判断するのが仕事です。業者が経済的な事由で隠蔽することを前提にしているからこそ存在意義があるとの認識があります。西洋医学的判断でクレオソートのような混合物をトータルに成分として認証する概念が薄いんでしょうね。(漢方薬剤で陳皮を私たちは知っていますが、かれらはその成分の分析結果の混合物という認識があるのではないでしょうか)
---------------再開
さて、殺菌剤として知られている正露丸の主成分「木クレオソート」なんだけど、食あたりや水あたりなどのとき、悪玉菌だけでなく善玉菌も殺してしまうから、飲まない方が良いのか。それについて、調べてみました。
■ 正露丸は、悪玉菌だけでなく善玉菌も殺してしまうから、かえってお腹に悪いのか?について
そもそも悪玉菌ってなんだろう?ヒトに下痢や腹痛などの病気を起こす菌、病原菌ということで良いかしら?
腸には、乳酸菌に代表される善玉菌が住んでいます。この場合、大腸菌はどっちに分類したら良いのかな?
O-157とかじゃなくて、ふだんから住んでいるほうの大腸菌は、善悪なしの常在菌っていう分類でいいかしらね。
最近の正露丸の説明書(2007年3月づけの正露丸の服薬指導書)によれば、なんと、木クレオソートの作用は、「殺菌」ではないのですって。大幸薬品の長年の研究でわかってきたのです。殺菌作用はあるけど、すごく弱いのですって。(中略)
■ 正露丸の木クレオソートの主作用は、殺菌ではなかった!
木クレオソートは、殺菌剤としてよりも、下痢ピーやおなかのグルグルを止める作用の方が、おもな作用だったのです。
だから正露丸の主成分・木クレオソートのおもな作用は、次の2つ。
1)腸の中に水分が出すぎないようにする作用 (消化管内の過剰な水分分泌を抑制する作用)
2)腸のグルグルッ!とぜん動しすぎを抑える作用 (消化管の過剰な運動を正常化する作用)
下痢そのものを止める作用っていうことよね。じゃあ、本には、殺菌剤と書いてあるのはどうしてなの?
それは、以前は、殺菌作用が主作用だと思われていたからだそうです。なるほど、知らなかったわ。
つまり正露丸には、抗生剤ほどの強い殺菌作用はないということです。(耐性ができた抗生剤くらいの力ですって)
だから善玉菌のことまで心配しなくて良さそう。それでも心配なら、乳酸菌や酪酸菌でも飲んでおけば?
-----------------------後略
要するに、正露丸は(さっくりいうと)殺菌剤である。歴史的に効果が判らなかったが、現在は、主成分・木クレオソートの主作用は、下痢のときに腸の中に出すぎた水分や、腸の過剰な動きを抑えることと解している。
色々な混乱の結果、日本薬局方では、石炭クレオソート(枕木の殺菌用)に間違われないように「クレオソート」から「木クレオソート」に名称変更するとともに、「殺菌剤」という説明を、
「外用殺菌剤」→ 虫歯につめた場合、
「内服止瀉剤(ししゃざい)」→ 飲む下痢止め
と改訂した。正露丸は、弱い殺菌力がある、効果の高い下痢止めとみなされる。
というのが一般的な判断のようである。

<意見B:>複数の医師のHPを参考にしました。
-------------概要
クレオソートには、高濃度で細胞内のタンパク質を変性させる作用があるためフェノール系化合物の局所刺激作用により細胞を広範囲に傷害し、潰瘍が作られる可能性があるらしい。フェノール、クレゾールは、毒性と刺激性のため、人体に対してつかわなくなった経緯もある。WHOの国際がん研究機関の分類で,フェノールは発がん性は否定できない物質群に属すると結論がある。クレオソートの毒性が強く、安全域がせまく動物実験データから正露丸のヒトでの中毒量を推定すると、常用量の2~4倍以内となるという報告があり、中毒量と常用量に(薬理上では)大差がないと考える。
この方向から考えると、非常に危険な薬であるという解釈になる。
これは注意しなければならないのではあるが、正露丸は自然のものから作られているので安全と言う考え方は現代の薬学的視点では否定される項目である。大正時代は世界的に(とくにドイツ薬学)はこの視点で行われていたが、いまは経験的視点が蓄積されている物以外は否定されている。(ただしこのような視点の幅のばらつきが、日本では今後臨床実績のない薬を育てられないため海外に開発施設が異動するという、障壁との認識もあるんです)タバコは植物の葉が原料だからけむりに含まれるニコチンやタールも安全とはいえないとか、トリカブトは修治(熱処理)しないと殺人事件に使うほど毒だということから、ごく大まかなガイドラインぐらいしか意味がないのがわかる。
 植物性クレオソートの成分は液体クロマトグラフィーでの分析では、22の成分が含まれるらしい。含まれるグアヤコール、クレゾール、フェノール(=石炭酸)は劇薬でもある。グアヤコールは、セイロガンを9粒服用すると、0.21gの摂取となり、この量は致死量の10分の1になり正露丸の連用は危険というのがある。たしかに正露丸の連用は以前から問題視されていたし、お年寄りによって保健薬として使う人もいたが最近はやめてという指摘がされている。皮膚や粘膜への刺激性の他に、フェノールには皮膚や粘膜への刺激性の他に発ガン性が証明されている。成分の一つであるエチルグアヤコールに腹痛を止める作用があるというのも事実のようだ。
明治時代に思いつきで開発された(これはもともと脚気の薬として用いた経緯もある。腹痛の卓効が見出せたそう考えられる側面もある)医薬品の製造・販売をまだ続けていていいのかという意見もある。もちろん製造メーカー側でも毒性試験結果を公開しているが、それを見てもその判断手法に対してさえそもそも正露丸を否定するひとには、その実証解析の論旨を否定することはある。(ここは詳細省略)原子力に問題を掲げる人が、安全とみなされる証明に対して全項目を否定する活動をするのとあまりかわらない。
---------------終了
まあ、何でも適量を超えれば薬は毒になる物だ。作用があれ相反作用があるのは世のつねであり、相反条件と技術倫理では解する。率の問題とリスクマネージメントの認識の問題。
正露丸の使用上の注意を読めば分かることは多い。もちろん説明書の専門家(その専門のライターがいるのだ)からみるると不自然な表現があるという指摘もあるんだが。使用上の注意に書かれていることは実際にあり、間接もしくは直接的に作用することがなんらの形で証明できた物と考えていい。また服用した正露丸のメーカーごとに成分の差がかなりあることもある上に、服用した各自の環境をさいげんできるかというと疑問。薬や健康食品の体験談というものが非常に使いにくい側面があるのはここである。当人の責任負担能力とリテラシーに依存してしまうのだ。
とはいえ、直接メーカーに質問したことがいいともいえないという判断が得られる場合もある。つまり重要なことはちゃんとした資料や専門の信憑性を確立できる第三者の機関や場所から聞くのが大事だ。
ただしだれが中立な位置かということが・・・・・そもそもそういいものが、ないということは覚悟しておいたほうがいい。
さて、正露丸が好ましくないという意見がある以上、代替する薬を服用するのも現実的な考え方であろう。
たとえば、こういう提案がある。
----------------引用
1)腹痛なら──腹痛を和らげる成分として臭化ブチルスコポラミンがあります。これを含んだ大衆薬にはストマオフ糖衣錠、ナルコリンカプセル、ブスコパンA錠があります。
塩酸パパベリンも保険薬でも使われている成分で、これを含んだ大衆薬には、エジオン胃腸鎮痛鎮痙薬、ニッスイロータミン、ファイトップ、リンデルカプセルがあります。
 他に成分として「ロートエキス」を含む大衆薬も腹痛に有効なはずです。薬局で「胃腸鎮痛鎮痙薬」でそのような成分を含んだものを下さいと言えば探してくれるはずです。
----------------中断
なるほどこれはひとつの考えかたですね。
ただし、私、急な腹痛で日中まで待って専門医にかかったところ医者からブスコパンを処方された事がありますが、これとて、「胃の神経系統を遮断するだけだから、この専門医は今回のあなたの病状を解析できなかったのか」という見方をする専門家もおる。これはあと、臭化ブチルスコポラミンの連続投与はもっと問題になったときに胃痛を感じない可能性があるから、持っているのはいいが、一二度飲んだら医者に行く薬だ。そもそも、それを専門医でもらってくるとは・・・という私に対する意見もあったが。
またロートエキス自体も生薬で、分析上なにが効くのかという解析が十分かというと問題なんだそうな。
要するに相反条件を医療行為内でどう見出すか。これは感覚依存であるから、ここまで意見が拮抗する中身でないはずなのに人の命にもかかわるからではあるのだが。
ところが、もっと医療というのは生きる中でどのよう位置付けなのかを考えることになってしまうのです。
--------------------再開
 2)下痢には──大腸の運動が亢進した状態は腹痛を引き起こします。従って腹痛を和らげると、下痢は軽くなります。しかし下痢は有害な大腸内容物を排出する役割もあるのですから、腹痛を和らげる薬を過剰に服用し続けるのはよくありません。下痢で怖いのは脱水が悪化することです。脱水を予防することは下痢の場合には腹痛を和らげる以上に重要なことです。脱水の症状とは、のどが乾く、おしっこが濃い色になる、あるいは出なくなる、目や口の中が乾燥するなどです。これは命にかかわることなので、医療機関を受診して、点滴をしてもらうことが必要です。脱水を予防するには、塩分を多少含んだ飲み物、例えば、味噌汁、おつゆ、あるいはスポ-ツドリンクなどを少量ずつ、頻回に飲むことです。そして尿が出ていればまず脱水は防げていると考えていていいでしょう。
--------------------終了
そら、何でも適量を超えれば薬は毒になる物だ。そこの大原則はある。けどこの内容は現実に日常業務と突然の下痢ということで間を取り持たなければならない現実の社会環境に関して、どう考えればいいのか。上記の意見は薬を飲むという状態のシチュレーションを無視しているという解釈をしてしまうわけで、意見が正しい以前に医療が社会の中にあり、リスクを犯してもおさえこむという緊急医療の側面の考慮をほしい意見である。しかし、事故を起こせば指導した責任も医師らにはあるという実利的損害もある。じつは正露丸を危険という人の意見は、下痢に関しては、下痢を押さえ込むことができるという発想が危険という論理になってるのがある意味社会生活と医療の間の軸受けに中庸がなく振り切れる両端の間で振れるようで怖いのである。
--------------------
信頼される投薬・医療を行うようにつとめているのは事実。しかし「正露丸」のように身近な薬でもこれだけの意見の相違がある。工学でもよくあるこの現実と認識の乖離。悩みは尽きないのである。

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