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破損と言うものは隠れる(1)

過日、小林英男 横浜国立大学特任教授(東京工業大学名誉教授)のお話を聞く機会に恵まれたのでいって来た。http://kenkyu-web.jmk.ynu.ac.jp/Profiles/0023/0001100/profile.html
この講演のオーガナイザーは、原子力関係の人らしく、他の講演者には、日本原子力技術協会理事長の石川迪夫さんもいらっしゃったので、参加者もそちらが多く、圧力容器という視点で見る人が余り居なかったのである。(これは誤解されそうですね。原子力という意味では圧力容器の概念は当然深いかたはいらっしゃるのですが、安全の持たせ方などの見かたが、かなり違うのでということ)
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ということで、話は破損解析の時の、多次元的要因分析の話に結構時間を割かれた。材料破損の原因という意味では熱応力+流体応力・材料強度・振動の3つの相互連携解析ということでの解析が必要であるが、各々がこの連携要因を理解できないほど複雑化しているため、そのとりまとめが必要だということであった。理論的解決策はなかなかあっても、そこをどのように見つけていくののか。予測するのかと言うことに関しては試験と実績蓄積の上に、システム構築を積み重ねていくということであった。
で、自分の本を勿論推奨された。
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この話の中で出てきた話題です。エキスポランドのジェットコースターの件がでてきました。

  本質安全の認識の欠如
□遊具であっても乗り物(動く機械)
□乗り物の本質的危険
  車軸・車輪が高速で回転
  車体が振動(脱輪)
  車体が衝突(走行時と停止時)
□本質安全の認識の欠如
  国・地方自治体・経営者・検査員・客の全て
□保守管理と検査の形骸化
  経営者と検査員

認識の欠如ということは至極事実です。というか現代の機械はその大きな目的を「存在感の限りなき薄さ」と旨にして動いていたという見方もあります。飛行機のように、厳密な検査を伴うものは、バックグラウンドに「厳密な検査と管理」が使用者に刷り込まれている分まだいいかもしれないです。本当は同じような検査・設計物の評価をしなければならないのだが、その概念がなかなかないのが現実なんではないかと思います。
また本質的に安全(それは人命と言うところに限らず、経理上の安定など経営指標的意味の含む)と言う意味がなになのかということ自体を既に、日本人が持たなくていい世界になっているのではないでしょうか。
よく、当たり前品質ということがいわれますが、あたりまえ品質のあたりまえとは、それを満たさないと顧客不満になってしまうことで、そして魅力的品質の魅力的とは、それがあると嬉しい・感動するなどなどといいます。商品企画の場面では、購買層の満足度を評価するうえでは、絶対に考えなければならないものと思います。ただ、当たり前の期待度が非常に高くなると、もうそれがなくなることが想定されなくなるものでありましょう。

品質のもうひとつの分類には、顧客の満足度や購買意欲に与える影響度で分類がある。
(a) 当たり前品質(must-be quality)
 当たり前品質とは、あって当たり前と受け止められている特性である。あって当たり前と思っているので、それが満たされている時よりも、それが欠けている時に気が付く。私たちはその特性が満たされていないことを不満に感じるが、満たされているからといっても、そのことを当たり前だと感じるか、あるいは全く何も感じない。つまり、当たり前瓶質は“不満足がない”という状態の品質である。全て揃っていることを当然と思い、少しでも欠けている欠陥と考えられてしまう品質である。一般的に、信頼性や耐久性が該当している。また、この品質は後向き品質(backward quality)とも言う。
(b) 一元的品質(one-dimensional quality)
 一元的品質とは、私たちは自分のニーズがうまく満たされないとがっかりとし、うまく満たされれば、満たされるほど満足感を感じる。例えば、クルマの場合、価格や燃費、馬力等がこれに該当する。
 最近ではニーズが満たされていない時は“不満足である”という当たり前品質の性質を強く持つようになった。逆に、ニーズがうまく満たされた時は、“満足である”という魅力的品質の性質を強く持つ。スペック主義の反省から、それらの中間は閾値として中立的である。
(c) 魅力的品質(attractive quality)
 魅力的品質とは、私たちをよい意味で驚かせる。私たちもやってもらえるとは思っていなかったニーズ、誰もが期待していなかったニーズを満たすことになる。期待されていなかったので、なくても意識せず負の効果はないが、あれば正の効果を持つ。魅力的品質は強化すればするほど、その効果は比例的以上に大きくなると考えられる。顧客満足度はある意味では、魅力的品質そのものである。この品質は前向き品質(forward quality)とも言う。

但しよく販路に乗る製品には、魅力的品質の創出ができているわけであるが、この感覚は時期によって変わってくるんですよね。例えば 自動車の大きな魅力的品質は、明確なコンセプトと特徴的なスタイルということを聞きますが、魅力的品質はすぐ追随模倣され、日々陳腐化するようです。前は『魅力的品質』だった特性が、すぐ『当たり前品質』になるのみならず、流行遅れということで欠点になることすらある。
このような中で不易流行(:松尾芭蕉が『奥の細道』の旅の間に体得した概念。「不易を知らざれば基立ちがたく、流行を知らざれば風新たならず」即ち「不変の真理を知らなければ基礎が確立せず、変化を知らなければ新たな進展がない」、しかも「その本は一つなり」即ち「両者の根本は一つ」である。「不易」は変わらないこと、即ちどんなに世の中が変化し状況が変わっても絶対に変わらないもの、変えてはいけないものということで、「不変の真理」を意味します。逆に、「流行」は変わるもの、社会や状況の変化に従ってどんどん変わっていくもの、あるいは変えていかなければならないもののこと。)となると、やっぱり当たり前品質を確実に維持していくことが必要なのですが、ところが「当たり前品質」と言う概念自体時々刻々変わっていて、それを追従していくのも大変です。しかも「当たり前品質」の存在自体もどこの製造者も見えないようにするし、見せた段階で「それを売りにしなければならんのか」ということで、魅力的品質を下げるというう負の価値を与えることもあります。じつは「当たり前品質」の維持は企業の品質保証で一番苦心するところですが、価値創造に結びつきにくいものでもあります。
例えば、自動車の大きな魅力的品質は、明確なコンセプトと特徴的なスタイルということなら、明確に「安価・安全・安心」。特徴的に「トコトンまで簡略化したスタイル」とした場合、今度は経営的に成り立つ、一般の人に取り入れられるものかというと、「国民の皆様」に取り入れることができるかと言うと・・難しいとはおもいますね。要するにここで、品質の概念は購買層の認識の程度によって決まるわけです。そして購買層の中に経営者層も全て内包されてる場合が少なくないんです。
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余談ですが、HPを当っていると日本数学会のページにこんなのがありました。ううむ。流行によってメシを食む人間が多いのも事実ですから、こうなるのは必然ではあるんですが。
昨今は、「不易」より「流行」が重視される風潮が顕著です。社会、特に企業からは「即戦力になる人材」や「直ぐに役に立つ知識」が期待されるようになりました。しかし、「即戦力になる人材」は往々にして基礎がしっかりしていないために寿命が短いことが多く、「直ぐに役に立つ知識」は今日、明日は役に立っても明後日には陳腐化します。激動する現代、目先の価値観にとらわれ、短絡的に実用的なものを求めがちですが、このような時期だからこそ「無用の用」や「不易流行」の意味をじっくりと考えてみたいものです。

(続く)

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コメント

こんにちは

なるほど。勉強になりました。「当たり前品質」という概念を定義すると見えてくるものがありますね。面白い。
航空機も食品も安全は「当たり前品質」。科学技術の恩恵は「当たり前」として享受するけれど、科学技術自体は遠い無縁の存在、金を出していることで「王様」になれる消費者の「期待」がこの品質のメジャーになると理解しました。

>「当たり前品質」の維持は企業の品質保証で一番苦心するところですが、価値創造に結びつきにくいものでもあります

事故にならないと見えてこないということですね。私たち非破壊検査屋の仕事は、まさに「当たり前品質」の維持なのです。

小林教授とは何度かお目にかかったことがあります。エキスポランドの事故の件では、破面解析の結果を見た同教授の「こりゃだめだ」の一言で、公表されていないという話があるのです。あの事故では破面を電子顕微鏡で見て「ストライエーションがありました」なんて報告は、ほとんど意味がありませんからね。それこそ「当たり前」。

投稿: SUBAL | 2008年2月23日 (土曜日) 09時19分

>破面解析の結果を見た同教授の「こりゃだめだ」の一言で、公表されていないという話があるのです
少しその話が出てました。

投稿: デハボ1000 | 2008年2月23日 (土曜日) 11時01分

こんにちは。ロボットの研究をしているはずなのですが、この間、サーボ弁をPI制御して、圧力容器の一定圧制御に取り組んでいました。きちんとした制御を行うためには、最初に入っている空気の圧力などもきちんと把握しておかなければならず、これが空気圧でなく危険性のあるガス圧だったら大変だろうと思いながら実験をしてます。


>破損と言うものは隠れる(1)
さて、破損と破壊の違いを材料力学の研究室にいたときに教わりました。続編記事を楽しみにしています。

投稿: KADOTA | 2008年2月23日 (土曜日) 14時10分

>この間、サーボ弁をPI制御して、圧力容器の一定圧制御に取り組んでいました。
ほー。サーボ弁ではなく圧縮機の速度で同じようなことをしたことがありますが、P Iの定数をシステムごとに同定するのにさんざん苦労しました。しかも、危険性のあるガスだと、モンキーテストとかを論理的に構築する必要があり、一時はその説得資料に負われました。

投稿: デハボ1000 | 2008年2月23日 (土曜日) 14時42分

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