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補修の目的

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病院のMRI爆発事故、作業員2人に逆転有罪…仙台高裁[読売新聞社:2007年10月02日 12時07分]
 福島県いわき市の松村総合病院で2003年10月、MRI(磁気共鳴画像装置)が爆発し、8人が重軽傷を負った事故で、業務上過失傷害罪に問われ、1審・福島地裁いわき支部で無罪(求刑・禁固1年)を言い渡された、いずれも東芝メディカルシステムズ社員の同県郡山市、某(43)、宮城県(宮城郡)七ヶ浜町、某(47)両被告の控訴審判決が2日、仙台高裁であった。
 木村烈 裁判長は「爆発は予見できた」として、1審の無罪判決を破棄し、禁固6月、執行猶予2年の有罪判決を言い渡した。
 木村裁判長は、2人が同社の手順書に反し、気化した液体ヘリウムの爆発(注:急激な気化に伴う膨張による部材破損)を防ぐために排気口に取り付ける「破裂板」を外して作業したことが事故の原因と認定。「液体ヘリウムの性質について基礎的な知識は持っていたはずで爆発の予見が可能だったのは明らか」と、2人の過失責任を認めた。
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2007年10月2日:東芝メディカルシステムズ株式会社(公式リリース)http://www.toshiba-medical.co.jp/tmd/20071002_mri.html
いわき市におけるMRI装置撤去作業時の事故について

 2003年10月4日のいわき市におけるMRI装置撤去作業時の破裂事故における当社社員を被告とする業務上過失致傷罪の控訴審公判におきまして、本年10月2日に、仙台高等裁判所より判決が言い渡されました。
当社はこの判決を厳粛に受け止め、被害に遭われた方々、病院関係の方々並びに世間の皆様に大変ご迷惑をおかけ致しましたことを改めて心からお詫び申し上げます。
 当社は、事故発生以来、被害者の方々に対し誠意をもって対応するとともに、病院診療の完全再開、原因究明と再発の防止はもとより、さらなる安全の再徹底を図るため、これら課題に対し全力で対応してまいりました。
 より一層の作業安全の確保を目的として導入しましたサービス作業資格制度では、MRI装置のみならず全装置のサービス作業従事者に対して、サービス作業を安全に遂行するために必要な教育訓練、公的資格、サービス作業従事年数等の認定基準に基づく資格認定を行い、サービス担当者単位での作業資格の管理を徹底しています。また、全ての装置、業務プロセス、教育制度等の総点検を通じて見直したマニュアルは、各製品別の作業安全教育と全製品共通の安全教育に活かされ、これらのマニュアルをもとに定期的・継続的な教育を実施しています。このほか、サービス作業における責任と権限の明確化による現場作業の安全強化など、事故発生以降に再発防止策として実施してまいりました各種対策は、現在日常の業務ルーチンの中で運用されています。
 さらに、作業安全監査委員会による監査と全国サービスセンタによる自主点検を定期的に実施することにより、これら再発防止策の有効性の確認と継続的な改善を図っています。
 今後も、再発防止策の確実な定着と実効性の確認を継続し、二度とこのような事故を起こさぬよう最善の努力を尽くすとともに、「安全」最優先の企業風土をさらに確固たるものにするための取り組みを推進してまいります。
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この破裂板ってのはなにかといいますと、(ラプチャーディスクというほうが有名かも)は、あらかじめ決められた設定圧力で確実に作動するノンメカニカルな圧力安全装置です。あらかじめ設定された圧力と温度で、瞬時に容器内の過剰圧力を開放し、反応の暴走・人為的エラー等に起因する粉体・液体・気体の過剰圧力を開放しシステム・装置を保護する装置です。
ラプチャーディスクはJIS B8226破裂板式安全装置として規格化されており、JIS B8226では「この規格は、圧力容器、配管系、ダクトなどの密閉された装置が過剰圧力又は負圧によって破損することを防止するために設ける、破裂板、ホルダー、バキュームサポートなどで構成された安全装置」について規定しています。
という説明からも分かるように安全弁の一種で、流体に無茶な圧力がかかって全体がぶっ壊れる(まさにこの事例がそれ)前に、圧力上昇を逃がしてしまうものです。要するに圧力容器や配管の一部に圧力容器や配管の強度より弱い部分(ウィークスポット)を設置しておけば、内圧が異常昇圧した際、この弱い部分だけが破壊(パリンと割れるように薄板に溝が付いているとか・・・)されて内圧を放出して容器や配管を保護しますね。この弱い部分を意図的に作るというのがこれでして、形状・寸法・圧力・温度などの一定条件を与えたものが破裂板なのです。
化学プラントや原子力・電力プラントなど各種プラントの圧力容器・機器類・配管などを、異常昇圧や化学反応による昇圧などの危険から保護するために使用され、この点は安全弁と同様ですが、可燃性・毒性・高価なガス及び放射性流体のリークによる危険防止、粘性流体の固着の観点からは破裂板の方が効果的という設計です。ガスの場合は安全弁(多くはリリース付きという循環システムにします)と併用する場合も有るのですが、高価なガスというより、充満すると窒息・存在が有毒なガスの時は安全弁の微少な漏れもなにかと問題になることもありますから、この破裂板を使うのです。(この事例でもある、ヘリウムガスの場合は窒息という意味が高いです)構造上、かなり高圧になりうるのものに使うことが多いです。(1MPaぐらいでは作動が不安定です。)
ただ、この破裂板というのは、取り付けの時のちょっとした歪で、予定外の時に割れてしまったりして安全装置が働くことになります。そして壊れたら、もう漏れは止まりませんから、圧力が抜けきるまで作動し続ける。これが安全弁(メカニカル式)との大きな違いなんです。このように品質管理が非常にむずかしいものですから、世界的にもメーカーが限られているというものです。(日本国内メーカーも少ない)

私も、取り付け作業のスーパーバイザーとして立会いに従事したことがありますが、自分で作業はしませんでした。とにかくこの取り付けはノウハウと言うか高い保守技能が要求される上に、試験運転で作動が確実に行われるか確認も出来ない(確認するということは、破裂させることになるんですから・・・)というところがあります。今回のメンテナンス従事者さんも年齢から考えてそれなりに経験を経ていると考えますと、熟練者だからこその問題点や安定性などの意識(及び意識欠如)が潜んでいたのでしょう。
でメーカーさんとしても対策は講じているのですが、マニュアル整備という意味では国民性も考慮しなければならないと私は思っています。
判決でも有るように、保守マニュアル遵守がされていなかったというのが事実でしょう。ところが(一般機械で多いのです。また鉄道車両もそうらしいですが)同じものでもアメリカのマニュアルと日本のマニュアルでは大きな違いが有るのです。自動車はアメリカ流にちかいみたいですし、飛行機はまた違うかもしれませんが・・・
:バルブが閉まらない→バルブが故障している→電話(001-***-****)にて製品番号(・・・・・・・)のものを(製造元から!)取り寄せ、下記の図(ここにはかかない)のように取り付けること。
:バルブが閉まらない→中の流体が詰まっている可能性etcがある→これは○○のような性能劣化を生じさせる→A社の製品番号(・・・・・・)のバルブを手配し交換のこと→(事後振り返り)補修予備品として手配するか、N年ごとに交換すること(予防保全)が望ましい

多民族国家であるアメリカでは、技術力のレベル合わせというところに問題も有るし、また海外での使用も考えると「業務命令・タスク」と言う形で指導することが必要であろう。かくて柔軟性の少ないマニュアル式の指導が多くなるんですね。(・・・これを考えると スマイル¥0と書いてある某社のメニューがなんとなくわかるような(笑))
日本はこの点に関してはあまり切磋琢磨されてないからか、メンテナンス技術者の「技量」養成と言うことを前提にして整備要領をつくってしまうから「作業の動機付け」が必要と考えるわけです。メンテナンス会社の対策も、日本人らしく、日本人の特性に会った解決策提示だと思いますね。ただ、自動車に関しては、従前から海外進出が熱心なことの上、世界どこでもメンテナンスしなければならないからか、アメリカ的なシステムの徹底+予防保全システムの構築が行われているようで、これは一つの解決策でしょうね。
今回の場合は、破裂板メンテナンス技術の解釈で第一審と第二審の考え方が分かれたようです。(といっても執行猶予が付いていることは、メンテナンス技術者の技量なのか、メンテナンスのマニュアルの位置付けが不徹底というSTATE OF ARTの確立を会社が怠ったと認識した意味もあったのでしょう)
ただ、今後のメンテナンス技術者の技量・及び問題意識付けの「定義」という意味では、製品を作るものとして考えるいい機会になりそうです。
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10月2日の記事に対し,鋳物のレントゲンにまつわるコメントをいただきました。当ブログからリンクさせていただいている「反省から飛躍へ」の管理人であるデハボ1000さんからでした。この方は技術士です。それだけでも公的尊敬に値するのですが,ブログのほうもかなり濃い内容の興味深い大作記事をアップしてくれる,「僕が私的に尊敬する会ったことのない人物」の一人です。... [続きを読む]

受信: 2007年10月 4日 (木曜日) 22時56分

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