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酸味が感染るんですって

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http://rail.hobidas.com/blog/natori/archives/2008/05/post_786.html
“ビネガーシンドローム”警報発令中!
先週、諸河久さんの事務所にお邪魔した際に、「ビネガーシンドローム」という言葉を初めて耳にしました。3年ほど前、このブログでも問題提起したことがありますが、ここ数年急激に広がってきている古いモノクロ・ネガフィルムの加水分解現象を「ビネガーシンドローム」と言うのだそうで、専門誌『写真工業』最新号で詳しく解説されているとのこと。
さっそく同誌を入手して、日本写真家協会の松本徳彦さんの記事「そこが知りたい フィルムのビネガーシンドローム」を読んでみました。それによると、従来は1953(昭和28)年以前に製造された酢酸セルロース(セルローストリアセテート)を用いたフィルム特有の現象と認識されていた加水分解による劣化が、近年1960年代のフィルムでも散見されるようになり、昨年「わが国の写真フィルムの保存・活用に関する調査研究」を文化庁から委嘱された社団法人日本写真家協会としても問題視しはじめているのだそうです。
改めて身の回りの加水分解現象=ビネガーシンドローム事例についてご紹介いたしましょう。まず、最初は外見上は異常が認められないものの、ネガをケースから取り出すとやけに酢酸臭が感じられるようになります。この時点ですでに“発症”してしまっており、後述するように、タチの悪いことに一旦発症してしまったら、現状では基本的に進行を止めることはできません。次にパーフォレーション部からの収縮が始まり、さらに表面にべとつき(糊稠)や結晶の析出が認められるようになります。次第にカーリング(収縮)が強まり、最終的には画像の剥離を伴ってストロー状に丸まってしまい、開くことさえ困難となってしまいます。
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本誌はもとより、『国鉄時代』でも多くの皆さんから古いネガをお借りいたしますが、このところビネガーシンドロームに罹ってしまっていると思われる事例があとをたちません。実は数年前までは、昭和40年以前の特定メーカーの35ミリフィルムだけと認識していたのですが、最近では1970年代、つまりいわゆる“SLブーム”真っただ中のものまで“発症”しているものが見られるようになってきています。メーカーも“傾向”はあるものの決して特定ではなく、諸河さんの事務所で見せていただいた発症例には何とシノゴ(4×5インチ判)さえありました。
言うまでもなく、ネガは私たちの何ものにも代えられない命のようなものです。引っ越しの際にもネガケースだけは業者任せにせず自分で運んだ…というような話も良く耳にします。それだけに蔓延しつつあるこのビネガーシンドロームは死活問題とさえ言えるでしょう。
さらに恐ろしいのはこのビネガーシンドローム、“感染”するのです。発症してしまったが最後、抜本的解決策はありませんが、松本さんの記事によれば、対症療法としては、酢酸臭など少しでもビネガーシンドロームが疑われるネガはすぐにほかのネガから「隔離」する。ネガケースを無酸性の紙製のものに替え、低温低湿(理想的には14〜18℃、湿度35〜45%以下)の環境に移す、などがせめてなしえる処置だそうです。もちろん現在では、症状が悪化する前にスキャナーで取り込んでデータ化しておくのが禍根を残さない最良の方法でしょう。
ちょうど週末。このブログを読まれた方はすぐにネガの保管ケースを再確認されることをおすすめします。しばらく見ない間に、あなたのネガもビネガーシンドロームに罹っているかもしれません。
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鉄道写真趣味では非常に実績、人脈のある編集者の問題点提起であります。諸河久氏もこの道の大家でして問題意識が高いでしょうね。すでにセルロイドで画像を作った映画では(1950年代まで)火災や耐久性のため問題になっていました。
セルロイドはセルロースを硝酸エステルとして修飾した、世界で初めて人工的に作られた合成樹脂。極めて燃え易く、摩擦などによって発火し易いことと、耐久性がないという欠点がある。特に前者の欠点は取り扱いやすさという点では致命的であり、しばしば火災の原因(特に映写機)となった。ことから、日本では消防法などで規制対象物(第5類危険物)に指定され製造、貯蔵、取扱方法が厳しく定められている。引火し易く、映写技術者は以前は防火義務などの関係で免許制になっていたり、引火性の危険物の脇でランプの熱が掛かるため元々引火し易い構造(というかセルロースは爆薬の材料でもある)という問題で、かつ経年劣化が激しいことが問題になっていた。(そういえば引火事故が多発するため、公共交通機関に持ち込むのは制限がかかっていた。戦後まもなくは、商社が汽車に持ち込んだセルロイドの文具の整理を、くわえタバコで仕事をしたことから客車内で引火爆発した事故もある。)
アセチルセルロース 又は酢酸セルロース (acetylcellulose)はセルロースから製造される合成樹脂で、セルロースと無水酢酸とから製造し、のちに製造するための脱水触媒が改良された。酢酸セルロース はセルロイドの欠点を克服したもの。繊維やフィルム・テープのベース材・タバコのフィルターとして利用されてきた。アセチルセルロースの成分はいずれも天然に存在し、若干の生分解性を持つとされている。
-------------引用
http://www.imagicawest.com/westcom/film/doc_f070813.pdf
 燃えやすく,自然発火しやすいナイトレートフィルム(硝酸セルロース)に代わり登場したトリアセテートフィルム(酢酸セルロース)は,保存性においてもナイトレートフィルムよりも長期保存が可能であると思われてきた。しかし,近年,「加水分解(ビネガーシンドローム)」と呼ばれる劣化現象が猛威を振るい,映画保存に関する重要な問題として浮上してきた。
1991 年,Kodak 社は,この劣化を化学反応と高温多湿という環境が誘因となって引き起こされる加水分解が原因と発表した。(参考資料:NFC ニューズレター15 号『ビネガーシンドロ-ムとは何か』) しかし,水分解の発生メカニズムは未だ具体的には発表されておらず,様々な説があるが,どれも今一説得に欠ける様に思われる
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とはいえ、ビネガーシンドロームに“感染”することを事後でなんとかうる方法が経験的に出てきているようです。酢酸臭など少しでもビネガーシンドロームが疑われるネガはすぐにほかのネガから「隔離」するということ・・これは、酢酸の環境下に置かれたら生分解性が促進されるということのようですね。また環境をよくすること、温湿度管理を徹底することで、促進を遅くする行動が効果があることが見えてるようです。とはいえ発症(つまり反応開始)してしまったが最後、抜本的解決策はないとか。また、数年前までは、昭和40年以前の特定メーカーの35ミリフィルムだけのもの・・・・1970年代のものまで“発症”している。メーカーも“傾向”はあるものの決して特定ではない。というトレンドが見えてきている。
これは、ある意味、問題の解析が出来そうですね。もちろん現在では、症状が悪化する前にスキャナーで取り込んでデータ化しておくのが禍根を残さない最良の方法でしょう。
今回は映像資料ですが、画に使う顔料でも鉱物由来でないもののなかには、経年で色調が変化するものがあるそうです。当初はそれでも色々と促進試験(紫外線迅速暴露・サンシャインウエザーとか)を行ったりしてある程度保証していたそうですが、その実験だけでは複合要因があったりして、なかなか現実の条件に合わないことが判ってきました。また山下清氏の貼り絵でもよく似た問題がでてまして、(特に彼の場合は、物資がよくなかったころに劣悪な色紙を用いた事もあるそうで)色調の変化、色あせが問題になっています。
復元作業は相当なスキルと研究が必要なもので、考古学のほかに芸術大学などでの研究実践が行われていますが、意外とこのようなところに工学的ノウハウの投入を入れていく活動を考えてもいいかもしれません。そのときにはいろんな非破壊検査技術なども有効でしょう。

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