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ディスコ「トゥーリア」事件(1)

 最近、またディスコがブームであるそうな。特に子育てが一段落した主婦とかの年代の方が行くらしい。曲も1980年代のものの選曲をメインにしている。最近の若い人は「クラブ」とかいうそうだが、多分選曲内容などで棲み分けが行われていることだと思う。ところがこういう雰囲気を盛り上げるための商業施設で、起こした事故が思わぬ波紋を呼ぶことになる。
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http://www.ne.jp/asahi/miyachi/sep/event/risk-data.htm
http://www.tepore. com/column/special/20050815/03.htm.
1988年1月5日 東京・港区六本木のディスコ「トゥーリア」で吹き抜けの2階天井部分からつり下げていた重さ1.6トンの鋼鉄製でドーナツ状大型特殊照明(注:3個設置中の1個)が約8メートル下の地下1階フロアに落下し、踊っていた女性2人男性1人が照明装置の下敷きになるなどして死亡。14人が重軽傷。
[現場の説明]
空間プロデューサー山本コテツ氏がプロデュース。店内は米国のデザイナーの総合コーディネートによるもので、近未来惑星に不時着した宇宙船をイメージ。地下1階、地上2階で総床面積約392平方メートル。収容人員は約800人。地下1階から地上2階まで吹き抜けとなっている。地下1階は半円形のダンスフロア。1階が通路、2階がキャッシャーとテーブル21卓にソファ37席、イス14席。メインスピーカー8基。DJブースはダンスフロアを見下ろせる様に設置。厳しいチェックディスコとして名を馳せ、芸能人や野球選手御用達の派手なディスコとして知られていた。
 ここでバリライトという照明が天井から落下し、3人の死者、14人の重軽傷者を出すという大惨事が発生したのである。このバリライトはマイケル・ジャクソンのコンサートでも使われた米国製と称し、全世界255個の納入実績(但し保守上、レンタル扱いにしている)を誇り、巨大なロの字型の物体が光り輝きながら上下するという構造がこの店の最大のウリだった。(実はこの落下事件でこれが国産のコピー品・ニセモノとバレてしまった。 )なお「バリライト」という名称は固有商標だが、すでにこの手の照明の一般名称と化していたようだ。
[建設現場の状況]
この手の建造物は、視覚的な訴求力を第一に考えて作るためついつい、強度設計を無視した建設現場があったようだ。余談になるが、具体例としてある施工業者の経験談を挙げておく。施工作業者の感覚として読んでみてほしい。(こういう感覚は、現場の力として必要である)
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 昔、東京で店舗の仕事をしていたときのこと。スポーツクラブをリニューアルする仕事が来た。3階に25mプールがあり、2階にフィットネスクラブやジム、そしてトイレの位置を変更し、スポーツショップをつくる仕事。
 クライアントは大手チェーンで、お抱えの設計事務所がついている。私の上司たちは「先生!」と事務所の所長を持ち上げる。プールの真下にある既設の男子・女子トイレをすべて撤去し、そこにサービスカウンターやショップをつくる計画。設計図には、まったく柱のない空間が描かれている。このとき、私はプールの床が抜けて店が壊れる夢を何度も見た。上司に確認したが「先生の指示だ!」の一点張り。トイレはコンクリートブロックで間仕切られていたので、上階の加重を受けているわけではなく、ハツリ解体で撤去した。しかし、プールの水の加重を考えると、気持ちのよいものではなかった。
 施工者が設計者に逆らえないというのも、分かるような気がする。
「先生が言うんだから、そうしておけ!」
「うちがやらなくても、他社がやる!」
 私も、昔は設計事務所やこの手のデザイナーに結構振り回された。上司に抑えられるので、下の人間は黙認するか辞めるかしかない。そうして徐々にずぶとい神経になって「業界人」が出来上がる・・・建築業界の問題として捉えたい。
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額面どおりに受け取るべきではないが、こういう主従関係は常について回るものと考えたい。それは顧客と設計部署という関係になると思うが、顧客に独自コンセプトがなく、また設計部署に強度設計・デザインなどのノウハウを訴求できないという、お互いの認識不足が元来あり、そこに「空間プロデューサー」といった訴求能力のありそうな人がでてくると、もう双方に伝わる会話は、非常に遠いものになる。
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[現場の状況・・新聞報道などによる]
さて、建築基準法においては柱や梁など構造物本体の強度基準は改定されているが、証明装置の規定は無く、法的盲点となっている。(中略)この照明装置は1987/11末に故障(ロッキング)し、直後、修理・点検を受けていた。このときは業者は異常が無かったという報告をディスコ運営会社にしている。12/26にも装置業者が再度自主点検を行った。また証明装置の構造についてはストッパがついており、床から2Mの高さより下降しない設計であったと、ディスコ運営会社は認識していた。(注:但し、請元は照明・VTR配置の専門商社であり、機械設計の知識は持ち合わせていなかった。)
この事故の直前のオペレートについての証言としては、従業員が中間リンクを上げる為、キーボードを操作していた。しかしこのリンクが途中で一旦ストップした後、急速落下したとのことである。(1988/1/6 朝日(東京・夕刊))
調べによると照明装置は8本のワイヤーでつるされておりこのワイヤーは1つのドラムに巻きつけられていた。このドラムの回転をヘリカルギアとドラムの間にあるチェーン1本の回転で連動させ、減速ヘリカルギアとモーターの間に3本のVベルトで回転連動をさせている。したがってこのモーターの制御をキーボードで操作していたのである。(参考:1988/1/7 朝日(東京・朝刊))(但し、読売新聞・毎日新聞の同日の記事はVベルトをかましている。どうも朝日新聞の図面には誤謬があると思われる)このチェーンが切断していた。この切断により照明装置の重みでドラムが逆転し急速下降した。あまりの速さのため、2M床上で作動するはずのストッパー(ワイヤーの長さで制御していたと思われる)も作動せず暴走落下したようである。
使用側としても通常1日4回この照明を昇降することにし、設計していたという。しかし現場では15~20回/日駆動させていた。また営業が終わっても吊り下げたままにしていた。(但し、この設計では保管方法がこれしかないことが分かる)
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一体、設計者はどのような設計を行ったのか。検証は如何にして行ったのか。そしてこのような故障・事故が生じたのはなぜか、これを後段で述べ、安全工学(信頼性工学)面と技術者倫理面、そしてその後に残る悲劇を考えたい。

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