« ポン・・・ジュース | トップページ | 吸収石油(泣) »

流体機械で落語

一時、家庭用エレベータをつけることが流行したことがあります。油圧シリンダーをつかったものでした。介護などを考えると、当然あるべきことだったのですが、じつは当時の方式である油圧式エレベータは余りにも電気代が掛かる(機械損失が大きいため)という欠点も出てきて、最近は一時ほどは使いません。その当時この研究をしている専門家のところに通ったことがありますが、音の問題が一番問題、その次に施工の簡易さでして、電気代はあまり技術課題として上がっていなかった気がします。確かに、油圧ポンプは配置場所を考えれば、音の遮蔽は楽ではあります。バブルの時期ですから、そのあたり重視しなかったみたいです。従って、油圧エレベータより旧来の電動式エレベータを改良したもののほうが家庭用としては今は普及してるようです。反対に、大きな荷物を上下に動かすものとしては安全でもあるからか、油圧式は工業用に使われる事がますます多いんですね。
このエレベータに使う油圧(水圧)シリンダーに長ーく伸びるテレスコピック構造(telescopic、望遠鏡で拡大すること、または望遠鏡の筒のように伸び縮みできること。自動車の用語では、ハンドルの位置が軸方向に前後に調整できること。)というのがあります。テレスコピックシリンダ(例えばこれとか4段というすざましいの)もありますね。首が長そうですな
ブログランキング・にほんブログ村へ
------<てれすこ>-----------
一席お付き合いの程を願います。
いやあ、あたしなんか、長ーく技術のお仕事なんぞをやってますと、いろいろ、けったいなものに出会うものがあります。ロッドアンテナってご存知ですか。ラジオの後ろに小さなアンテナがあって、聞くときにはそれを長ーくのばしーのってありますよね。また、講演なんかで差し棒というのがあります。寄席なんぞではまずケーシー高峰師匠ぐらいがお使いになるかなあというものですが、手で伸ばすと段つきになってまして、すこすこすこと伸びる、すこすこすこと縮むのですね。同じようなのは釣り棹の高級なのにもあるそうです。

で、この首がながーく伸びるのはどこから来てるのかというと、覗きめがね・・つまり望遠鏡からきてるんだそうです。英語でテレスコープなんていいます。なにがテレでなにがスコープなんかということは分かりませんが(苦笑)なんとなく高級そうで、なんとなく面白そうで・・・と言うことになるでしょうね。というわけで、ついつい簡単にして「テレスコ」なんていいますと、業界以外の人には「まあなんてしゃれた・・・」となること請け合いです。
西洋の珍しいものということで、まあ電気とあまり関係ないんですが、名前を付けられた「電気ブラン」なんてんのは有名ですよね。明治時代には電気が珍しかったからこそ誕生した、ブランデーベースのカクテルです。電気ブランは、その度数の高さ(当時は45度)で口の中がしびれる状態と、電気でしびれるイメージとが一致していたため、ハイカラな飲み物ということだそうで、なかなか乙なものではあります。他にもたこ焼きの原型として、下味をつけたこんにゃく・筋肉をいれた「ラジオ焼き」というのもあったそうです。これも当時としては単に珍しい最先端のものとして扱ってるわけですな。まあ何でも新しそうな名前を付けたら喜ばれるというわけですね。いつの世も一緒ってもんです。
------------------------
ある漁村で、正体不明の珍魚が網にかかった。今の水産庁の言い方ですと『不明魚類』とかいうそうですね。なんとか水揚げしたものの、専門家の漁師たちにも名前がわからない。そのうえ古老に聞いても分からずじまい。その場で食べるとか捨てるとかすればよかったのだが、命を掛けて食べるのもいやだ。さすがにみんな気になると夜も朝も無いということになって大騒ぎになってしまった。これでは始末に置けないということになりまして・・・困った漁師たちは奉行所にその魚を持って聞きに行ったのですが・・・
漁師「お願い申します。」
役人「何じゃ。」
漁「こげな魚が捕れまして、相談ぶちやしたが、何ちゅう魚だかわからねぇ で、お役人様に聞いたら分かるべぇと、ぶらさげてきたでごぜぇます。」
役「しからば本日、この沖合いにて珍魚が捕れたか。」
漁「金魚ではねえです、赤くねぇから。」
もとより役人とて知るはずがない。役人たちも困り果て、大勢相談の議論の末、奉行の耳にまで及んだ挙句、その魚の魚拓を高札に貼り出して、魚の名前に懸賞金をつけた。
曰く、「このたび、かようなる珍魚が捕れた。その名前を存知おる者は、役宅まで申し出よ。褒美として百両金つかわす。」
これがうわさをよんで評判になり、近在から人が押し寄せる。食べたらば万病がうせるとか、首が伸びたり縮まるとか本当とも嘘とも付かぬ噂話ばかりが周りに広まり、かえって街は騒然とし始めます。
それに目をつけたのが、多度屋茂兵衛という南蛮物を商うが、裕福でない商人。
茂兵衛「お願いいたします。」
役人「何じゃ。」
茂「村はずれにおります、多度屋茂兵衛と申します。先ほどお張り出しになりました魚の名前を存じております。」
役「珍魚をこれへ。」
茂「へえ、これなら確かに存じております。首が伸びるところから南蛮で『てれすこ』と申します。」
もっともらしい理屈をつけるものの、その実あまりにでたらめを申し立てた。頓狂な名前を不審に思う役人。だが、役人の方も本当か嘘か証明できない上に、能書きがついている。
役「ご同役、てれすこじゃ。」
同役「てれすこ?てれすこで百両は高いな。少し値切ろう。」
高札を立てたこともあり、値切る訳にはまいりません。しぶしぶ懸賞金の百両を支払うと、茂兵衛は喜んで引き下がりました。
この顛末を奉行に申し上げると、これは臭いと奉行は眉に唾をしました。ですが、やはり役所がすなおに騙されたなんていえませんな。いつの世も役所ってのはそういう宿命をもっております。ただ、この奉行はあたまがよかったのですな。一計を案じました。
まず、魚を干物にしました。干されて形の変わったその魚の魚拓を取りまた辻々に張り出します。
「このたび、また、かようなる珍魚が捕れた。その名前を存知おる者は、役宅まで申し出よ。褒美として百両金つかわす。」と、前と同じような高札を出した。
計略とは知らない茂兵衛、欲にかられてまた奉行所に出向く。
茂「村はずれにおります、多度屋茂兵衛と申します。お張り出しになりました魚の名前を存じております。」
役「おや。いんぬる日、かの珍魚をてれすこと申せし茂兵衛だな。珍魚をこれへ。して、このたびの珍魚は何と申す?」
茂「へえ、これは面の形が出っぱったり、ひっこんだりしとります。然るにこれは南蛮で『すてれんきょう』と申します。」
役「これ!多度屋茂兵衛!よく承れ、これはいんぬる日、そちがてれすこと申せし魚を、干しただけのものである。お奉行をいつわり、百両かたる不届き者め、入牢申し付ける!!」と、たちまち縛られてしまう。

さあて、えらい事になりました。お調べが始まります。けど当時のこと、この魚が本当はなんというものか誰もわからないまま話が進んでいるのですな。正面にお奉行様がすわり、色々経緯を吟味の末
奉行「多度屋茂兵衛。その方、かの珍魚を『てれすこ』と申せし魚をまた『すてれんきょう』と申し、上をいつわり、かくて百両かたりとるとは不届きなやつ、打ち首申し渡す。」
茂「打ち首・・・・首を詰めてしまうのにございますか。」
奉「左様。申し残す事があれば、何なりと申せ。お奉行(かみ)の慈悲にて、一つだけ聞き届けてつかわす。」
茂「しからば、女房子に一と目お引き合わせを願わしゅう存じます。」
かみさんがやせ衰えた姿で、乳飲み子を抱いて出頭した。
おかみさん「あなたが牢に入ってから、一日も早く晴天白日の身になれますよう、首を長くしてお待ちしておりまして、願い事成就のため断ち物をいたしております。」
いやあ貞女ですな。要するに願掛けの一つです。亭主が身の証が立つようにと、命を助けたい一心で断ち物をする。当時はよくあったことです。断ち物にもいろいろありまして、茶断ち、塩断ち。このおかみさんは、火にかけたものは一切口にしない、火もの断ち。唯一赤ん坊のお乳が出ないのはかわいそうなので、そば粉を水で溶いたものをすすっていたという。
茂「それほどわしの身を案じてくれてありがたい。もう死んでいく身、思い残すことはないが、その子が大きくなっても、『イカ』の干したのを 『スルメ』と言わせるな。」
奉「はっはっは。多度屋茂兵衛、血迷うたか。言い残す事もあまたあろうに『イカの干したのをスルメと言わすな』とは片腹痛い。イカは干せばスルメと名が変わる、これは道理(ことわり)じゃ。イカは干せばスルメ……え″ぇ~~~奉行に謎を掛けよったな……。」
うまいですな、昔は控訴ってものが出来ませんが、妻子への遺言なら差しつかえない。生でイカ、干してスルメと名が変わって不都合なし。それなら、生でてれすこ、干してすてれんきょうで良いではないかと言うわけ。
奉「多度屋茂兵衛、言い訳が相たった。かかる際にも知恵の廻る豪胆さ、生かしておけば世の中の役に立つやも知れぬ、相分かった。その方に罪は無い。」
首のなくなるのが一転し、首がつながり長くなった。しかもスルメ一枚で助かった。あたりめェ(=あたりめ/当たり前)の話。そもそもかみさんが火物(=干物)断ちをしたから助かった様なもの。大体テレスコだけに待ってるかみさんの首も長ーくなるってもんだ
---------------------------
(PS)
てれすこの語源は「テレスコープ(望遠鏡)」、すてれんきょうの語源は「ステレオ鏡(立体眼鏡)→双眼鏡」が有力。
●元ネタは、落語の祖、安楽庵策伝著の醒睡笑、巻の六-うそつきの二。
 『摂津国の兵庫の浦(現・神戸市)へ、珍しい大魚が上がったが、その名を知っている者がいない。この浜に、物知りの太夫という人がいたので、それに見せて聞くと「これはほほらほという魚だ。世間に知っている者のない珍魚だ」と教えた。そこで公方様(天皇、朝廷、室町以降は征夷大将軍)に差し上げようとなり、持たせて京へ上らせた。公方様も名前が分からず、例の物知りの太夫を呼んで名をおたずねになると、今度は「くくらく」と申し上た。前にいったのを聞いていた人がいて、「この前いったのと違うじゃないか」と聞きとがめると、「されば、ぶえん(生魚)の時はほほらほ。今は鮮度が落ちたので、くくらくというのだ」といった。(とかく本当のことでなければ、何の役にも立たぬというものだ)』

|

« ポン・・・ジュース | トップページ | 吸収石油(泣) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/100146/40168658

この記事へのトラックバック一覧です: 流体機械で落語:

« ポン・・・ジュース | トップページ | 吸収石油(泣) »