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続:トンデモ科学はけしからん

(1)http://dehabo1000.cocolog-nifty.com/holder/2008/08/12_20d7.html#comments
(2)http://dehabo1000.cocolog-nifty.com/holder/2008/08/http.html#comments
(3)http://dehabo1000.cocolog-nifty.com/holder/2008/08/http_1.html#comments
文章表現に稚拙なところもあって、どーしよーかと考えてたエントリーなんですが、下記の書き込みを頂きました。
-----------引用
http://dehabo1000.cocolog-nifty.com/holder/2008/08/http_1.html
トンデモ科学3部作を面白く読ませていただきました。さて、トンデモ科学の代表といえば、まずマイナスイオンが浮かぶという方は少なくないでしょう。松下電器産業はそのマイナスイオンを‘進化’させた「ナノイー」事業の本格展開をこのほど大々的にアピールしました。
http://kaden.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/08/20/2764.html (注:家電に関するサイト)
http://sankei.jp.msn.com/economy/business/080820/biz0808201937009-n1.htm (注:産経新聞)
http://osaka.yomiuri.co.jp/eco_news/20080821ke01.htm  (注:読売新聞)
「天下の松下がマイナスイオンとはけしからん」と非難する声も出ていますが、この事例は技術者倫理に照らすと、どんな位置づけになりましょうか?
投稿 SSFS | 2008年8月27日 (水曜日)
------------終了
で、一応何が報道されてるかを書いておきましょう。
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エアコンからナノイーイオン…松下、発生装置を小型化 (2008年8月21日 読売新聞)
 松下電器産業は20日、髪や肌に潤いを与える効果があるという「nanoe(ナノイー)イオン」を出す機能を付けたエアコンやドラム式乾燥機を今秋以降、発売すると発表した。これまでドライヤーや空気清浄機に付けていたが、高機能家電の目玉として関連商品を増やすことにした。
 ナノイーイオンは水に高電圧をかけた際に発生する特殊なイオンで、マイナスイオンの約1000倍の水分を含んでいる。潤いを与えるほか、脱臭や除菌もしてくれるという
 松下は、技術開発で発生装置を従来の4分の1に小型化することに成功した。価格は通常の商品と比べやや高くなるが、順次、搭載する商品を広げていく。これにより、ナノイーイオン関連の家電商品の2008年度の売り上げを前年度(160億円)の3倍以上の500億円に増やす計画だ。(nanoeイオン:松下電器産業の登録商標)
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これは、科学と技術の混在もあると思う。
私たちは、科学と技術を混在させていることが多いです。サイエンスは科学と訳される。エンジニアリングとテクノロジーは、一般には技術と訳されたり工学と訳されたり、エンジニアリングとテクノロジー双方を含む概念として使用される。「技術」はエンジニアリング(編み出す技術)、テクノロジー(編み出された技術)、スキル(技法と技能)の意味が混在していることは考えるべきである。(なお、マーケティングなどもエンジニアリング・スキルに該当するためいれてもいいと私は考えている)
とかく一般に思いがちな、科学>技術、科学<技術、科学=技術では何れもない。

まず、今の段階では、マイナスイオン自体はプロトサイエンス(「科学」以前の、「未実証な仮説」)と私は考える。疑似科学と言い切るには境界事例だといえる。その存在意義自体は、現段階では科学的に示すこと自体でも、問題が多いと考えられる以上疑似科学になってしまう。事実、多くのマイナスイオンに関する研究には明らかに疑似科学と見なされ得る様な開発が乱立している。一方、一部には科学の手法によった、ないしは科学の手法になじむような姿勢をとることを考慮した検討をした事例もあることは良く考えるべきである。したがって、この項目はプロトサイエンスと疑似科学の境界線でふらふらした存在と見ている。勿論薬事法由来の政府見解では、マイナスイオンを前提での広報活動は困難である。(したがって今の段階では、http://panasonic.co.jp/ism/nanoe/index.htmlの中を見ると、定量的効果を期待しないアメニティー的宣伝を中心にしている。また、技術報告(例:松下電工HPhttp://www.mew.co.jp/tecrepo/534j/pdfs/534_02.pdfhttp://www.mew.co.jp/tecrepo/79j/pdfs/79_17.pdfなど)での定量性のある科学的検討も提示されているようだが、これを見ると、コロナ放電(局部破壊放電)の機構に類似するともいえる。このあたりは、評価技術など複合的見地が関わるので深追いしないで先に進める。
しかし、別途の可能性(キャリアとして水分を担う形にする・・・とか、アメニティーのように定量的評価をすること自体がなじまないものを提示する・・)を前提にすることも「便法として」成り立つ見地でもあるだろう。そこで技術者や会社におけるこの技術の考え方では、その姿勢は2分化していると思う。たとえばこのような考えを比較してみよう。
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(1)科学として当面成り立たなくても、技術の蓄積により、長い年月を経て科学になりうる可能性があると考える場合
薬事法やその他の社会的問題との折り合いを考えると、アメニティーのような感性を顧客要求として議する体制が、望ましい。そのため、付属的要因(例えば、水分を担体として保持させる機能としのイオン発生機構・・・今回のnanoeイオンに関して・・・)を期待する。またこれらは本当の期待される機構(例えばドライヤー)がメインで、イオンはその付帯機構であり、あくまで高付加価値をもとめる市場にかんして用いるものであるから、製品構成として本質的なものではないほか、同じメーカーでこのイオン機構を設けないものを併行販売する以上倫理的問題は生じないと考える。
さらにこのような製品の技術開発によって、付帯する品質保証や関連研究の萌芽となることで、科学に関する研究が図られることになると、技術開発や新しい機能を見出す萌芽を育成することで社会に還元する。
つまり技術開発から研究を後ろ支えすることにより、今後新しい研究が成り立つ芽があるということを主張する。(先行開発ではよくある手法)
(2)科学として成り立たないなら、社会的責任が成り立たないとなると考える場合
薬事法やその他の社会的問題との折り合いを考えると、アメニティーのような感性依存で製品化をすると社会的責任が果たせない可能性がある。付属的要因(例えば、水分を担体として保持させる機能としのイオン発生機構)を期待している顧客ばかりとは限らず、いくらメーカー側が主張してもそれが顧客に普及しない可能性がある。またこれらは本当の期待される機構(例えばドライヤー)があくまでメインで、その付帯機構であり、あくまで高付加価値をもとめる市場にかんしてもちるものであるとしても、ハイエンドユーザーは成否への期待度が高い、製品構成として本質的なものではないということは企業の社会的方針に反する。同じメーカーでこのイオン機構を設けないものを併行販売しても倫理的問題は生じると考える。
さらにこのような製品の技術開発は企業の社会責任としてはリスクが大きい上、営利企業が行う行為では基本的にない。科学的蓄積を前提にしてからこそ社会責任を達成できる。
つまり科学が前提で、技術開発はそれを選択して実務にあった製品化することに徹すべしという意見である。(製品開発・エンジニアリングや医療関係ではよくある手法)
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勿論推論と期待される技術者の社会的理念が異なると、この判断、及び・・・これが重要だが・・・社会に製品として出すときの技術者の責務と推進内容の位置付けが変わる。そこで、前述のセブン・ステップ・ガイドという「技法=ツール」を使った場合どのようになるかを記入してみた。あくまで演習の事例として考えてほしい。
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(1)積極的に使う。技術の積み重ねと実績つくりで、新規な科学開発を下支えし、結果自社技術が有効になる。(ニーズからシーズ開発を生み出す形)
ステップ1:問題を述べよ。
企業や技術者の社会的責任の上で、nanoeイオン機構による技術開発は社会的に取りいれられる概念か? 
ステップ2:事実関係を調べよ。 
(上記)
ステップ3:関連事項を確定せよ。(誰が、どんな法律が、どんな制約が関わるか 等)
だれ:顧客・販売業者を含んだ製造者
どんな法律:薬事法・製造物責任法・電取法
どんな制約:付加価値の充実による感覚的充足性の向上要求・人体の影響
ステップ4:思いつく限りの対策案を出してみよ。
製品化する場合にイオン自体の効果を訴求することは現段階では効果が不明であるため、それ自体でなく付随的波及効果に効果を見出すこと(それの一つが、水分の担体としてのイオン生成機構の使用であろう)まだデメリットも把握すること
ステップ5:それらの案について、以下のことを考えよ。
a)その案は、他の案より害が少ないか?
害については、現段階で確認できるものは、理論はともかく現象を確認することで是非の評価は可能である。また他の事例がないことは、害があっても利得のほうが大きいと考える。したがって相対的に害は少ない。
b)その案は、新聞等で公にできるか?
すでに新聞発表を行っている。広報能力を確立することで誤解を招かない活動をすることで、公にでても抗弁きる活動実績がある。
c)その案は、議会の調査委員会などの前で擁護できるか?
それをするには開発投資を確実におこない研究と言うより実績を積む上でそれを技術報告として社外にだすことが出来るようにする必要がある。その投資を行うことにより擁護は充分できる。
d)その案は、自分が他の人からされることを望むか?
価格面でメリットがあれば使う。またもしそれがいらない場合でも製品群の中に選択肢があるならnanoeイオン機構なしを選択できる。さらにあくまでメインはドライヤー・清浄器であり付帯的効果であるから基本性能とはいえないので、大きな問題ではない。
e)その案は、同僚が聞いたなら、何と言うか?
ニーズとして必要と不要が分かれるだろう。あくまでハイエンド機種であるから、選択中に入れることがこの技術の存在価値である。
f)その案は、自分が所属する専門団体の倫理委員会が知ったら何と言うか?
以上のことを明確にすることと、継続して検証を出していくことで問題は少ないと考える。むしろ、問題が出た場合に対応することで充分である。
g)その案は、自分が所属する企業の倫理委員会が知ったら何と言うか?
以上のことを明確にすることと、継続して検証を出していくことで問題は少ないと考える。
ステップ6:ステップ1~5に基づいて選択せよ。 
ステップ7:ステップ1~6を再検討し、今回の事態を避けるための予防策がないか考えよ。
社会的概念を認めさせて、いままで自分達が実績としてつんできた事項や技術を結実し、科学からのアプローチの必要性を提言することで、以上の問題のかなりの部分は意味が無くなる。
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(2)反対に科学によって得られた基礎研究を援用して、技術になるという形が社会の通念であるという考え。(シーズを積んでからニーズに対応するようにアレンジする形)
ステップ1:問題を述べよ。
企業や技術者の社会的責任の上で、nanoeイオン機構による技術開発は社会的に取りいれられる概念か? 
ステップ2:事実関係を調べよ。 
(上記)
ステップ3:関連事項を確定せよ。(誰が、どんな法律が、どんな制約が関わるか 等)
だれ:顧客・販売業者・製造者
どんな法律:薬事法・製造物責任法・電取法
どんな制約:付加価値の充実による感覚的充足性の向上要求・人体の影響
ステップ4:思いつく限りの対策案を出してみよ。
製品化する場合にイオン自体の効果を訴求することは現段階では効果が不明であるため、それ自体でなく付随的波及効果に効果を見出すこととしても、その開発ターゲットが作れない。デメリットも把握すること
ステップ5:それらの案について、以下のことを考えよ。
a)その案は、他の案より害が少ないか?
害については、現段階で確認できるものは、現象を確認することで是非の評価は可能であるが、科学からの論拠が確定しないとその成否が説得できない。さらにブランドイメージが崩れると負の波及効果が起こりうる。
b)その案は、新聞等で公にできるか?
すでに新聞発表を行っているが、広報能力を確立することで誤解を招かない活動をすることで、公にでても抗弁きるとはいえるが、販売業者に対する管理は責任が持てない(チェーンストール体制が組めない家電会社はどちらかというとこの傾向が強い)。
c)その案は、議会の調査委員会などの前で擁護できるか?
開発投資に加え科学研究支援を確実におこない実績を積む上で製品化可能な地盤が出来るようにする必要がある。しかし、その投資を行っても不確実な要素は残る上に投資額が確定できない。
d)その案は、自分が他の人からされることを望むか?
価格面でメリットがあれば使うが、そこまでラインアップ。またもしそれがいらない場合でも製品群の中に選択肢があるならnanoeイオン機構なしを選択できる。さらにあくまでメインはドライヤー・清浄器であり付帯的効果であるから基本性能とはいえないので、大きな問題ではない。
e)その案は、同僚が聞いたなら、何と言うか?
ニーズとして必要と不要が分かれるだろう。あくまでハイエンド機種であるから、選択中に入れることがこの技術の存在価値である。
f)その案は、自分が所属する専門団体の倫理委員会が知ったら何と言うか?
以上のことを明確にすることと、継続して検証を出していくことで問題は少ないと考える。むしろ、問題が出た場合に対応することで充分である。
g)その案は、自分が所属する企業の倫理委員会が知ったら何と言うか?
以上のことを明確にすることと、継続して検証を出していくことで問題は少ないと考える。
ステップ6:ステップ1~5に基づいて選択せよ。 
ステップ7:ステップ1~6を再検討し、今回の事態を避けるための予防策がないか考えよ。
社会的概念を認めさせることは、意見訴求の問題があるため確実性が低い。自分達が実績としてつんできた事自体さえも否定しておくべきと考えるし、そのような科学的な既知のノウハウが展開できないものは、原理原則に反するものだとすると社会的使命から考えて問題がある。科学への提言は企業が主にすることでない。
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つまり、企業の周囲の環境とマネージメントをする技術者の志向で変わってくるのだが、その根本には科学と技術の関係という結論の無い議論になることがわかる。またニーズとシーズをどちらに加重をかけるかという、「概念の共通化が困難な項目」に関わるわけで、技術者倫理で正邪が決まるものではない。但し企業倫理や技術者倫理の視点から見ると、開発に対しどこを手当てしなければならないかという所を明確化することがこのツールで出来る。松下はその対策と志向をできる限り整理したうえで、あえてイオンに関する技術開発をすすめるという賭けに出ており、また広報活動を活発に行う手法で、できる限りプロトサイエンスから科学への移行を狙っているかもしれない。考えれば錬金術師が見出したものにはまがい物も多かったのだが、その後の科学への進化の糸口になることもかなり含まれていたわけだから、歴史的にはこの動き自体は否定できない。但し大きな会社が集団で動くということが、不思議がる元になりがちなだけである。
本稿はあくまで演習事例としてみてほしい。技術者倫理の検討手法の意義は、このなかでどこが問題化という顕在化をしたあとのすり合わせ行為の実施にあるのだから。

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