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タイムスケジュールの創出方法(1/2)

サマータイムというのがある。
はいそこの人、渡辺美里を思い出しますって?それはサマータイムブルースですな。それではないです。
日照時間が長くなる期間に限って時計を一時間早める(=働く時間を全体的に前に一時間ずらす)ことで、太陽が照っている時間を有効的に使おう、という考え方である。日本でも一時期やっていたのだが根付かなかった。もっとも当時の印刷物には概念どころではなく単に「サンマータイム」とか平気でかいてあったのだそうで、まるで当家のあたりの中華料理屋によーくあるサンマーメンですな。
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「サマータイムは健康に悪影響」睡眠学会が導入反対声明 2008年6月5日(木)20時25分配信 読売新聞
 超党派の議員連盟が2010年の導入を目指す、サマータイム制度について、日本睡眠学会は5日、「体のリズムを乱して睡眠に影響を与え、健康を損なう」として反対の声明を発表した。
 サマータイムは、夏季に時計を1時間進める制度。欧米各国で実施されている。同学会の特別委員会(委員長=本間研一・北海道大教授)は、これら先行実施の国での調査や研究文献をもとに、夏時間への移行後、最長で2週間程度、睡眠時間が短くなり、眠りの質が下がると分析。さらに、体内時計を昼夜の変化に合わせる機能が低下しているため、不眠や朝に起きられないなど睡眠障害に悩む人たちの症状が悪化すると主張した。
 また、学会は、2004年に初めて、北海道の企業が始業時間を1時間早めた実験の結果などをもとに、サマータイム制度導入を全国に広げた場合、医療費の増大や作業能率の低下で約1兆2000億円約1200億円の経済損失が生じると試算した。北海道の実験では、従業員の4割が体調不良を訴えていた。
(注)有限責任中間法人 日本睡眠学会は以下のように主張している・・・・

翌日の朝刊に、記者会見の内容が何社かの記事になっておりました。その中で、サマータイム制度導入による睡眠障害の増加で、1兆2千億円の経済的損失があるとの記載がありますが、これは1,200億円の間違いです。この数字の根拠は、現在日本において、睡眠障害による直接的(医療費等)、間接的(事故等)経済損失を年間約3兆円と推定し(出典、武村論文、老年医学45巻、2007年)、サマータイム導入で春秋の時刻変更後1週間ずつ睡眠障害が起こると仮定しました。2 週間は1年(52週)の約4%に当たるので、3 兆円の4%で1,200億円です。

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ことの中身はhttp://jssr.jp/oshirase/summer_time.pdfのだした答申らしい。但しこの提案の書面は非常に明確な書き方をしており、好感がもてる。転記してみたい。

1.サマータイム制度は睡眠や生体リズムに対する影響を通じて、健康に悪影響を与える可能性があり、健康弱者には辛い制度です。
2.サマータイム制度における時刻変更時に交通事故の増加が報告されており、安心安全の国民的希望と矛盾します。
3.サマータイム制度は必ずしも省エネにはならない。むしろ、医療費の増加や経済的損失により増エネになる可能性があります。
4.サマータイム制度は光熱費等のエネルギー消費(出費)を、結果として企業から個人(家庭)に一部移行させる制度であり、家計を圧迫します。
5.過去にサマータイム制度を導入した韓国や中国、香港は現在制度を廃止しており、また現在サマータイム制度を導入しているフランスやロシアなどでも、この制度に対する根強い反対運動があり、廃止を要求しています。

典拠を知ってみると、一応比較的確実な資料(確度は高いが、事の徳失上100%とは言わない)を持ち込み、複数の仮定を重ねてると言うことを明確にしているのだが、そこをすっ飛ばして報道されると誤解されかねないし、(しかも新聞社は桁を間違えてるしorz)許容誤差が多いことが多いがその中間値が1200億円と言うことらしい。
いまでは日本国内ではもっとも規模の大きい実験だと言えるだろう。但し、この実験では交通機関のダイヤや信号プログラム、放送などのシステムまでずらしたわけではなくて、「大人数で早寝早起きをやってみた」というものですね。この結果を本来のサマータイムの結果として合わせ込むのは無理があるとおもう。大体、日ごろから交代勤務で昼勤と夜勤を繰り返す人や、商売で朝2時に出勤する中央市場の人など、本来の一般勤務の人だけを対象にした研究だともいえるから、かなり実態のずれがあるのだろう。朝、日が出たらすぐ作業をする農家さん、漁業の人、意外なのは風俗営業法にて暦上の夜明けを開始点として営業を認められる業種(爆笑)と言う人には、こういうのは影響ないんですかね。もちろん検討には一定の評価が出来るが。
さて、これを採用しているのはどういう国か。
アメリカ合衆国(2008年現在、ハワイ州、アリゾナ州の大半の自治体を除く。- 3月第2日曜日午前2時~11月第1日曜日午前2時(現地時間基準))
カナダ(一部除く。- 3月第2日曜日午前2時~11月第1日曜日午前2時(現地時間基準))
メキシコ(一部除く。- 3月第2日曜日午前2時~11月第1日曜日午前2時(現地時間基準))
ヨーロッパ各国(一部除く。 - 3月最終日曜日午前1時~10月最終日曜日午前1時(UTC基準))
ロシア - 3月最終日曜日午前2時~10月最終日曜日午前3時(現地時間基準)
オーストラリア(北部:実施なし、西部:試行中) - 10月第一日曜日午前2時~翌年4月第一日曜日午前3時(現地時間基準)
ニュージーランド(一部除く) - 9月最終日曜日午前2時~翌年4月第1日曜日午前3時(現地時間基準)
ブラジル(一部除く) - 10月第3日曜日午前0時~翌年2月第3日曜日午前0時(現地時間基準)
モンゴル
キューバ

 導入国を見るとわかるように、比較的緯度が高いため元々日照時間が短い国(EUはそうだろうね)では、導入のメリットが高いようだ。低緯度の近隣国で導入しているのは、隣接する取引国と時間を合わせた方がビジネス面で有利だから、という面が強そうだ。そこでEUでも南の方では色々あっても不思議がないが、逆にビジネス面が問題になる国がおおそうだ。
日本もそうだったが、韓国、中国、香港など近隣のアジア主要諸国は一端導入したサマータイム制度を、現在廃止した。最近カザフスタンが、省エネ効果がなかったことと健康に悪影響が出たこと理由で、制度を廃止したという。
一方、ロシアではサマータイムの切り替え前後に心筋梗塞による死者が増加している等の理由で2008年に廃止法案が議会下院に提出され、フランスでは、10 年以上も前からサマータイム制度の廃止を政府レベルで検討している。(EU 連合と足並みを揃えることを優先し、廃止には至っていない。)ドイツにも同じような話があるようだ。
そこで、どのような謳い文句がでるんだろうか。
エネルギー節約
たとえば朝5時に日が昇っても、ほとんどの人はそこから1~2時間は寝て過ごしているということを考えると、その分電燈を使えばエネルギーが無駄というわけである。太陽が出ている時間と人間の起きている時間を極力シンクロさせるわけである。エネルギーの節約は、これにはいろいろな説がある。1999年当時の通産省の試算では、原油換算で年間約50万キロリットル(=5億リットル)の省エネになるという。日本が年間で使用するエネルギー量の0.125%だそうな。これは少ないと思うなかれ。最近の原油取引相場を見て、ざっくり80000円/1KLとすると400億円ということになるから侮れない。
逆にサマータイムを実現するためのコストは結構かかる。数年前だったか、日本全国の信号機のプログラムを対応させるのに500億円かかるという話を読んだことがある。飛行機の国際線をはじめ電車の運行ダイヤなど、交通機関にかかる負担はかなり増えると思われる。もちろんインフラとして欧米のシステムをそのままいれればいいという考え方もあるが・・・・
屋外作業の生産性向上
昭和23~27年に、日本でもGHQの元、サマータイムが導入された。当時の日本は第一次産業の従事者が多く、もともと習慣として日が暮れるまで働いていたものだから、さらに朝1時間分労働時間が伸びただけという結果になってしまった点が大きいというが、それ以前に面倒と言うことになろう。そもそも乳牛やお米・魚相手に、今日から1時間早いからヨロシク、などといっても始まらない。毎日の自然が相手の仕事は、漁獲高にも影響が出る。で、今の漁業は大体時間を微妙にあわせなくても、収穫が望める時間を融通設定するんだから、一定時間というビジネスではないですよね。
余暇の拡大 交通事故、犯罪の防止・減少
就業時間が決められている勤め人にとっては、結局朝早く働かされ、終わりはまだ日が高いからという理由で残業させられ、結果的に就業時間が延びるだけという危惧は、昭和23~27年にもあった。但し、これ自体もフレックス業務などある現在本当に意味があるのかなという議論が残る。ここはコンセンサスは得られないだろう。
まあ、余暇ができて、明るいうちに家に帰って余暇を家で過ごすのであれば、確かに事故や犯罪の抑制効果はあるだろう。だが余暇を会社帰りに過ごすのであれば、余り変わらないなあ。まま家で飲んだとしてもだ、人間は24時間単位の生活ですから、睡眠時間をまず減少しないと・・・となると、余り意味がない。
となると、本当の効果はどこにある?ということになる。サマータイムの効果を推測して数値で表わそうとすると、そこには必ず矛盾・利益相反が生じる。いや、どんな変革でも利益相反にならないことは少ない。そもそもWin-Winの関係は、どこかその段階に閑考えもしなかった要因がどこかにありそうだと窺っていい。
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地理的にも産業構造的にも、日本のような国での導入には、いまの状況では参考になる資料が少なすぎる。但し、全国規模で本格的なサマータイム実施にかかる費用がいろいろありそうで、カンバンを架け替えたりまで考えると、経済的な効果はかなり相殺されるどころか、初期は効果を得ることがつらそうである。
となると、どうも精神の健康面、「メンタルヘルス」の議論が残る効果でありそうだが、これとて抜けているように思えてならない。一番評価をしにくい項目ですな。ただ、ローカルに効果を見出すということはあっていいのだろうと思う。業態や会社単位で就業時間を前にずらすなどの試みがあってもいいのではないか。そういう粋な計らいが認められるような社会基盤作りがあるのは、賛成である。但し国全体に展開する必要があるかというと、単なる広報的公開以外に必要性がない気もする。
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さて、大体0時というもの自体の意味合いがあるのかね。
(続く)

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コメント

> 結局朝早く働かされ、終わりはまだ日が高いからという理由で残業させられ、結果的に就業時間が延びるだけ
私は今回のねらいは明確にこれと地球温暖化対策のアリバイ作りの2つだと考えています。
主導している産業界のメリットはそれしか考えられませんので。

投稿: TX650 | 2008年7月 3日 (木曜日) 09時43分

私も「地球温暖化対策のアリバイ作り」が一番大きいと思っています。
就業時間のほうは一応実態労働時間で考えるのが前提だし、行ってこいで、結果として利得があまり大きくないと思っています。(むしろ先に手っ取り早く出来ることがあると思う。)

投稿: デハボ1000 | 2008年7月 3日 (木曜日) 19時27分

> 一応実態労働時間で考えるのが前提
一応は、ですね。
サービス残業とか自宅残業とかが増えると言ったほうがいいですね。

投稿: TX650 | 2008年7月 3日 (木曜日) 22時51分

>一応は、ですね。
そうそう。
サービス残業・自宅残業(いわゆる風呂敷残業)ですが、学校勤務でも企業でも書類を勤務時間内に処理するには能力がオーバーフローしている反面、持ち帰りに拠る企業リスクが莫大な状況で、一般社員でも申請にて自己啓発名義の居残りを許可するのが多い職場もあるようです。

投稿: デハボ1000 | 2008年7月 3日 (木曜日) 23時19分

> 自己啓発名義の居残り
悪質だなぁ(怒)
どんどん労基署に通報してやればいいんですよね!

投稿: TX650 | 2008年7月 4日 (金曜日) 19時35分

法律論もそうなんですがね。こういう一連の動きが社員に有形無形のモチベーション低下を与えますよね。

もっとも、某所では労基署自体がヤミ残業をしていたという問題もあったそうで・・・

投稿: デハボ1000 | 2008年7月 4日 (金曜日) 22時22分

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