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公衆への責任(2/2)

(承前)
私たちは、よく「公衆への説明責任」という言葉を語ることがある。
こうしゅう というのは 〔public〕の訳語で
(1)社会一般の人々。
(2)社会学で、一時的に集合した群集に対して、分散的に存在し、メディアを通じて世論を担う人々。
と解する。ここでは(2)の意味である。
技術者もそうだし弁理士・そして医師がそうなのだが事象とその内容を説明し、享受する公衆において判断・裁量を図る情報を提供することで、最適解を社会が求める姿に近づけるということである。
最近まで専門家というと、かなりの範囲まで把握できる専門家であるし、専門家が専門外の項目を論議すれば、考える段取り(論理的思考手法)まではまず把握することができた。ところが、前提条件も莫大になっていて、知識ベースでの論理ではカバーしきれない内容を整理しなければならないし、説明することで整理手法まで否定されることは常だ。こうなると専門家が非専門家を下に見ている意識がなかった人材でも、「知識の提供」の果てなき労力と限界に戸惑い、忌避する専門家が多い。さらに分野が異なれば専門家と非専門家が入れ替わることも多いのである。このため「この人さっきまで専門家だったのに」ということで、本当の専門家らしき行動をしようとすると、否定される場合もあるらしい。要するに専門家と公衆が混在してしまったことが、従来の説明責任の枠が支離滅裂になりだしていることがある気もする。
また、心理作戦も混在する。政治家はある意味政治を行う専門家であるし、人の意見を吸い上げる専門家という視点もあろう。そこで本当に分かっていないのか、わかった上でこういう判断をしているのかという判断をするとこれまた困難がある。
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--------------引用
<こんにゃくゼリー>マンナンライフが製造再開、来月販売へ (毎日新聞 - 11月26日 11:42)
 ミニカップ入りのこんにゃくゼリーをのどに詰まらせた幼児が窒息死した事故を受け、10月から製造を中止していた食品メーカー「マンナンライフ」(群馬県富岡市)は26日までに、事故防止策が整ったとして製造を再開した。12月5日から販売を再開する見通し。

 同社によると、事故防止策として
(1)パッケージの正面に大きく「小さなお子様や高齢者の方は絶対に食べないでください」とのお願いを記載
(2)裏面の警告文に「凍らせると硬さが増すので、凍らせないで」と追記
(3)個別の包装にも「警告マーク」を記載
(4)原料のこんにゃく粉を減らしてゼリーを少し柔らかくする--などの措置を取ったという。
 販売を再開するのは「蒟蒻(こんにゃく)畑」(25グラム、12個入り)と「蒟蒻畑ライト」(24グラム、8個入り)のいずれもぶどう味、りんご味、白桃味の計6商品。
 同社によると、一連の事故に関して農林水産省から通知を受け、業界3団体と協議した結果、「一口タイプのこんにゃく入りゼリーの事故防止策」をまとめるなどし、警告マークを拡大した商品の製造準備が整ったため、販売再開を決めたという。【畑広志】
こんにゃく入りゼリー、軟らかくして販売を再開へ (読売新聞 - 11月26日 11:39)
 兵庫県で1歳9か月の男児がこんにゃく入りゼリーをのどに詰まらせて死亡した事故を受け、原因となったミニカップ入り一口サイズの商品「蒟蒻(こんにゃく)畑」シリーズ計13種類の製造販売を一時中止していたマンナンライフ(群馬県富岡市)は、一部商品の製造を再開し、25日に出荷を始めた。12月上旬に店頭に並ぶ見込み。
 同社によると、製造販売を再開したのは、主力商品の「蒟蒻畑」と「蒟蒻畑ライト」のぶどう、りんご、白桃味の計6種類。小さな子供や高齢者に食べさせないよう呼び掛けるパッケージの注意書きを拡大し、個別のカップに警告マークを記載。ゼリーもコンニャク粉の割合を減らして軟らかくした。
――――――――――――――――――終了
野田担当大臣がばかだのちょんだの相当言われている。特にネットのなかで強いようだ。
もちろん、野田氏がどのような立場でこんにゃくゼリーの製造停止を求めたのか(これとてニュアンスが本当に大衆に伝わっているのかが疑問だが)がわかっていないと本当はだめであろう。
一つ言えるのは、理知的な意見を出してもそれを把握する能力を大衆がすぐに習得する可能性が低い以上、感性に訴えることのほうが、極めて近視眼的には説得力があるのかという認識があったのかも思う。(だからといってマンナンライフ社の社長を呼び出す視点はちょっとスタンドプレーがすぎるかもしれないとは思う。まさか小渕元首相の選挙区に近いとか・・・・疑る材料は出そうといえばいくらでもありそうだが・・・・)
――――――――――――――――――引用
「こんにゃくゼリー」法規制混迷 「もち」「米」も危険という声も  2008/10/14
こんにゃく入りゼリーをのどに詰まらせて窒息死する事故が相次いでいる問題で、製造会社は製造を当面中止することになったほか、自民党では「ゼリーの硬さなどを規制すべき」との動きも具体化しつつある。ところが、事故で窒息死した際の原因は「もち」「米」「パン」などの方が絶対数としてははるかに多く、「こんにゃくゼリーだけを規制するのはおかしい」との声も噴出。議論は混迷を深めつつある。
<死亡者の大半が乳幼児と高齢者>
発端となったのは、2008年9月30日に国民生活センターが行った発表だ。発表によると、兵庫県在住の男児(当時1歳10ヶ月)が08年7 月29日、同県内の祖母宅で、凍らせた一口サイズのこんにゃくゼリーを、のどにつまらせた。直後に救急車で病院に搬送されたが、9月20日になって窒息による多臓器不全で死亡した。こんにゃくゼリーでの事故をめぐっては、同センターでは1995年以降、10回にわたって注意をよびかけてきたが、死亡事故は同年以来17件目だ。
死亡者の大半が1~7歳の乳幼児と、68~87歳の高齢者が占めているのも特徴だ。メーカーや業界団体も「まったく無策」という訳ではなく、 07年10月には、乳幼児や高齢者に「食べないで」と警告する統一マークの作成を進めるなどしてきたところだが、それでも事故が続いている、というのが現状だ。
そのため、消費者団体などからは「規制すべき」との声が浮上している。実際、米国では02年11月、FDA(食品医薬品局)が製品回収の指示を出しているほか、EUでは03年5月、ミニカップに入ったゼリー菓子などに、食品添加物として、こんにゃくを利用することを禁止する決定をしている。それ以外にも、死亡事故が発生した韓国やカナダでも、回収などの措置が行われている。ところが、日本農林規格法や食品衛生法では、表示方法や衛生面でしか規制することができず、ゼリーの硬さや大きさを規制することができないのだ。
これを受け、「現行法では限界がある」などとして、自民党の消費者問題調査会が10月10日、ゼリーの硬さなどを法規制する方針を確認。超党派の議員立法で、早ければ、今国会での法案提出を目指す。 ところが、ここで問題になるのが、「窒息するリスクがある食品は、こんにゃくゼリーだけではない」という問題だ。
<野田聖子消費者行政担当相はあくまで規制進めたい考え>
例えば厚生労働省が08年5月に発表した調査結果によると、全国の消防本部で扱った窒息事故約700例のうち、原因の食材が食品成分表で分類できたのは432例。その内容を見ていくと、一番多いのが「穀類」で211例。「穀類」の内訳を見ると、「もち」77例、「米飯'(おにぎりを含む)」 61例、「パン」47例、「粥」11例、といった具合だ。一方、「菓子類」は62例で、その中で「カップ入りゼリー」は8例、「ゼリー」は4例と、絶対値としては少ないのだ。もっとも、これには「もちを食べる人は、こんにゃくゼリーを食べる人よりもはるかに多い」という事実があり、「分母」が大きく違うため、「死亡率」は「こんにゃくゼリー」のほうが格段に高いとみられる。それでも、「こんにゃくゼリーだけが危ない」という主張には無理がありそうだ。
実際、前出の自民党の会議でも 「もちは、昔から死亡事故が多い」 との指摘が出ている。一方、10月2日には「小さな警告マークのみの(こんにゃくゼリー)商品は自主回収すべき」などとメーカーに求めていた野田聖子消費者行政担当相は、10月10日の記者会見で  「もちはのどに詰まるもの、という常識を多くの人が共有している」などと反論。あくまでこんにゃくゼリーへの規制を進めたい考えだが、他の食品の危険性との整合性の面から、今後議論を呼ぶことになりそうだ。
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なぜ、欧米でこんにゃくゼリーは排除されているのかというと、今までのゼリーは喉を詰めないという特性があるからだろうと思われているらしい。つまり普通のゼリーは喉につまったとしても体温で溶解してしまう。これらはゼリーという食習慣が前提であるからゼリーの類似品としてのこんにゃくゼリーを販売規制させているということだろう。(でも凍らせたら意味がないし事実事故は皆無ではない)この前提を考えてみると、こんにゃくゼリーを「国際的標準から見れば」販売禁止にするというのは、一定の見方があるのかとも言える。さらに当初は海外からの「日本製品の信頼性」という評価の低下を危惧しているという見解も見かけた。ところが、直後パンで窒息する可能性が報道されると今度は、パンの形状までを変えなければならないのではという揶揄がでていた。けどこれとて揶揄ではない。そこまでしなければ安全・安心の社会を構築できないという議論が事実出ていたという。(ちなみに餅が海外で普及しないのは、知らない以前に窒息のためのリスクを恐れて業者が売らないという話もあるらしい。)安全に対する日本人の要求はじつはそこまで来ている上に、事故が起きた時の補償総金額が天文学的になってきている。非関税障壁とまで言われた時期もあったのだが、日本にあえて販売拠点を置かない海外企業さえ出だしてきた。国民性に手を出すこと自体がコスト的に見合わないとまで考えられている。
こうなると、どこを向いても波及が及ぶ、早くしないと対応能力を査定される。さらに、国民生活センターの場合事故報告と解析研究がその使命で、むしろすべての家庭などで普及する製品を公的な公平な視点でするための機関であるから、製品の問題分析結果しか出てこない。この動向で調整がかかることをやると、総意を得ることにばかり時間がかかるということを「演じて」いるという可能性も想定できなくはない。
確かに思慮の薄い行動を野田氏はした見方もあるし、私も個人的には多少嫌悪感を覚える。しかし至近になにもしないわけにいかないとなると、たぶんどういう行動をしても問題になるであろう。さらに指示して使うための人たちをどうモチベーションを維持させるかというと、なにもしないという行動も出来ない気もする。(ことの是非は大いに問題があるが、例の航空自衛隊の幕僚長の行動も、低くなるばかりの業務モチベーションという視点からみると、全否定できない側面が、経営者という立場からはある。裸の王様よろしく指示系統から総すかんをくって、指示した項目をネグレクトされ、聞けども動かない官僚群を作ってしまう国務大臣の事例は意外と多いらしい。企業でもよくあることである。)したがって私は確信犯でやったとおいう側面も多少はあるんではと感じている。

当然、既存文化で容認されている事項さえ、問題点が分かれば大衆同士でつぶしあうことさえも、免れないという意見も根強い。たとえばこういう事例である。
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本格的入浴剤の製造中止 硫化水素自殺騒動の影響で  11月26日12時23分配信 産経新聞
 硫化水素自殺に悪用され、全国の薬局で販売自粛措置が取られるなどした影響を受け、武藤鉦製薬(名古屋市)が10月末で、イオウ成分を含む入浴剤「六一〇(ムトウ)ハップ」の製造を中止したことが分かった。
 すでに販売自粛は解除されているが、同社は「(注:販売自粛解除を)知らない薬局も多く、作っても売れない状況が続くなどし、製造を中止を決めた」としている。ムトウハップは同社の唯一の製品で、今後は別事業で会社を存続させるという。
 ムトウハップは、硫黄や生石灰などを主成分としている。硫黄が入っている入浴剤はほとんどなく「家庭で温泉気分が味わえる」として人気だった。また、薄めて湿布すると腰痛や皮膚炎にも効くとされ、愛好者は多岐に渡っていた。
 しかし、今年1月ごろにインターネット上に、硫黄成分を含む入浴剤と洗剤を混ぜる硫化水素自殺の方法が紹介されて以降、状況が一変。
 自殺者のほか、巻き添えで死亡する家族も出るなど社会問題化し、日本チェーンドラッグストア協会が硫黄成分を含む入浴剤の販売自粛を加盟の小売店に要請。ムトウハップの返品が相次いだ。
 販売自粛要請は7月には解除されたが、同社は「多くの店は解除を知らず、倒産などの誤ったうわさも流され、返品は止まらなかった」。こうしたことを受け、製造中止を決めた。
 同社は創業102年になるが、ムトウハップの販売だけに頼って会社経営を続けてきた。社員のひとりは「長く続けてこられたのも製品が良かったから。こんなことで製造中止に追い込まれるなんて…」と話していた。

自殺に使われた「ムトウハップ」製造中止 「やめないで」存続望む声続々 2008/11/26 J-CAST
「硫化水素ガス」自殺の原料に使われた入浴剤の製造が中止されたことが明らかになったが、製造元には700人以上の愛用者から「やめないでほしい」という声が寄せられている。ネットでも、「残念だ」「なくなる前に買い占めないと」などといった意見が書き込まれている。
「なくなれば死活問題。在庫がある限り売ってほしい」
入浴剤と洗浄剤を混ぜ合わせて「硫化水素ガス」を発生させ、これを吸って自殺する事件が2008年に急増したが、毒ガスを発生させるのに使われた入浴剤「六一〇ハップ(ムトウハップ)」の製造会社、武藤鉦製薬(愛知県名古屋市)が製品の製造を2008年10月末日で中止していた。
「ムトウハップ」はイオウ、生石灰、カゼイン、硫化カリウムを浄水に過熱溶解し、ろ過した医薬品の入浴剤で、疲労改善、アトピーや皮膚病にも効果があると言われ、長年、愛用している人も多い。80年前から作り続け、最近は年間50万本を出荷していたが、自殺に使われてから取扱店が激減した。
ところが、店頭から姿を消すと、愛用者から存続を望む声が多数寄せられるようになった。同社には700人以上から、「やめないでほしい」「どこで買えるのか?」などという電話がかかってきた。また、シルバーアクセサリーを作っている業者が「いぶし銀」の加工に使っていて、「なくなれば死活問題。在庫がある限り売ってほしい」という問い合わせが複数きている、という。ネットでも、「ずっと使っていた。なくなる前に買い占めないと」「重宝していたのに、残念だ」などという意見が書き込まれている。同社は、「できるだけ多くの人の要望に応えたい」として、在庫がある限り販売する。
工場の従業員のうち、すでに半数以上が退職
日本チェーンドラッグストア協会は 08年5月、加盟店舗に「ムトウハップ」の販売を自粛するよう要請した。販路の8割を占めていた薬局やドラッグストアで扱われなくなり、売上げはがた減りする。さらに「amazon.com」などの通販サイトでも取り扱いをやめた。薬局での販売規制は7月に解除されたが、武藤鉦製薬の社員は、こう嘆く。
「解除から数か月経った今も、8割の薬局が商品を扱ってくれません。中にはお客様に対し、弊社が『倒産した』とか『厚生労働省から売ってはいけないと言われている』などという、いい加減な説明をしている店もあったようです。協会が解除したことや、その理由を全会員にきちんと伝えてくれていたらよかったのですが」
社員によると、十数人いた工場の従業員のうち、すでに半数以上が退職した。在庫整理や返品対応で09年中は会社を存続させるが、「その後はわからない」としている。
――――――――――――――――――終了
実は、私は、8割の薬局が商品を扱わないのは、リスク管理が出来ない状況にあるからといえる。一番安価で労力も少ない回避手法(対策手法ではない)をとったにすぎないのである
ここに、「六一〇ハップ」を発売したドラッグストアがあり、そこで捺印などして買って、自殺に用いる人が一人でもいたらその結果、補償を求める人は誰にその補償を求めるのであろうか。薬局・製造元・国家であろう。理不尽な気もするが、実際にこのために製品は淘汰されることで、社会は安心・安全かつ安定を求める一つの社会的成果が一番安価に達成される。他方自殺者を防止する政策を行うことは天文学的投資になる。薄い塩酸を流通させることも社会的に抑止することがコストがかかる。そうなるとリスク回避という議論を考えると、それを背負えない薬局は扱えないであろう。そのリスクを発売元に背負わせることも実際は企業体力として無理である。もっと問題なのは代替商品がなくても、我慢するしかないという世論があるとも言える。皮膚病のためこの薬を使わなければならない人は社会的動向の中で反論するという機会は対コスト的視点から口に出せないであろう。
安全・安心の社会と大題目にうたっている現実がありその形で説明責任を技術者はできるだけ果たそうとしている。しかし、その内容が膨張するのはある程度想定されることなのだが、天文学的労力、天文学的補償、天文学的な圧力(しかもこれらは対価をほとんどともなわない後ろ向きの製品)を担わされたため、ものつくり自体を忌避することが強いことになり始めている。いやもの造りだけでない。安全・安心を維持するには、外にでて買い物をすることさえ嫌がるという言動さえ耳にする。商品文化が崩れるとかいう意見さえあろうし、既存のインフラの崩壊もあろうと思う。けど既存のインフラ崩壊で変わる、それ自身が既に文化というものの本質であろう。
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このような視点をみると、すでに説明責任というものを議論するし最適化を図ることをしても、確立した議論が出来ない以上に、深みにはまっていくために回避するしかないことが、ますます技術者への忌避が増えてくると思う。いや銀行の融資にしても、以前の融資以上に説明を求められるのはまあ当然であろうとは思いますが、最近はむしろ先行投資自体もリスクがおおく回避するほうが、安全・安心につながるのだというから、社会全体でリスク管理の圧力と、その失敗時の責任を要求するために企業活動が出来ない場合もあるし、甚だしきは利益の半分をリスク管理経費に振り返ることで企業の社会的価値を維持するコストになっている製造メーカもあるようだ。しかもあらかじめ予想される事象は本当はリスクとは呼ばないという矛盾もあるんですが。

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