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糖分は滋養強壮にいいとか(2/2)

(承前)
さて、高橋孝太郎博士はどりこのでもうけたのは事実ではあろう。高級住宅地の中である「どりこの御殿」にしかり、田園調布の「どりこの坂」にしかり、超高級住宅地のなかであるからそう思えるのだが、じつは元々は研究第一主義という人のようだ。昭和初期、勤労者の安全維持・生産性向上・疲労解消が問題になり、乳幼児の養生・健康的発育が話題になっていたことにこの事由がある。
日本の労働生理学の先駆者としても、高橋孝太郎の名前が出てくる。千葉医専を卒業した高橋孝太郎氏は陸軍軍医となり、大阪砲兵工廠に勤務した。そこで工場衛生に関する論文・工場塵埃の報文を発表した。その後農商務省(今の農林省+経産省)嘱託に転じ、大正10年から呼吸ガス代謝法による労働合理化の研究を始めた。(この手法は今でも運動の時のエネルギー消耗量の把握などを行う重要な技術である)その中身は11の作業の労働者74名につき労働時の酸素消費量からその強度を比較し、次に9作業と珠算算入及び筆記の際の椅子や作業台の高さなどを変え、その時の酸素消費量の計測から好適な労働条件を決めた。鋲打(リベット打)作業では作業員の酸素消費量を典拠に打方・押方(組付工ということになる)、焼方(熱間リベットの加熱工)の賃金算定の基準を出している。これらの業績により彼は日本における労働生理学の先駆者と呼ばれる。
この当時の医療の流はドイツにあり医療関係の学問、先駆的研究といえばまあドイツ人医師の知人がいて当然である。しかも農商務省嘱託となれば単純にインテリで高級住宅地に住んだというみかたもあるわけ。また労働安全や労働生理学の側面では勤労者が疲労することにより注意散漫になって事故を起こすという見方(今は、本質安全というみかたが主であるが、その考えに至る前の疲労低減による、集中力維持、そして事故防止である)からの、栄養補給のアプローチもあったという。
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同じようなトレンドは労働界ではほかにもあった。

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倉敷紡績(現在のクラレ)、大原美術館で有名な企業家大原孫三郎氏は、社員寮で感染病を出し社員数名を死亡させた責任で父が辞任した結果、倉敷紡績の社長となる。それ以前にも企業内補修学校の設立、奨学会を開設し奨学金を出すなどをした。このこともあり就任と同時に他の経営者の意見を退け工員の労働環境改善を図った。当時の紡績工場で働く女性労働者の労働条件、労働環境はやはり劣悪で、長時間・深夜労働、粉じん・高熱・高湿の作業環境の悪条件のもとで、心身消耗、結核等で女性労働者が死亡する続いていた。そこで大原は、労働及び労働者の状態改善を科学的方法で実現しようとし、高名な労働生理学者を招聘したという。
○飯場制度廃止・食事手当の開始
○従業員の確保を手配士に頼らず会社で実施(当時は組制度と言う、内部下請け形式が工業では支配的)
○日用品販売等を会社が運営
○駐在医や託児所の会社内配置
○日露戦争のため需要が増加した孤児院を支援
という企業社会主義的視点で事業を推進した。どう考えてもコルホースとか言う概念がでてきそうですな。事実、大原氏は思想面から特別高等警察に警戒されたという。この結果、病院や学校、大原美術館、農業研究所(のち岡山大学に移管)社会問題研究所(今の法政大大原社会問題研究所)、倉敷労働科学研究所(今の労働科学研究所)を設立した。
さて、倉敷労働科学研究所は、後に倉紡から独立し財団法人日本労働科学研究所と改称、第二次世界大戦中には大日本産業報国会の管轄となり(国策に組み込まれたわけですな)、戦後に財団法人労働科学研究所となって川崎市に有る。ここが、当時の過酷な労働環境の工場労働者が手を汚すことなく、勤務の合間に栄養を補給することができる栄養食品として中国饅頭をアレンジしたものを普及させた。これが松山銘菓の「労研饅頭(ろうけんまんとう)」として今に残る。
昭和初期の金融不安(ううむ、なんとなく今のアメリカに近い)不況で、松山市でも学生の学資確保困難者が続出していた。(大阪では某デパートにライスのみを頼み机上にある只のウスターソースだけをかけて食べる(・・ソーライ・・)貧困大学生が続出したという。)そこに互助会組織("夜学生に学資を"を訴えた松山奨学会と言う団体)が、労研が満州の労働者の主食「饅頭(マントウ)」を甘くアレンジして提案し、これを岡山県や京阪神の業者が「主食代用品」として販売していることを聞き「労研饅頭」の名で販売した。どちらかというと蒸しパンらしい。その後、労研饅頭はお菓子やさん(当初から関係した退役軍人で夜学校の数学教師という)が製造販売したが、1943年には小麦粉の入手難で販売休止に追い込まれた。しかし、受け継いだ酵母は守り通され、1945年の終戦後には早くも販売が再開されている。しかし、京阪神では戦火で労研饅頭の酵母が途絶えてしまい、消えてしまった。結果、松山のものがのこり、岡山でも松山の酵母を譲り受け復活したが、今は松山の名物菓子として定着した。
これなんぞは、ソイジョイとかカロリーメイトのブロックと似ている。ちなみにカロリーメイトのブロックには、チーズ、フルーツ、チョコレート、ポテト味があるが、「労研饅頭」も現在のメーカーでは 味つき(うずら豆、黒大豆、よもぎ味付け、ココア、レーズン、バター、チーズ)と あん入り(つぶあん、こしあん、よもぎつぶあん、よもぎこしあん、しろあん、かぼちゃあん、いもあん)と14種類あるというのも似ている。1個105円 (税込)
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かくも労働衛生面から考えて、営利ということと関係なく高橋孝太郎氏が、労働生理学の面から飲料にこのような医療的視点を見出したのは実は当然ともいうことかもしれない。だから暴利かというとたまたま偶然にあたったということのほうが正解かも知れないようだ。
労働に対することで安全装置(光電スイッチ、接触スイッチ)が普及するというのは意外と日本が先行していたというし、その機器が日本製が多いのではある。食べ物に関わることになると意外でもあり、ユンケルとか栄養ドリンクの普及が海外では奇異なことに見えるのはなんと、労働衛生から・・さらには旧軍の衛生思想が徴兵制で民間に膾炙したと言うことになると思う。
甘いものは疲れを取るとか言う。糖尿や肥満にならない限り・・・ああオレには禁忌かな。

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