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食品工業の技能伝承

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不二家、営業停止の全国フランチャイズ店に休業補償[読売新聞社:2007年01月13日 03時16分]

 消費期限切れの牛乳を使ったシュークリームを製造・出荷するなどしていた大手菓子メーカー不二家は12日、営業停止した全国のフランチャイズ店へ休業補償する方針を明らかにした。
 営業停止による売り上げ減に加え、休業が長期化すれば、補償負担が不二家の経営を圧迫する要因となる。
 不二家ブランドで販売できる契約を結んだフランチャイズ店は38都道府県に707店舗。不二家は、製造工程の安全性が確認されるまで店舗での販売を停止した。各店舗の通常の利益に比べた損害をもとに補償額などを今後、詰める。
 また、不二家は、クッキーやチョコレートなど販売を続けている商品のコマーシャルも11日から中止し、インターネットのホームページにも「お詫(わ)びとお知らせ」を掲載した。「多大なるご迷惑をお掛けしただけに、売り込みは控えたい」(人事総務部)としている。
---------------引用終了-----

今回の不二家の「賞味期限切れ」牛乳使用問題、主力の洋菓子部門における不祥事は、同社の経営的に大きなダメージとなっています。 それにしても、品質管理体制のお粗末さ、コンプライアンス意識の欠如など、雪印乳業の教訓が全く生かされていないというか、かえって隠蔽素地になっていることになってしまい、経営が先という悪い意味での会社主義のほうにベクトルがいってしまった

起きてしまった事象に対しては、真摯に向き合わなければいけない。先ずは非を認め、迅速な対応と再発防止策を取ることが、最大のそして唯一の対応策。下手に隠そう、先延ばしにしようとすると、長期的に見てマイナスの要素しかない。しかしそう働かないのは、一般的なコンプライアンスという意味がむしろ理解できない人材しか取り巻きにいないという現実もあるのかもしれぬ。 嘘のない対応を取ることが、今、企業が求められていること。しかしこの言葉とて散々言われているのに。

日ごろお世話になっているmacさんのBLOGをみていますと、確かな見識に基づいた非常に明快な指摘がされています。
---------------------引用
http://omegatribe1964.blog69.fc2.com/blog-entry-232.html#comment-top
「コンプライアンス」は「順法」と「遵法」の二つの意味を含みます。
法令を守るという「順法」ではなく、その背景や精神も遵守するという「遵法」が大切であり、企業として存続するためのMust要件です。
目先の利益を優先するが余り、もっと大きなものを失ってしまう。ここ数年の企業不祥事の数々、同じことが繰り返されています。
雪印の事象は、コンプライアンス違反の典型として、必ず題材に使われますが、あの案件では違法行為はなかったにも関わらず、まさしく「コンプライアンス違反」ということで、市場や社会から糾弾された訳で、今回の不二家についても、今後相当な逆風が続くのではないでしょうか。
以って他山の石と肝に銘じなければいけません。
--------------引用中断
コンプライアンス活動とともに
コンプライアンス活動についてかなりわかっていないというのもありますが、目先の業績にとらわれてしまって、本質を失うという形であるのは皆さんの指摘の通りであります。(こちらとしては技術者倫理の講義材料が増えた・・・)のですが。
ただ、問題の処理が後手に回ったとはいえ、全店閉鎖・製品回収というのを即座に行ったことは事後とはいえ、多少は評価できるのでしょうかねえ。
---------------引用再開
ところで、牛乳の賞味期限と使用期限は異なりますが、それを知っている上で、賞味期限切れの牛乳を、現場のエキスパート社員(しかも余人に代え難しというので定年後も雇用継続していたような)一人の嗅覚に任せていたというのは、技術伝承というところが明確になっていなかったことが想像できます。
もとより食品工業におけるこういうノウハウの蓄積は、技術的に非常に難しいということもあるのですが、このようなカン・ケイケン・コンジョウ依存の食品加工の状況を残念ながら露呈したという見方も出来るのです。自動車関係は比較的蓄積されているのですが、食品工業(繊維工業もそういう風土あり)では、問題意識もなかったのでしょうね。(多少難解かもしれませんがごめんなさい)

| | デハボ1000

デハボ1000さん、コメント有難うございます。
そうですよね、技術やノウハウが属人的なものになっており、キチンと継承されていない点は、問題だと思います。
社会人、会社人として最も大事なことのひとつに後継者の育成がありますが、意外と蔑ろにされているんですよね。
-------------------------終了
食品工業でこのような管理について、系統的に出来ているのは、醸造業界(酒・ビールなど・醤油・味噌・・・)が有名である。しかし、ここに団塊の世代のリタイアメントということもあり、そのノウハウをどうやって伝達するかがどこでも困っている。このようなノウハウを開示して後継者育成に生かす心掛けはなされているが、たとえば機械工業においてもその方法はさまざまである。

●社内規定を整備し、ノウハウを蓄積するためのフォーマットを提案する。
●55歳を過ぎたら、マイスター制度として専任とし、技能伝承の人事システムを心掛ける。
●自発的に練習すること、そしてそれを点数評価と問題点提示で評価出来るシステムを構築。(条件があまりにも多すぎて、現場のノウハウのスキルアップに頼るべきで、技術が複雑すぎて解析が追いつかない場合・・例:手溶接・ガス溶接などがそうで、溶接業界はいま躍起になって取り組んでおり、この活動は評価に値する。)
●技能オリンピックの優勝者などを巡回させたマイスタースクールを開設。
●現場で起こった問題をすぐさま(ここが重要)上に上げて、設計ノウハウに取り込むことにより、現場だけが持ってる技術・設計だけが持ってる技術の垣根を取っ払う。

と例示してみた。この辺りは経営工学議論の中で行われるが、官能試験に頼るしか分析が出来ないクリームの味・匂いなどに関すると、その簡易分析方法・即ち一種の定量化から構築しなければならないという、案外な問題がかかわってくるみたいである。ここは食品工業全体に関連する問題である。なにしろ、テストピースみたいな標準試験片が牛乳で出来るわけでない。
実は、食パンには、各々の分量・気候・焼く仕様を統一した「標準食パン」なるものがあるらしい。これは全国のパン工場の処方を算術平均したものの集積であるらしいが、実はこのパン非常にまずいのだそうな。食味を定量的に出来ないということは、たしかに隘路である。
多分、讃岐うどんもそういうところがあるんだろうと思う。(香川大学などで評価方法についての評価蓄積、作業工程などの「遺伝的アルゴリズム研究」(→これは、技術ノウハウの蓄積という意味です。これについては改めて)という試みがあると聞く。)

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--------------課題
食品工業では事例不足であるか、極端な事例(カネミ油症事件・水俣病)なので、ここでは卑近な例を挙げる。このような問題に対して、どのような再発防止の対策案があるか考えてみよう。(実際にあったことに類似しているが、少し中身を変えてある)

【事例】回転体(特殊な歯車)を軸にはめあうように構成していた。時々メンテナンスのためにこれを外すということで、軸に歯車をはめあわせた後、接合部付近の部分を、軽いかしめを3箇所行い、いざとなったら外れるようにしていた。このことは当時の製作指示書という書面で作業者(専従1人)に伝えられていた。
20年後この機械の設計を変えることになり、図面形状・製作指示書も変わってしまったが、現場を見に行っていなかった引き継いだ設計者はこんな仕事をしてるとは思わず、かしめ作業のことを製作仕様書に書かなかった。で、さっきの作業者が引き続き行っていたが、「今までと違う表現である」ことを意識せず(恣意的か無意識かは不明)同じ作業を行っていた。
さてこの作業者が定年後隠遁することになり、急遽若い作業者を専従で充当させ、片手に作業指示書を見ながら組み付けた。ところが、かしめをするとは書いてないわけで、そのままで検査担当が検査したときは、全て問題なかった。だが、しばらくすると不良作動品が市場で出てきて、製品製造を中断し、調べた結果、上述の経緯が分かった。
製品の出先がわかっていたことと、リコール対応と作業内容を実体にあわせ現場でメンテナンス技術者が追加作業をしたため、大きなクレームにはいたらなかったが、経営的には問題となった。

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コメント

TB有難うございます。
拙文にこんなお褒めを頂くなんて、ちょっと気恥ずかしい感じです。
閑話休題、不二家への逆風はかなりなものになりそうですよね。雪印以上になる可能性もあります。やはり隠そう、騙そうとした罪は重いですよね。

投稿: mac | 2007年1月15日 (月曜日) 22時57分

あっさり、筆頭株主の森永が支援策を出してきましたね。雪印のときのようなダッチロールは案外無いかもしれない。

投稿: デハボ1000 | 2007年1月24日 (水曜日) 00時20分

雪印の消滅は、その設立の高い志が好きで愛飲していただけに残念でした。当初、下痢をした人がたくさん出た時点では、「おいしい牛乳を飲もうと思ったら下痢ぐらい覚悟すべき」と擁護していました。実際、牧場で絞りたての牛乳を飲むと、必ず下痢をしました。
しかし、その後細菌とそれが出す毒素について知らなかった、という話を聞いて、こりゃだめだと思いました。
雪印もHASSP(Hazard Analysis Critical Control Point)という世界的に定評のある衛生管理システムを導入していましたが、どんな優れたシステムを取り入れても、技術者のプロとしての知識・経験とプライドをなくしたところでは、絵に描いた餅になるという、典型例になってしまいました。残念です。
私は、今でも「雪印」の復活を願って「メグミルク」を飲んでいます。

投稿: SUBAL | 2007年1月27日 (土曜日) 13時36分

>雪印の消滅は、その設立の高い志が好きで愛飲していただけに残念でした。
私も同感でした。農協系との統合はある意味その意識が継承されてるような気がします。
>どんな優れたシステムを取り入れても、技術者のプロとしての知識・経験とプライドをなくしたところでは・・・
設計工学の考え方だと、今のところ知識の集積にとどまっています。プライドと言うところは技術者倫理の近似領域になるんです。私は、いずれはこの2つをひきつける議論をするべきと考えますが、まだそこまで専門家には結節点が見出されていないことに注目しています。

投稿: デハボ1000 | 2007年1月27日 (土曜日) 22時02分

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