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白熱電球製造中止(2/3)

(前略)
計画ということになると、近視眼的計画と遠方に目標を持つ場合とではしばしば対策が相克することは多くなる。まあ一つこんな例をかんがえてみましょう。
近年出ている自動車の新製品のクレームに対しては
「先にAの故障に対して対策を行うために、○年○月国土交通省に対してリコールの報告をし、全品修理をおこなたが、これが不十分であることが判ったため、対象製品○○に対して、再度リコール修理をおこなう。」
ということは良くあることである。これをよく「不作為を行ったから故の問題」「事象を製造者の経営的作為で変えた事例」といわれる方がおおいのですが、実務に悩殺され最後には体調を崩した私としては、非常に心外である。このような場合、
●暫定対策
●恒久対策
●最終要因分析と設計必須項目への展開
をむちゃくちゃタイトな時間でしなければならず、計画という視点を厳しく採るしかないが、それが製品保証のノウハウと言うところが理解されていないようである。上述のリコールの場合は、既存の状況把握を厳しく行ったうえで、まず暫定対策を行って、取り急ぎ対策をして、直前の顧客への品質保証をして、その効果確認と根源を探り、製品として確実に供することが出来るレベルを提示する段階で、次に本質的原因があぶりだされるという話になる。このようなシステムが見えない(ノウハウであるから見せないともいえるが)からこそこういう再度リコールというと、顧客によっては製品不信となる事例もある。逆に言うと、顧客によっては「そこまで問題を掘り下げて考えてくれるんだ」という好意的かつ信用維持行動ととるのが多い業界もあるのだが、最近、一般民生品は製品不信にすぐシフトする事例が圧倒的に多い。
計画を立てようにも、現象の再現性が取れない、要因が偶発的要素が絡むため、限りなくゼロになる可能性の「計画」の元に開発したのに、予想外の連関があって、問題が拡大されているとかいうと、機構単独の話でなく複合的な条件変化によるものだったりする。これを防止するには「設計を変えてはならない」という消極的対策に陥るともいえる。
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この、消極的対策にこだわるしかないものとして、原子力機器があるようだ。(事故に対する議論や、エネルギー保証などの問題、倫理的とかういう課題をとりあえずかんがえないでおこう。)一部のものに「あきらかに設計変更されるべき旧式の設計」というものを「要因が複合化すると困難」ということで、30年前の設計・設計基準・設計指標を守りきることに努力をしている。というのはこれらの基本設計はアメリカよりの導入であって、それを要因分析すること自体の行為、能力を継承することが難しい側面がある。(多分、うっかり設計の分析行為をすると「リバースエンジニアリング」ということになり、契約上の問題が起きる事も想定される)もっとも、専門的な研究については別途国内でも優秀な研究者が育ってるので、そちらの技術を取り込むもおおいが、基本構成のなかでそれを注ぎ込むのは非常に困難である。従って日本独自の更なるシステム(例:建屋の安全な構成)などが追加される方向にはあるし、検査などに日本の技術を併用し、結果的にアメリカに逆輸出ということはあるようだが、主体性がとれないということになり、管理技術者はともかく設計者のモチベーションはなかなか維持しにくいという意見もあるようだ。
事故の場合はまだ顕在的になる分いい(勿論それに伴う有形無形の社会的損失もおおいのだが、それを知った上での話)。事故以前の問題に関して問題となりがちな物の一つに、計画策定内容の甘さがある。ただしこの甘さというのは後付けで評価されるものになりがちなのは注意しなければなない。我々は預言者(:神の言葉を「預かる」者)となるわけには簡単にいかないのですよね。ただ、最近は計画することで会社の経営者も政治家も預言が得られると信じなければならない、リスク管理という中身の本質的でない一部に起因する脅迫に追い込まれてるように見える。預言と予言は本当はちがうのに。
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ともかく、預言者でない私たちは、計画というリスクも多い事項に対してどうするかというと、

(1):完全に公知の技術や公知の仕事として下請けに徹する
(2):コンセンサスや喫近の事由、役割を提案し、それの価値をより大きな会社・社会(公的機関)に保証してもらって仕事をする。
(3):リスクを背負うことを確実に算定し、その回避技術やノウハウを背負って仕事をするが、そのコストを上にのせる。(創業者利益というものもここに入ると思う)

という選択肢があるのかなあと思っている。
当然、上の項目はあくまで計画という概念がその開発スケジュールの中に入ってるか否かというのもありそうだ。これについては計画というフェーズが業態ごとに異なる側面もあるのでここでは余り深くは入らず、別途考えていきたいが、建築・土木の世界を知った人間にとって見ると、近視眼的設計計画というものはあっても、市場全体の傾向を見て、場合によっては市井の意見の熟成(広報活動)や意見の誘導をすることも含めて考える世界が、機械分野において少ないねえと言うことにショックを受けることがあるらしい。
これは、自動車の開発の初期計画の会社の中で確立している(が社外にはノウハウと言うことであまり出てこない)業態もあり、プラントエンジニアリングには設置マシンの長期的ライフサイクルまで含め、中期的計画を立てるのではあり。、更にプラントの環境企画まで含めるとかなり長い間の仕事になる。(このことからか工学でも化学や冶金では計画概念が強い研究もある。これがないと反応速度などの基礎計画の必要性が論じられない。)
計画と言う概念を機械教育にあったのかというとどうも、学校では教わったことが私も無い。そこで、最近大学を出た人に聞いたら、口をそろえて、技術個々の解析がメインという。研究室単位で学習した人間はいたようだが、メインの仕事ではないようだ。勿論、このことは、研究第一主義でもなく、管理第一主義でもなく、実業界という所に視野をおいた工学系大学の中には取り入れられている傾向はあると見えるが、各社とも秘匿技術としている現状もあり、あまり系統的検討はないようである。古い技術者の中には「そんなもの工学と言う世界ではない。経営の概念だ」と言う人もいるし、経営工学というものにこの項目がはいってるからこそ、機械技術者にその概念を持たせる必要がないという割り切り方をされてるような傾向もあるし、更には経営工学を学んだ人を集中配備してる会社もあるようだ。それはそれでこまるんですけど。
同じ仕事でも、航空宇宙・船舶は計画という概念がかっちり確立されているようである。これらは技術自体が総合的な調整を経て成り立つという傾向があるからかもしれない。それでも、あくまで計画は大学では研究室配属後の基礎タスクというところにとどまっており、カリキュラムにはいるものではないようである。国際的単位認証にもこのような計画という概念を教えることは機械というカリキュラムの中では要求がないし、むしろそれは専門家による専門家のための専門の仕事と認識されているようだ。
そこですがね、計画と言うところに、土木・建築部門などはそれのみの人員を養成している。また航空宇宙についてもそのような集中的管理人員を持っている。ところが、機械も、意外なことであるが家電もそうなのだが、営業部門と工場部門に各々計画を図る人員がいるとはいえ、大概設計員の兼任であったり、販売部門の兼任であったりして、貫通された構成が出来にくいということもある。これでは、片手間仕事の認識にされかねないどころか、アバウトな仕事と認識されてるように見える。これは不幸だ。
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ただし、最近は計画技術の存在意義を記載する文献が初学者向けに売れ始めていることもあり、いいことだとは思う。そのようなものの存在をOn the Job Trainingで、おぼろげながら、つまずきながら、「そんなものいらん」という古参上長の苦言を聞きながらでも少しずつ知り、あるとき計画ベースの仕事を受けて「そんなことなのか」と慄然となった私にとっては、このトレンドには工学教育がある意味実学としての側面に近くなってきたなあと今昔のおもいを感じる。
一番かわいそうなのは、リスクを負うことを確実だが受けなければならない(3)タイプの業務を、そのクリティカルパスが見えずに(2)タイプの仕事として受けてしまうことになる場合。確かにこれを確実にクリアーし、その技術を取り込むことで確実な技術者のスキル向上・技術力の向上・社外の技術力誇示につながることが多いので損して徳を取ったことになるようだ。かくてこういう会社は「向こう見ず」「野武士」「夜戦」とか蔑称なのか畏怖なのかよく分からぬ呼ばれ方をする社風があるみたい。ただ、最近は技術が万能の神のように見る人たちにとって見れば、この行為はブラックボックス(後述)で全然訴求能力にならないのですよね。(ただし技術者の成功体験熟成には効果があるようだ)そのうえ、これが先行技術なのか、確実に成る技術でリスクがあるのかということを甘く見ているから、コストに見合わないことに成る。かといって、(1)のパターンをこぼさず取っていくという会社もあるので、どっちが技術者らしいのかなと自分の中では思っているんですけどね。
(注)ブラック-ボックス [black box] (大辞林 第二版)
(1)電気回路や機械、生物的な系などについて、その内部構造は問題にせずに、その機能、あるいは、それに対する入力と出力の関係だけが考察の対象とされるような過程、あるいは、その装置。
(2)俗に、使い方だけわかっていて、動作原理のわからない装置のこと。
(3)フライト-レコーダー。
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本件は(2)に該当する。

(続く)

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