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検索行為自体が資本の原理

この前、「キャロライン洋子」さんの話を上げたら、皆さんにいろんなコメントをいただきました。ドックフードのCMも見つけました(画像であったようです)。CDもあるようで。で調子に乗っていろいろ見ていたら、神奈川大学経済学部講義資料におもいっきり面白いのを見つけたのです。元来、本文自体を全文コピーするべきではないのですが、2006年の講義テキストなのでHPから消される可能性も有るため、私見を入れて、情報検索のリテラシー検討材料として考えてみましょう。この前のBLOGを書いたときの話を交えながら。
参考:http://dehabo1000.cocolog-nifty.com/holder/2007/06/post_9ebe.html
http://dehabo1000.cocolog-nifty.com/holder/2007/04/post_064c.html
-----------------引用:http://eipweb.econ.kanagawa-u.ac.jp/eip/step3.html
2006年度経済情報処理 第3回 情報の検索と利用
講義概要
情報化社会では 適切な情報を 迅速かつ効率的に入手し 十分に活用すること が求められる ▼自分の要求を満たすものが「情報」 ▼インターネットの普及は、使える「データ」の総量は増やしたが、「情報」を探し出すのは逆に難しくなった ▼Yahoo!や Googleに代表される検索エンジンの特徴と限界を知ることは重要 ▼いたずらに検索を繰り返すより、戦略的な情報検索を行う
----------------(中断)
以下図書館における文献検索に関するガイダンス、各種文献検索サービスについての使い方が述べられるのだが後段になって、このような表現がでてくる。
----------------再開
3.5.3 インターネット検索の問題点
●ページ収集プログラムは「リンク」をたどってページを集める→リンクされていないページは収集できない(ディープ・ウェブ)
●専門的なデータが収録されているデータベースの多くはページ収集プログラムでアクセスできない
●専門的なデータは、たとえページとして収集できてもキーワードによるインデックス作成がうまくできない ・・そこを無視していいのか?
●内容については無保証。Webで公開されている内容は玉石混淆なので、たまたまヒットしたページに正しいことが書いてある保証は全くない
●多くのユーザは、検索結果の先頭数件しか見ないが、求める主題と一致しているかどうかは不明
●キーワードの意味が統制されていないため、いろいろな意味で使われる言葉だと検索結果の解釈が難しい
事実・データの検索は難しい
●検索事業者が恣意的にページを検索対象から落とす事例がある→Web検索がすべてだと思うと大間違い :検索エンジン各社は中国では政府の方針に従い検索結果を制限している→中国でやっているなら他でやってない保証がどこにあるか?
●たとえばGoogleはドイツやフランスでもそれぞれの地域の法令に基づきナチス情報や民族差別情報が検索できないようにしている
●検索事業者は慈善事業をしているわけではない。基本的には、検索結果のページに広告を出すことで収益を得ている :検索事業者に金を払う「お客様」は広告主であることを常に意識すること
●金を払わず検索するだけのユーザは客ではない → 商用データベースとは違う: 新聞や雑誌でも、大口広告主をあからさまに批判するような記事は載せない
●表はグーグルとヤフーの損益計算書から抜き出した売り上げと純利益。これだけのビッグビジネスに成長している以上、広告主に対して配慮するのはむしろ当然
グーグルと米ヤフーの第1四半期業績(単位:米ドル) 資料出所:各社の損益計算書
グーグル
2006年 1~3月 売上高  $2,254,755,000
2005年 1~3月 売上高  $1,256,516,000
2006年 1~3月 純利益(税引き後)   $592,291,000
2005年 1~3月 純利益(税引き後)   $369,193,000
ヤフー
2006年 1~3月 売上高  $1,567,055,000
2005年 1~3月 売上高  $1,173,742,000
2006年 1~3月 純利益(税引き後) $159,859,000
2005年 1~3月 純利益(税引き後) $204,560,000
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まあ「あるある大辞典」の問題で、報道の恣意性がある意味でたわけであるが、深夜の健康維持用商品なぞ恣意性で一杯である。場合によっては「エセ科学」ぎりぎりのもあるし、まあ科学万能でない・信じるものは救われる・と考えてみても、取捨選択をしなければならないかなあというものは多い。某大臣のようによく分からん水にすごい金を掛けていた事例もあったわけで(もっともこの話は、奥にでかいバックグラウンドがあるのだろうとは思う)。上記の把握は経済学者としての視点としては、至極もっともな話なのだが、有る程度年齢がたってから検索エンジンなぞを利用している私たちとしては、そのような基礎認識の穴が有ることは意識して考えなければならないのです。その恣意性は勿論資本の原理。民間放送を考えるとこれも、資本の原理。では皆様の某HKはどうかな・・・・
だから、出版物が正しいもの・・・ということも、最近は必ずしもいえなくなってきているんです。(勿論、精度としては比較的高いとも思われるが)本屋さんでやはりしっかり見て買うことが基本ですね。書誌的な文献はそれでいいのです。ただし工学のように技術が矢の如く飛んでいく現在、判断基準の確定が出来ずにその上に更なる技術が構築されることもまま有ることで、先端部門だったり、時間的に切羽つまった分野では文献サービスのみならず、検索エンジンのお世話になることは逃げられないのです。さあこまった。個人のリテラシーということになるんですが・・・・・
--------------------再開---------------
コラム(注:本文ではないです)
キャロライン洋子は1960年代~1970年代にかけて子役として活動していた人なので、そもそも存在を知っていること自体がおじさん・おばさんの証拠なのだが、ふと「そういえば、キャロライン洋子って今はなにやってるんだ?」と疑問におもった。とりあえずインターネット検索を掛けてみると、こんな記述が見つかった。
「キャロライン洋子(本名カフ・C・ナーン)は上智大学卒業後、1981年にオレゴン州立大コンピューター学科・同大学院首席卒業し、現在はヒューレット・バッカード社のAI開発指導部でソフトの研究開発のお偉いさん
へーっと思ったのだが、他の検索結果も一応見てみると …… どれもほとんど同じことが書いてある。どれがオリジナルかはもう分からないけど、どうやらみんなで引き写しあった感じ。みんなでコピーしているとしたら、情報の信憑性はかなり怪しい。
そこで、「オレゴン州立大学コンピュータ学科」という情報からオレゴン州立大学の公式webを検索してみる。ふむ。Koff, Caroline N.という人がM.S. in Computer Scienceを 1988年に取ったという記述は見つかった。これは大学の公式サイトの情報だから、自分のところの卒業生に関してはそう大きな嘘はないだろう。あれ? 年が違う。「1981年に卒業した」のに1988年に修士取ったの? 
他の情報から生年月日を調べてみると、複数のソースから 1962年生まれらしいとわかった。1981年だとまだ 19歳。日本で上智大学卒業後にオレゴン州立大学行ったなら、 19歳で M. S. 取ったというのはちょっと信じにくいので、1988年が本当なんだろう。ちなみに、上智大学のWebからはキャロライン洋子も Koffも見つからなかったので、上智を卒業したという情報も真偽のほどは確かでない。
オレゴン州立大学の情報と食い違う点は本名にもある。大学の情報だと姓が Koff、ファーストネームがCaroline、ミドルネームが N. となっているけど、日本語の情報だと、ナーンが姓、ファーストネームがカフ、ミドルネームが C.になっている。更に調べると、オレゴン州立大学に居た人の N.は Nanということまでわかった。ひょっとして、 Koff, Caroline Nan と書いてあったのを、","を無視して解釈したのか? 確かに西洋人は ファーストネーム ミドルネーム ラストネーム という順序で名前を書くことが多いけど、文献参照などでは姓を最初に持ってきてその後に ","を入れるという記法もよく使われる。といっても論文などで参考文献を見慣れてない人にはあまり知られてない可能性が高いので Koff, Caroline Nanを誤読した結果「カフ・C・ナーン」になってしまったのか? このへんでWeb検索では無理っぽくなってきたので、検索対象を特許データベースやnetnewsにまで広げる。1980年代のCSの院生が netnewsにポストしたことがないなんて信じられないし、メーカーの技術者で偉い人が特許の1本も出してないわけがないからね。
すると、オレゴンにいたKoffさんは、確かに大学院のときは AIの研究をしていて、日本語とのバイリンガルで、HP社に入社して、HPから特許を出願したことがあることまで分かった。
ここまでの調査で、キャロライン洋子の本名と大学卒業年について怪しいことが分かった。こういう基本情報が間違っていると、本当に首席卒業でヒューレットパッカード社でAIの偉い人なのかどうかも疑わしい。卒業年と本名が間違ってるということは、首席という情報も原資料に当たってないことは確かだし、HP内でのポジションもちゃんと調べたとは思えない。そもそも、Koffさんとキャロライン洋子が同一人物であるという確たる証拠は見つからなかった。何分にも古い話なので、インターネット上の情報では厳しいかな。
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ご執心のようですね。(笑)ただ、外国文献では、「文献参照などでは姓を最初に持ってきてその後に ","を入れるという記法もよく使われる」のはあるんで、このあたりの表現は注意しなければならない。また米国ではわりとあるようだが、東洋人の場合、よく似た名前の人と間違えることを避けるように、ASMEなどやIEEEに対する原稿には自分の名前にJrとか、ミドルネームを入れる人も多い。某社の技術者の場合は(仮名)青山・ジェームス・真一・・というように文献に書く事例もあった。(日本語の通りに発音できない場合こういうことをする事例が多い)
ところがこのあと、筆者はまだ追求していくんですよね。
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ということでこんどは書誌データベースを検索してみる。すると、1986年に出版された「黒い瞳と星条旗」というキャロライン洋子の本の第1章は「オレゴンだより」と分かったので、キャロライン洋子がオレゴンに行ったことまでは多分本当なのだろう。
黒い瞳と星条旗」は古い本なので既に絶版。しかし図書館には持っているところもあったので相互貸借サービスで借りてきてみた。するといろいろ面白いことがわかった。特にこの本が有益だったのは、オレゴンからHPに行った Koffさんがキャロライン洋子と同一人物であることがほぼ確認できた点。同じ時期に同じ学科で同じ分野を研究している同姓同名の人が二人以上いるというケースでなければ、キャロライン洋子がHPに行ったという経路は確認できたと見ていいだろう。本から分かったことを整理すると、以下のようになる。
●キャロライン洋子の last nameはカフ、first nameはキャロライン
●キャロライン洋子はオレゴン州立大学で Computer Scienceを学び、大学院で AIを勉強していた
●オレゴン州立大学に入学したのは1981年、大学院に進学したのが1986年
●キャロライン洋子は上智大学に入学したが、1年間心理学を学んだだけでやめている(卒業していない)
ここで、もう一度 web検索で出てきた情報をチェック。
「キャロライン洋子(本名カフ・C・ナーン)は上智大学卒業後、1981年にオレゴン州立大コンピューター学科・同大学院首席卒業し、現在はヒューレット・バッカード社のAI開発指導部でソフトの研究開発のお偉いさん」。
もうメタメタですね。同じフォーマットでここまで分かった情報を情報を書くとこんな感じか?
「キャロライン洋子(本名キャロライン・ナーン・カフ)は上智大学を1年で中退し 1981年にオレゴン州立大学に入学。コンピュータサイエンスを専攻。修士論文を1988年5月に提出して M. S. in Computer Scienceを取得。卒業時に首席だったかどうかは不明。同年8月のAI関係の学会で報告しているが、そのときは HPの人として報告しており、特許もHPの人として出したものがあるので HPに入社してしばらく在籍したことは確か。ただし、現在AI開発指導部のお偉いさんかどうかは確認できていない」
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私もここは気になっていたが、ここまで追っかけられなかったので、PATを調べてみたのが以前に書いたものである。
「なおIT技術者になっていることは時々出ていたが、本名:Caroline Nan Koffで検索してみると、米ヒューレットパッカード社出願のJAVAに関するプログラムの特許請求、特開2001-125794(米国特許取得済 USP 7024365)があった」
これは、米国特許だけであるが検索エンジンを複数使ってみると、紐付けになっており、日本特許との関連が見えてきたのである。この表現では米国の優先権主張を考えると平成10年ごろの訴求になっている。(願番は平成11年になるが、これは外国出願特許上の差異で翻訳の手間などもあり、1年以内の遅延は許される)従って1999年にこの特許は出されていたらしい。となると少なくとも1998年ぐらいまで彼女はHP社に在籍していたことになる。(というのは、(1)あまりこの日本語PATはこなれていないのである。バイリンガルの彼女がもしPATを見ていたなら指摘したであろう。会社のシステムによってはわからないが。(2)すでにこの時期サブマリン特許のような、むかーし出して、審査請求だけ後からする方法は消えているため、特許を書いて(連名)会社に所有権委譲しないと、HP社は特許事務に移れないのである。逆にいうとその特許事務移行直後に退職したとしたら1998年末ぐらいは辛うじて勤務していたかということ)
なおヨーロッパに置いても同時出願(英文にて)されていることは確認(ヨーロッパ特許庁宛)したが、現在の処置は不明である。一応海外出願までちゃんとしているのはITでは当然なのかも。なお明細を見てみると、米国特許の場合も査定にIBMの資料などがかなり使われているから、細かい・かつクリティカルな特許のようである。このほかに彼女の名前で引っかかる特許はなかった。結婚したから、名前が変わったとかいうことがあるのかも
------------------再開
一連の裏取り調査で分かったことは、誰かがもっともらしい嘘(あるいは錯誤)を書くと、それがそのまま大量に引き写されて考えナシな検索エンジンによって提供されるという構造が確実に存在するということ。みんな悪気はないのかもしれないけど、裏を取る手間を掛けずに無責任にコピペしてる姿が浮き彫りになった
-----------------引用終了
まあ、これで、よっぽどこのあたりの裏付けを取ることは必要だね・・・ということになるのだが、それ以前に「検索行為自体が資本の原理」だよ・・・ということは考えなければならない。書誌的に古いもの(たとえば論語などの解読の歴史)などでは、時間軸として長いため、考察はやりやすいのだが。その意味では、検索エンジンのなかでの順位などはあまり考えず、とにかくエンジンの出した内容をきっちり読んでいく必要はあるかも知れない。
なお、彼女のお兄さんは、(子役の時代も有る記載も有るけれども、その真偽は問えない)長じて日本テレビ放送網に関わっていて(日本名で活動)番組製作に関わったようであるが、その後独立して表立ったところにはでていないみたいである。ただし彼女が「アメリカの有名ITメーカ勤務」ということは日テレでは時々出ていた(ゲバゲバ90分が日本テレビ製作で、彼女の出世作であるからだろう)から、まんざらずれてはいないのだろうとは個人的には思っている。
考えれば、彼女もいまなら45歳、別の人生の選択もしていても当然で、そこまで彼女のプライベートに対し委細を追っかけるのは無理であろう。
<余談>
とはいえ、企業の論理があるからPATを出していることも有る。このようなことから一般的な企業活動をうんぬんすることは不毛である。PATではないが、企業活動とある意味相克することになっちまった私の失敗事例。
若いころ実験に失敗したことがある。言い逃れが出来ない失敗。CHECKが甘かった。
デ「わかりました、今後このようなミスを殲滅解体一掃するようにします。ご指摘ありがとうございました。」
上「・・・・・えっ
デ「・・・はい。今後気をつけます。」
後日、この上司は高校時代全共闘の闘士で札幌で結構活躍した人だったのを知って、私は激しく動揺した。「殲滅解体一掃」てのはその方面の用語。無意識に使ってたんです。(苦笑)

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コメント

こんばんは。中学時代に「マザーグース」の歌を通じてキャロライン洋子と接していた私は確実におじさんです。
神奈川大学経済学部の講義資料、これは面白いですね。大変勉強にもなりました。

>デ「・・・はい。今後気をつけます。」
「自己批判いたします」と応えれば効果はさらにあったかと(笑)
浪人時代に通ったK塾の教師には全共闘の元闘士がかなりおり、授業が脱線して当時の闘争の模様を聞かされたことがあります。S予備校の元・東大全共闘議長の物理の先生はまだ現役で教えているようで。彼の科学史に関する著作は評判が高いですが、私には敷居が高いなあ。

投稿: kunihiko_ouchi | 2007年6月30日 (土曜日) 23時47分

こんばんは。
ははぁ,ミスの上塗りですね。洒落のわかる人ならいいですが…。

>エンジンの出した内容をきっちり読んでいく必要はあるかも知れない。
それが面倒なんで検索上位記事に頼る,というのは当然×ですね。

投稿: niwatadumi | 2007年7月 4日 (水曜日) 23時21分

>「自己批判いたします」と応えれば効果はさらにあったかと
それは怖くて・・・・(余りしゃれのわかる人ではなかった)
浪人時代にはS予備校のお世話になりましたが、その時の英語の主任がなぜ経済学博士を持っていたよし(最近まで東京でも講義してたらしい)ですが、「マルクス経済学」で学位をとっていたため就職口が全くなかったとか。
>検索上位記事に頼る,というのは当然×ですね
それはしないように気をつけています。となるとどうキーワードで絞り込むかという慣れは必要ですね。
なんと、恒例の疾病で7日間投薬と共に寝ていました。(泣)

投稿: デハボ1000 | 2007年7月 9日 (月曜日) 00時15分

あのー、こんなの見つけました。(爆笑)掃除機のCMです。
http://www.youtube.com/watch?v=Y_SUfwln3m8&mode=related&search=

投稿: デハボ1000 | 2007年7月 9日 (月曜日) 12時46分

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