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クマ抜き

お疲れのかた、目の下にクマなどできていませんか。私は結構クマがでるそうで、顔を見ると「どうかしましたか」といわれることが多いです。以前はよーく言われました。最近は出来るだけそのようなことがないようには気をつけていますが、それでも徹夜明けの時だったりすると、パンダの目になってることがあるそうです。
最近は、さすがに年齢も行ってきましたし、人と会って話をする立場です。お疲れモードではなかなかお話を聞いてもらえませんし、打ち合わせ中でも印象はよくないでしょうし。そこで、事務所には、たまたま今般跡継ぎがいなにので廃業する眼鏡屋さんから、でっかい姿見をタダでいただいてきました。電話番号:○○ 557(仮称)とか書いてあるのですから、どうも交換機をかまして電話する時代のもののようです。これで出かけるときに確認してます。
ところが世の中には他にも「クマ」と略称で呼ばれるものがあります。落語にでてくる熊さん・・・ではなくて・・・香料のクマリンというものです。
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灯油を入れる車が多発 都が「不正」監視要請[J-CASTニュース:2007年05月31日 11時15分]

都は有人のガソリンスタンドではなくセルフ式で不正な給油が行われていると予測している
ガソリンより(管理者注:税込みで)安いことに目をつけた運転手が、セルフ式でこっそりディーゼル車に灯油を入れるケースが目立ってきているようだ。東京都は車に灯油を給油する不正行為が相次いでいるとして、石油連盟や東京都石油商業組合に対して監視を強化するよう緊急要請を行った。背景には、灯油でも車が動いてしまう、ということがあるようなのだが…。
セルフ式が増え、そこで灯油を入れている
東京都は2007年5月29日、石油連盟と東京都石油商業組合に対し、監視を強化するよう緊急要請を行った。都は、ディーゼルエンジン用の軽油に課される軽油引取税逃れと見て、関係団体に注意喚起を促す要請を行った。
灯油は、通常はストーブなどの家庭用燃料に使われるもので、自動車の燃料として灯油をそのまま給油したり、灯油を軽油に混ぜたりして使用するのは、税金のがれの「違法」とされている。
軽油は軽油引取税が課されるため、灯油に比べれば割高だ。石油情報センターによれば、07年5月28日時点の店頭価格(全国平均)は、レギュラーガソリンで1リットルあたり136.8円、軽油は116.2円、灯油は78円となっている。こうした灯油の「安さ」に目を付けた運送業などの車両が灯油を給油する、というケースが頻発しているようなのだ。(管理者注:税金のかかり方があまりにも複雑なのでここは後段で説明する)
軽油引取税を逃れる行為は当然、税収減につながる。この事態を重く見た東京都は「不正軽油撲滅作戦」を実施。07年5月8日の発表によると、不正な給油行為は06年度で18件確認され、課税額は約5億3,200円で、過去3年間で件数・額ともに最高となった。
その一方で、セルフ式ガソリンスタンドの増加が、不正な給油をこっそり行われやすい状況を生んでいる。都主税局課税部軽油調査課はJ-CASTニュースに対し、
「有人のスタンドの場合は、スタンド側が拒否をするので不正な給油行為は行われないが、ここ2~3年でセルフ式が増えたことで、そこで(灯油を)入れているんじゃないかと予測している」
と話す。ただ、組織的に不正な給油が行われているかは都主税局も現在までに把握できていない。
---------------引用中断----------------
これでは、少し分かりませんね。
石油製品と分類されるものは、比重と引火しやすい(つまり燃焼しやすい)ことから、区分がされているのです。上から下のほうに並べてみましょうか。
1:ガソリン(レギュラー・ハイオクはオクタン価という指標によるもので同じと思っていい)
1’:ゾル(溶剤)・・・クリーニング用
2:灯油
2’:航空機用燃料油(普通は入手が限られる)
3:軽油
4:A重油

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クリーニングには昔はフロン(フロンソルブという液状のものがありました)を用いていたのですが、環境に対する悪影響が見出され、基本的に代替フロンに置き換えられることになりました。ところが環境対策としてクリーニング用にこの代替フロンを用いようにも、油脂(皮脂など)を溶解することが出来ない特性が出てきます。従って、安全面ではフロンのほうがいいのですが、環境面からゾル(正式名称:クリーニングソルベント)を使います。但し、ガソリンとは言えども「蒸留性状」がガソリンとしては灯油に近いところで管理されています。いわゆる工業用ガソリン5号といいます。(JIS K2201)このほか、染み抜き・カイロ(古い!)に使うベンジン(1号) ゴムを練るときに使うゴム揮発油(2号)塗料の溶解などや素材分析・計測器の洗浄などに使う大豆揮発油(3号)・ミネラルスピリッツ(4号)というのがありますが、使用量も少なく単価も高いから、自動車にはまあ使わないでしょうね。
なお、衣類をクリーニングに出すと肌がかぶれた・・というのは大概乾燥不足によるゾル・・・工業用ガソリンの残留が大きな要因です。(それがあったからフロンを使っていたわけでして)こういう場合はカバーを外して早速陰干しをお勧めします。

(注:税金ですがこれが複雑で、ガソリンにはガソリン税が掛かり、更に(ガソリン税+ガソリン)×0.05の消費税がかかります(一部が二重課税になっています)。軽油はこれがまた違っていて軽油・軽油代×0.05の消費税・軽油にかかる税金という形になるので単純比較が本当はできないのですが、ざっくり考えて同じぐらいと考えておきましょう。)
---------------------------引用再開-------------------
●灯油でもディーゼルエンジンは回る
しかし、そもそも灯油で車は走るのか、という疑問もある。
これに対し、いすゞ自動車広報部は、
「一般論でいえば、燃料タンク周りにあるゴム類の部品や金属を溶かす可能性があり、燃焼温度が高くなってエンジンに負担をかけるのは確実。また排ガスにも悪影響が出る
としながらも、「ディーゼルは(灯油でもエンジンが)回ってしまう」と指摘する。石油業界関係者も「灯油でも確かにディーゼルエンジンは回っちゃう。ディーゼルは耐久力があるから」と話す。
---------------------------中断----------------------
なぜか。それは軽油はかなり成分の幅が広く、粘度の幅が5種類に分類されていることからもわかります。(特1号・1号・2号・3号・特3号:特3号は一番灯油に近い)。これは寒い場所ではゼリー状に固まることがあるのです。寒冷地には3号などの比較的軽いもんもを使うので、そのような軽油は作らざるを得ない。またディーゼル機関全体が割とタフな環境に作られていることもあります。(エンジン自体は全世界の軽油に使えるぐらいのタフさが求められる)つまり、灯油でも動かせるぐらいのエンジンを作らないと使えないのですな。信頼性としてはしかたがないでしょう。
-----------------------再開----------------
ディーゼルエンジンを積んでいるのは主にトラックやバスなど。燃料費のコストがかかる運送業を営む人々からすれば、灯油の使用がそのトラックの燃料費を下げるということにつながる。前出の石油業界関係者は、
この問題は、税金のかけ方が不正給油の温床になっているという皮肉な事例。悪用されない限り、灯油自体は悪くない。行政当局も追っかけるのが難しいんじゃないでしょうか
と指摘している。
-----------------------終了----------------
最近、話題になっている項目として、貨物自動車の業務過重と運送単価低下が出ています。過積載の問題もあってそれによる故障などもしばしば問題となります。自動車会社としても安全率を上げるなどして有る程度の対策をするのですが、強度を上げる→部材などを強くする→大概重量増加とのトレードオフになって燃費悪化の要因にもなってしまい、難しいところです。

以前ですと、不正に軽油を「作って」脱税という形で、摘発されることが多かったのです。
灯油、A重油は、主に暖房用の燃料として用いられているため、税金が比較的低く設定されています。(特に北海道や青森県などでは、必需品ですし、銭湯の燃料にはA重油が使われていることがあります。)が、性質が軽油と似ており、従来から自動車用ディーゼルエンジンの燃料として使うことが横行した。
軽油は、その使用用途から高い税率が設定されており、灯油、A重油を適当に混合して用いることで税金分を浮かすことができるからである。もちろん、このような行為はれっきとした脱税行為であることから、灯油、A重油にはクマリンという特殊な蛍光物質が添加され、公道での検査を通じて脱税行為の摘発を行うようになったのです。時々幹線道路でトラックを止めて抜き打ち検査をするのですが、特殊な分析計を用いるとこれが一発で分かるのです。
じゃあクマリン(Coumarin)というのはなんでしょう。じつはこれは元々人工香料なのです。構造式は化学式C9H6O2で表される化学物質(芳香族化合物の一種)です。揮発油に可溶。水に微溶。可燃性。紫外線を照射すると黄緑色の蛍光を発する。1876年にウィリアム・パーキンが合成に成功。現在では香料および軽油識別剤として用いられている。バニラに似た芳香があり、苦く、芳香性の刺激的な味がするそうですが、自然界にもあり桜餅の香り成分です。(桜の葉を加工する段階で自然分解することで生成する。但しなお、桜湯や天然のオオシマザクラの塩蔵葉を用いた桜餅の香りはこれらに含まれるクマリンなどによるが、「肝毒性」があるために食品添加物としては認められておらず、天然のサクラを使わずに菓子などに桜の香をつけるには別の化合物が使用される。)

じつは、軽油とA重油を混ぜた軽油を作ること自体は違法ではないのです。交通機関に用いると脱税になってしまうのです。従って「ちゃんとこれとこれを混ぜて軽油をつくりました。差額の税金を納めます。」という場合に関しては、その由申告して書面を車に携帯しておけばかまわないですし、じつはごくたまにそれをやっている「まじめな」運送業者もあります。(この場合はクマリンが入っていてもかまわないのです)
けどね、クマリンが酸やアルカリによって分解されることが判明して以来、クマリンを硫酸や水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)により除去する方法を用いて違法に密造された不正軽油が日本国中に出回るようになった。これが「クマ抜き」という行為です。
この行為を行うと、硫酸ピッチという、重油などに含まれるタールや油分と硫酸からなる混合物(副産物)が出来るのですが、処理については、中和作業、高性能炉での焼却など手間が掛かり、ドラム缶1本あたり十万円以上とも言われている。 また、硫酸ピッチは、軽油の密造過程以外で生成されることはない特殊な廃棄物で、 密造の発覚を防ぐために密造工場で生する硫酸ピッチは、全量不法投棄されるものと考えて良いのです。ほとんどの場合、こういった不法業者は行方をくらまし、見つけたとしても放置される場合が多く、 結局のところ、「行政代執行」により撤去・処分が税金で行われているさま。 行政側は、後からこの費用を関係者に請求はするが、目的からして支払われる場合はほとんどないです。 脱税により利益を得た者が排出した廃棄物を、税金をかけて処分しているのが実情。このことから2004年、相次ぐ不法投棄に対処するため廃棄物処理法が改正。製造と保管について罰則規定が設けられた。また不法投棄の対策を促進するため、2003年度から10年間の時限法である産廃特措法(特定産業廃棄物に起因する支障の除去等に関する特別措置法)が制定され、大規模に摘発する活動が行われてきたのです。後追いではありますが、金を取ることは一生けんめいですね。お役所さんはこのところ・・・・・

こうなるともう開き直るのが世の常。しかも燃料費も含めた収入は運送会社には減少されているし、このところの燃料高騰でますます「繁忙のなかの貧乏」という状態があり、業者同志の価格の叩きあいも収まらない(規制緩和も大きな背景です)となると、代用燃料として灯油を使うことを考えてしまうのです。もうつかまるリスクを覚悟の上で
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これまでの方策として、対策はしているのである。「有人のスタンドの場合は、スタンド側が拒否をするので不正な給油行為は行われないが、ここ2~3年でセルフ式が増えたことで、そこで(灯油を)入れているんじゃないかと予測している」という都主税局課税部軽油調査課のコメントを上に揚げたが、管轄の違う(役所じゃのう)消防法上でもこのようなことは懸念しており、
アイランド(要するに計量器の乗っかっている島)に「ガソリン・ハイオク・軽油(場合によっては第二軽油という脱硫を高度化した軽油・・・いまは普通の軽油がその傾向になってるため、店頭ではみかけない)」と「灯油」を一緒にしないこと
●セルフスタンドは必ず全ての給油状態を人がモニターで監視しておく義務がある。(従ってセルフスタンドの場合は設備費が掛かっており、給油してくれる人の人件費を単純になくした・・・ということにならないのである)
●伝票式の場合は内容を明確に区別すること
があるし、また、灯油用の給油装置は20Lを目安にして連続給油が出来なくなっているとか(ポリタンク給油を考慮)ノズルは握られなければ給油できない(ストッパーがない)とかなっている。またノズルをX-Y式に動かしてポリタンクの入り口の方向しか給油口を差し込めないシステムも導入した事例もあった。
この話をしていると、ノズルの口をポリタンク並みに太くすればいいと考えるという提案をいただいた方がいる。じつは確かにそのようなスリーブをつけて太くすることが出来るTOOLも純正で作っている会社も有るが、「石油ファンヒーターとかストーブのタンクを外して持ってくる事例」も有るわけで口が小さいということが現実ある。その対策を考えると、面白いが限定的にならざるを得ない。またノズルの太さ(内径)が、オーバーフロー検知のパラメータでもあるので設計者も難しいかなあと思うのです。

だから、セルフの責任といいたいのは分かるが、どうもそうとも言い切れないなあとおもうのです。となると灯油を大きなドラム缶で買ってきて、それを隠れて自動車に入れている可能性があるなあ。
確かに自動車を中心とした産業がメインになっている現代、それを担っている人々の給料が切り下げられている現実、そして運送業の根幹に関わる燃料費高騰がこのようになってくると目の下にクマを作ってまで疲れてトラックを運転しているドライバーやその経営者達がこのような脱法行為にはしるという現実は、折り合いの付かないところまできているとみなせる。だからといって灯油を使うことは長期的に見ても車の損傷を招く(エンジンにスラッジがたまったり、排ガスが汚くなる)わけなのだが、そうしなければ生活が出来ないし、年齢などで他に生活の糧をもてない人の場合、どうすれば生きられるのかという話になってしまうわけで、たかが税金逃れといえない構造的な問題が有ることを切に感じるのです。
いまクマリンに変る新しい脱税検知の薬品を模索しているようです。環境の配慮はされると思うが、また、硫酸ピッチ同様の副産物を出す技術を見出す人がでて、いたちごっこになることもあるわけで、一朝一夕では答えがだせないとは考えるのだ。

ものがものだけにクマったものだ。

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コメント

 僕の記事を参考になさったとの事を受けてやってまいりました。

 セルフGSで灯油を入れる人達は、ディーゼルの人達なんですよね。とすると、トラックとかが多い訳ですよね。目の下にクマを作りながら働いているから、少しでも安上がりにしたい→節税したい気持ちは重々分かるんです。悪いと思いながらもやっているんですよね。

 でも、こういう事はやっぱり良くないですよ。早めに対策をしないと、セルフで灯油を車に入れる人達が減りませんからね。

 最後になりましたが、僕の案も取り入れて下さり、誠にありがとうございます!

投稿: ゆげやかん | 2007年6月13日 (水曜日) 11時29分

こんばんは。これはクマったものですね。
ディーゼルエンジンは灯油でも動く、という話は私もどこかのサイトで読んだ記憶があります。しかしそれは成分がさほど変わらないのに軽油の税金は高すぎるのでけしからん、という文脈だったと記憶しています。ほんとはエンジンに負担をかけるのでよくないようですね。

ところで、クマで思い出しましたが、クマムシという微生物をご存知でしょうか。クマムシゲノムプロジェクトhttp://kumamushi.org/というサイトに詳しく解説されているのですが、ものすごくタフな生物です。1年間以上も水無し、-272 ℃の極低温、人間の致死線量をはるかに超える放射線、真空状態、600MPaの高圧、というすさまじい環境に置かれてもへっちゃら。ぜんぜんクマらないそうです。

投稿: kunihiko_ouchi | 2007年6月13日 (水曜日) 22時55分

>http://kumamushi.org/
ほー、これは面白いがしらなかったなあ・・・とおもっていたのですが
>なんと、矢口真里さん、劇団ひとりさんと一緒に、顕微鏡でクマムシを観察します!放送は5月1日(火)深夜25:21(2日午前1:21~)から約30分の予定です。
の記載で思い出しました。けど余り詳細の説明はなかった記憶が。こういうのをいじめてみたい。・・・というのは誤解されそうですが、食品機械の本質消毒機構についてのアドバイスを受けてまして、一つの試料にとかいう浅はかなことを考えてしまいました。高圧殺菌が出来ないということを聞くと・・いかん、仕事モードはやめましょうね。(苦笑)

>セルフで灯油を車に入れる人達が減りませんからね。
脱法行為ということだから形式犯ともいえるのですが、環境や安全(車の損傷)を考えると、対策が追いついていないのですね。けど基本は税体系と、不公平な人件費配分が脱法行為を促進している見方です。

投稿: デハボ1000 | 2007年6月14日 (木曜日) 01時09分

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