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商品化された雇用と請負(3)

(承前)
以下の列挙を参考にしてみよう。
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法的認識
●請負は労務提供契約の一類型。民法上は雇用、委任と並列。雇用との違いは、指揮命令の有無については裁量労働など不明確化しているところもある。究極的には危険負担の有無。請負の中から、労務供給請負を労働者供給事業として括りだし、禁止したのが職業安定法。
●商法上の商行為としての請負は、「作業または労務の請負」。後者は請負人自身の労務ではなく、その支配下にある者の労務の提供であり、労務供給請負。
●作業請負には、請負人個人で作業を遂行するもの(個人請負)、請負人が下請負人にさらに作業を分割して請け負わせるもの(重層請負)、請負人がその雇用する労働者を指揮命令して作業を行わせるもの(ここでいう「請負労務」)に分かれる。
●労務供給請負と請負労務の区別をしようとしたいわゆる請負4要件は、結果請負と労供・派遣の区別と呼んでしまった。本来区別は現実には微妙なものをいずれも請負人が危険負担するという意味で請負とした。
●戦前の労働法制は、請負(請負労務も労務供給請負も含めて)就労者に対しても工場法を適用し、工場主と直接雇用関係のない請負就労者に対する工場主の責任を認めた。戦後4要件のため、請負といえば労働力供給・派遣でないという認識が広がり概念が混乱。正確には、請負ではあるが労務請負的性格が強いものというべき。
請負4要件による「請負なら労働法と関係無し」という発想の脱却要。PDCAアプローチへの転換要。
歴史的認識
●初期工業化は親方職工が仕事を請け負い、子分に分担させる「内部請負制」が一般的。ここでは、工場と個々の職工の間に雇用関係が存在するが、雇用管理、賃金管理は親方が担う。いわば雇用と請負の混在形態
●20世紀初頭から生産工程の直接管理化が進み、工場での親方に代わる職長は雇用管理・賃金管理を直接せず、査定のみ。雇用としての純粋化。反対に独立性の高い工程や補助的工程は親方が独立業者として請け負う形になり、請負としての純粋化。(これが空間的にも独立すると下請中小企業。)
●戦争前までは労務供給請負も多く、多くの社会的弊害をもたらしたため戦後職安法で禁止。その線引きが請負4要件。請負人夫が直用の臨時工となった。しかし禁止が行きすぎて事業活動が困難になり、占領後に緩和。これで社外工が増加し始める。場合によっては一人親方もある。
●造船業、鉄鋼業・プラント工業などでは、社外工を供給する請負業者を協力会社として系列化。構内下請中小企業(中小企業としての格落ちの雇用の安定、能力開発等々)。
●1960年代からアメリカ企業の進出によって事務職場に事務処理請負業として進出。1980年代に労働者派遣法として後追い認可。
●パートタイマーを主たる非正規労働者としていた電機産業に代替として業務請負業が1990年代に本格的に参入。労務供給的性格の強い業者。2003年改正で製造業への労働者派遣が解禁。
●(1)作業請負としての業務独立性が高く、企業としての組織従属性が高い協力会社化
 (2)労務請負としての業務従属性が高く、企業としての組織独立性が高い派遣会社化
の方向の2つの道がある。
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雇用政策としての課題
●企業側では、技能の蓄積・伝承が困難になることが、製造業の競争力維持から問題。「労務のキャリア化」に求めるべき。但し技能の蓄積・伝承が不要とみなすものに企業側の事情で振り分けられるのが実情
●労働者側では、若者のキャリア形成が困難(勤続・教育を重ねても賃金が上昇せず、技能が評価されない)であり、将来の見通しが立たないことが問題。「労務のキャリア化」に求めるべき。しかし技能要求の無い職種に仕立て、技術技能を個人キャリアにしない作業を追求するのが現状。
●技能向上要求の無い職種から技能向上が必須な工程への変換教育には、全くテリトリーが決まらず押し付け合い。そのコスト・リスクを背負うこと自体が競争力低下に伴う。技能指導工数の回避が低コスト化の目的でもある。
●第1の選択肢は、請負労務による就労者を選別し就労先の正規労働者として採用し、そのキャリアパスに乗せる道。しかし、外部的柔軟性が失われるので、それに値する優秀な人財しか不可能。
●第2の選択肢は、請負事業者を協力会社として系列化し、企業グループ内でのキャリアパスを用意する道。会社別人事管理としての格差を維持し、一定の外部的柔軟性を維持しつつ、それなりのキャリアを提供する。黄犬契約のような前置条件でもあるが、キャリアとペイの均等性が同一作業でも雇用内容で崩れている。
●第3の選択肢は、企業組織としての独立性を維持し、派遣専業会社として、その中でのキャリアパスを用意する道。この場合、派遣会社内でのキャリア形成が可能なように常用派遣型であるべきだが、それ自体もすでに外部的柔軟性を損傷する行為。
●第3の選択肢では前提として、派遣料金が技能水準に応じた形で設定されるような業界としてのルール形成が必要であるが、労働力商品が供給過剰である今、そのコンセンサスは自主的にはとれない上、介在行為でかえって労働力商品の切り下げが進むであろう。
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私自身は、●第1の選択肢の方法で就労者を選んでき、かつ●第3の選択肢を併用することで業務を行ってきた経験がある。(中途入社は全て派遣業務者からの選定。これは2年の定期派遣期間を過ぎると常用派遣義務を請け元は免れないことからということであるが、それを知ってかつ派遣の立場を選ぶ優秀な人材もいることは理解したい。)
これも一つの考え方であるが、●第2の選択肢たる工場の生産ラインの工程全体を請負業者に一括するという方法も行われている。そのため、ファブレス的な会社が出来、工程を見る事もない設計者が出来上がりだしている。(とはいえ、雇用側には予算というものがある。多能工・技術者は派遣価値が高いため、雇用対象に見合う価格に入らないことも多い。)

専門技術者の育成と、高度技能者育成は製造業では車の両輪であると考える。どうしても技術指導を考えると、ここにぶち当たる。ああ。
とはいえ今後の見通しが無いわけではない。
三井住友銀行大量採用、09年春は44%増の2400人[J-CASTニュース:2008年01月07日 17時35分]
三井住友銀行は2008年1月7日、09年春の新卒採用の計画を明らかにした。総合職とコンシューマーサービス(CS)職、ビジネスキャリア職の合計2400人の予定で、これは08年春の採用見込みに比べて44%増にあたる。この7月に派遣社員を正社員化するビジネスキャリア職の採用を増やしたことが大きい。
計画によると、総合職は約600人。遠距離の転勤がなく、個人向け相談業務等を担うCS職は約500人。CS職は「総合職に準ずる待遇になります」(広報部)という。投資信託や、07年12月に全面解禁された保険商品などの窓口販売に対応する優秀な人材を確保する。
一般職を廃止し、現在の派遣社員を正社員化して設置するビジネスキャリア職は、08年に比べて倍増の約1300人とする。 ビジネスキャリア職は支店の店頭事務等を担うオペレーションコースと法人営業等をサポートするコーポレートコースに分けており、これまでは派遣社員を中心に仕事にあたってきた。いまの派遣社員が08年7月、正社員に「移籍」。このため、09年春の新規採用の多くは女性になりそうだ。
正社員の採用を増やすことで優秀な人材を確保し、円滑なオペレーションとサービスの「質」の向上を図る目的がある。また、銀行の派遣社員は金融機関での勤務経験などを重視し、かつ比較的勤続期間が長くなる傾向にあるので、女性の戦力化を推し進める狙いもある。

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