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+-×÷で変わる(2/3)

――――――――――――――引用
http://www.japandesign.ne.jp/HTM/REPORT/d_zemi/11/10.html
● デザインのダイナミズム・「組み替え」  財団法人日本産業デザイン振興会 青木史郎氏

デザイン愛好家的ジャーナリストが書いた記事や書籍には、デザイナーが自らの苦しみの中から全てを創造していく様が、ドラマチックに描かれている。素人受けする話ではあろうが、そこには創造性についての甚だしい誤解(過度の期待)が見られるようだ。
デザインに限らないと思うが、無から有を生じさせるような創造に出会えることはまず無い。
ただし、「その手があったか」と感激できる場面にはしばしば遭遇する。全く新しいとは言えないものの、要素を組み替えて新しい意味や用途を切り開いて見せたという場合である。デザイナーに期待されているのは、「如何に要素を組み替えられるか」という創造性である。
デザイナーは、こうした「組み替え」に備えて発想を鍛えていく。「拡大・縮小」も、既成の概念を越えていこうとする発想方法の一つだが、デザイナーはその初期的段階で、「地口(言い換えによる駄洒落)」遊びをしてみることがある。(中略)創造性を語るうえで「術語的同一性」という難しい概念も見逃せない。簡単な例で言えば、「私は処女である」「聖母マリアは処女である」「よって私は、聖母マリアである」という論法である。狂人の発想と蔑むのはたやすいが、ある発見が行われたことは事実であり、またこの様な発想をすることによって打開できる局面もあろう。ことによったらデザイナーは、こうした発想が得意なのかもしれない。(中略)
―――――――――――――――中断
じつはTRIZと上記発想が近いという話。
もともと特許分析からきていることから、特許文面の構成と親和性がいいのも特徴である。ある権利化された特許を使って考えてみよう。
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(1)特開2000-64955

【特許請求の範囲】【請求項1】
『流体を吸入して流体吐出流路から吐出するポンプと、該流体吐出流路からの流体を主液体と気体富化液体とに分離して前記主液体を液体吐出流路に吐出する気液分離装置とを備えたポンプ装置』
において、
『前記流体吐出流路及び前記液体吐出流路のうち少なくとも一方の流路と大気開放部とを連通する連通部を設け、(かつ)該連通部を可撓性を有する板で閉止することを特徴とする』ポンプ装置。
【請求項2】(略)。

既存のポンプに、気液分離装置(空気抜きである)を設置したポンプ(既存品)に対し、通路を設け(+)、そこをたわむ板で仕切る(-)ことで、ポンプの出口で起こる脈動を防止して、測定誤差を少なくした・・・・・という内容である。この場合でも書誌的な法律論になるのは特許のフォーマットからいくと
【特許請求の範囲】【請求項】
だけで、書誌的というより技術の実証である後段は
【発明の詳細な説明】
【0001】【発明の属する技術分野】
【0002】【従来の技術】
【0004】【発明が解決しようとする課題】
【0006】【課題を解決するための手段】
【0007】【発明の実施の形態】
【0024】【実施例】
【0041】【発明の効果】
という形に整理されるから、じつは特許に書き方を考えるとこの加除式の考え方で組み合わせを変えていくということが一番便利である。そう考えてみると、設計や研究の現場での他にない着想というものの大方は、多くいえば改善や改良の非常に高度なことであるが、大きく考えれば既存の機械要素に他の想定してもいないような機構を組みあわせたら、普通の人が考えられないような問題点解決の手法になったとか、逆に一体化して作られているものをばらしたら、意外と精度がいいものができるなどのメリットもでるわけだ。それでも、5%いいものができればしめたもので、大概は効果が高くないとか、他者がすでにやっているとか(特許なら公知事例があるという)いうことになるのが普通である。
ほかの例を挙げようか。
(2)エアあやや
松浦亜弥のコンサートライブの音声(複数のDVDから編集して作っている場合が多い)を用いるネタ。歌だけでなく、MCの口パク、息づかいも合わせているところにはるな愛の芸の新しさがある。
元々は、スナックのママであるはるな愛自身が披露していたもの。当時は歌も歌っていたが、ショーパブやスナックでの付き合い酒などの無理がたたり、高い声が出なくなったために仕方なく無声へとシフトした。
「Yeah! めっちゃホリディ」の途中の「ずばっと」のフレーズで、がに股で腕を横に引くアクションをとり、最後に服の上から乳首をこするアクションは、はるな独自のもの。ほかの振りも松浦亜弥そのままでなく、はるな風にアレンジされている。
また、マンネリ化を防ぐ為披露する場で若干の変化が見られる。ライブイベントではかなり前からやっていたエア松田聖子やエアホイットニー・ヒューストン、自分のお店でやっていた藤本美貴のエア芸(エアミキティ)もある。

既存の芸人さんからそれまででも時々松浦亜弥の物まねはされていたし、松浦亜弥のMC自体も(年齢を考えるとこなれているからで、かくて松浦さんは年齢詐称疑惑まで出た)きわめてオリジナルなものであるからこそ着目された。それに対してはるな愛はこういう風に変化させた。これを上の文章では「はるな愛の芸の新しさ」という表現にしていることを注意したい。
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【01】 分けよ :男女を逆に(爆) 歌と物まねを分ける
【02】 離せ :歌と物まねを分ける
【03】 一部を変えよ :少しアレンジしている(がに股で腕を横に引く、服の上から乳首をこする)
【04】 バランスを崩させよ :(男女を逆に(爆))
【05】 2つを併せよ :(踊りと物まねを合わせた側面)あてぶりを物まねとあわせた
【06】 ほかにも使えるようにせよ :エア松田聖子・エアホイットニー・ヒューストン・エアミキティ
【09】 反動を先につけよ :あるいみニューハーフというのは反動である
【11】 重要なところに保護を施せ :(松浦亜弥じきじきに許可をもらっている)
【15】 環境に合わせて変えられるようにせよ :(披露する場で若干の変化)
【18】 振動を加えよ :踊りを激しくする(爆)
【19】 繰り返しを取り入れよ :Yeah! めっちゃホリディ・服の上から乳首をこするアクションは定番
【20】 よい状況を続けさせよ :固定収入源と自分のステージ(スナック)を持っている
【21】 短時間で終えよ :長いねたもするが基本的には瞬間芸
【25】 自ら行うように仕向けよ :結婚式にこのねたででて有名になった
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まあ冗談半分であるが、革新性の中にはこのような類似性の合算が潜んでいる。もうひとつ、
(3)爪楊枝
爪楊枝は、一般に長さ10cm未満程度の木の棒で、先端がある程度尖らせてある。歯の間に詰まった食べかすを取る道具としてよく用いられるが、食品に添えて口に運ぶための食器として用いられたり、あるいはばらけ易い料理を一まとめにする際にも使われる。日本では先端の反対側に装飾が施されている物が多い。
この装飾はこけしをモチーフにしている説もあるが、この部分を折り取って箸置きのようにして使う考案はコメディアン・落語家・漫才作家の柳家金語楼の手になる。金語楼はこれを実用新案登録し相応の副収入を得た。

これも、一例を挙げると、
【02】 離せ :切り離す
【03】 一部を変えよ :先端部のきりこみ
【04】 バランスを崩させよ :加工としてはある意味加工が面倒
【06】 ほかにも使えるようにせよ :はし置き・飾り・滑り止め
【07】 内部に入り込ませよ :中に配置
【10】 予測し仕掛けておけ :置き場所に困る
・・・・・・・・・・・etc・・・ですねえ。
同じことを意識しないで経験的にやっているのは、熟練技術者が仕事の中で特段意識せずにされているものである。たとえば「やとい」やいわゆる「ジグ」は、経験と実績に裏付けられたものだと感心することが多い。しかし、かれらはこの習慣を常日頃からしていて、それ自体を創造性がある行為とは思っていなかったことに考えをはせるべきであろう。
松下幸之助の発言のなかに
* 「他所(よそ)さんの品もんのええ所を徹底的に研究して、何か1つか2つ、足せばええんや。」
というのがあり、確かに二番手商法、「マネシタ」電器と揶揄された所以である。基本設計技術を先行他社からかなり高く買い込んですばやく自社で咀嚼してしまうところも感じたことがある。ただしこれを、他所の品のええ所を徹底的に研究して、1つか2つ足す。またよくないこところを1つ2つ引くとなればこれは確かにひとつの見識ではある。これもそのひとつか。

ところが・・・・・理論だけですべて解決できないのが人間に未知の可能性を残すところ。
---------------------再開
世の中にはパターンでは表現できないものが1%存在する
 筆者はTRIZの専門家から詳しいことを教えてもらう機会が幾度かあった。TRIZを作った人々が分析した特許は非常に膨大であったが、その99%が40のパターンで表現できたと言われている。
 逆に考えると「世の中にはパターンでは表現できないものが1%存在する」とも言え、人の知性のロマンチックな可能性をTRIZ創設者らが示唆しているように思えてならない。真偽は定かではないが、筆者は少なくともこう考えている。目の前の100の課題に対して、この40個のパターンを使えばほとんど(99%)、何かしらの解決コンセプトが発案できる。解ける問題は効率的にどんどん発案し、人間の知恵を絞るしかないこと(1%)にぜいたくに時間を使いたいものだ。
-------------------終了
これについて、注意しなければならないのは特許書面で書くときにパターンでは表現できないものはフォーマットに乗らないため有効な特許書面自体が成り立たないから1%しか見出せないのだということである。実は「実験例を多数示し、その集成結果を整理する形の特許書面」というのが工業化学分野・農業分野などである(そういう書式の特許も実はある)ため、この形の一部だけがパターン表現ができなくなるのである。したがって成立した特許書面では1%ぐらいがのらないというのは、割と有意性がある(追加調査もあったようだ)が出願・着想までさかのぼると5%以上はあると考える。とにかくTRIZの思考支援とは、利用者に問題解決のステップを明示すること、および利用者の早合点・思いこみの排除をシステマチックに行うツールである。したがって思いつきの中でも特に優秀なものは補足できないのである。第三者に理解できないほと突飛な発明は特許化できない可能性がある。
特許に限らないところがTRIZにはあって、技術系のみならず企画系には用いられる側面だし経営系に用いる手法もある(確立がされているわけではない)。TRIZ は思考を支援するツールで、支援のための縦断的検索機構を備えたロジカル問題解決思考ツール・ないしは知識データベースを検索エンジンであるという解釈をちゃんと行えばこのことはわかる。しかし、それが既存のノウハウに定義できないもの(そこが上述の1%)には、どうしようも無いのである。

確かに工業的視点のように基本的に科学というものと、それに伴う拡張があるもの、または理論的蓄積がなされているものなら類推からの視点が高いだろう。芸術のなかでも革新性を求め、過去からの連続性を決別する思考を主とする分野でよくある革新性を求めることとはかなり違うところである。
そういえば革新性ということで、工学におけるクリエータというのはなにかということを悩む人は多い。わたしもそうであるよくアニメなどのクリエータとはどう違うのかということを悩むわけである。
工学の中では、あくまで組み合わせる・離す・一部を変える・・・・というロジックを無意識に行うことができ、それを複雑にかつ論理的に積み重ねる人のことを工学におけるクリエーターというべきであろう。
反対に「人間の知恵を絞るしかないこと(1%)にぜいたくに時間を使いたい」という独創性をもったものがクリエーターという場面は企画や芸術になる。
そうでしょうな。物体を融通無碍に組み合わせる99%の構成を前提とするクリエータ-と、1%を狙う企画型クリエーターが不定形素材である感情を扱うために独創性を拡張したり収縮させたりできるなら、基本的に立ち居地がちがうんですな。どうやら。
(続く)

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