« 人生送りバント | トップページ | 「バカに見える話し方」例 »

鋼材は鮮度が命

ドラム缶にハイテンを使う理由 2008/03/26 19:53 原田 衛=日経ものづくり
 先日,ハイテン(高張力鋼)の鋼板を使うことで,ドラム缶を薄肉化して軽くしたという発表があった。開発したのは,ドラム缶や圧力容器を手掛けるJFEコンテイナーと,JFEスチールである(PDF形式のニュースリリース)。
 製品名は「エコフェザー」という。これまで日本国内のドラム缶では1.2mm厚の鋼板を使っていた。これをハイテンの採用で1.0mm以下とし,重さは22kgと従来に比べて2kg減らした。今回使ったのは,390MPa級(40kgf/mm2級)の鋼板(ハイテンの定義はさまざまだが一般的には340MPa以上だとハイテンと呼ばれることが多い)。JFEコンテイナーによると,窒素(N)の添加などを行っていて,ハイテンながらもドラム缶の胴に凹凸を付けるといった加工はSPCC(通常の冷間圧延鋼板)並みに容易で,ドラム缶の形にした後で200℃弱で焼き付け塗装をする工程で強度が増すようになっているという。
 びっくりしたのは,軽い上に「安い」ということ。販売価格は,従来品に対して5%ほど安くなるという。これまでは,製造に高い技術力が要求されるハイテンの鋼板を使うと,薄く軽くできる代わりに高くなるというのが普通だった。今回のハイテンは限られたグレードであることは確かだが,従来のトレードオフが消え,ハイテンを使うことで軽さと安さを両立できるとなれば,鋼板をめぐる状況が以前とはまったく異なる領域に突入したことを示しているのかもしれない
 ブログランキング・にほんブログ村へ

理由を聞いてみたところ,やはり「鋼材価格の高騰」が背景にあるそうだ。中国をはじめとする新興国の鋼材需要の盛り上がりや,いわゆる「資源コングロマリット」と呼ばれる巨大企業が鉱山などの囲い込みを行っている中で,鉄鉱石やコークスなどの価格は急上昇している。ハイテン化の際のコストアップ分よりも原材料の高騰が上回ったため,ハイテンを使ってでも鋼材量を減らしたほうが得,という時代に入ってきたということだろう。
 ひょっとすると,この動きはほかにも波及するのかもしれない。例えば,自動車。まだまだ構造部材の質量ベースでは半分近くを占めている軟鋼板だが,最近の軽量化重視の流れもあって一気にハイテン化が進むかもしれない。さらに,建築用の鋼材などで大量に使われているH型鋼などもハイテン化によってコストを抑える動きが加速するかもしれない。
 ハイテンをつくれる鉄鋼メーカーは限られていて,日本の鉄鋼メーカーは中でも抜きん出た存在といわれている。素材高は喜べないが,それによって技術力の高さが今よりもずっと価値を持ち,技術革新がうながされる可能性がある---。そういう非常に端的な例をドラム缶に見た気がした。
-----------------終了
今回使ったのは,390MPa級(40kgf/mm2級)の鋼板(自動車規格:JSC440BH以下)ですな。このクラスだとプレスの型設計はふつうの鋼材とそこまで型設計が変わらないとは言えます。(ドラムの胴だと塑性加工法が違うため一律にはいえないが、)JFEコンテイナーによると,窒素(N)の添加などを行っていて,ハイテンながらもドラム缶の胴に凹凸を付けるといった加工は通常の冷間圧延鋼板並みに容易で,ドラム缶の形にした後で200℃弱で焼き付け塗装をする工程で強度が増すようになっているという。・・・ううむこれこそはBH鋼板ですね。BH(ベークハード)鋼板は単にハイテンというとちょっと問題です。
この鋼板、加工時には一般的な鋼板と同じような強度で、加工性もいいのですが、その後、加熱保持をすることにより、焼きが入ることで硬度がアップするというものです。焼くことといっても用いる場合焼付塗装をする熱で硬くなる(よってベーク・・パンを焼くイメージ・・・と硬い(ハード)という名前ですな)というものですから、特段の工程増加が生じるわけでないのです。
問題は、『鮮度』です。最初に熱を与える事によって硬くなるということをいいましたが、じつは常温下においておいても少しずつ硬度が上がってくるのです。(常温時効効果)従って塑性加工をする場合、ロット毎にいつ材料を作ったのかを確認するが必要で流通面での問題が出てきます。ミルシートに圧延時期を明確に書く、先入先だしを徹底するということになっちましますよね。そのため、特殊鋼で海外に輸出できる材料にも関わらず、鮮度が肝心なのでなかなか出せないし、また均等に焼きが入る設備を持ってない会社には出せないわけで、意外と売れなかったという面があります。
更に言うと、電気的に発熱させることによって接合を行う(電気)溶接という工程においても、接合の是非の管理を電流で行うことがおおいんですが、こちらも、「鮮度」が大事だということになります。
-----------------
BH鋼板を使うというのはそういう意味でデリバリーが言いところで使えないという問題点がありますが、この会社のように鉄鋼メーカーの直系だと供給調整もし易く一つの手法だと思います
従来のSPCC(冷間圧延鋼板)と比べての得失を比較してみましょう。

有利:ほとんど塑性加工の工程変更なし。塗装工程での温度管理だけで強度が高くなる。昔からある鋼種で材料供給が日本国内では安定。強度が高くなるので薄く出来る。
不利:間接工程が複雑(特に材料のデリバリー的管理)、海外での加工不利、鋼材のメーカー間の互換性が乏しい。加工後微少な寸法が変わるのでそれの管理ができにくい
ことが挙げられる。

ここで代わってきてるのは、材料枯渇時代・資源の抱えこみ時代と、再びの『持てる国・持たざる国の顕在化』を見越して、付加価値のおおい材料を使うほうがよいと言う先祖回帰でもあります。機械加工の歴史を考えると、こういうような事象の移動が出てきます。例えばこういうのはどうでしょうか。機械加工の技術史を見るとこのトレンドがありますね。(1)→(2)→(3)の順。
(1)削り代を少なくしたニアシェイプによる生産。削り代と素材重量が製造コストを支配した。
(2)ニアシェイプでは工数が上がるため、自動機にてカバーできるように切削加工に移行したり、鋳物も余り細かいものにせず、鋳物などの生産性を向上するものだったり、鋳鋼のように強度部材はあえて管理しやすい面から避けられるような工法も出てきた
(3)環境先行と言う、あまりにも今までの価値観を俯瞰した価値の存在に工業全体が触れ回っている。材料の囲い込み時代を迎えて材料単価と永続的使用を、生産性等を考えると、できるだけ維持するような方向性がある。従って材料の単価より付加価値と特異性などを付加価値として訴求するしかなくなってきた。

という見方もあるんではないかと思うのです。勿論事象によっていろいろあるんですが、このBHの使い方は工場経営というところを突き詰めた、今までではあまり考えない視点ということに急に気が付いたのです。
----------
『ひょっとすると,この動きはほかにも波及するのかもしれない。例えば,自動車。まだまだ構造部材の質量ベースでは半分近くを占めている軟鋼板だが,最近の軽量化重視の流れもあって一気にハイテン化が進むかもしれない。』
ううむ、これはちょっとうがった可能性があるのではないでしょうか。構造部材の質量ベースという評価の見方は、一般性のある見方ではあるようでまあいいとしましょう。ですが、乗用車の外板にハイテン材を使えないことが多いのは、意匠のフレキシブル性が乏しくなるという側面があるという事も聞きます。確かにハイテンで自動車全体を作り軽くしたという車種はあるのですが、自動車修理工場で補修が出来ないという理由がある上に、デザインを工夫しようとしても「作れない」とか「歪が出てしまって・・・」と言う話もあります。少しずつ進行して行くとは思いますが、日本国内専用の仕様を作ること自体がリスクが多い現在、海外車種まで展開しなければなりたたないという設計の手数を考えると、少し疑問がのこります。引いて言えば、商用車の一部に展開できるということはいえるとは思います。
新しい技術を、取り入れることが、既存の生産量や工程、人員、ノウハウ、インフラを引き継ぐことを前提にしないというのならいいのですが、そういう投資をするには地道な検討が必要になります。ただしその検討自体を投資と言う解釈にしてしまうと、答えが出ないという気もしますし、そうなって新規開発のストーリーをがちがちに決めなければ会社の世間的な責務を果たせないということになっているのです。

|

« 人生送りバント | トップページ | 「バカに見える話し方」例 »

コメント

 私は、以前機械技術者たちが、グローバリゼーションは材料を平板化するという説を唱えていたのを思い返します。
 グローバル=一物一価であるから、鉄=鉄鋼材料=特殊鋼ということでずいぶん金型材料の価格は不当だということを延々と聞かされました。こいつ馬鹿か?鉄鋼材料ってのは他の全合金系をすべて合わせてもそれ以上広大な世界が形成されている多様性の高い世界なんだと。だから同じ鉄基合金でもまるで他の合金系のようにふるまう鉄基合金がざらにあるという基本がどうも大学では教えられていないんだなと思った。

投稿: アマデウス | 2008年8月10日 (日曜日) 22時07分

こんにちは
>グローバル=一物一価
というのはざっくりいうとずれては居ないでしょう。(厳密にはいえないことですが)大いなる問題は
>鉄=鉄鋼材料=特殊鋼
という論旨です。誤解を恐れず概論すると、製造と言うより緻密な品質管理で付加価値を与えているところは見えにくい人もいるのだと思います。たまたま金属分析をしたとかの環境に有った人はまず解しないものですが、そこまで遡るしたことが無い人には、実務経験でOJT習得しないとわからないと思います。

投稿: デハボ1000 | 2008年8月11日 (月曜日) 00時01分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/100146/40642939

この記事へのトラックバック一覧です: 鋼材は鮮度が命:

« 人生送りバント | トップページ | 「バカに見える話し方」例 »