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がっぷり4肢

このまえ、http://subal-m45.cocolog-nifty.com/blog/さんに「破壊事故」http://www.amazon.co.jp/%E7%A0%B4%E5%A3%8A%E4%BA%8B%E6%95%85%E2%80%95%E5%A4%B1%E6%95%97%E7%9F%A5%E8%AD%98%E3%81%AE%E6%B4%BB%E7%94%A8-%E5%B0%8F%E6%9E%97-%E8%8B%B1%E7%94%B7/dp/4320071654と言う本を紹介いただいた。で新幹線やホテルで缶詰になった機会に(爆笑)これ幸いと読んでた。ふつうの人なら、睡眠には丁度いい本なのかもしれないが(苦笑)中身がここまで詰まると、わたしゃいやあ目が覚めることさめること。SUBAL氏の見識にただただ驚くばかりである。
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意外と思われるであろうが、私は機械設計業務を生業としているが、学生時代は機械材料での論文であったし、その後も圧力容器の認証管理なぞもやっていたから、このあたりのところはあまりにも身近であるため、個人的には非常に抵抗感無く読めた
破壊モード別のこのような分類は、破壊力学の経験を持つものにとっては、身体に叩き込んでおかなければならないし、応力下の破壊モードなどは、いまや「畳の上での水練」では基礎である。・・・・というのは応力が掛かる薄肉タンクの上に振動するエンジンなどをおいて亀裂進展を起こすことは、そんなに珍しいことではない(実験上)。従って必ず、このような配置にするときは経験値を入れると共に、必ずゲージ測定をする、実験機を連続運転するなどしたものである。(遠い目・・・・)
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さてこの文体・仕様は、私のような一応それにかかわり「業の如くなっている人間」にとっては、非常に好適な書籍である。たとえば、「スキューバー用のタンクに急速に空気を充填してはいけないよ」ということは実は、各種の講習会で聞かれることなのだが、その理由を聞かれて温度が・・・と答えても、じゃー温度が上がったら・・・という話になる聴衆もいる。聴衆の要求レベルによっては、「なぜを5回言う」タイプの人、「ヒョーゴ」で納得する人、色々である。そのような人にこのように写真をみせて、良く文章を読んでもらうと、いい事を教えてもらったなどといわれたりする。
そこで一番苦労するのは、分かってもらうことが非常に困難な人である。そのような人にこの本を見せても、多分理解するのに難渋するどころか、ポイっとほおってしまうのがいる。しかし、今の本当の現場オペレータが、図面の計画などの職務に邁進していることを考えると、充分な技術能力を維持するのに「テクニック先行」になっちまっている。多分現場啓発のためには更にブレークダウンしなければならないという悩みを感じる。但し、それをしても「私の仕事を継承(いっしょにする)してくれる」人には繰り返し読んだりしてもいいし、管理監督者の講話にコラム「知識化」と言う形で少しずつ学んでいってもらうのがいいかもしれない。
とにかく、有るクラス以上の中堅技術者には無理しても読ませたいが、その人材を選択する必要性がある、そこの意味では「技法」レベルをどこにおくかと考えると、本当に旨い糧に出来るか、食えずに排除するかをよっぽどお膳立てしなければならないという、典型例であろう。それは、本の出来上がりに関して問題が有るのではなく、これを紹介する相手を吟味しなければならないという、ハムレットのような悩みがある
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不肖、当方の父は50年間プラント設計を生業としており(定年後も長く常勤嘱託であった)下手なことをいうと「技術的な典拠を出せ」とか「技術者の信念・・・」とかのたまう(頑迷な・・・)父であった(・・・父の部下の人に最近あったら、会社でもそういうスタンスだったようで、思わず「ご迷惑をおかけしました」と言ってしまった・・・)が、過日、事情で実家に出かけた際に、読んでいたこの本『破壊事故』を取り上げて、「ほう。そーなんだよな・・・」とか言っている。他に持っていた設計理論(タグチメソッドとか)の本はすぐ手から離したが、どうもこのような生々しい話は、その今までの自分の設計者人生を振り返ることになるからか「ぶつぶつ・・・コロージョンなあ・・・」。こちとら、なに聞かれるか怖くてなのであるが、このようにリアルな設計の世界で、かつその情報が文章・紙図面に偏っていた時代の人は(眼力という危ないものを少しかましながらでも)何とか自分の糧にしてしまおうというので、教える立場になった私としては有る意味ありがたい存在である。(但しCAEの有効性の説明に苦労をするのよねえ・・・・・orz)
このように、経験を得て、現場を見て、現場に苦労してというときにアッパーブローのようにこの本は効いて来る。但し、そのような経験を求めない人間は効かないという、推奨する相手を本が選ぶ(バカ分かりをしてもらえないし、うっかりバカ分かりしてもらいたくない)有効な書籍であろうと思う。
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さて、若い技術者達へのセミナーの企画を考える会議に出てきたのだが、目標設定をセミナーでどのように指示して演習してもらうようにしたらいいかねという話になった。「私がおもうのは、『グリーンを示して、旗を立てず』ぐらいの粗いターゲットを予め示しておくのはいかがでしょう。」(爆笑)「「旗はダメかね」「目的ありきの議論は会社生活で多くやってることですから、そこが無いというのは新鮮ではないですか」「当日は」「私はバンカーのレーキぐらいですかね(笑)いや、干渉せずに導くといういみですわ。」
私は20何年かゴルフはしていないが、「打ちっぱなし」でいいとは思わないのでこのような表現をした。どうも他の方はゴルフの話になったので変に受けたようであるが、まあ電車の撮影の事例(いわゆる「撮り鉄」行動)を示すよりはわかりいいであろうな。(苦笑)
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コメント

こんばんは。
面白いでしょう。この本を中心になってまとめているのは破壊力学の学者さんです。疲労の専門家や設計者・メンテナンス技術者・検査技術者、それぞれの専門領域から踏み出して共通に話をするとしたら、破壊事例だと思うのです。破壊力学の側から、一歩踏み出してきたと考えています。
破壊力学の先生たちが書いてきているものと比べると、相当に砕いてきているし破壊力学では説明できないところにも踏み込んでいると思うのです。
でも、おっしゃるようにやはり万人に受ける本ではないでしょうね。ある程度の関心と勉強の蓄積を前提にするかもしれません。
破壊については、ほとんどのところで教えていないし、何がどのように作用して壊れるのかについての一般の知識は乏しいのが現状だと思います。安全を確保して命を守る「教養」として必要だと思うのですがね。応仁の乱は明治時代ではないことは多分ほとんどの人が知っていますが、エロージョンや応力腐食割れはほとんどの人が知らないでしょうね。
どうなのでしょう。デハボ1000 さんからみて、「大学で機械工学を学んで(といっても範囲が広いことは承知しています)、何らかの工業分野で食べている人」を想定して、この本はやはりまだ人を選びますでしょうか。
工業高校を含めた高卒者の関心知識レベルはある程度想像が付くのですが・・・。
(ごめんなさいあわてもので。前のコメント削除してください)

投稿: SUBAL | 2007年9月15日 (土曜日) 19時34分

この先生が東工大で破壊力学の講義をされていた頃、隣の材料力学の研究室に出入りしておりましたが、なかなか破壊力学というものは理論が定着していないような感がありまして、大学でも、それなりの研究室に進まない限り、学ばない内容です。でも、材料力学や弾性論では説明できない事象がいろいろとあるようで、そういったことを事例で学ぶことができるのはよいことだと思います。(何の役にたつかわからないロボットを開発するより、よほど大事なことでしょう。逆にあまりにリアルな内容ですと、学生は敬遠するのかとも思います。)

投稿: KADOTA | 2007年9月15日 (土曜日) 21時38分

実は私も大学の卒業研究内容は「クリープ」に関するものでした。
恥ずかしながらきちんとした学術的理解をしたとは言い難く、また純粋に機械工学的な仕事とは違う指向をして現在に至っています。しかしSUBALさんがおっしゃるように「教養」としてものの壊れ方を知っていることは、ものづくりを扱う上で大いに役立っているように思います。

投稿: TX650 | 2007年9月15日 (土曜日) 21時49分

私もKADOTAさん言われるように、現在の破壊力学の展開の仕方にはしっくり来ないものを持っています。応力拡大係数にしても形状係数がいかにも複雑すぎるし、破壊靱性値は材料定数のはずなのに板の厚さによって変ってくる。飛行機の外板に使うありふれた材料である2024 T3dですら、実際の計算に使う破壊靱性値は公にされていないわけです。 
TPのレベルではなく実際の破壊をどこまで説明できるのか、とても疑問なのです。その破壊力学の研究者たちが、破壊事故事例の解説に踏み出したところに、私は大いに期待したいのです。
小林英男先生は、現在横国大ですが、東工大にいる小林門下の若い先生が、とても意欲的です(その方から本書をいただきました。いろいろ教えてもらっていますが、とても気が合います)。このかた現実を踏まえて、破壊力学の範囲を超えて超音波探傷の領域にも積極的に入ってきています。
破壊現象は、そうすっきり体系付けられるものではないのでしょう。それでも機械や構造物にかかわる技術者にとって「常識」の教養になるべき破壊原因の知見があるはずで、本書の内容がそのままそれであるといえるかどうかは議論の余地があるでしょうが、他に適当なものがないことからもたたき台として有力だと思っています。

投稿: SUBAL | 2007年9月16日 (日曜日) 00時12分

一般的な技術の教科書や専門書をざっと見てみると、理論から推進してそれを現実に当てはめて評価する(PDCA型といいましょうか)手法と現実からそれを評価し、ではこういう評価なんだと係数などを設定して再現性を以って証明とするCAPDo型というべきものが有ると思います。
多分SUBALさんもそうでしょうし、技術素地を習得する時期の生徒はKADOTAさんもTX650さんも不肖当方もそういう生活・学習をしてきて、一方中学校などで教わるPDCA型の教授法にそれが合致していって深みにはまる・・じゃなくって、OJT・OFFJTを間に挟んだりしてますます身に付くものです。
ただ、会社員に入ってきた人と話してみると、それなりに教育課程を得ている人ですが、「全ての設計・研究は理論から始まる」というところからしか逃れられない人にこの本を渡すには、「まず外の世界でブツを触って来い」と私は一喝します。CAPDo型の思想、(たとえば溶接学会とか非破壊検査関係の学会論文のもって行き方)を使い分けることが出来無いという人がいるんですよ。
>それでも機械や構造物にかかわる技術者にとって「常識」の教養になるべき破壊原因の知見があるはずで
ということが、なにも大学卒・院卒に関しては縁が遠くなっているタイプの人は研究機材の設計はさっくり出来てもその後の実機評価などの工程で始めはひっかかる。そこで分かる範囲にとどまる姿勢に閉じこもるか(むしろ院卒でCADオペレータ操作専門と言う方向に動いた人物も有ります)
このような志向性が混交し、但しトータルな技術レベルで見ると均質化されている場合、過去の事例を先に並べると「理論で全てまかなえるってのはうそ?」と思うのが結構います。この人材に本書を与え短期間で読ませると、中身が詰まっているからこそ教条主義的に理解してしまって論旨を展開するのもいるんです。つまり、常識と思っているのが常識として考えられてない、常識は理論・数式というタイプ。その人たちに与えるためには、これをもっと砕くということになるのですが、従来の技術者の型の人には、当然全体がだらーとした本にとられてしまいますね。
こと、破壊現象というものは、過去事例の分析からなります。だから応力拡大係数もかなりオリジナルな計算式になってますね。そこを再度現場に回して問題点と対策を積み上げていく。溶接の成否も同じ考え方で教育をして技術者を育て上げないと始まらない。現実実績の充実と言う意味ではこの本とこの本の目的とする読者には、非常に重いものになるでしょうし、その価値は有ると思います。但し大学を出たときに受けていた教育がPDCA型(計画先行型)のみできていた人には、教条主義的でない概念を知ることが一苦労だという新人さんも結構おおい。勿論2軸があって、いい技術者に育て上げるのが、新人を受け入れる部署の使命でもありますからそのあたり苦労します。その意味ではこの本をダイレクトに「読んでみろ」と渡すのが適切な人物と、現物の諸相を味合わせてから、「読んでみよ」とこの本を渡す。その見分けは必要だと思うのです。
本が人を選ぶというのは、この力書に関してはいえません。読めるぐらいの実感を感じてみて、入社1年後ぐらいにじっくり呼んでみよ・・というとCAEにしか興味のない技術者は別にして(これもこまったものですが)力がめきめき作るのではないかと思います。
それと、私が仕事の上で関わった工業高校卒・高専卒の技術者は「工業をしたいけど、家庭の状況で学資捻出が出来ず」というのがかなりおおかったからか、辞書片手でもこのクラスの本は読んできますね。となると本は人を選ぶという事をブレークダウンすると、「本はその人の業務の軸足設定を見ている・・適したときに本を与えよう」と管理監督者が神経を使うべき、そしてそうしてもよんで貰いたい本でも有ります。

投稿: デハボ1000 | 2007年9月16日 (日曜日) 04時35分

おはようございます。
なるほど、デハボ1000 さんの危惧されていることが見えてきたような気がします。現実を知らずに理論展開だけで「わかった」気分になっている人にとって、本書のようなものは「これを読んで丸暗記したから現実も知っている」という落とし穴に落ちる可能性が高い、ということですね。
このあたりは、「本」=読み物で解決できる領域ではありませんね。この本は、「破壊学」とでもいうべき体系を作っていく端緒かもしれないと見ていたのですが、整理された体系には当然その前提として「認識過程」があるわけで、そこのダイナミズムを(すべて知ることは無理だとしても)感じ取っておくことは必要不可欠かもしれません。
この本にちりばめられているいくつかのエピソードは、「認識過程」を想像できるヒントにはなるでしょうが、それを感じ取れるかどうかというところですね。

投稿: SUBAL | 2007年9月16日 (日曜日) 08時03分

自分にも律すべきことですが、ステップを踏まないといけないという場合もあるんですよ。バーチャルとリアルの切り分けをまだ認識できない技術者もいないわけではないですから。

投稿: デハボ1000 | 2007年9月16日 (日曜日) 10時58分

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