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キャリアデザインの指導現場にて

大学でキャリア形成ってのはどういうことを教えてるんだろうかなあ・・と考えながら、以前お世話になった人が教授をしている、有る大学の文系の共通講義内容を見てると、こういうのが目に入った。
--甲-------------
(1)『キャリアデザインⅠ~4年間で飛躍的に成長する自分づくり』 1年前期
大学生が就職活動をする際に「面接」「エントリーシート(通称“書く面接”)」に遭遇します。
多くの学生達が2つの問いに大いに悩むのが「学生時代に力をいれたものは?」「あなたは何を実現したいですか?」というものです。
会社(社会)はこんな質問をして大学生の何を見ようとしているのでしょうか?
本講座では、「将来の自分づくり」をメインテーマに「社会の現実・就職の現実」「大学生活と仕事の関係性」を学び、具体的に「大学生活で自分をどれだけ成長させるのか」「自分は社会に出たらどんな活躍ができるのか」を考え、自分の価値を向上していくためのキャリアデザインをしていきます。
(2)『キャリアデザインⅡ~人間関係を良好にする自分づくり』 1年後期
本講座の目的は『対人関係力の向上』です。
どれだけ自分の描いた未来の自分像がすばらしくても、一人ぼっちでは何もできないのが社会です。
自分の考えたことを必ずしも“満点の状態”で理解してもらえるとは限りません。仮に理解してもらえたとしても、理解はしてもらえただけで思い通りには動いてくれるとは限りません。
本講座では、「大人の態度がもたらすメリット」「チームワーク」「様々なコミュニケーション技法」「人脈づくり」の4つのポイントをメインに「対人関係力の向上」がいかに仕事・生活・人生に大きな影響を与えるかを考えながら、その能力の習得を目指します。
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うーん、以前ならなかったカリキュラムですが、今の学生さんに大学が付加価値を付けて社会に送り出すのにはこれだけのものが必要なのかあと考えます。
ここでまず(1)キャリアデザインⅠについて考えて見ますと、当面4年の間の生活計画というのが先立つもののようです。これは講義と言うより生活指導・就職指導の要素が強いのかなあと思います。この大学は聞くところでは、中堅の公務員や各種資格取得に注力することを方針としてるそうですから、学生へのガイダンスの目的が強いようです。
(2)キャリアデザインⅡ・・こちらは、むしろ社会への順応に関してどう対応していくかという視点ですねえ。「対人関係力の向上」というところは、私なんぞ全く足りないところですが、定性的議論ではなくこれからの生活を考えていく姿勢を持たせるようにする。本当に必要です。それに気が付いてもらうという活動が、学生に必要だと言えばそれまでですが、以前ならクラブ活動とか、運動部とかで見に付ける世界ではなかったでしょうか。どうやらその世界での学習機会が少なくなってるのか、ないしは世間が非常に混沌としていて、動機付けの点火をしないと成り立たないのか・・・判別に苦しむところです。
「大人の態度がもたらすメリット」「チームワーク」「様々なコミュニケーション技法」「人脈づくり」・・・ううん、学習しても、(やらないよりいいですけど)畳の上の水練のような感じはしますが、そうは言っていけないんでしょう。
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さて、工学教育の現場ではどうなのでしょうか。
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下記にあるのはある中堅総合大学の工学部2年次にある講義です。この大学では内容が、3年次の工業倫理につながっていきます。

-乙---------------------
授業目標:諸君が就職すると、さまざまな問題、たとえば「会社の期待に応えられない」「上司と合わない」「先輩・同僚との関係がぎくしやく」「お客様と会社との板挟み」「仕事で大失敗」などにぶつかる。これらを乗り越えて諸君が幸福な一流の技術者として成長するためには、技術者としての能力と精神的強さとが、車の両輪のように必要だ。このうち、精神的な強さに関する教育訓練は、学校教育の中でほとんど行われていない。そのため、技術者の卵たちはこれまで何の部辣も受けないまま実戦に放り出され続けて来た。その結果、過労死・過労自殺の増加、中高年を襲う抑鬱症・アルコール依存症などが問題となっている。
本講義は技術者が社会の期待に応え、かつ自らも幸福な人生を全うできるよう、情緒的安定と精神的自立とを身につけるためにある。技術者の幸福は、ともすれぽ決まると思われがちだが(それも事実だが)、諸君がそれらの外的状況を変えることは不可能だから、技術者の幸福が外的状況だけで決まるなら、諸君が幸福になるのは絶望的ということになりかねない。本講義では、技術者が自分でできることに焦点をあて、他人や問題への対処を改善することによって、外的状況に関わらず「生きるって楽しい」「会社が楽しい」「この仕事やっててよかった」と思えるようになることを目標とする。本コースでは、コミュニケーションに焦点をあてる。最低限でも、適切なコミュニケーションのしかたが概念的には理解できるようになる。
授業概要:お呼びでない状況にぶつかったとき、にっこり笑ってやり過ごせるか、包丁を振り回さなけれぱならないかは、感情の処理にかかっている。そこで、まず感情の性質、構造、感情が変化するメカニズムを知識に基づいて、さわやかに要求する方法、さわやかに断る方法、その他人間関係をよくするコミュニケーションのとりかたについて、理論と実技の両面から講義する。
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かなり具体的ですね。以前なら社会の中で必然的に熟成されたものだったのでしょうが、この30年(ある社員が就職してトラブルが生じるまでに15年、それが問題点として教育現場にバックされるまで15年と概算して)で変わってしまったと言うことでしょうね。有る意味、本当は私が不足してた問題はいろんな人と不惑を過ぎてまで交わることで、少しずつ分かってきました(遅すぎると言う突っ込みは無い方向で)。「外的状況を変えることは不可能」と切ったのは、ある程度聴講者に手に届く範囲の話にするためと理解していいと思います。
さてキャリア構築をする意識付けを私たちはいかに考えていくか。訓練と言うなら甲の大学のが訓練として非常にいいとも思えるし、実務的事例を身体に叩き込むなら乙の大学の講義がそれなりに価値を持ってるようですし、このような生活指導という目で技術者教育を考えていくと、目的意識の付け方という指導技法に関わってくるようです。

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コメント

こんにちは。このところの更新の多さはすごいですね。

よく言われることですが、高校の進路指導が「とにかく良い大学に入れればよい。」という指導なので、入ってからどうしればよいのかわからない大学生が増えてしまうのでしょう。

大学では「知性と教養を磨く」などという漠然とした目標も必要かもしれませんが、工学系の学生には、現場の厳しさと展望を考えさせるような授業は大事なのではと思います。ただ、文系学部のキャリアデザインは単に資格取得に走る危険性もあるので、注意する必要があるのではと思います。

投稿: KADOTA | 2008年1月13日 (日曜日) 16時20分

>このところの更新の多さはすごいですね。
書き溜めたものを在庫一斉放出してます(苦笑)
>工学系の学生には、現場の厳しさと展望を考えさせるような授業は大事なのではと
ところが、企業に実習に行って貰ったら反って工業っていやになったとかあるんだそうで。価値観が違うのだろうと思いますが、このボタンの掛け違いは社員教育の現場でじかに直面するのです。
>文系学部のキャリアデザインは単に資格取得に走る危険性もあるので
もちろんそれはあるだろうと思います。上の事例もその要素が強いらしい。健全とは言いませんが、生徒へのモチベーションの与え方自体は(大学と言う立場では???ですが)緊急避難的にはあるかなと思っています。

投稿: デハボ1000 | 2008年1月13日 (日曜日) 18時49分

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