« 失敗をどうリカバリするか(2/3) | トップページ | 貧民の貧民による貧民の為の食堂 »

失敗をどうリカバリするか(3/3)

(承前)

http://techon.nikkeibp.co.jp/Monozukuri/top12/
2007年4月号から2008年4月まで『日経ものづくり』に掲載した巻頭インタビュー「私が考えるものづくり」などを再編集して新たなエピソードを多く盛り込んで単行本化した『経営者12人の原点 日本、ものづくりの神髄』からの抜粋です。

-------------------
「鉄の反撃」はチームの力のおかげ
JFEスチール 専務執行役員 スチール研究所 所長 影近 博 氏(1950年生。1972年:東北大工卒。1998年:日本鋼管技術開発本部技術企画部長。2002年:執行役員常務。川崎製鉄との合併後 2003年:JFEスチール常務執行役員(現在は専務執行役員)) 2008/04/22 18:36
鉄鋼業界は、グローバル化が一気に進み、今や世界中がライバルです。世界規模の大会社や新興勢力である韓国や中国、こうした世界のライバルの陣容を見るとうらやましい限りですよ。優秀な人材はそろっているし資金も豊富。その資金をつぎ込んだ素晴らしい研究設備や試験プラントをそろえています。そこで考えるわけです。我々の強みは何だろうかと。僕は、JFEスチールで鉄の研究開発部門を担当していますから、それこそ真剣に考えます。そしてたどり着いた結論は、チームの力。組織としての対応力こそが我々の強みなのです。
 海外勢と日本では、研究者や技術者の行動パターンが違います。韓国や米国は基本的には個人主義なので、顧客から鉄鋼メーカーの担当者に「こういうことで困っている」と相談を受けても、情報はその担当者で止まってしまうことが多い。サンプル品を渡した場合でも、担当者だけが囲い込んでしまう。同じ社内の仲間にも黙っているわけですね。日本の場合は組織の中で情報が共有され、「どうするんだ、どうしようか」とみんなで一緒になって考えます。
ブログランキング・にほんブログ村へ
 組織を重視することに対しては個人の才能をつぶすという批判もありますが、鉄鋼業は研究開発から生産までのプロセス全体を考えると、組織力が大きくものをいう構造になっています。
-----------中断

ううむ、これ実感として良くわかる気がします。韓国も多少その傾向がありますが、鉄鋼業以外の人に聞くと以前はそこまで個人主義的ではなかったという話しもあります。急に変わってきたのはアジア通貨危機からという説もあるようです。決して鉄鋼業は賃金レベルが高いわけでもなく苦労してると聞きますが、個人プレーに走り易いなあとは思いますね。
-----------再開
 というのは、鉄鉱石を溶かすところから、最終的に鉄の製品に仕上げるまでには、大規模で非常に長い工程があり、これを精緻に制御する必要があるからです。一部の工程でわずかな狂いがあっても製品品質を保てない。加えて、新たな製品をこの生産プロセスの中に組み込むには、研究開発部門と生産部門で密接な連携を取る必要があります。これらは個人の力だけでは無理。組織で問題や課題に対応することが不可欠です。まず調整すべき条件を特定し、どんな範囲で条件を設定したらいいか決めなければならない。しかも、長大なプロセス全体にわたって事細かにやる必要があります。こうしたノウハウが必要なので、海外勢が技術でキャッチアップするのは想像以上に難しい。10年たっても追い付かれないと言ったら怒られてしまいますが(笑)。
歯を食い縛って研究開発を維持
――10年前は、鉄冷えといわれ、鉄鋼は斜陽産業と見られていました。
 日本の粗鋼生産量は2003年から2006年まで、4年連続して1億1000万tを上回っていますが、一時は1億tを割り、8000万tにまで落ち込むといわれていました。「もう鉄なんて研究するテーマはないだろう」とも言われました。ここは先輩に敬意を表したいと思うのですが、こうした時期でもブレないで鉄の研究を続けてきたのです。
 これは日本の鉄鋼メーカーの特徴だと思います。他社にも、苦しい時期に鉄の研究開発を死守した人たちが必ずいました。その一方で、バブル期や新素材ブーム、多角化に踊った人たちもたくさんいましたが。JFEスチールでも研究員の全体数は相当減っています。しかし、減ったのは鉄以外をやっていた人たちです。鉄冷えの時代でも鉄に関する研究開発を続け、研究員を維持してきました。今、花開いているハイテン(高張力鋼板)やクロメートフリー鋼板といった材料、そしてプロセス技術の多くは、実はその当時に基礎研究をこつこつやってきたものです。そのときの基礎研究が今になって日の目を見ているわけです。
――プロセス技術にどんな開発例があるのでしょうか。
 例えば、「スーパーオーラック(Super-OLAC)」という鋼板の急速冷却技術があります。これは、連続して流れている高温の厚板や薄板に水をかけて冷やす技術ですが、その水のかけ方を革新しました。言葉で説明すると簡単そうですが、・・・(中略)・・・・「鉄は熱いうちに打て」といわれます。つまり、温度を上げたり下げたりというのは鉄の製造の基本なのです。加熱を一生懸命やっている技術者もいますし、冷却を一生懸命やっている技術者もいます。また、機械をやっている人もいる。そういう人たちが集まって鉄鋼技術が進化していくのです。「こつこつ」と「営々」と、そんな世界なんです。
-----------中断
うーむこういうところは「作りこみで付加価値」ということですから、いかにもしぶとく黙々と・・・という日本のお家芸ですかね。ローリスク、ハイリターンと対外的には思われそうです。
-----------再開
こうした技術に基づいてJFEスチールが掲げているのが高級鋼戦略です。平たく言えば、我々の会社だけ、あるいは日本の鉄鋼メーカーだけしか供給できない鋼材を増やしていく、ということです。高級というのはあいまいな言葉ですが、要は他国では製造できない、非常に生産しにくい、そういう商品をどれぐらい出せるかが勝負を決めます。将来の鉄鋼業界を考えると、汎用鋼材を大量生産する企業と、高級鋼材を中心に事業展開する企業に分かれることになる。高級鋼材を造る企業は世界で数社ですが、その数社のそれぞれが、得意な鋼材種で世界シェアの半分以上を押さえるという感じではないでしょうか。その際に決め手になるのは技術であり、技術を持った企業しか生き残れないと思っています。我々は技術で競争力を高めた高級鋼材で、グローバルな競争を勝ち抜きたいと考えています。
-----------終了
ここはかなり明確ですね。特殊鋼で日本は海外の追従を許さない(というか、海外メーカーも製品を作る能力はあるのですが、量産する能力がない)というのはあります。責めどころはある程度理にかなっている。


2006年の粗鋼生産ランキング
1: アルセロール・ミッタル(ルクセンブルク・・インド資本が入っている) 生産量117.2百万トン  (注:提携はミタルスチールとの合併後も維持)汎用鋼材
2: 新日本製鐵(日本) 生産量32.7百万トン  全般
3: JFEスチール(日本) 生産量32.0百万トン  全般
4: ポスコ(大韓民国) 生産量30.1百万トン (新日本製鐵とは現在も積極的な戦略関係) 全般
5: 上海宝鋼集団公司(中国) 生産量22.5百万トン (新日本製鐵の技術供与) 汎用
6: USスチール(アメリカ合衆国) 生産量21.2百万トン (神戸製鋼所との協調) 汎用
7: ニューコア(アメリカ合衆国) 生産量20.3百万トン
8: 唐山鋼鉄(中国) 生産量19.1百万トン
9: コーラス・グループ(イギリス) 生産量18.3百万トン (現在はインド:タタ・スチール傘下)
10: リバ(イタリア) 生産量18.2百万トン
また違う統計ではこうなっている。
1 :117.2 Mton ArcelorMittal (Global)
2 :32.0 Mton Nippon Steel (Japan)
3 :30.5 Mton POSCO (South Korea)
4 :29.9 Mton JFE (Japan)
5 :28.2 Mton Tata Steel (India) - Including Corus Group
6 :23.8 Mton Shanghai Baosteel Group Corporation (China)
7 :19.3 Mton United States Steel Corporation (United States)
8 :18.4 Mton Nucor Corporation (United States)
9 :17.5 Mton Riva Group (Italy)
10:16.8 Mton Techint (Argentina)
11:16.5 Mton ThyssenKrupp (Germany)
12:16.1 Mton Tangshan (China)
13:14.6 Mton Steel Authority of India Limited (India)[1]
14:14.6 Mton Shagang Group (China)
15:13.9 Mton EvrazHolding (Russia)
16:13.7 Mton Gerdau (Brazil)
17:13.6 Mton Severstal (Russia)
18:13.5 Mton Sumitomo Metal Industries (Japan)
19:12.0 Mton Wuhan Iron and Steel (China)
20:11.9 Mton Anshan (China)
21:11.4 Mton Magnitogorsk (Russia)
22:10.5 Mton Shougang (China)
23:10.4 Mton Jinan (China)
24:10.3 Mton Laiwu Steel (China)
25:10.3 Mton China Steel (Taiwan)
26:9.6 Mton Maanshan (China)
27:9.4 Mton Imidro (Iran)
28:8.7 Mton Usiminas (Brazil)
29:8.5 Mton Novolipetsk (Russia)

まあ、日本の持ち味を生かすには、確かにこの見方しかなかろうとも思う。1位があまりにも大きすぎるからね。

|

« 失敗をどうリカバリするか(2/3) | トップページ | 貧民の貧民による貧民の為の食堂 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/100146/41059071

この記事へのトラックバック一覧です: 失敗をどうリカバリするか(3/3):

« 失敗をどうリカバリするか(2/3) | トップページ | 貧民の貧民による貧民の為の食堂 »