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技術者の目的意識(2)

(承前)
大橋 秀雄氏(工学院大学理事長)の話を引き続き述べていこう。
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(3)技術者にとって見る国際的な意識の比較(例)
アメリカ
:PE(40万登録・実動18万人)特定の業務を行ううえに必要な技術者免許(License)法的責任を担う条件。建設分野に集中。要る人は取ればよい。
イギリス:CEng(Charter)20万  ドイツ:Dipl‐Ing(Diploma)80万
:高等教育レベルの十分な基礎教育を受け、設計、開発など技術に関わる高度な業務を遂行できる能力の証。分野ごとの幅在が比較的少ない。但し無ければステータスが得られない。
日本
:技術士(5.6万)特定の業務を行ううえにできれば必要な技術者のレベル表示(Register)法的責任を担う要望。建設分野に集中。
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国際的には日本(韓国も)はアメリカの考え方をベースにしてるが、最近はEU基準も入ってきており実質的に業務ライセンス同然のところもあるなど複雑。ちなみにイギリス・ドイツの事例はかなり階級主義的で大学卒業者のなかにインクルードされてるのに等しいため、現場で力をつけた人材が取得するという考え方がないという欠点も垣間見られるようだ。
下記の例は典型的事例を出している。
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(4)強い個人をどうアピールするか
信用証明(Credentials)
●学位・・・・・学士、修士、博士
●職位・・・・・専門職学位 技術士、一級建築士など(弁理士もここにいれていいかも)
●学会など団体会員・・・・・フェロ一、団体会員など
(5)組織の中に自立した個人を持つことに対して
某自動車会社副社長:
我が社は、我が社にすべてを捧げる人を望んでいる。資格取得などは、外に気が散る人ばかりを増やして、転職を助長するだけだから全く評価しない。
某総合電機会社会長:
我が社は、我が社だけで役に立つ人でなく、どこに出ても役に立って、外から引っぱられるような人と仕事をしたい。資格取得などで、社外の尺度による評価を実証することは大歓迎。
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(5)は2005年の話とか。この自動車会社の役員の発言、意外と思われますが、この事例は結構ありまして例外はあるものの、取引先も自己主張をしてもらっては困るということは繰り返し言われます。なぜかと言うと、各々の会社の秘匿技術というのが設計の手法・ルーチンからなにからノウハウとしてあって、かつ、あくまで団体活動で車は作るものでその体制を堅持することが、製品品質維持と会社の技術レベルであるということのようですね。もちろん、個人で技術資格を取る分は「本当なら」かまわないわけですが、抑止する動きや、場合によっては人事側が勤務内容を証明しないところもあるそうです。(極端な場合、配属を変えた事例もある)個人の技術レベルを把握する活動が、企業存立に反するということ。(例外的に、中途採用者は資格保持者を優遇する企業があります)
この典拠は、ここでは企業の職名(匿名)になっていますが、工学教育の公的会合で企業団体の代表と言う形で言われたため、このことが企業の保持という形で「技術者囲い込み」が企業維持という形で厳然と存在することを示してるといえます。逆に言うと囲い込んだ以上、雇用安定を義務としてるという姿勢・覚悟は各社ともあるようですね。(・・・実態はわかりませんが・・・)アメリカ EUにおいては、このようなことは語られません。
但し、(概して昔の日本の終身雇用形態をアメリカ流にアレンジしてる)長期雇用と読み替えると、日本だけの現象ではなく、欧米でも大企業を中心に長期勤続者の比重の高い国や産業はあり、それらの国・産業では「長期勤続を誘導することで、従業員の企業内訓練を高めて熟練技能を形成し、また従業員の企業忠誠心を高く維持できる」と考えるということはあるようです。技術力が高い人物に対して給与・手当てをインセンティブで与えて条件面で優遇することにより、事実上雇用を定着化させることはかなり例があります。

反対に電機会社は(一部を除き)概して鷹揚なんです。会社単位で技術を上げていくのは厳然とした事実ですが、どこの会社でもいろんなプロジェクトが並行して動いており、一方会社同志の競争があるとはいえ、協同で規定(JISとか)、技術基準を造るなどの作業もあることから、会社の垣根を越えた交流(他流試合とかいいます)はむしろ進んでやって来いと言われます。(但し、ここでも『社外の尺度による評価を実証することは大歓迎。』というニュアンスは、過度に資格にのめりこむのも問題という意図がはいってそうですね。けどそれはまだ容認できる範囲かと。)
企業内でも個々の技術者の相対的技術レベルを判断することをしたくても、なかなかやりにくい以上、スキルアップの結果としての公的な評価を均等に見たいと言う要望が高いのも事実のようですし、その意見が通り易いかもしれません。勿論職務の限定がある資格は「最低限だけ」取らせるということはあるそうです。けどそこどまり。
なお「従業員がいつ解雇されるかわからない状況では、一企業のために教育訓練を遂げようという意欲は低下する」と考えること。これは明確に統計に出ています。1995年ごろ急に企業内訓練に割く経費が前年の2/3になってるそうです。それ以降も増加傾向はない。(但し日本でも一部の会社では他社の動きを逆手に取り、優秀な人員の青田買いやハンティングが生じることを見通し、金銭的問題の土俵に載ることはよくないとして社内の人員技術底上げを推進した動きもあった。)
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これなんですが、私、自動車と産業機械を生業とした会社で部門横断的技術者として働いたことがあり、その考え方の違いが製品体系で全く違うと言うことに、あまりにも動揺を隠せないこともありまして、時によっては客先によって名刺を2種使い分けることもありました。どうしてそうなるのかかなり理解に苦しんだのですが、そのうち自動車部品専業の会社に移ったとき、特にそのあたりが判ってきました。(取引メーカーによっての色はかなり違う。)自分が悩んだことが、じつはこういうバックボーンがあるということが分かっていたら、あの時右往左往しなくて済んだと、多少悔いがのこることもあります。またかように思考課程に業態間にこんな差があるとは、まずほとんどの人が気が付かないし、またそこで苦しんだ人が結構いるのも私は実感として分かるんです。計らずしもこのエピソードの狭間でさまよう人もいるようです。
どっちがいいかを語る資格があるかというと私にはありません。但し自分の人生をどうやって造っていくか。そこはPDCAサイクルを常日頃回し、かつAからPに動く時間を短くする様にしていくしかないですよね。それがせめてもの私のアドバイスかなと思うんです。

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コメント

私自身は自動車メーカーに勤めていたときに、上司から社内キャリアアップのための技術士資格取得を勧められたくらいですから、
> 我が社は、我が社にすべてを捧げる人を望んでいる。資格取得などは、外に気が散る人ばかりを増やして、転職を助長するだけだから全く評価しない。
という発言は、かなり極端なものとして「ふーん、そんな会社もあるんだ…」という感じで受け止めましたし、それが自動車産業全体の考え方かのように見られると抵抗があります。自動車産業は比較的人材の流動性が高く転職者のハンディも少ない、というのもまた事実ですし。
ただ自動車メーカーの中にいれば技術士資格を取る必然性・動機付けはほとんどない、というのもこれまた事実ですけどね。

投稿: TX650 | 2007年12月22日 (土曜日) 19時42分

>かなり極端なものとして「ふーん、そんな会社もあるんだ…」という感じで受け止めましたし、それが自動車産業全体の考え方かのように見られると抵抗があります。
私もこの資料を見たときに目を疑ったんですが、会議で正式に話された言葉なので驚いています。複数の会議でこの文言がでてるそうです。但し、資格といってもかなり幅広い定義です。
ただ実際この言葉通りしてる会社と、反対に人材を本人意思で流動させる会社(会社都合の業界内異動があるようですが、それは除外)もあり、決して一枚岩と言うわけでもないようです。
公的な席でこの発言があり、電機関係(家電は除く)とあまりにも意見が合わなかったことは、興味ある話と思います。
最近は電機部門も人材流動がすざましくなっっています。自動車と余り変わらないかも。

投稿: デハボ1000 | 2007年12月22日 (土曜日) 19時58分

> 例外はあるものの、
私が知っている3社(/15社)は、どうも全て例外のようです(笑)。
トヨタとか日産とか本田とかの上位メーカーと私が知っている下位メーカーの違い、というのもありそうですね。

投稿: TX650 | 2007年12月22日 (土曜日) 21時18分

あえて特定しませんが、社風・地域性と今後の経営の方向性の見極めもあるようです。
自動車メーカーがどうの、電機メーカーがどうのということは、ここでの趣意ではないです。(細かく見ると各社姿勢は異なる。但し入社前はまずわからない)仕事が人生を豊かにすることはあっても、会社が人生を豊かにするというパラダイムは亡くなった。自分の人生をどうやって造っていくかの認識を持って欲しい。せめてもの私のアドバイスです。

投稿: デハボ1000 | 2007年12月22日 (土曜日) 21時23分

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