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豆板

一時、コンクリむき出しの内装の建物が、はやったことがあった。そのころ、知人とそういう店に飲みにいったら、どうも天井を見てぼやいている。
「これ豆板といって、コンクリートが十分に混ざっていないか、水が多くて固まる前に沈殿しているかという、施工不良の典型例だな。これを見せる人間の気が知れない、あぶないあぶない。」
思った以上に危ないコンクリートの建物があるということらしい。しかし、普通の人はそんなことしらないんだよね。

承前の話題にもどるようで申し訳ないが、国の基準・技術標準・世界的な技術基準というものを守るという意味が、本当に技術者にとって剣ヶ峰となってる現実が一部にあるのではないか。例えば鉄筋を減らすということが、一般的に材料単価の低減だけで語られているように見受けられる。しかし私は、鉄筋を減らす→重量低減→経費節減 という側面でのみ語られているという見方自体が一方的だと思う。
たとえば・・・鉄筋を減らす→結束工数を減らす→人件費削減 ///:鉄筋を減らす→コンクリートの流し込みを楽にする→(シャブコンを使い易くなる)→品質はともかく作業性向上
これ、一見しただけでは「経済効果」が出てくるわけである。このことは、積算業務を熟知し、施工管理の問題点・隘路(あいろ)を熟知し、かつ「経営者の帽子をかぶった」人物でないと、見えにくい所なのではないか。

と、ここですぐ、政府の監督責任と話を持って行っても、それは単に時事放談になってしまう。

私は、法的に定められた規定が、どういう根拠で、どうなっているから、どうなのだという、技術的ストーリー(もちろん経験則・実験式・安全係数であってよし)が、実は構造計算をしている建築士さん、施工業者(と協力会社)、コンサル、当然この業界には多い技術士の方の中に、見えなくなっている場合があるのではないかと思う。また、規定を作る側(これは、学識経験者も含めて)が説明責任を果たさず、一方担当者も、そのとおり「へいへい」と受けてしまうということがあるのではないか。(この件に付いては、意匠設計と構造設計という1級建築士の2層構造を論ずる方もいらっしゃる。傾聴に値する意見ではある。)

そういえば当方、圧力容器等の認証業務に関する計算書作成を、一時仕事としたことがあった。やはり計算書を作る(但しビル建築と比べて圧倒的に書類は薄いけど・・・)のであるが、計算根拠がどこにあるのか、線図の根拠がどういう根拠か、材料強度は実績ベースなのか(・・・というのは文献と異なる値があり、どうやら、安全係数を間で掛けているようである)ということが、必ずしも全部は分かっていないのである。もちろん分からぬではやっていて説明が出来ないので、それなりに調べてみたりしたが、必ずしも根拠ばっかりではないという説明だったので意外に思ったことがある。もちろん、計算が不完全だったり、偽装だったりすると破損したり、不幸にして人命を損なうというリスクに対する認識があるから、遵守する。(ごくまれに、CAE結果を認証機関が要求する場合もある)

その時の経験。某国認証機関で問題ないとした圧力容器類を日本国内で使用しようと言うわけで、申請用書面を作った所、唯1ヶ所のフランジのボルトが日本の法規のうえでは強度不足であることが分かった。で、会議を開き回避策を検討したが数を増しても、材料を換えても対処できない。これは仕方が無い。本国に連絡した所、「その法規が求めている根拠を示せ」と来て、はたと困った。(結果的には設計方針が異なるということを納得してもらい、納入を遅らせた。半年後、大幅設計変更を行った物が来た。)この時に、「法律に基づく」というだけでは、納得してもらえないという立場の違いを、どうみんなに共有してもらえるかということが意外に難しいんだなあと感じた。

どういうわけか認証関係では、色んな省庁と関係したが、なかには、同じ物質の発火温度が官庁によって異なるなんてのもあって、(実験方法の方式・典拠文献が異なるという理由と聞くが)結構いやらしい。ところが、それを、だまってお上の指示通りにすればいいという、実務偏重の考え方が本当にいいのかというと、これまた変なことになる。
例えばある企業の技術会議での話。
「防爆技術を(会社の)研究所にやらせるのは、言語道断。設計部門の手抜きといっても過言ではない。あれは、技術でない。定められたことをそのとおりするのが製品化である。」
「この件は、日本では事例の無い、新規の技術ですので、既存の経験側では分からないことも多く、認証業務の経験も豊富な人間を付けているのです。」
「そういった事は、研究ではない。認証が必要な業務に研究など存在しない。必要ならば役所に聞きにいけ。」
「研究所と一緒になって、清瀬(国の研究施設)にいってますが。」
「ばかもん。技能クラスのものを研究するという考え方自体がわかっておらん。」

あらっ。技能クラスとは、この表現では、むしろ現場軽視がはなはだしい。(怒)
原価計算まで考えて製品を作り込む設計者・それが本当に安全かを検証する研究者の見方があり、判断をお伺いしにいくことがあった。実際のところ、その規定はどういう典拠であるのか、また実験・検証方法はどういう理由があるのかとか、そのあたりの考え方で自分なりのストーリーを作っていかないと設計者とはいえないと思うのだ。だから、認証に基づいた合理的設計というのは存在するが、認証をブレークスルーする設計はしてはいけない。本当に製品・製品への信頼がブレークしてしまう。ここでブレークスルーするべきは、本当は設計に関する感覚だったのだと思っている。

モラルハザード云々という問題は、ここでは論を待たない。
但し技術者たる君が、今、この場で、こんな行動をしたとき、どうなって、結果、いかなる事がどれぐらい予想され得るか。それを知って君が取る方策は何か。と言うことを、技術者になろうとするものは、出来るだけ机上訓練だけはしておかなくてはならないのでは。
自分もそう。これからは一般のひともそうなっていくべきなのかな。

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コメント

>「これ豆板といって、(中略)、施工不良の典型例だな。これを見せる人間の気が知れない、あぶないあぶない。」
これをいった人物はコンクリート工学の技術者です。もし菊川 怜とのみにいったら(爆笑)彼女はこんなこと言うのかな。まあ言わないみたいだけど。

投稿: デハボ1000 | 2006年1月 7日 (土曜日) 02時03分

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