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説明責任のありか

構造計算偽造事件以降、その認証と検査たるものがどういうものであるのかということが、今、話題となっている。この件は現在公判中であることもあり、本当に誰がというところについては今回この場では、議論を差し引かえる。しかしキーワードは「説明責任」!
当方、圧力容器等の認証業務に関する計算書作成及び、防爆認証業務を、仕事としたことがあった。やはり計算書・実験結果書類を作る(但しビル建築と比べて圧倒的に書類は薄いけど・・・)のであるが、計算根拠がどこにあるのか、線図の根拠がどういう根拠か、材料強度は実績ベースなのか(・・・というのは文献と異なる値があり、どうやら、安全係数を間で掛けているようである)ということが、必ずしも全部は分かっていないのである。

企業の社長の話。
「防爆技術は(会社の)研究所にやらせるのは、言語道断。あれは技術でない。定められたことをそのとおりするのが製品化である。認証が必要な業務に研究など存在しない。必要ならば役所に聞きにいけ。」

この話はかつて話をしたことが有ると思う。抗弁した管理職はしゅんとなっており、一方有る上司は私をよんで、委細を話してくれた。
私「では、そういうものは研究所で受けないということですか?」
上「そうなるなあ。今期はともかく」
私「けど、これわかる人は社内で数人もいない上にほとんど、定年になりましたね。」
上「そうだな」
私「もし、その製品が爆発した場合、誰が技術的な説明責任をとるのですか」
上「・・・ううん。検査課長じゃないのか」
私「検査課長だけつるし上げても、かえって官庁の不信を買うだけでしょう。さて、爆発する可能性があるので、それなりの設計基準を満たして認証した製品が破損したとき、私たちは発言しなくていいのですね。」
上「いいんだろうなあ・・・・・まあ上がとるんだろうな」

鎌掛けてこんなことをいったのは、圧縮機から火がでて火事になった事故で、検査課長が拘留されたことがあったからである。実際はメンテナンスを10年していなかったことから、使用者の責任であり、製造者責任は無いと判断されたのだが、本人かなり落ち込んでいた。
--------------------------------------引用
防爆構造電気機械器具型式検定ガイド(産業安全技術協会)P61
(2)圧力試験
圧力試験は、次のイ ロのいずれかによること。(中略)
(解説)基準圧力の測定は、供試品の接合面のすきまが交差内に有る状態での爆発圧力を測定することが原則である。(中略)
(合格基準)爆発試験後変形が認められないこと。
-------------------------------------終了
法律というか技術基準では上の、「圧力試験は、次のイ ロのいずれかによること。(中略)」としか書いていない。この解説(例規といいます)がないと何もわからないようになっているんですね。もう一つあげてみましょう。消防法規です。(危険物取扱必携 P92)
------------------------------------引用
点検記録事項
点検記録には次の事柄を記載しなければなりません。
・点検した製造所等の名称
・点検方法及び結果
・点検年月日
・点検を行った危険物取扱者の氏名
(根拠)
危省令第62条の7
 点検記録には次の各号に掲げる点検記録には下記項目を記載しなければならない。
(1)点検した製造所等の名称
(2)点検方法及び結果
(3)点検年月日
(4)点検を行った危険物取扱者の氏名
------------------------------------終了       
製造を行う以上、業者は製造責任・管理責任がある。そして、製造責任が有るものには必ず顧客に対して、事故や故障が起きた原因と対策を語る「説明責任」がある。特に最近は製造物のみならずメンテナンス、医者・看護師の治療方針、薬剤師の投薬内容についてもそうである。
説明責任は認証機関が取るのではないのである。(あるのは道義的責任)要するに機器のPL上のリスクは原則として製造者がとると言って過言ではない。(設置場所の不適合なら設置工事担当者)つまりそれができない業者は、製品を製造販売する資格がないということである。そこをリカバーする方法をだれも考えていないのは、少し気になった。
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何に対しても、「説明責任」というものが言われる。みんなが、知識を得た結果、「相手だってただの人間、考えることは同じ」と思ってるからである。しかし、わからない人にはわからないという経験はある。(もちろんこの中には担当者のおごりも入っているから、安易に納得するべきではない)またそれがわからない法規集はあんまり意味が無いのである。
このまえ、自動車の認証に関する知識を得ようと思って法令の専門書を入手しようとした。ところが部品メーカーでは、下手にそれを客先に開示しても、かえって嫌がられるのが関の山である。
製造物責任は金銭的な面以外は関係ないということらしい。まず普通の設計者は読まない。(研究者はさらに読まない。かえって次期製品の設計発想に障害となる考えらしい。)

書 名 道路運送車両の保安基準詳解
副書名
税込価格 3,101円(本体2,953円+税)
発行年月 2000年5月

普通なら、最新のものを買うのが一般的。しかし、「詳解」という文言がないのは気になる。法律は概要しか示さない。運用面は令なり過去の来歴で決まるからである。本屋で取り寄せることができる本でもないので出版元に行ってみてみたら・・・・
上側の本は、過去の来歴と関係法令のイントロダクションが入ってなかったので、法令順守という意味を見ても、認証取得に関する手法・知識・実用性は非常に乏しいということがわかってしまった。でいま下側の本が事務所の棚に並んでいるわけだ。

JISの規格書でも本当に面白いのは、経緯に関する別紙である。根拠と、現段階における技術の限界が読めるのである。それを知っているからこそ、説明責任に対して、澱みなく、ぶれなく対処することができる。(余談で有るが、ブレがない態度ということはなかなか難しいのである。かえって相手を不安にさせる。けど人はフィードバックしながら話すから、ぶれないようにするのは、自我の強い人か、よっぽどの嘘つき者かどっちかで有ろう。)
私は、普段から、意見にある幅の振れの有る人のほうが、誠実さを見出せて好きなのですが、こと法律の場合は違うようです。法曹関係に自己主張の強い人が多いのも、決して無関係では無いと思うし、彼らは彼らで技術屋のフレキシブルな技術論に霹靂するらしいですね。

また、偽造書面を作った人たちは、説明責任が認証機関・購買者に対してあるということをどう考えていたのかなと思うことがある。説明責任を完築すること一つとっても、あー難しい。
-------------------------課題------------------
(1)説明責任を果たすために、企業はどのような手段をとっているか。ネガティブな面とポジティブな面、双方を例示せよ。

(2)説明書などに書くべきか書かざるべきか迷う項目を例示せよ。

(3)製造時に製造元にて測定されるドキュメントが、後々事故の時にどんなメリットがあるか討論してみよう。

(4)PL法にのっとった考え方で、見直してみよう。

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コメント

> まず普通の設計者は読まない。(研究者はさらに読まない。かえって次期製品の設計発想に障害となる考えらしい。)

これは「部品メーカーの」設計者、研究者という意味ですね?
完成車メーカーの技術者にとってはある意味バイブル的な本ですから。(最近はイントラネット上でデータベース化されていて、日常はそちらを使いますが)

投稿: TX650 | 2006年10月24日 (火曜日) 16時51分

かなしいかな、そうです。
某T社のセミナーでは、私たちの言うこと以外はしてくれるな・・・というコメントがあって唖然としたことがあります。
まだ、技術的典拠を出して話してくれるメーカーのほうが、関連会社の力が上がってきてますね。
反対に防爆や圧力容器とか、最終製品については客先から納入先まで附いていきましたので、この辺のレギュレーションはわりと頭に入ってるのですが。

投稿: デハボ1000 | 2006年10月24日 (火曜日) 17時01分

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