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雛形をどう使うか(2)

(承前)
お世話になってる設計工学の技術指導者さんと飲んでいたら、非常に私も実感した話があった。
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世の中、故障による有形無形の損失、即ち悲惨な事故が相次いでいるのに、未だに「FMEA(注:FMEA≒故障モード影響解析)」を実施していない企業がある。みなが近視眼的な目先の利益だけを求めているからだと考える。複雑で専門知識が求められる現代社会では、カリスマ経営者は極小人数しかいないし、むしろ居ないといっても過言ではない。だから、勝ち組の企業では、「ブレイン」と呼ばれる人達がリーダ、つまり社長や経営陣を支えるシステムにしたい。しかし、肝心のブレインがいないし育たない・・・。
例えば、設計指導の現場に立つと、各企業の責任者は、「FMEAをやっています!」と言う。けど観察するとFMEAの表を作っているだけだったりする。FMEA一つとっても、リーディングできる、または、アドバイスできるブレインがいない。その結果、未だにQC手法(品質工学)ならハンドリング技能が手ごろなのでこれから抜けない。もちろんQCが企業活動の基本であることは前提だが、問題は、QCしか選択肢がないのが問題だ。
以前のFMEAは、表を完成させることに注力してそこで終わり・・となっていた。て、工数の割には効果が希薄で、ナレッジマネージメントにも使えないのが現実。けど本当は、FMEAを技術者同士のディスカッションの場として活用すべきではないか。、表を作るのは(見える化という意味では非常に重宝されてるようであるが、そういう帳票管理的視点(きっぱり!)ではなく、)本当に生きたFMEA分析とは技術者間ディスカッションの「場の提供」が最大の役目だとおもう。
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以前、私もレギュレーション・規定をいかにナレッジ(≒知識データベース)に平たくして盛り込み、設計者の知識の補佐(サポート)として活用するべきかという提言をしましたが、あれもリーディングできる、または、アドバイスできるブレインがいないし、それを育てること自体がすでにリスクという意見が多いのですよね。問題点は私と決してずれてないと思います。
いやいや、FMEA以前にQCだって結構危ないものがあります。こんなことを思い出しました。
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私の経験になるのですが。
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会社勤務時代、技術のとりまとめ担当として、OCサークルの技術指導をしていたことがあって、そこで基本的品質管理の技術を教えることを「業務外活動として」やっていたことがある。(その時期はもう業務外も業務内の区別も無いに等しかったがorz)自分の指導で、さらに社外のコンサルさんを招いて発表会をすることになり、近傍の工場に出歩いてその指導をすることもあった。QC活動自体は「草の根運動」の場面が多いのですが、そのような場面を与えてもらうと設計者には設計者なりの、生産技術なら生産技術なりの、サービス技術ならサービス技術なりの、そして品質保証部門なら品質保証部門なりの解釈で習熟(教授とか指導なんて事では行かないです。ハイ)してもらうしかないんです。
さて、このようなイベントに関わってしばらくしたころ、別の用事で工場を訪問し、そのあと以前から懇意にしている工場の検査課に顔を出した。そこにはたたき上げの検査技術者で社内や顧客に人望の厚いある主任技師(部長級)さんが居て、日ごろからメールや電話でお互いに問題点を相談したり、顧客から来たクレームの中身で品質向上技術に関わること連絡してもらっているわけである。
ところが、顔を出したとたん、そこに居た人たちが「これはいいところにきてくれた。一寸相談に乗ってくれ。」と缶コーヒーを私に渡していう。よくよく見ると、課長の机のよこの打ち合わせ机に、製造部長・検査課長・品質保証部長・新製品立上特任部長(新製品の専従で10人ぐらいの部下を仕切る)のお歴々4人が頭をつき合わせてうんうんうなっている。
どういうことかというと、
(1)最近、新製品に場外不良が出た。客先(組立工場です)には納入前に当該部品は全数検査することで対策を施すことにし、暫定的には承知いただいた。
(2)しかし、暫定的対策はともかく、これをすることで全体の工場生産高(具体的には生産速度)を向上できず、残業増加などの問題があるし、それを運用でカバーするにも限度がある。しかもそれがネックになるという認識は客先も持ってくれてるので、良くなる手法が確立されれば、すぐ認証するよとはいってくれている。
(3)事情を会社幹部に上げ、損金扱いで品質保証のための新たな検知装置を作る費用をいくらか確保することが出来た。そしてオフラインでの検査工程はなんとか構築した。(抽出検査仕様と人員は確保したということらしい)けど一体どういう設備で清清と生産出来るための設備を作ればいいのか分からない。

というわけである。
ふとその前にあるホワイトボードには4人の考える問題点が列挙されているのだが、全然視点の違うところから話をしてるので、お互いに相容れないのでデッドストックに入ってしまったところに、都合よくか都合悪くかしらないが、私がやって来たのである。
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ただホワイトボードをよーく見てみると、確かに問題点は分かるのだが、その問題を抱えてうんうんうなってることで前に進んでいない。また、中には相反する内容もある。とりあえずはこの板書の中身を是認することとして、交通整理が必要であることが必要だなあと感じてしまった。救いなのは一応対策費用は出せ、それを客先は奨めているということである。(それさえない・できないことが普通
そこで、自分の事務所の人物に電話をかけ、フイッシュボーン線図の雛形(パワーポイントでつくったものがあったのでそれに書き込んだほうがコンセンサスが作れるという意味)を検査課長のメールに送ってもらい、そこに順次書き込んでいった。問題解決自体に関わるには、自分の立場では工場の現場・現実・現物の把握は不足する状態である以上、その解決のサポートをお手伝いするしか無い。けど缶コーヒーも貰ったわけだから(ぉぃ)、それだけのことはしないとなあと思っていた訳。
翌日には、このフイッシュボーン線図(参考:魚の骨線図という表現で語られている。http://www.erp.gr.jp/old/006/books/022/010.html)を事務所からメールで送っておいたが1週間ほどして問題解決の技術がある程度見えたというメールが来て後日設備を見せてもらった。
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ところが、事務所に戻ってよーく考えるとフイッシュボーン線図の作成というのはQC管理技法の初歩の初歩である。そして彼らはみな、各々の部署や工場の中でのQC管理「指導」に力を尽くしている人材なのである。どうも、舞い上がってしまうといままで知ってることとて気が付かないというものだということ、おちついて考えればよかったのにそれが出来なかったということに、既存の雛形を気づいてもいざと言うときに動けないという、意外な問題ではあるが、至極ありがちな問題が見えてくる。
この問題は、その後問題点の絞込みをした結果、2ヵ月後にはそれなりの決着をみた(義理堅く検査課長は連絡を丁寧にしてくれた)。4人は基礎的技術スキルが有る人ばかりであったからだと思っているが、そのときのアシストをするブレーンがやっぱり必要なんだなと感じたのであった。
(続く)

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コメント

はじめまして。初対面でずうずうしいのですが質問させてください。

上の内容で,
"…オフラインでの検査工程はなんとか構築した。"
と,ありますがこの場合のオフラインの意味について教えてください。

前後の文脈からすると,"暫定的に"というふうに読み取れるのですがいかがでしょうか?

客先で同じ言葉を使われ,JIS規格の用語を調べたのですが答えを見つけることが出来ませんでした。

よろしくお願いします。

投稿: 勉強初心者 | 2008年5月12日 (月曜日) 14時24分

>この場合のオフラインの意味について教えてください
インライン検査装置という考え方があります。これは全数検査に近い概念で、流れ作業等で中量生産を行うために常時監視し不良品を抽出するものです、例えば縫製された布団のなかに針が入ってはこまるので、金属探知機を梱包設備の手前に配置するというものです。当然装置は高価で、品質向上ではあるものの、コストの価格転嫁は難しい。
オフラインということはこのような連続検査装置が機構上使えないときに用いられます。例えば布団を分解して綿を調べると言うのはこれですが、これでは全数検査すると製品がなくなります。またそうでなくても、検査速度があまりにも低いものですと、製造ラインから途中で降ろして全数検査をするしか術がなくこれはこれで、検査コストや在庫期間延長による財務的負担が出てきます。
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この事例の場合は、製造物を製造途中で一旦検査用の設備に移動させ、それを改めてもとのラインに戻すのですが、検査速度が上げられないので、別のところに移動させてしまうため、製造する速度が酷くおくれてしまう上、生産の計画がひどく難しくなってしまったということです。
本当なら、インライン検査工程が望ましいです。但し技術的・コスト的なもんだいでどうしても暫定策対応で事たれりとし、満足してしまう結果、固定的なコストアップという形になりがちです。

投稿: デハボ1000 | 2008年5月13日 (火曜日) 08時52分

早速の回答,ありがとうございました。

勉強になりました。

今後の業務の参考にさせていただきます。

投稿: 勉強初心者 | 2008年5月14日 (水曜日) 16時48分

ありがとうございました。今後ともよろしく。

投稿: デハボ1000 | 2008年5月14日 (水曜日) 22時16分

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