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キャリア指導の現場にて(1/2)

最近、若手・中堅技術者との懇談とキャリア指導を多くするし、そういう場に呼ばれることが多いのだが、こういう指導行動は技術者の認識意識の変革を間近にしるのに好適である。本来は技術指導の場のほうが私はいいのであるが、この不景気でその仕事よりもキャリア指導のほうがどうも増えているのが現実。かくてますますレッスンプロ化しているんです。
このようなキャリア形成の指導をするとこういうことが耳に入ってきた。
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仕事の棚卸・・・・・ある仕事をした時自分の仕事がどういう業務なのかを分析してみよう。
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技術の応用能力を必要とする事項についてあなたはどうしたか。 計画(プランニングとか積算などの手法管理) 研究(試作に伴う諸業務全般) 設計(機構検討、図面作成、図面管理) 分折(化学分析、統計分析、シミュレーションの一部) 試験(評価試験や研究にかかわる試験も含む) 評価(是非の評価や製品の対応実務) 計画・研究・設計・分折・試験・評価業務の指導
に関して分類してみよう・・・というと結構自分の業務に対し分類に苦労する人が多いのに気がつく。もちろん一つの仕事で横断している業務にかかわる人も多いし、もちろん試験という内容のようにいろいろな場面で撮られる場合がある(プラントの納品前の試運転も試験だし、研究用施設を運転するのも試験だし・・・)という説明はするんだが、これとて難しい人には難しいようである。 まあこれが首尾よく行っても、次のところでひっかかる人もおおいようである。 その仕事を進める上での課題及び問題点 これを示すと、課題と問題点の違いはなんですか・・・とそろってだされるのだ。 かだい  【課題】 (1)仕事や勉強の問題や題目。        (2)解決しなければならない問題。 もんだい 【問題】 (1)答えさせるための問い。解答を必要とする問い。題。        (2)取り上げて討論・研究してみる必要がある事柄。解決を要する事項。             (3)取り扱いや処理をせまられている事柄。             (4)世間の関心や注目が集まっているもの。うわさのたね。             (5)面倒な事件。厄介な事。ごたごた。 うーむ。たしかにこれはわかりにくいかもしれませんね。 この場合顧客からの具体性のある要求項目を課題と考え、それを具現化するためにするための具体的検討手法と要求にこたえるための技術的内容の計画・構想を示すという言い方である。 ――――――――――― たしかにこういうひな形を示されるとはたとこまるのが大方の技術者というのには、実は私は戸惑っていたのだが、このような説明をすると、ああなるほどとすっと文章にする人は大概年配の技術者である。おおむね困るのが40歳ぐらいまでの技術者ということはどういうことなのだろうか。 要するに彼ら若手の技術者に対して企業では具体的技術内容を遂行することに目的があり、それを最適化したり全体にどうなのかを推察したりという視点をとることを求められていないという、技術者へのモチベーションの与え方の偏りを感じる。 この視点がないと、自分の技術が業界でどこの位置にあり、たりないのはどこかという視点が育たない側面がある。また自分の技術をたとえば環境に対してどういう寄与をしてるか、環境にどのようなダメージを与えているか、それを考えてどのような検討内容が加えられたり、どのような要素を足し引きすればという図上訓練が難しくなる側面がある。 ただ、建設関係の技術者ではこの視点はかなり構築されているようだ。たぶんそのあたりの質問が、現場監督とかスーパーバイジングという管理業務では相当必要ということと考える(その分、既存業務の成り立ちの横への広がりの専門知識が狭い場合が多い) さらにこのためか、自分の成功体験は説明が容易だが失敗体験の再分析やりストラクチャー(再構築)ができないということも多い気がする。後ろ向きなことにみえることと、コスト面の不整合とか失敗体験でなく、その理由を明確に示されていない(法規的問題とかは十分理由になる)場合がある。単に客先が支持した方法以外を認めないという形しか示さないため、放棄したという事例もあるようだ。 けど、
0、人類が未だ知らなかったことが出現したことが原因 1、自分が未熟で設計とその組織を知らなかったことが原因 2、自分が設計段階でよく考えなかったことが原因 3、自分の設計段階では知り得なかったことが原因 4、自分の設計組織以外の別組織の判断ミスが原因
という最低限の分類をすることも躊躇する事例が多いのにはいささか驚いてしまった。これらはさらに
0:未知(物理現象発見 異常現象発見) 1:無知(学識不足 伝承無視)不注意(設計者 生産組織)手順の不遵守(連絡不足  設計手順) 2:誤判断(ポンチ絵段階 計画図段階 仮想演習不足)調査・検討の不足(規制・特許 使用環境 購入品・製作) 3:制約条件の変化(使用条件変化・経済環境変化) 4:企画不良(組織構成・権利取得)価値観不良(異文化・規範の違い)組織運営不良(運営の硬直化・運営の緩み)
というところ近傍まで誘導しようとするのが、指導目標なのだがそこに行きつくのはかなり難しいようだった。(ちなみにこの分類は、畑村洋太郎の知見による)つまり、業務に精通しているということで育成プログラムを受講した人も実際はルーチン業務以外の視点を持つ人自体が優秀とみなされていないというフィルタを受けてるのだろう。しかも企業の差があまりないのである。 自分は部所の中では、横の連携技術のほうをみて、あの技術がこちらの製品につかえないかね・・・とかいうほうが多い人間であった。ある意味それを企画として出すと視点がいいという人半分、他人の領域に顔を突っ込むのは、担当者の立場を崩し不愉快という意見が半分。 それでも一部の人には(社外の知人)には技術者としては視点が狭いという言い方をされている。まあそれは言ってる当人がきわめて視点が広い(ただし当人もいうのは底は浅い・・・・というのだがと謙遜している。)からと思っていた。ただこういう場面に何回も会ってみると、この社外の知人が非常に比類なく広い視点を持っているからわかるのだというところも見えてきた。 ―――――――――――――――――― 畑村洋太郎氏つながりになってしまうが、 「東大で教えた社会人学」という本(文春文庫 草間俊介、畑村洋太郎著)が机上にあって読んでいるところだが、これにも似たような文面があった。これは東京大学工学部での「産業総論」という草間俊介氏の講義に各項目ごとに畑村洋太郎氏がコメントを添える形で構成している本。 どうしても工学が社会の企業のニーズに合わせることを意識してしまうと、学生はあまりにも専門分化された技術論を扱うことになるのは事実。下手に広い視点を持つような技術者は製造業にとっては、営業部門などの要員向けである。工学者の中にはそれを忌避する傾向は今もって強い。ただし産業や技術の全体像を立体的にとらえる視点が抜けている人材がいないため、産業界において産業の方向性などを考える広い視野を持つ人材がいないという懸念があった。けどそれはかつての産業では、要求にどう合わせるか、どう要件を絞って作りこむかという視点で見ることをタスクにすることしか社会も要求しなかったし、したところで越権行為という視点があった。 ところが、そういう人ばかりの工学技術では時代が工学に対し忌避を感じる側面が出てきた。そのため技術者の中にもジェネラルな視点を持った人材を生み出すという考えらしい。「社長になれる技術者」を作りたいということらしいが、企業ニーズから離れても学生が付いてくるという傲慢さを持っていても、企業は従うというある意味東大だからこそできる教育指針であろう。 経営者を意図する技術者にはマネジメント能力や、会社の組織についての基礎知識を持って企業に入らなければ生涯教育ができないというのがある。従前は企業の中でもバランスシートなどはある程度の経営陣になってから勉強する技術者の姿勢が求められるぐらいで、技術者として勤め続けていても身につかないというより、余計なものを知ってもらっても困るという姿勢の場合が多かった。むしろバランスシートなどのところより技術や製品の優劣を習得してから、初めてマスターしてもらうという技術者キャリアの熟成方法が一応ルーチンとしてあることも多かったのだろう。 旧来なら普通に働いていく過程で、必要に応じ経験することだった気もする。しかしそのような余力を日本企業は持てないし、海外企業の就職ではこれなしにやていって崩壊する人材は多い。その上社会にこのような事象を教える人材が実はいない(人材はいるが、教えることは避ける傾向にある)これから生きていく時代について考えたり、会社をどう選ぶのか、人生設計はどうするのか、老後はどうか等々考えること自体もあまりしない。というのは明治時代でもそのような視点を前もって構築すること自体があまりできなかったぐらい、時代の流れが急だったともいえよう。 高度経済成長期ばただ前を向くことを考えれば不安もない時代であったし、それをよしとしない人は工学以外に道を見つけるということだった。ところが、労働は今はどの産業が伸びているのか、あるいはどれが斜陽産業なのかを見ながらずるがしこく考えたり、働く上でいかに自分の市場価値を高めキャリア設計につなげるというある意味工学とは無縁なことまで考えなければならなくなった。工学の技術を積んで技術に生きることを信条としている人間にはある意味、技術の愉しみというものがなくなってしまったという幻滅を感じる。逆に、経営者側のキャリア形成を図る人が、その段取りを誤り、キャリアも作りそこなうという事例もある。

人材育成は従来、企業がおこなうもので大学で行われるとむしろ邪魔な存在になったのが私たちの時代。しかし効率重視の企業は人材育成に手間をかけるよりも容易に即戦力を求めるようになったと指摘しているが、じつは即戦力ということばでは説明不足で、人材を育成するより、使えない人材を(それは自分の組織にとって)排除し、代わりの手あかの付いていない人材を採用したほうが経費として安いという場合が多くなったと思う。
企業内技術者の養成内容は以前は工学教育の実務内容を会得する、ないしは会得する手法を学んでもらうことが多かったが、最近、狭い技術分野でのみの人員運用に固定化することで教育コストを減らすことを指向している事例が多くなった。これは下手に横の技術を知ってしまうような技術者は、企業リスク管理の上では危険な存在(解雇できない)であるし、また一部の技術においては、特定顧客がその条件をもとに企業に発注することを前提にしていることもある。では企業内の教育は技術プレゼンのしのぎかた(あえてこういう)とか、分担内容をの管理など流儀がほかに援用できないものが多い。(自衛隊用の部署はもっと縦割りなシステムを求められるほか、技術内容の退職後の援用を禁じるのは当然として、同じ分野の技術企業・・・たとえば護衛艦造船なら船舶関係の業務に従事したら、訴訟する・・・という念書を書かせている企業もあるそうだ。他国でも軍関係は同じようなことがあるらしいが、その代り永年雇用を保証するということが多い)キャリアデベロップメントを行なう機会・環境をそもそも企業は自己防衛のために作らなくなっている。

ここにもあったのだが、外国が日本の技術を盗むということが実際にある。そして実際それを日本はかつて技術者が正当な手法でしてきた。・・・・というのは頭の切れる技術者を養成することを日本は先にした。ちゃんとした開発者は技術を見ただけで、ある程度のシステムが理解できる。さらに本当の意味で理解できるのは、技術に直接手を触れて、肌合いや温度や振動などの感触を実感したときだから人材がこれらを正当な手段で盗むことが当時の先進諸国がまず想定外だったのをやってしまう。この方式を今度は日本に対してするようになってきているのが、BRICS諸国のスキルだということらしい。つまり、日本が世界に誇れる高度な技術力や高生産性を流出しないように守るためには、「技術のブラックボックス化」という見せない、しゃべらない、触らせないという新三猿が必要とのことらしい。
本当に技術力がある企業は工場を見せてもわからないような所に、技術力があるんだと言われているのだし、技術の成熟度を購入者に示すのも販売政策上あるのだが、いまはむしろ見せないし社内の技術者でも知ってはいけないというエリアを確立するのが普通である。自動車会社での技術者が他部門の工程を見ることが出来ないように設定している会社は多い。さらに関係する会社の人に工場を見せる必要が出てきても、凡庸な設計者しか見せないということさえされる。(私も、ある会社に訪問するときに、何も知らないようにふるまうことを指示され、名刺の役職名を外したものをつくったこともある。聞くとそのまえ博士号をもった熟練技術者をつれていったら、工場見学にこの技術者は事務所待機にさせられたということもあったらしい。技術がわかる技術者よりもいうことを聞く技術者を客先は求めるということらしい。できなくても聞いた人間の責任になるだけだから。)これを見ると、技術保持概念が高いのはともかく、横連携のできる技術者は育成するのはタブーという見方もできる。
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そこで上記の技術者が隣の机の仕事をしることさえタブー化されている現実を考えると、技術の狭いところしか知らない技術者が珍重される現実がある上に、企業内外の競争で、しっては困るという環境で成り立ってることが実におおいことかということもあるし、キャリアデベロップメントをさせたら企業にとってはメリットよりもリスク(≠デメリット)が多いということになる。
こうなると社内のノウハウ管理が人事上できない以上、すでに技術者教育を企業に求めるのも無理なら、ごく少数の技術エリート以外は技術の活用をする技量をもたない、ただ動くだけの人材を即戦力と称して珍重するのが企業存立のカギという、工学教育や工学実務の否定であろう。ただしこのシステムはアメリカの代表的システムに近似してることは知っておく必要があろうが。
(続く)

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