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スタージョンの第2則(1/2)

よく経済性分析のなかで、パレート分析法というのが言われる。効率的製品設計での評価手法でも良く使われる。価値工学の一部でこの議論をする。いわゆるVE技法の基本理論として経験則として前提になる。設計計画や工程管理技術にも大きく影響を与える事項である。半ば工学と経済学・経営学の境界分野である。
パレートの法則:イタリアの建築技師・経済学者・社会学者・哲学者ヴィルフレド・パレートが発見した冪乗法則。経済において、全体の数値の大部分は、全体を構成するうちの一部の要素が生み出しているという説。経済以外にも自然現象や社会現象等様々な事例に当て嵌められることが多い。なお、80:20則、ばらつき則などと呼ばれることもあるが、本来は別のもの。
で、技法としてのパレート分析法は結構矮小化されてるのは気が付いていたのだが、意外と分野横断的に見るとおやおやという事例がある。
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http://d.hatena.ne.jp/kasoken/20080728
(前提)科学ライター&東京大学勤務の内田さんは、あるTV番組の企画参画で苦心していた。制作担当は意図を理解しているが、番組プロデューサーは、主な視聴者を考え「観ている人たちはリクツはどうでもいいんです。便利ネタでびっくりネタが欲しい」という。・・「95%の魂を捨てながらも。」ふと思い直し提案をした。「台所で子どもがお手伝いして、科学的理屈を知ると、我が子の頭が良くなる。科学好きになる」……。(注:5%と言う値は「5分(≒5%)の魂」に掛けてる内田さんなりの表現)

----------引用
人を見て法を説け
植木さん(植木不等式氏:サイエンスライター&会社員)からのコメントが実に面白く、しかも示唆に富んでいる(中略)
釈迦に帰依すれば「人を見て法を説け」ということなんですねえ。どんなにやさしく書いても、説いても、その基幹にある「面白さ」の軸そのものが受容者とズレていると、アウツという話です。
撃沈。まさに。人を見ないで「上から説いてばっかり」だからスルーされると。これは植木さんご指摘のように技芸が必要で、私なんかでは「まだまだまだまだ……(以下延々と続く)」なわけですが。目指すべき地点ですね。目標は高くっ、と自分に言い聞かせてみる。
スタージョンの法則」のように、市場最適点は、内田さんが引用していた「5%」のあたりにあるのかもしれません。
その「5%」を、“現場”で守れるかどうかが、実の所、主戦場なんですよね。(中略)
先日、某先生とお話ししていたとき「内田さん、今の仕事は適任。でも研究者だったらこうはいかないで二流三流で終わっていた気がする」と。(注:元は内田さんは工学研究者を目指し、博士課程に在籍していた)ひいいい、なんという的確なご意見を! で、同じ時に「五分の魂」の話をしたら、その先生は「んー。わかるわかる。でも研究者的には『三割の魂』かなあ」と。ちなみにその先生、アウトリーチ活動に熱心でお上手なのですが、自分がやっている研究だと、譲れる最終ラインが高くなるのはわかります。
-------------終了
まあ、科学者が具体的に自分の職務の社会的位置を伝えたいのは希望するところであろうが、その段階で途中の段階を整理して伝える範囲というのが実に難しい。そこを期待値として30%と考えるということなのだろう。
論文でもそうだが、ちゃんと書いたところで、専門家に伝えたところで、政治的な問題もあるし、語彙の共通化だって難しいし(一応ガイドラインはあるんですよ・・それを遵守したところでという意味です)ということで。この先生が説明することを100%理解するためにはまず3.3回以上同じ内容で異なったものを読まないと理解されないということかな。(勿論これは漸近線的な理論も出来る。はじめは30%わかってもらい、次回は残り70%の30%を理解してもらい・・・となると2回目で51%・・・という形だと、説明を繰り返すと漸近的になるが100%にはならないわけで・・・まあこのあたりは感覚的解釈という受け流しをしてください)
ところが、「人を見て技術を説け」となると、聞く人々のレベル、条件を考えると5%ぐらいの内容提示にして、あとの95%の意図を置き換えなければならなくなる。従って、ある意味私たちはある報道を聞いて5%のところを聞いて100%判った気になり、たまたま95%のところに理解し易くするため簡略化た結果間違いの解されるところが出来たので文句を言うということなのだな。
そこで、「スタージョンの法則」と言う言葉が出てくる。SFを読まない私にはちょっと思い出せなかったのだが・・・

スタージョンの法則 (Sturgeon's law):SF作家シオドア・スタージョンの言葉。
1.「常に絶対的にそうであるものは、存在しない。」("Nothing is always absolutely so.")
2.「どんなものも、その90%はカスである。」(・・・「スタージョンの黙示」という)

上記の意味合いであるが、この文では2のほうですね。
「スタージョンの黙示」の意味は、本人によって詳細に明示されたという。その訳例は以下の通り。
「最低の作例を引っ張り出しては叩く」という悪意の攻撃に対して、自分から直接反撃している。90%のSF作品をゴミカス扱いするのと同じ基準を用いれば、映画、文学、消費材などその他あらゆるものの90%も同様にゴミである。言葉を変えれば、「SFの90%がカスだ」という主張ないし事実のもつ情報量はゼロである。なぜならば、SFは他の芸術/技術の産物と同様の質的傾向を示しているに過ぎないからである。
「一定の名作を生むジャンルには、常に多量の駄作がある。」と言い換えれば、創作分野で適用できる。
多量の駄作の存在は、受け入れる市場の存在前提だが、存在しない分野は名作を生み出せない。駄作は駆け出しの制作者の修練の場でもある。それを失ったジャンルは、後継者を失って先細りになる。

ほー。
この2の考え方は数値こそ違えパレートの法則に近いものがあると感じたが、果してこのことを語る人は結構いるらしい。知らなかったわ・・・・但しここで注意しなければならないのは、パレートもいつも厳密に80:20であるとは言っていない。事実、90:10や70:30の場合もある。つまり何事にもばらつきがあるとは言ってる。勿論スタージョンの意図も比喩的に10%といってるだけであろう。だから、骨子はほとんど変わらないことを表現しているとおもう。
現代でよくパレートの法則が用いられる事象が経験的に提示されることがある。パレートがこれらの説ひとつひとつを唱えたわけではないのだが。
<お金>
* 所得税の8割は、課税対象者の2割が担う。
* ビジネスで、売上の8割は全顧客の2割が生み出す。売上を伸ばすには顧客全員を対象としたサービスを行うよりも、2割の顧客に的を絞ったサービスを行う方が効率的。(この数値自体が一人歩きして某スーパーは在庫縮小を図ったが、その効果金額以上に利益を急落させたこともある)
* 商品の売上の8割は、全商品銘柄のうちの2割で生み出す。(販売理論にロングテールビジネス理論というのがあるらしい。)
<管理>
* 売上の8割は、全従業員中2割で生み出す。(数値が異なるが単純労働という意味で評価するとアリの作業事情が同じようなことになってるのは有名である。もしここであまり働かないアリをつまみ出しても、働いてるアリが怠惰になるものが出来、8割のアリが働かなくなるらしい。)
* 仕事の成果の8割は、費やした時間全体のうちの2割の時間で生み出す。(で、のこり8割は交渉や調整、意思統一などの連携作業に費やされる・・ということらしい)
<製造業務>
* プログラム処理時間の80%はコード全体の20%の部分が占める。(化学の反応速度をプラントエンジニアリングで議論するがこれも、律速段階という解釈が出来る。工程のボトルネックに関しても使う。)
* 全体の20%が優れた設計ならば実用上80%の状況で優れた能力を発揮する。(優れた設計ということは定義しにくい。製品単品のことか、全体設計のバランスのことかが判りにくい。これもではその優れた20%の製品だけを使用したものをつくり、例えばPCの中のHDDを独立製品化させたとしてもそれはそれで80%の部品は欠陥を抱える。更に言うと実用上80%の状況での商品化自体、普通は市場製品化できないレベルで、普通は99%目標という。)
* 故障の8割は、全部品のうち2割に原因がある。(品質管理手法としては基本的技法。故障率算出の時にパレート線図という形で整理するのに使うことが多い)
* 製品原価の8割は、全部品中2割の部品の製造原価・購入原価・作業時間によって決定付けられる。

実は概念としてパレートの法則を使っているのはいいかもしれないが、そこで具体的80:20の表現を使ったが為に矮小化して、一人歩きしてることの多いことが見える。ここで、見事にパレートの言いたいことの5%だけが、理解し易い段階にとどまって伝わっているということになる。そうです、実は言いたいことの10%程度しか伝わらなくなりがちなのだということが、ある意味パレートの法則についても示されるという見事な自己矛盾かつ、議論が「入れ子」になるようである。(爆笑)パレートの法則の適用事例の多くは、経験則だろう。自然現象や社会現象は平均的ではなく、ばらつきや偏りが存在し、それを集約すると一部が全体に大きな影響を持っていることが多い、という趣旨を「代表的に」言ってると思う。ただ大方の人は30%しか伝わらないというのなら、スローガン的に矮小化しても知らしめることに、効果を見出すということになる。しかしスローガンだけを見て、それを金言の如く援用する(こじつけるというのもあり)のは、どんな優秀な部隊でもあることだな。経験上。
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まあそのことをおいて置いて、どんなにやさしく書いても、説いても、その基幹にある「面白さ」の軸そのものが受容者とズレていると、ざっくり価値が8割以上減ということになるんですかね。しかも軸が全部の人に同一かというとこれはまずありえないということを、改めて示されてるわけ。このような本質的事象の偏在が必ずあるんだという記載は、聞けば納得ということにはなるが、テクニックとして「落とし込む」ことになると、事例が必要。たまたま人に納得してもらうプレゼンとかTVの企画とかでも同じことはあるわけですな。
(続く)

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