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白熱電球製造中止(3/3)

(前略)
さて、失敗百選(中尾編)という本がある。この本自体は初学者むけにこのようなロジックで考えたらいいという示唆・手引きとしては適するものと思うが、個々の内容の煮詰めについては非常に荒っぽいところもあり、意見が分かれると思っている。ただし今は本・新聞を権威としてあがめ奉る時代ではない。いわんやnetをや(苦笑)。  (NETではないぞっ)それを前提に読んでいくと、なかなか面白い考え方にぶつかる。
下記記載はいろいろな示唆を含む内容である。専門家ではあるが、ある視点からの意見であり突っ込み甲斐があるとはいえる。それでも、問題提起というだけでも面白い指摘と思う。
-----引用-(同書 P347)--
「企画変更の不作為」について
 筆者らは,まえがきの図A.11で示したように,2004年12月に失敗学会総会で「失敗知識活用評価シート」を用いて,失敗知識活用の組織的な活動を調査した.すると,「製造・検査系」の失敗が「企画・開発系」の失敗よりも大幅に知識活用されていることがわかった.知識活用が低調の企画・開発系の失敗は,一般に実施期間が長期で,原囚が組織的で,効果が運動で,件数が少数である.つまり,フイードバックがかかりにくく失敗知識が扱いにくい.それに組織的で属人的で,失敗の原囚究明は直接に特定人間の攻撃になりやすい.たとえば,初代プロジェクトリーダが会社の常務にでもかつていれば,大きな声で失敗とは誰にもいえず,もちろん失敗の数のなかにも入らない.
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 さらに,国に一度決めたことを「失敗でした.中止します」とは決していわない.官僚は2年間でジョブ・ローテーションするから,その間は少なくとも成功とも失敗とも決めずにいれば,次の職場に栄転できるかもしれない.とにかく不作為を決め込む.そうこうするうちに,社会の環境が変化して決定時の前提がものの見事に崩れて,添加見ても失敗だとわかっても最初の決定は絶対に変えない.しかし誰も失敗といわないから失敗自体が存在しない.筆者は企画の失敗データを集めたかったが,それはとても難しかった.

 企画が失敗すること自体,しかたがない.普通は,企画当初に設計した制約条件が変化する.たとえば,顧客の好みがブーム後に変わるとか,為替が変動して輸出損するとか.しかし,チーフエンジニアは未来の制約条件が確定できないのにもっともらしい企画を立てて組織を活性化させなければならない.現在は,過去と同じものを売って儲けつづけることは,公共サービス以外の分野では難しい.このようにその想定した制約条件が誰がみても変化しているのに,企画変更しないのは明らかに悪意がある.悪意というのがいい過ぎならば,勇気がないといえよう.
 自分たちがエイヤッで想定したホラのような制約条件を,そのうちに真実のように信じ切ることも人間はできる.この製品は絶対売れるんだ,この設備は絶対に役に立つんだ,とNHK番組のプロジェクトXの主人公みたいに信じることは美しいが,撤退すべきときに撤退しておかないと、新規事業だけでなく全体の活動自体が全滅することもあり得るのである.
-------------------終了---
もっともこの台詞は必要以上に強烈な言い方を含めている。「チーフエンジニアは未来の制約条件が確定できないのにもっともらしい企画を立てて組織を活性化させなければならない」という台詞自体がじつは、失敗分析というものの限界を示している自虐的表現である。(勿論筆者も気が付いているが)それでも、現実の世界では更に要件が厳しく「企画が失敗すること自体,しかたがない.」という考えさえ既に甘えと言われている論調に陥っている。元々企画行為を厳しく精査しなければならないことがリスク管理上半ば命じられているのに、業務推進のためには多少の針小棒大行為はかまわないから、副次的にますますシミュレーションなどの高度・深度化した企画検討に時間が掛かるという、思いっきり自己矛盾が内包されているのである。かくて独自モデルは、潰される。
いい事例とは言わないが、判り易い例として至近な事例を挙げよう。新銀行東京が債務にあえいでいる段階で「最初にこの計画に賛同してくれたのは都民みんなではないのか」と知事がいった。この文言は事実だし、新たなビジネスモデルともてはやされた。役所内部・銀行協会以外の反発以外は少なかったはずなのに、動向が変化してしまう現実をみて「企画変更しないのは悪意がある,勇気がない」というのなら、説明責任でがんじがらめに成る結果、それこそ議論のための議論、こんにゃく問答を繰り返すことになる。しかも、どのみち議論が個人個人の視点に偏在するため、それしか議論の道がないと見える。このところの政治家や評論家の時局談義をTVで見てると、こういう屈服さきにありの論調、果てはディベート(詭弁ということでなく、結果ありきの議論構成と言う意味)かよと思う場面を感じてしまう。こうなるとあるのは出来る限りの生の1次データ、素の現実だけで、計画のベースにある真実に近い事象である。どっちにとっても企画ベースで議論すると奈落に落ちるようで、現実はなにも変わらないことになるのではと思う。加工されるデータベースで議論するからこじれる気もする。ところが、生の1次データ、素の現実を胃に落とし込むこと自体、知的能力のオーバーフローになることが普通の人材ですよね。
となると、この解決は、どういう前提でこのように推論をあってこのようにすることを進めたいという、筋道のたった説明がでるような議論を出しつくすことをするしかなさそうだ。しかもそれがもしあまねく承知されていても、未来永劫までの保証が出ないのに、それを担保しなければ納得されない。そのリスクを背負うことを本当に政治家だけが背負うことにして、それですむということはなんかあざとい世界という認識になる。そこで、議論をどのように作りこむかを「対決ありき」「議論ありき」「イニシアティブを取る事が先」という点からすこし外しておかないと・・・
(注:議論が詭弁に摩り替わる危険性はディベートに限らない。「危険な議論は存在せず、議論そのものが危険」という言葉もあるようだ。)
今般の電球の製造中止という考え方自体も、これぐらいの理論構築・プロテクトを考えないと説明責任というところで頓挫する。それでなにも進まないということに成る可能性もあるが、それをしないで単独的に強引に誘導するのを考えたら、得失はある程度明確化するのではないのだろうか。一応自由主義の中にいるんだから。
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(PS):1・・・余談です。
皆さんの家庭で、シェードのなかに電球を入れ密閉して、廊下の電球などにお使いの方がいます。この電球をホワイトランプ(シリカ球)でお使いの方いませんか。まぶしさを防ぐために電球内部に白く塗装をしているのに、密閉シェードでさらに囲ってしまうのは、ちょっともったいないですよ。
私は、同じ値段のクリヤーランプ(裸電球)にして、感覚的に比較してみました。1クラス下のワット数の電球を選んでも遜色がないような感じがします。シリカ球と裸電球とはカタログ上では、配光曲線の表示値(光度)はほとんど変わらない仕様のようで、多分に全閉シェードの仕様にもよりますが、こういうことで気軽に省エネができるというのもあります。
こういうミスマッティングって結構あるかもしれません。一度見直してみたらいかがでしょう。
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(PS):2 どうも利得が出来ない製品と言う認識があったみたいですね。マツダランプからの由来をもつ製品を撤退するようです。但し、市場縮小の中、残存者利益という形をとらないのも戦略かもしれません。全数やめるわけでなく、有利性のあるものは続けるらしいですし。
[経営戦略]東芝ライテック、白熱電球の製造を中止へ、CO2削減で2010年をメド 2008年4月14日21時35分配信 BCN
 東芝ライテック(恒川真一取締役社長)は4月14日、CO2の削減を目的として2010年をメドに一般白熱電球の製造を中止すると発表した。これにともない、06年度実績で年間約4000万個製造している生産ラインをすべて廃止する。甘利経産相が「家庭用照明の白熱灯を省エネタイプの電球型蛍光灯に総入れ替えしたい」と発言したことに呼応するもの。同社では今後、電球形蛍光ランプやLED照明などの省エネ製品に置き換える事業活動を加速する。
 対象はボール電球を含む一般白熱電球でE26口金のもの。ホワイトランプ、長寿命ホワイトランプ、セミホワイトランプ、ウスシリカランプなど81機種。2010年度中に製造を中止する。なお、ミニクリプトンランプ、ハロゲンランプ、反射形ランプなど、現在の電球形蛍光ランプ等に置き換えできない、小形の白熱電球の製造は続ける。
 同社は120年前に日本で最初に白熱電球を実用化。さらに1940年、日本で初めて蛍光ランプを製造した。1980年には世界初のボール形電球形蛍光ランプを実用化。電球形蛍光ランプの「ネオボール」シリーズは、発売以来累計で約1億2000万個を販売したという。白熱電球を、こうした電球形蛍光ランプに切り替えることが温暖化防止に有効という判断のもと、一般白熱電球の製造中止を決めた。これにより2010年には年間約50万tのCO2削減に貢献できると試算している。
 白熱電球では松下に次ぐ35%ほどのシェアを有する同社だけに、業界への影響は大きい。今回の決定については「CO2削減に何らかのアクションを取らなくてはいけないと考えていた矢先、甘利経産相の発言がきっかけになった。120年の歴史があるだけに製造中止を惜しむ声も社内にあったが、環境問題を優先した結果の決断」(管球事業部)としている。

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» 読後評:「失敗百選」 41の原因から未来の失敗を予測する  素晴らしい!  [日々 是 変化ナリ 〜 DAYS OF STRUGGLE 〜]
これほどためになる本はめずらしいと言い切ってしまったほど気に入った新書「失敗は予測できる」の著者、中尾政之氏が先に書いた本なので読んでみた(発行は2005年) ちょうどアップしようとしていたら、タイムリーな話題がネットに! <日航機ニアミス事故の控訴審、管制官2人に逆転有罪判決 <静岡県焼津市上空で2001年1月、日本航空機同士が異常接近(ニアミス)して <乗客57人が重軽傷を負った事故で、業務上過失傷害罪に問われた国土交通省東京 <航空交通管制部の管制官両被告の控訴審判決があった。  新書だっ... [続きを読む]

受信: 2008年4月12日 (土曜日) 11時06分

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