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技術者の知恵蓄積化(3)

-----------------引用(承前)
それでも、やっぱりノウハウ的なところの技能伝承については残る。そういうときに現場に進んで出て行くことは好ましいのであるが、そこでみんなにあまねくデータ・秘法を公開しだれがやってもよい結果を得るためには、「暗黙の知識」を「どうやって文章・データ・方法に取り込んだらいいのか」ということになる。
------------引用終了
さて、「暗黙の知識」を「データに取り込む」という作業が少しずつ行われている事務所がここにあったとしよう。ところが、アクシデントが起きたらどうなるのか。
(1)いきなり革新的な技術にシフトしたり、政治的・経済的な理由で今までの技術蓄積を捨てなければならないとき。
このとき、ノウハウを自動設計に全部異動した状態であった場合、設計に対応できるのであろうか。もちろん全く対応できないはなしではないであろう。しかし、その構築や検証技術に関しては、パターン化された設計技術が人間の頭の中にある限りはなんとかなっても、それを遡って検証できない人材は、使えないということになる。したがって設計者の中に少数のマネージメント者 少数の中途半端な技術専門職 多数のオペレータ という配分になる。これは、本当にいいことなのであろうか。
人材の面からも格差が生じるが、設計部署の中でも技術格差・給与格差の固定化につながっていくのではないだろうか。
(2)キーマンの固定化とリスク分散化の乖離
もっと突き詰めると、この技術専門職が一人何らかの形でなくなったとして、設計システム自体が瓦解するということにならないのか。いや中小の会社ではこのために会社が倒れるということもあるようだ。
実は、プラントやシステムの分野(特に機械部門に関わる件)では、そのメインの人材に仕事がどうしても集まってくる。1Grの設計者(当然リーダーがいる)に沢山の協力事業所(外注さん)がくっつき、それを動かすことが仕事である。このリーダーには必然的に責任がかかるがその責任は、技術以外のことが大半で(手配・購入・仕様検討など)多少の技術は、今までのK・K・D(勘・経験・度胸(笑))で乗り切るか、そうでなくては技術をデータにとりこんで置いて、使うときに「条件に合うかを証左する」という作業を繰り返すことになる。
私も過去、技術者の求人・求職を見てきたが、「前任者が急死して仕事が動かないんです」という会社のなんと多いことかと思う。私の経験でも4回あったが、うち2回は単身赴任先で原因不明の急死(1人は海外)、残り2人は急性の病気によるものである。
このほかに、私とおなじ職場にいて、技術を指導してくれた人が、急遽家庭都合で退社し、そのあと15年後、実は別の会社で急性脳溢血で亡くなってしまい、私のところに「技術主任になってほしいが」というハンティングが来たという、しゃれにならない(もちろん相手さんも驚いていたが)ということがあった。
大手の会社でも、たまたまおなじ飛行機で海外に行っていた開発部隊が飛行機の墜落でなくなり、その電器会社はその開発業務から撤退しざるを得なかったという話もある。
ノウハウのデータベース化ということは、中身をよく知って「技術のバランスシート」が読める人がいるから、はじめて成り立つのであって、そういう人を養成する仕事を怠る(・・・というのは、会社にそれが必要だという金銭的問題意識を、持たせることは一見無駄に見える。外部からの収入の増加をもたらさないから)場合、リスクの種になり、業務が破綻する可能性がのこるのである。
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法務的なリスクマネージメントに関しては、最近は収益・株価に直接関係することであるから形を整える会社が多い。(なかにはオイオイというレベルのもあるが。)しかしこういう設計技術のリスクマネージメント、工程管理のリスクマネージメントについては認識すると株価・収益に跳ね返る可能性もあって、あえて目を閉じているところが多いと思う。また、自動車なぞでは「リコール」というのもリスクになるわけだが、このリコールというシステムが成り立っていない業界のほうが、実は普通なのである。段々その余裕が経営者のなかから無くなっていく。そこで大きなミスを犯さざるを得ない会社が出てきて倒産する。倒産したら社員は競合他社にいく場合もあろうが、概してここまでくると競合他社も危なっかしい橋を渡っているわけで、人員吸収が出来ず、結果として人員余剰がでる。
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九州の炭鉱の連続的閉山により沢山の人々が、自動車産業にも吸収された時代がある。ここで、うまく習熟できる人ばかりならいいのだが、ノウハウが全く違う世界に異動してもこなせず・・・といういう人は決して少なくない。ために幼いながらも色々な問題を見た。
セフティーネットがまだ比較的頑健だった時代でもそうなるもの。セフティーネットがずたずたになることが世界の標準にならざる得ない現在、どんな手があるのだろうか。アダム・スミスじゃないが「見えざる神の手」にすがれというのか。なんか、芥川の「蜘蛛の糸」の一場面が見えてくる。

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