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技術者の知恵蓄積化(2)

漢籍にあって、面白いと思った話ですが出典が思い出せません。だれか覚えていたら教えてください
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王様が木陰で索(管理者注:竹をすだれ状態に編んだもの。書籍((というか巻物)の原型)を読んでるところに人がやってきた。
人「なにしてるんですか」
王「索を読んでいるんだよ」
人「役に立たない、つまらないことしてますな」
王「つまらないことだと?どうしてそのようなことをいうのか」
人「やってみないと、わかりませんよ。・・・私は馬車の製作をしていますが、特に難しいのは車輪と車輪軸受けのはめあいなんです。」
王「ほう。どうしてなのだ」
人「長年この仕事をやってますが、削りすぎてしまうと走りはいいが、運転中に外れてしまう。きつ過ぎたら回らない。また適当な形状(管理者注:タイアがない状態では路面の小石などを乗り上げないように、一定の車輪の横ブレを許容していく。したがって軸受けに樽状態のクラウニングを施す。)にするにも経験が頼りである。つまり文章で伝えることはできないんで、弟子を指導する毎日です。文章なんてのはカスの残りみたいなもの。体験されるのが一番です。」
王「そうなのか・・・・」
といって王は索をしまいこみ、一緒に彼の工房にでかけた・・・

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これは、多分当時の作り話の一つなのですが、沢山示唆を投げかけておりますね。
(1)人は経験が大事である。
(2)人は文章で伝えきれないことが一杯ある

そこにはある意味同情しますが、今は紙というものでデータの蓄積については楽になった。それ以上に機械加工の世界だと、工業規格という「文法」・「基準」・「表記法」がまとまることによって、人間同士のデータ伝達、言葉の伝達という事が出来るわけである。それは技術の蓄積(例:実験方法・作業基準・寸法など)・技術の伝承などに大きな効果を挙げる。
「文法」というより「言語」といっていいものもある。はめあい寸法、加工方法(例:1.6sなどの荒さ)なんかはそうだし、「意匠」の伝達も容易になってきた。
さらに、時間を経るにたってデータが蓄積されすぎて、その整理でアップアップするようなこともあったが、整理できればより有効になる。これは古くは百科事典というものを編纂する時代動向、近年ならコンピュータによるデータベースという概念の実用化と横展開研究。トラブル対策のための、測定技術の成立とその手法の標準化ができること。etc・・・・・一杯あるのです。

データベースを構築する、要するに書物にするというのは、3000年を経て人間が汗水たらして尽くした行為である。それを使わないのは手ぶらで宙を切るようなものであると思う。しかも以前なら論文ぐらいしかなかったのが、伝達する対象の人間も増したし、内容も複雑化してきた。
それでも、やっぱりノウハウ的なところの技能伝承については残る。そういうときに現場に進んで出て行くことは好ましいのであるが、そこでみんなにあまねくデータ・秘法を公開しだれがやってもよい結果を得るためには、「暗黙の知識」を「どうやって文章・データ・方法に取り込んだらいいのか」ということになる。

ついぞ、これは人のリストラがらみで語る人が多く、実際コンピュータプログラムの会社はそういう言い方をしてますが、新たな智の創出と、新たな品質向上のためのドキュメントつくりという形で技術伝承を図る、目利きの効く技術者に育てるという方法に限ると思う。人を減らすことは、短期的な経営改善というだけで、品質向上と、もしデータベースの陳腐化がおきたときのカスタマイズ・カイゼンということに対しては無力である。私は、そのような人的資源の移管という意味でのデータベース構築は、リスクが多いと思う。ただ技術的ノウハウを蓄積することでバックアップが図れ、人材の更なるグレードアップにつなげるのが、本当のあるべき姿だと私は主張したい。
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まあ ここまで行かなくても日々に使う検討資料にこまることはある。機械設計の場合、現場で問題点を「落穂拾い」しPDCAを廻すのと同時に、自分自身のデータベースを手に入れることをお勧めする。
機械部門に関して言うと、機械工学便覧(丸善)は世界に冠たる工業ハンドブックである。私も散々読み倒した。しかし、困ったことに今改訂中でいまは買い時ではなく、また一寸分厚すぎる。会社によっては自社の設計部門専用に技術ハンドブックを作るところもあるが、そこは期待するべき活動でもあるけど、かなわないことも多かろう。そこで、私は市販のハンドブックに必要な項目をノウハウとして書き込んで、カスタマイズするのがよいと思い実践している。ベースとして、機械工学必携(三省堂)を使ってみたが、これよりも新機械工学便覧(理工学社)のほうが向きかもしれない。こういうものを常時携行する事によって、現場の技術の蓄積化が得られる。むしろそこからさらにオリジナルな技術の着想を見出していこうではないか。同士よ。
もっとも、これをがちがちに運用すると、それもまた技術の概念をフレキシブルに考えることが出来なくなる。そこは以降の記事で論じたい。

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コメント

>「意匠」の伝達も容易になってきた。
創作された意匠の伝達はいろいろなコンピュータツールで容易になりましたが、創作するノウハウの伝達は如何ともし難いものがありますね。これをセンスともいいます。
機械設計の分野でも、最後はセンスの部分が残るのではないでしょうか。

投稿: TX650 | 2006年8月26日 (土曜日) 10時30分

「創作するノウハウの伝達」
「技術の勘所を見分ける技能の伝達」

これがのこります。その点を説明しますと、これらを育成するツールを検討したことがありますが、こういう育成プログラムをイントラネットで公開する活動を行うところも出てきました。けどこれはというものがでてこないというジレンマはまだ残っています。下のほうはまだ人海戦術でカバーしてますが、上のほうはそういうたちのものではないですからなおさらです。

投稿: デハボ1000 | 2006年8月26日 (土曜日) 14時02分

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